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14日に開催された参議院東日本大震災復興特別委員会での質疑に関する第2弾である。
前回は自民党山田参議院議員の賠償金支払いをめぐる質疑に関連したものだったが、共産党の山下参議院議員も賠償金の支払い問題を取り上げた。
昨日のテレビ朝日「ワイドスクランブル」が取り扱っていたが、先週末自殺した酪農家は、それまで搾乳してはその乳を廃棄していた乳牛36頭を既に売却していたそうだ。
自殺した場所は最近建てたという堆肥小屋で、その板壁には建築費用を生命保険金で大工さんに支払うようにと書いてあった。
自民党山田参議院議員の質疑を聞いている間は、東電は「ひでぇー」という感想だったが、共産党山下参議院議員の質疑を聞いているうちに、「ひでぇー、とんでもない政府だ!」という思いが強くなった。
まずは、「ひでぇー、とんでもない政府だ!」という箇所を紹介する。
■ 東電ではなく政府自身が東電の代理人であるかのように賠償金額を抑え込み
今回のような事故の賠償については、東電という大企業とそれほど力や法的知識もない個人や中小零細事業者のあいだの話になるので、間に立つ政府がどのような対応をするかで多くの人が被った被害がきちんと賠償されるかどうかが決まることになってします。
それなのに、菅政権の大臣は、国会という場でありながら平気で東電の代弁者であるかのような発言をした。
流れは後述のものを参照して欲しいが、海江田経産大臣は、山下議員の「賠償紛争審査会の指針を理由に支払いを拒否したり遅らせたりする必要はないのでは」という質問に対し、「被害を与えた方々に対し東電側がお支払いしようということであるならよろしいのですが、ただ、“それによって損害賠償の額が大きく膨らむ”ということがございます」と、東電が負担する賠償額を抑え込みたい意向を明確に示した。
山下議員は、九州の旅館が原発事故のために中国人の来日が減って収入が大きく落ち込んだことへの賠償問題を質問したわけではなく、周辺県の農業者・漁業者に対する損害賠償の迅速なる仮払いを求める質問をしただけなのにである。
(九州の旅館が原発事故のために中国人の来日が減って経営が苦しくなったことも、“相応の因果関係がある”根拠だと思うので、東電は賠償の責があると考える)
東電に賠償をできるだけ負担させていこうとするのではなく、16%の電気料金のアップなどと気楽に電力需要者や納税者に転嫁する賠償スキームを法制化しようとしている政府ならでの答弁である。
よく言えば、電力需要者や納税者の負担を減らしたいということになるが、それはダマシであり本末転倒である。
被害にあった人々にまずきちんと賠償をするというのが最初(本旨)で、それを東電(株主及び役員・従業員)が自分の身を削りながら実行してゆき、それがどうしてもできないということになったら、融資を受けた相手に債権放棄を求め、最後に電力需要者や納税者に頭を下げるのが筋というものだ。
そのような方向性さえ追求せず、東電を現状の所有形態のまま金融債権者もまるまる保護するかたちで温存しようとしているのが菅政権なのだ。
■ 賠償金額の算定基礎を“逸失利益”に置くという驚くべき生活破壊の賠償指針
菅首相は、山下議員の質問に答えるかたちで恐ろしい事実を説明した。
「原子力災害賠償紛争審査会が策定した第1次指針は、“本事故がなければ得られたであろう売上高から本事故がなければ負担したであろう売上原価を控除した金額である逸失利益が損害として認められる”と理解している」
上述の海江田発言はそう思っているに違いないと考えていたから驚きはしないが、菅首相のこの説明には目が点になった。
“本事故がなければ得られたであろう売上高から本事故がなければ負担したであろう売上原価を控除した金額である逸失利益が損害として認められる”ということは、収入をすべて補償するのではなく、東電から仕入れたわけでもないものの諸経費を勝手に差し引いた金額を補償の限度にするということだ。
野菜をハウスで栽培して販売している農家を例に説明すると、種苗・肥料・農薬・燃料費・水・地代もしくは固定資産税・設備減価償却などで70万円かけて栽培した量の野菜をこれまで150万円で販売していたとしたら、今回の事故で受け取る賠償金は80万円になるということだ。
おいおい、である。
野菜を栽培するための諸々のものを東京電力から仕入れ、その代金は被害を与えたから支払わなくてもいいという状況ならそのような計算でも構わない。
しかし、肥料や種苗そして燃料を東電から買ったわけではないから、もうすでに支払っているかもしれないが、とにかく第3者に支払わなければならないものなのだ。
こんな賠償算定方式では帳尻がまったく合わない。
想定した例の農家がまだ費用の支払いをしていなければ、その農家は、賠償金として受け取った80万円のなかから70万円を仕入れ先に支払わなければならない。
ということは、残る金額はわずか10万円である。
東電から仕入れたものでもない費用があたかも東電から仕入れたかのように差し引いてしまう賠償算定方式は、“詐欺”や“ペテン”以外の何ものでもない。
まさに、政府が手を下す犯罪行為である。
しかも、菅政権はいつもながらの逃げ口上を使える態勢をつくっている。
学校線量のときも原子力安全委員会の名を使って決定責任を回避しようとしたが、この問題も、騒ぎが大きくなったら(なるわな)、「私どもが決めたわけではなく、原子力災害賠償審査会がまとめた指針であって、それにより迅速かつ公正な賠償が進められると考えていた」と説明するはずだ。
このような話になっているとは知らないまま、自民党山田議員の質疑に関する投稿で、「農家・水産業や中小企業への賠償金は、昨年度(か一昨年度)の収入(所得ではない)の1/12×0.9(月平均収入の9掛け)を一律の基準にして仮払いすべきだと考えている。
とりわけ、生産基盤から追われるように避難させられている福島の農業者に対しては、そのような一律の基準で賠償金を仮払いしなければいのちそのものがつなげない状況だと思う」と書いた。
新聞を丹念に読んでいるわけではないが、だいたい見ているNHKのニュースでも、見た限りの新聞報道でも、こんなとんでもない賠償指針が基準になっているとは見聞きしたことがなかった。
このような賠償指針がこれからも生き続けるのなら、よき日本は終わりを迎えることになると断言する。
このような賠償安定方式を聞くと、政府が3月20日頃から野菜をはじめとする食品の安全性を声高に叫び、野菜等を洗浄までして放射能レベルを下げたり、とにかく出荷制限解除を急いだわけがわかるというものだ。
あのときから既に、国民の健康なぞどうでもよく、とにかく東電が負担する賠償金額が少なくなるよう画策していたということだ。
猿回しの官僚が最悪とは言え、それに引き回されちんたら踊っている猿軍団=菅政権も腐り切っていると断言する。
政府がそういう姿勢だからこそ、静岡県のお茶業者をはじめ各地の放射能汚染被害業者が、東電に賠償を求めるのではなく、「とにかく安全だと言ってくれ」、「なんとか出荷できるようにしてくれ」と、あまりに哀しい姿をさらすハメになっているのだ。
山下参議院議員の質問や担当大臣の回答を流れに従って要約すると、
● いわき市漁協に所属する漁師たちは放射能汚染のために県と協議して漁を控えているため収入はゼロだが、3カ月間経っても東電から1円の賠償金も受け取っていない。そのため、貯金を取り崩しながら生活している。
● 漁業は、漁師・仲買人・製氷業者・燃油業者の4者が協力することで成り立つものなのだから、4者一体で賠償して欲しいと思っている。
(農林水産大臣)賠償審査会の第1次指針では、水産加工業や流通業は賠償の対象となっていない。今後は、対象になるように強く働きかけていきたい。
【コメント】税金問題まで非政治家に語らせる復興会議もそうだが、菅政権は、自己の責任を放棄してなんでも中立を装った組織に下駄を預けて知らん顔をする。今回は働きかけると言っているだけまだましだが..。
(東電社長)原賠法に則り政府のご支援もいただきながら賠償審査会の指針に従って賠償金の支払いを行いたい。第一次指針に基づき政府による指示で避難した地域にあった業者の営業損失についてのみ賠償をしていきたい。
[再びの質問に対し]賠償審査会の現在の指針に基づいて公正にやりたい。
● 5月末で福島・茨城・栃木・群馬・千葉の5県で合わせて153億円の損害賠償請求があり、5月18日までに請求された34億円に対し5億円が仮払いされた。なぜ、そんなに少ないのか?
(東電社長)賠償審査会の第1次指針に基づき、出荷制限指示等により生じた営業損失につきその1/2を仮払いしている。
● 東電が賠償に背を向けるのは、自らの責任で事故を起こしたのではないと考えているからではないか?原賠法3条1項の但し書きの巨大な天変地異に相当すると解釈もできると考えているのか?
(海江田大臣)免責の要望を出した相手は賠償審査会だが、政府としては免責にあたらないと最初から考えている。東電は、5月10日政府に対し原賠法第16条に基づく政府による必要な援助の枠組みを策定してほしいとの要請文書を提出している。
(東電社長)国内観測史上最大の地震とそれに伴う大津波の影響により起きた事故で免責に該当するとの解釈もあるえるとの考えもありますが、当社が事故の“当事者”であることを真摯に受け止め、早期の被害者救済という観点からも、政府の支援の枠組みに沿って迅速で公平な賠償に努めていきたい。
[再度の質問に]いわゆる賠償スキームに則って賠償を行っていく。
【コメント】共産党も、吉井さんがいるんだから、正義論的な攻めではなく、事故の責任がすべて東電にあることを事故原因などの説明で明らかにしなければならない。
東電が免責を主張するのは一向に構わないのである。そうでなければ、法の解釈や訴訟を無意味なものにしてしまう。
● 東電は口を開けば賠償審査会の指針に従ってと言うが、原子力災害賠償審査会は本来賠償をめぐる紛争が起きた時に和解を進めるところなのであり、賠償審査会がどういう指針を出そうとも、被害者が原発事故の被害だと根拠を示して請求するものには迅速に賠償していくのが当たり前だ。
(海江田経産大臣)賠償審査会は文科省の主管だが、賠償をめぐって払え払わないの紛争が起きたとき、そのジャッジをするところだと思っている。
● 賠償審査会の指針を理由に支払いを拒否したり遅らせたりする必要はない。東電が賠償に値すると思えば賠償金を支払うべきものだ。
(海江経産大臣)もちろん、被害を与えた方々に対し東電側がお支払いしようということであるならよろしいのですが、ただ、“それによって損害賠償の額が大きく膨らむ”ということがございます。それともう一つ大切なのはやはり、今回の事故と相応の因果関係がなければいけないわけですから、相応の因果関係があると証明できれば支払えばいい。審査会が第1次指針、第2次指針と出してきたが、これからも中間的とりまとめだとかあるいは第3次指針とかを逐一出していくことになるだろうから、政府もそれに注目していく。
【コメント】上述。
● 原賠法は被害者保護と法の目的が第1条に書いてある。請求が妥当なら東電は積極的に賠償しなければならない。東電がこれはちょっと過剰だなと考えるものは当事者間で話し合ってそれも決着がつかないとき賠償審査会に調停を求めればいい。
● 茨城県では、農業団体が、一人ひとりの農家が生産者段階廃棄処分報告書・販売先からの返品証明書・販売金額減少報告書・栽培履歴・出荷伝票などの証拠資料を付けてきたものを取りまとめるかたちで請求している。全額支払うのが当たり前なのに、34億円の請求に対し5億円しか支払われていないのは問題だ。3か月も経っているのにこれでは被害者は救われない。
(まったく生気がない菅首相がもごもごと) 基本的に、被害できちんと根拠のあるものは東電が最終的に責任をもつことは当然だと思っている。たとえば出荷制限に関わるものについては、10億円の請求額に対し仮払いを半分行い、残りの24億円は第2次指針を踏まえながら早急に対応すると聞いている。原子力災害賠償紛争審査会が策定した第1次指針は、“本事故がなければ得られたであろう売上高から本事故がなければ負担したであろう売上原価を控除した金額である逸失利益が損害として認められる”と理解しているので、それについてはきちんと支払わなければならないと思っている。
【コメント】おいおい、共産党の山下議員は何を聞いているのだ。実質的に賠償はほとんどしないと言っているのだぞ。
● 現場は待てない。審査会の指針を待たず因果関係が明らかなものは東電に支払わせるべきだ。第一義的責任は東電であるが、二次補正で政府が立て替え払いすることも含めて考慮したらどうですか?
(菅首相)必要な財源については二次補正を含めてできだけ早く対応したい。
【コメント】おいおい、共産党も東電温存派なのかい。東電は、100億円を超える日銭(月額4千億円近い)が入ってくる企業である。銀行への利払いだけで月々30億円もある。東電従業員の給与だって50%カットには至っていない。農林水産業者や中小零細事業者の賠償は、2次補正まで待つという悠長な話ではなく、東電に6月末までに支払いをさせるということを政府に求めなければならないだろうに。
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