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新しい道に挑戦する意思明瞭な成長国。言い訳ばかりの思考停止の衰退国。
ドイツの脱原発の決定について取り上げた報道や社説をいくつか集めました。
●東京新聞(TOKYO Web)
ドイツ脱原発決定 全17基2022年までに
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2011060702000029.html
2011年6月7日 朝刊
【ベルリン=弓削雅人】ドイツ政府は六日、二〇二二年までに国内十七基の全原発を閉鎖することを盛り込んだ原子力法改正案など関連法案を閣議決定した。日本の福島第一原発事故を受けた反原発の世論を背景に脱原発政策を正式に決定、太陽光や風力など再生可能エネルギーへの早期転換を目指す。
独政府は連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)での審議を経て、来月八日までの法案成立を目指すが最大野党・社会民主党(SPD)も賛成の方針を示しており、法案成立は確実とみられる。
閣議決定によると、一九八〇年以前に運転を開始した旧型原子炉七基と故障が多発する一基は、運転再開せず閉鎖する。残りの九基は、原子炉ごとに明確な閉鎖期限を設け、二〇一五年以降順次閉鎖する。最終的に三基の閉鎖で二二年には全廃させる計画。
新政策は、二〇年までに電力需要を全体で10%減らす大胆な目標を設定。現在、電力供給の23%を担う原発の閉鎖で、風力など再生可能エネルギーによる供給を現在の17%から二〇年には35%に引き上げるとしている。
レスラー経済技術相は「送電網の整備を四年で実現する」と説明。原発廃止に伴う電力料金の上昇を抑えるために五億ユーロ(五百八十六億円)規模の補償措置を講じるとしているが、産業用電力の確保など、脱原発への転換には課題も多い。
(転載ここまで)
「課題も多い」?どんなことにだって、どんな事業にだって課題はたくさんあります。それを乗り越えようとするのが人間の営みです。
原子力発電に課題がないとでもいうのでしょうか。原発についていえば、日本の今の最大の課題は、「福島原発事故の収束、原状回復、生活を破壊された被災者・被害者の生活の立て直し」など、いくらでもあります。事故がなくたって、原発労働者の使い捨てをやめるとか、放射性廃棄物をどうするかとか、十万年後まで放射性廃棄物を残すのかとか、課題だらけです。
自然エネルギーや再生可能なエネルギーなどの新エネルギーの実用化のさらなる拡大という挑戦には、安全で安心な環境の実現という大きなやりがいがあります。挑戦する価値があるのです。
では、読売新聞の社説からいってみましょう。
●YOMIURI ONLINE(読売新聞)
ドイツ「脱原発」 競争力揺るがす政策再転換
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110606-OYT1T01283.htm
2011年6月7日付・読売社説
ドイツの産業競争力を奪いかねない重大な政策転換である。
ドイツ政府は6日、既存の原子力発電所17基を2022年までに全廃することを決めた。1980年以前に建設された古い原発など現在運転停止中の8基をそのまま停止し、残りは稼働期間32年をメドに順次停止するという。
中道左派連立政権が2002年に法制化した「脱原発」政策への回帰である。
メルケル首相率いる現在の中道右派連立政権は昨秋、従来の脱原発政策を転換し、原発の稼働期間を平均12年延長する方針をいったん決めた。風力など自然エネルギーでは必要な電力を賄えない、との判断からだった。
それをわずか半年余りで再度転換したのは、東京電力福島第一原発の事故がドイツ国民に与えた衝撃の大きさを物語るものだろう。事故後のドイツ地方選で、原発早期廃止を訴える環境政党が大躍進し、連立与党は敗北を重ねた。
原子力は、ドイツの発電量の2割強を供給する重要なエネルギー源である。脱原発で生まれる不足分は、当面は火力発電所の増設などで、将来的には自然エネルギーの拡充で埋めるという。
だが、その道程には不確定要素が多い。
増強をもくろむ風力発電はバルト海沿岸など北部に集中し、南部への送電網の建設に多額の投資が必要だ。自然エネルギーの高コスト体質に拍車をかけかねない。
自然エネルギー特有の供給の不安定さもつきまとう。
ドイツ産業界が競争力の喪失を懸念する所以(ゆえん)である。ドイツは欧州経済の牽引(けんいん)車だけに、欧州全体の景気も左右されよう。
ドイツが脱原発へと舵(かじ)を切れるのは、陸続きの周辺諸国から電力を輸入できるからだ。現に今、電力の8割を原発に依存するフランスや旧ソ連型の原発が稼働するチェコから輸入している。
原発廃棄は決めても、原子力に由来する電力に頼る構図は変わらない。自国の原発技術の売り込みも続けるという。ご都合主義の側面も否めない。
世界の趨勢(すうせい)を見れば、中国やインドなど多くの国が、増大する自国のエネルギー需要の供給源を原発に求めている。
島国の日本も、ドイツとは事情が異なる。電力を隣国から買うことはできない。産業競争力を維持するうえで、安全性を高めて原発を活用していくことが、当面の現実的な選択である。
(2011年6月7日01時17分 読売新聞)
(転載ここまで)
いきなり「ドイツの産業競争力を奪いかねない」ときましたか。日本としては、他国があまり競争力をつけることは望ましくないのではないでしょうか?(爆)ドイツが脱原発によって産業競争力を失うなら、それはライバルの工業国である日本にとっては喜ぶべきことではないでしょうか?(爆)
...というのは冗談ですが、読売の社説は日本の現実の失敗を振り返る能力も、創意工夫で未来を切り開くことに挑戦する態度もないことを象徴する社説だと思います。日本のダメなところを代表する新聞と言われてもしかたがないのではないでしょうか。
「その(自然エネルギーの)道程には不確定要素が多い」とも言っていますが、これも、チャレンジ精神のない思考停止です。原発には不確定要素がないのかといえばそんなことはないわけですから、単に原発真理教に帰依している報道機関が言い訳を探しているだけです。だって、自然エネルギーに不確定要素があるなら、それをどう解決していくかが人類の科学技術の見せどころ、という考えだってできるわけです。そういう方向に考えを進めずに、「課題があるからダメだ」という無気力な決まり文句を繰り返す、チャレンジ精神ゼロの読売新聞です。
「世界の趨勢(すうせい)を見れば、中国やインドなど多くの国が、増大する自国のエネルギー需要の供給源を原発に求めている」というのも原発真理教に帰依している思考停止ならではの一文です。すでに脱原発している国(オーストリア、オーストラリアなど)、脱原発に舵をきる国(スイス、イタリアなど)、脱原発の世論が盛り上がってきている国(フランス、スペインなど)だってあるからです。
読売新聞ばかり読んでいると、本当に思考停止してしまい、柔軟な発想を失って頭が硬直してしまいそうですね。笑
一方、そのほかの新聞はだいたい、ドイツの意思と挑戦に期待し、そこから教訓をくみとって日本にも生かそうという姿勢で書かれています。
●新潟日報社 netpark
ドイツ脱原発 日本は事故に学んだのか
http://www.niigata-nippo.co.jp/editorial/20110608.html
2011年6月8日
国民性なのか。国民的論議の積み上げがあった故なのか。はたまた首相の指導力や個性がなせる業か。
決断の速さ、手際の良さには、驚くほかない。どこぞの国とは大違いだ。
ドイツ政府が、福島第1原発事故を受けて従来のエネルギー政策を転換、2020年までに国内の原発17基を全て停止する法案を閣議決定した。
福島事故後、主要国(G8)で脱原発を正式決定したのは初めてである。世界各国の原発政策に少なからぬ影響を与えよう。
「フクシマで、原発が甚大な結果をもたらすことを学んだからだ」。脱原発を決断した理由を、物理学者でもあるメルケル首相はそう語っている。
事故後、ドイツ政府の対応は素早かった。国内全17基の原発のうち老朽化している7基と事故が多発していた1基の計8基を停止した。
反原発世論の高まり、反原発を掲げる90年連合・緑の党の地方選での躍進もあって、メルケル首相はさらに踏み込んでいく。
政府の諮問機関を設置、「10年以内の脱原発が可能」との報告を得るや間髪入れず、閣議決定に持ち込んだ。
内容は極めて現実的で、手法もソフトランディングである。停止の8基はそのまま閉鎖し、残り9基のうち6基は3段階に分け停止する。
最新型の3基は電力需給がひっ迫した際の「予備」として位置付け、22年までに停止することとした。
ドイツの脱原発論議は2000年にさかのぼる。この年、シュレーダー政権と電力業界が脱原発で合意したのだ。翌01年には原発を全廃する協定に署名が行われた。この時の協定内容も現実的で合理的だった。
要約すれば、原発の寿命を32年間と決め、順次廃止しようというものだった。02年には「20年代までに廃止」を明記する法律が成立した。
しかし「原発ルネサンス」が世界で喧伝(けんでん)された昨年、メルケル政権は産業界の意向に配慮して原発の稼働期間延長にかじを切る。
そこに福島原発の事故だった。
再度の脱原発の決断に関しては「陸続きの他国から輸入できる」「他国の原発に囲まれて、1国の脱原発は意味がない」など冷ややかな見方がある。
しかし、国としての「生き方」を国際社会に示した意義は大きい。まさに「フクシマから学んだ」のである。
事故に学ぶべきは日本だが、その気配はない。一から見直すはずのエネルギー政策も、案段階で経済産業省の意向が強く反映され、原発推進が鮮明になっていることが明らかになった。
日本が問われているのは、事故の教訓をどう生かしていくかだ。
新潟日報2011年6月8日
(転載ここまで)
●東京新聞(TOKYO Web)
どうする「脱原発」 ドイツの重い問いかけ
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011060802000071.html
2011年6月8日
ドイツのメルケル政権が二〇二二年までの原発全廃を閣議決定した。来月にも法制化される。東日本大震災後も原発維持が大勢を占める国際社会への重い問いかけと受け止めたい。
原発に依拠しない国としてはすでにオーストリアやデンマークなどの例があるが、欧州経済の牽引(けんいん)車たるドイツの決断が国際社会に与える影響は遥(はる)かに大きい。
閣議決定の内容は、現在十七基ある原発を二〇二二年までに全廃するのが主眼だ。東日本大震災後八基はすでに停止しており、残る九基を順次廃炉してゆくことになる。
この間、風力、太陽光など自然エネルギーの発電、送電技術開発を集中的に進め、総電力に占める割合を二〇年までに35%と倍増させるという。
ほぼ十年前、社民党と緑の党のシュレーダー連立政権時に決定された路線へ保守系の現連立政権が復帰することで、ドイツの脱原発への意思は収斂(しゅうれん)したといえる。
今後最大の課題は、「政策の急旋回は感情論に強く影響されている」(ツェッチェ・ダイムラー社長)との産業界の懸念をどう払拭(ふっしょく)するかだ。企業の海外移転や、電気料金の高騰、雇用への影響を懸念する声は強い。火力発電への依存度が高まり、環境悪化をきたす可能性がある。
石油ショックに際していち早く先進各国が省エネ社会に構造転換したように、ドイツが他国に先駆けて持続可能な自然エネルギー社会型モデルを築けるか。回復基調にある景気を背景に国家威信をかけた試みが始まる。
ドイツの脱原発政策については、自国で原発を廃止しても、隣国の原発大国フランスなどから電力を輸入できるではないか、という批判が常にある。他国の電力を自由に融通しあえる欧州にあって可能な選択であるのは事実だ。
その点に関してメルケル政権が諮問した倫理委員会報告は、「撤退は、将来ドイツから起こり得る原発の危険性をなくすために必要である」と述べている。原発事故による惨禍を、少なくとも自国から招く道を閉ざすドイツ固有の意思表明だろう。
理念を提示して、そこから現実性を探る。それがドイツ流だとすれば、原発廃止を党是に掲げた緑の党発足から三十年。連邦と州が曲折を経つつも試行錯誤を重ね一つの選択に至ったプロセスから学ぶべきものは多い。
(転載ここまで)
上の二つの社説についての不満は、ドイツが原発大国フランスから電気を買っていることばかり強調する主張に流されているところ。それにしっかりとくぎを刺しているのが朝日新聞の社説です。「フランスやチェコなど周辺国と電力を融通しあう仕組みがあるが、その割合はごくわずかにすぎない。政府はエネルギー源を他国に依存しない方針だ。」という指摘があります。
●asahi.com(朝日新聞社)
ドイツの決断―脱原発への果敢な挑戦
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1
2011年6月8日(水)付
ドイツ政府が「脱原発」の方針を閣議決定した。17基ある原子力発電所のうち8基をすぐに閉鎖、残り9基も2022年までに段階的に閉鎖する。
世界の主要国の一つであり、欧州経済を引っ張る国である。原発という巨大なリスクを、徐々に取り除いていこうという決断は重い。
もともと中道左派政権は02年に脱原発の旗を掲げていた。昨年秋、中道保守のメルケル政権は原発の運転期間の延長をいったん決めたが、今回の決定で元の路線に戻った。
福島第一原発の悲惨な事故が、ドイツの脱原発への動きを後押しした事実は、改めて重く受け止めなければならない。
朝日新聞の国際世論調査では、市民の8割以上が原発に反対し、7割近い人々が10年以内の原発閉鎖を望んでいた。
メルケル政権の決断は、この民意に沿ったものだ。右から左まで主要政党の足並みがそろったドイツは今後、政治や社会が一致結束して脱原発への歩みを早めることになろう。
風力や太陽光、バイオマスといった再生可能エネルギーの普及に力を入れる。家屋の断熱性の改善などの省エネを進める。これが対策の2本柱だ。
電力供給のうち原子力は23%を占めている。当面は天然ガスや石炭火力を増強しつつ、現在17%ある再生可能エネルギーによる発電の割合を20年までに35%に倍増させるという。
風力発電地帯の北部から人口の多い南部への送電線をどう増設するか。電力料金の値上がりをどう抑えるのか。課題は山積している。
この国の強みは、脱原発への助走段階で実績をあげていることだ。電力の買い取り制度や送電線開放によって風力や太陽光発電の産業化を進め、新たな雇用と成長を生み出している。
フランスやチェコなど周辺国と電力を融通しあう仕組みがあるが、その割合はごくわずかにすぎない。政府はエネルギー源を他国に依存しない方針だ。
メルケル首相は「未来への巨大なチャンスだ」と国民を鼓舞している。今後、脱原発への離陸に成功すれば、ドイツは21世紀の新しい文明と生活のモデルを示すことができよう。
事情が大きく異なるとはいえ、ドイツの果敢な挑戦から日本は目を離してはなるまい。
社会全体で熟議が積み重ねられてきたドイツに比べて、日本では、原発は国策だからという理由で政界も学界も思考停止に陥っていた。その呪縛をまず断ち切ることから始めよう。
(転載ここまで)
●京都新聞
社説
ドイツの脱原発 理念掲げ負担増も覚悟
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20110609.html
2011年06月09日
ドイツ政府が2022年までに国内原発17基を全て停止する法案を閣議決定した。
メルケル政権は昨秋、20年代前半までの全原発停止というそれまでの政策を変更し、原発稼働期間の延長を決定したばかりだった。だが福島第1原発事故を受け、脱原発に再びかじを切った。
背景には、福島事故後の世論調査で国民の6割が早期の脱原発を望む結果が出たことや、政権維持への思惑もあるようだ。
だがそれ以上に、福島の事故が与えた衝撃が、安全に対する従来の考えを変えさせたことを首相自身が認めている。
ドイツの電力供給量は昨年末で原子力が約22%、再生可能エネルギーが約16%、残りを石炭などで賄っている。新たな戦略は原発を順次停止し、再生エネルギーの比率を20年には40%に高め脱原発を図る(レトゲン環境相)という。
大地震や津波の影響が考えにくいドイツで新たなリスク要因に挙げられたのは航空機の墜落だ。
国内原発の安全性を調べていた専門家の報告を受け、環境相は先月、稼働時期の古い原発のうち4基は小型機の墜落でも安全でないと述べた。偶発的な事故だけでなく、9・11米中枢同時テロのような事態や、戦争などの危険性も視野に入っていよう。
福島事故が諸外国に与えた衝撃は、日本国内の議論より多方面に及んでいることが感じ取れる。
一方、環境保護の立場からは、緑の党の存在が大きい。1980年の発足以来、活動を積み上げてきた。ガソリン代値上げを公約に選挙戦に打って出たこともある。料金が上がれば企業は省エネに、家庭は節約に努め、長い目で見れば環境にも、企業の競争力アップにも役立つとの理由だった。
当初、支持者は若者や女性が大半だったが、86年のチェルノブイリ原発事故が国民の危機意識を高めたことや地道な活動で、支持が広がった。先月には州レベルで初の首相も誕生した。
産業界は当初から緑の党に反対姿勢を貫き、今回の政策転換にも抵抗している。供給の安定性に欠ける自然エネルギーでは生産に支障が出るとか、欧州内でも高いエネルギー料金が、さらに上がり、国際競争力に響くと主張している。
産業界の主張に一理あることは確かだ。だがその主張に屈せず、リスクや負担を覚悟してでも環境や安全を守ろう、なすべきことをしよう、という明確な意思を政党が示し、それが国民の支持を広げているのがドイツの特徴だ。
こうした姿勢は、冷戦終結後のドイツ再統一に必要な巨額な財源を、連帯付加税で賄った姿勢にも通じよう。ドイツの選択に、日本が学ぶことは多いのではないか。
[京都新聞 2011年06月09日掲載]
(転載ここまで)
●沖縄タイムス
[ドイツ脱原発]日本に突きつけた挑戦
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-06-10_19021/
2011年6月10日 09時42分
ドイツ政府が「脱原発」を決めた。17基ある原子力発電所のうち8基はすでに閉鎖、残り9基を2022年までに閉鎖する。
福島の原発事故を受けた重い決断だ。世界が共有するエネルギー問題に大きな一石を投じた。波紋は欧州に広がりそうだ。
米国やフランスは原発重視の方針を堅持しているが、スイスは5月下旬に原発を34年までに廃止することを決めたほか、イタリアは今月中に原子力発電再開の是非を問う国民投票を実施する予定だ。ドイツの脱原発は欧州で原子力政策を見直す世論を拡大させるきっかけになりそうだ。
環境先進国のドイツは風力など自然エネルギー開発で世界をリードする取り組みを進めているとはいえ、全電力量を補うにはまだ十分でない。電源構成は原子力が23%、太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーが17%を占めている。20年までに後者を35%まで引き上げる計画だ。
風力発電は世界一の規模を誇り、最も有力視されているが、風力発電地帯の北部から人口が多い南部へ送電するシステムの整備には多額の投資が見込まれる。
また、電力が不足した場合は周辺諸国と融通しあうことにしており、結局原発大国フランスに依存した「脱原発」との批判もある。ドイツ政府は他国に依存しない電源開発を目指す方針だ。
課題は多いものの、ドイツの背中を押したのが福島原発事故だった事実は日本にとって重い問いかけだ。
ドイツは原発問題を長く議論してきた。
きっかけはチェルノブイリ原発事故だった。1998年に政権に就いたシュレーダー首相が脱原発を打ち出し、2000年に電力会社との間で段階的に脱原発を進めるとの合意をまとめた。
しかし、電力不足が予測されたため、メルケル首相は昨秋、原発延命を決めた。再生可能エネルギーの開発資金を確保するために原発を継続稼働させると説明した。
このためドイツでは原子力が「未来のエネルギー」ではなく、新たな電源を開発するまでの橋渡しとして認識され、すでに「消えゆくエネルギー」という国民合意が成立している。
福島の事故でその認識が再覚醒(かくせい)された。一貫して原発支持だったメルケル首相が方針転換せざるを得ないほど、日本の原発事故の衝撃は大きかったということだ。
ところで、沖縄の電力事情で原発は必要かどうか、沖縄電力に聞いてみると、原子力発電所1カ所で需要を満たし、余剰が生じるほどだという。すると火力発電所などを持つ意味がなくなるが、事故のときに外部電力がないと福島と同様に「ブラックアウト」(電源喪失)を引き起こす。
万が一の事故を考えると沖縄では新エネルギー開発を目指す方がより現実的な選択となる。
ドイツの決定を夢物語と斜に見るのは容易だ。でも背中を押したのが日本の事故であることを忘れてはならない。
(転載ここまで)
一つ、ドイツのエネルギー産業の動向を参考のために。
●東京新聞(TOKYO Web)
脱原発法の施行前に廃炉 独エーオンの2基
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011061001000069.html
2011年6月10日 05時40分
【ベルリン共同】ドイツのエネルギー大手エーオンは9日、福島原発事故を受けてドイツ政府が3月中旬から安全検査のため3カ月間の暫定停止を命じていた原発2基について、再稼働させず廃炉にすると発表した。
政府が6日に閣議決定した脱原発の関連法はまだ施行されていないが、同社は「明確な政治的意志が既に示された」として、政府の即時廃炉方針に従うことにした。
政府計画では、エーオンの2基は旧式のため原則としてそのまま閉鎖する対象。ただ、法案が上下院を通過し施行されるのは、早くても7月中旬。一方で、暫定停止期間は近く終了するため、少なくとも1カ月間は再稼働が可能だった。
エーオンは、暫定停止で約2億5千万ユーロ(約290億円)の損失を被ったとして、政府のエネルギー政策の急転換に反発していた。
(転載ここまで)
『「明確な政治的意志が既に示された」として、政府の即時廃炉方針に従う』、企業として良い姿勢ではないでしょうか。
こう見てくると、キーワードは、ドイツが「挑戦」と「意思」、日本は「思考停止」だということがわかります。
さらに一つ補足すると、ドイツでは自然エネルギーは原発に比べて高くつくだろうということに反論を加えているのが金子勝先生のツイート。
●Twitter - @masaru_kaneko
http://twitter.com/#!/masaru_kaneko/status/78517406187790336
独政府が5月30日に発表した報告書によれば、早い脱原発計画が停電も仏等からの原発輸入も起こさず、新しい石炭火力発電所も建設せず、電気代の増加は0.006〜0.008ユーロ/kWhにすぎません。この英文記事から独政府の報告書をダウンロードできます。 http://p.tl/CAIz
9 June
http://twitter.com/#!/masaru_kaneko/status/78515706425126912
相変わらず、EUの隣国同士で輸出入がある送電網の断面だけ切り取って、独の脱原発は仏の原発からの電力輸入依存とか。税で対策費・開発費を負わせ、安全投資軽視、核廃棄物や廃炉コストを含まないで、原発コストが安い。といったトリックキャンペーンが原子力村応援団から発信され続けていますね。
9 June
(転載ここまで)
ドイツ政府の報告書は一度目を通したいです。紹介記事がこちら。
●Wind-works.org
"We Can Do It" Says German Environment Agency on Nuclear Phase Out
http://www.wind-works.org/FeedLaws/Germany/WeCanDoItSaysGermanEnvironmentAgencyonNuclearPhaseOut.html
June 7, 2011; vers. 02
報告書原文はこちら。
http://www.umweltdaten.de/publikationen/fpdf-l/4117.pdf
まとめると、失敗から学び、意志の力で自己改革に挑戦する国は成長し、失敗の言い訳ばかり考えて同じ失敗にとどまり続ける思考停止の国は衰退する、ということです。前者の代表はドイツ。後者の代表は日本。私にはそう見えます。日本人と日本の産業界は、自己改革をしないと本当にまずいですよ。
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