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狙いは東電解体!?“強面”調査委が始動 尾瀬、送電線も…
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110618/biz11061818010013-n1.htm
2011.6.18 18:00 産経新聞
数兆円に上るとされる福島第1原発事故の損害賠償金を捻出するため、東京電力の資産を洗い出す第三者による「経営・財務調査委員会」が本格的に始動した。メンバーには、委員長の下河辺和彦弁護士を初め、“改革派”の面々が名を連ねる。東電が4割の土地を保有する尾瀬国立公園も聖域とはいえない。発電と送電部門の分離による東電解体を視野に入れているとの見方も強まっている。
■暗躍する仙谷氏
首相官邸にほど近い赤坂の古いオフィスビルの一室。入り口のドアには、「東京電力経営・財務調査タスクフォース事務局」と書かれたコピー用紙が無造作に貼られている。
事務局が開かれたのは今月10日。広い室内には会議用の長机が整然と並べられ、二十数人のスタッフが、打ち合わせや資料の精査に追われていた。
「仙谷(由人)官房副長官がタスクフォースのリーダー役だ」
首相官邸で16日に開かれた同委の初会合。冒頭で菅直人首相は、所管官庁の海江田万里経済産業相ではなく、早期退陣を迫り、関係が悪化しているはずの仙谷氏の名を挙げた。「東電改革は官邸主導でやる」という強い意思表示だ。
実際、官邸筋は「下河辺氏を委員長に指名したのは、任命者の海江田氏ではなく、同じ弁護士出身の仙谷氏だ」と証言する。
下河辺氏は、数多くの企業整理を手がけ、ダイエーやカネボウ再建で大なたを振るった産業再生機構の社外取締役も務めた。ある政府高官は「菅、仙谷、下河辺の3氏は、『大企業は悪』という思想から、『東電は丸裸にすべきだ』という観点でつながっている」と解説する。
■最も怖い東大教授
他のメンバーもいわくあり気だ。やはり仙谷氏と親しいとされるのが、DOWAホールディングスの吉川広和会長。給与カットや中核事業からの撤退で業績不振の同社を立ち直らせた経営手腕への評価は高い。
JR東海の葛西敬之会長も仙谷氏の“一本釣り”といわれる。旧国鉄の民営化に尽力した「改革三人組」の一人で、労使関係や雇用問題にも明るく、東電が拒む企業年金削減に切り込む布石との見方も。一委員では収まりがつかない大物経営者だけに、「将来的に社長として送り込むのでは」(財界筋)との観測まで浮上している。
そして東電にとって最も脅威となりそうなのが、松村敏弘東大教授だ。市場の競争促進が専門分野で、巨大企業による寡占などを研究テーマとしてきた。
委員内定後は、太陽光発電などの新規参入の必要性を指摘し、「発送電分離も議論から排除すべきではない」などと発言している。下河辺、吉川両氏も分離を否定しない。
送電設備の資産価値は4、5兆円に上り、買い手が見つかれば、賠償資金の大半を賄える。もっとも、エネルギー政策の根幹にかかわるため、政府の成長戦略実現会議でも中長期のテーマに位置づけられている。9月に報告書をまとめる調査委で結論が出せる問題ではなく、「自民党ベッタリだった東電を悪者に仕立て、得点を稼ぎたい民主党政権の思惑が透けてみえる」(財界関係者)。
■銀座再開発にも影響
東電の資産売却は各方面に波紋を広げている。下河辺氏は事務局のスタッフについて、公認会計士や投資銀行のコンサルタントら外部の人材をさらに増員する方針を示している。ある経済官庁幹部は「箔(はく)が付き、今後の仕事も広がるので人材には事欠かないだろうが、時給2万円といわれる人件費は税金から出る」と複雑な表情だ。
売却論がくすぶる尾瀬国立公園も揺れている。群馬県など地元自治体は反対し、政府も現時点では否定的だが、東電は木道の整備などに年約2億円を拠出している。賠償金との優先度を考えれば、国が維持していくことを前提に、政府が設立する「賠償支援機構」による買い上げ案は消えていない。
意外なところでは、松坂屋銀座店を建て替える銀座6丁目の再開発計画にも影響が出そうだ。
東電は対象地区にPR施設の旧テプコ銀座館だった土地と建物を保有している。当初は再開発ビルにリニューアルして入居する計画だったが、PR事業からの撤退で有力な売却候補となっている。今後発足する再開発組合が買い上げるしかなく、関係者は「計画の見直しは避けられない」と頭を悩ませている。
5人の企業改革のプロがどこまで深くメスを入れるのか。東電は戦々恐々としている。(吉村英輝)
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