http://www.asyura2.com/11/genpatu12/msg/834.html
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事故原因をいろいろ調べていくうちに、福島第一(1F)は、今回の事故を起こす前からとくに電気設備がガタダタで、いつ何どき何かをきっかけに重大事故を起こしていたとしてもなんら不思議ではない状況だったと考えるようになった。
1Fはつい最近も停電事故を起こし、1・2号機の中央制御室の照明が消え、1号機窒素供給装置を停め、モニタリングポスト(MP7・8)のデータ伝送や2号機タービン建屋トレンチ汚染水の移送作業が止まったりしている。
この停電は、4月11日のように原子炉への注水ができなくなることはなかったが、6月8日14:20から17:32まで3時間以上も続いた。
(3月12日の海水注入中断経緯はなぜか大問題になったが、電源喪失が破局的事故の大きな要因とされながら、4月11日の時点でさえきちんとしたバックアップ電源が用意されず余震の影響で1時間近くも原子炉への注水ができない事態に陥ったことのほうがより重大な問題である)
東電(読売新聞報道)によると、6月8日の停電は2号機タービン建屋内にある分電盤のブレーカーが落ちたことが原因としながらも落ちた原因という肝心な点は不明だという。
保安院も、6月9日の「地震被害情報(第164報)」冒頭ページで「パワーセンターの一部電源(2C)の供給停止を確認」と言うだけで根本的な原因を明らかにしていない。
さらに、中央制御室の照明は一瞬暗くなってもすぐに非常用電源が作動して明りや計器類への通電を回復するはずだがそれについては何も触れられていない。
また、停電になったとき、非常用電源が起動できたのかできなかったのか、それとも起動する必要がないと判断したのかなども説明されていない。
停電した事実は報道されているが、この停電に関するきっちりした説明資料はどこからも出ていない。
笑っちゃいけないが、電気設備の状況が事故原因の資料で独立してまとめられ公表されたことでわかるように、原発において受電設備や配電設備の故障は重大問題であり、3月18日から進められた外部電源の復旧過程で配電盤・分電盤を詳細に点検されたはずである。それなのに発生した今回の停電事故にはたまげるほかない。
当り前の感覚で言えば、壊れた原因や壊れ具合を確認した後は、ともかく新しい機器に交換するはずである。機器を交換してもそれほど日が経たないうちにまた故障するというのでは、どういう機器を使っているのかとさらに疑念が深まる。
ご記憶のかたもおられると思うが、このような電源設備の不具合は、1Fだけではなく2F(福島第二)でもあり、1号機タービン建屋で、配電盤か分電盤が原因とされる火災が3月30日と5月27日の2回も発生している。
このように、東電が稼働させている原発がガタガタの状況であることを踏まえながら本論に移る。
この間、福島第一原発事故の外部電源喪失関連のものをいくつか投稿してきたが、東電が5月16日以降発表している資料を読み進んでいくと、昨年6月17日に1F2号機で起きた(「所内電源切替不能」→外部電源喪失)とまったく同じ事故が、破局的事故へと進むことになった3月11日にも発生していたことがわかった。
今回も、3号機については、昨年の事故同様、地震も津波も関係なく、“唐突な” 「所内電源切り替え」に対応できなかったために起きた外部電源喪失事故の可能性がある。
“前科”があるとそのように疑われるものだが、東電が公表している資料にも、地震や津波ではなく、「原因不明」と記されている。
※ 「所内電源切替不能」が明記されている資料:記述は「所内切替失敗」となっている。
「東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電所プラントデータ集」
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/index10-j.html
4.運転日誌等の「3、4号機 当直長引継日誌」
P.17「当直引継日誌 別紙」の上から4行目。
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/plant-data/f1_4_Nisshi3_4.pdf
(同じ文書が、「東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電所運転記録及び事故記録の分析と影響評価について」
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110524a.pdf
のP.87にもある)
関連投稿でも書いたが、原発プラントは、自身が発電する所内電力と送電線で外から来る外部電力を常用電力として使い分けながら各設備機器に電力を供給している。
(常用電力の両方が途絶えたときに非常用発電機が起動する。それが非常用電力である)
「所内電源切替」は、原発の運転停止時に所内電源から外部電源へ、運転再開後の定格出力状態への復帰で外部電源から所内電源へというように切り替える操作である。
今回のように原子炉が停止したら、発電機を解列する(発電・送電から切り離す)前に、所内負荷の電源を所内変圧器(発電機から受電)から起動変圧器(外部電源から受電)に切替えるようになっている。
だから、「当直引継日誌 別紙」でも原子炉スクラム→主タービン停止という優先順位が高い段階で「所内切替失敗」が記述されている。
3月11日もスクラム後同様に操作したが、「所内電源切替」ができず、紹介した資料のすぐ下の欄に書かれているように、非常用ディーゼル発電機(D/G3A・3B)が起動している(させている)。
※ 地震で外部電源は受電できなかったことになっているが、それは、あくまで「所内電源切替」ができたあとの話である。
1F各号機の交流受電は多重化され号機間で融通もできるようになっていると言われながら、昨年6月17日に「所内電源切替」不能事故を起こした2号機は、他の号機から交流電源を融通してもらえず非常用発電機に頼ることになったのだから、アテにならない。
今回も、他の号機が外部電源を維持できていたとしても、3号機(おそらく4号機も)だけは、ディーゼル発電が津波でやられた後交流電源喪失に陥った可能性がある。
外部電源が維持できていれば、津波でディーゼル発電機が停まってしまおうが、配電盤など一部の電気設備が健全性を保っていればプラントの各機器に電力が供給できた。
このように重大な問題をはらんでいる「所内電源切替」不能事故なのに、今まで読んだ資料のなかにこの問題を説明した部分はなく、「当直引継日誌 別紙」のコピー以外はまったく無視されている。
さらに、同じ3号機の「当直引継日誌 別紙」の真ん中からやや下15:26の項に「STr3A下部 3か所確認 *漏洩箇所特定できず」という記述がある。
これは、外部電源を取り込むための3号機用起動変圧器の一つから何かが漏れ出していることを意味する。(この部分は当日工事中とされている)
東電は、3月11日に全電源喪失に陥ったことから、電気設備に関するけっこう分厚いレポートを出している。
※ 該当資料
「福島第一原子力発電所内外の電気設備の被害状況等に係る記録に関する報告を踏まえた対応について(指示)に対する報告について」5/23東電
http://www.nisa.meti.go.jp/earthquake/files/houkoku230523-2.pdf
「東北地方太平洋沖地震発生以降の当社福島第一原子力発電所内外の電気設備の被害状況、外部電源の復旧状況等に係る記録に関する報告書の経済産業省への提出について」5/16東電
http://www.tepco.co.jp/cc/press/11051605-j.html
このなかの説明で大きな不審を招く内容がある。
公表資料を読み込んでいくと、東電及び政府は、3月11日は何が何でも外部電源が喪失してしまうことにしたいようで、結局非常用ディーゼル発電機しか頼るものはなく、それが想定外の大津波で冠水してダメになったため今回のような深刻な事故になったと言いたくて仕方がないように思えるのだ。
● 常用高圧配電盤は損壊したのか健全なのか
常用高圧配電盤が津波後も健全だったのかどうかは、3月11日前にしかるべき対応策を実施していたとしても、地震は凌げても津波で結局外部電源はダメになったと言えるかどうかに関わっている。
別に、津波で損壊したからといって、地震や地震に無関係に電気設備の事故が起きてもいいというわけではない。そんな話では、今後の事故発生確率はぐんぐん上昇してしまう。
そういうことを前提に、1Fの常用高圧配電盤(所内電源及び外部電源用)と非常用高圧配電盤(ディーゼル発電機用)がどういう状況になったと説明しているのか確認してみたい。
東電資料「福島第一原子力発電所内外の電気設備の被害状況等に係る記録に関する報告を踏まえた対応について(指示)に対する報告について」のP.57「所内電源設備の挙動に基づく被害の分析について」で各号機の電気設備の被害状況がまとめられている。
このまとめは、3月15日といった事故直後にまとめられたものではなく、5月23日に公表されたものだから、外部電源の復旧過程を踏まえての分析に基づくものである。
この書き込みでは3号機が主たる対象だから、どこもほぼ同じ表現だが、3号機についてまとめられているP.59から引用する。(PDFファイルにプロテクトが掛けられていてコピペができないのが辛い)
「B 3号機について
ディーゼル発電機の電源は、非常用高圧配電盤で受電し、その下流側の電源盤として非常用パワーセンターが接続され、プラント内の各負荷へ給電されている。
地震発生後、外部電源の喪失によりディーゼル発電機(DG3A、3B)が起動し、非常用高圧配電盤(M/C 3C,3D)へ給電され、電圧が正常に復帰していることから、これら電気設備は地震後健全であったことが確認できる。
また、ディーゼル発電機の運転継続に必要な周辺設備の給電元となる非常用パワーセンター(P/C 3C、3D)についても、ディーゼル発電機の運転継続していることから地震後健全であったことが確認できる。
さらに、非常用パワーセンターの負荷として、中央操作室の制御盤に設置されている記録計のチャートに地震以降の記録が残されていることから、ディーゼル発電機から非常用パワーセンターまで地震後健全であったことが確認できる。
一方、津波到達後に全交流電源喪失が発生していることから、ディーゼル発電機(DG 3A、3B)、非常灯高圧配電盤(M/C 3C、3D)及び非常用パワーセンター(P/C 3C,3D)が津波により被害を受けたものと考える。
なお、常用高圧配電盤及び常用パワーセンターは、外部電源が喪失したことに伴いそれ以降の健全性が確認できないが、非常用高圧配電盤とほぼ同じエリアに設置されていることから、津波により被害を受けたものと推定する。」
読むとなんとなくそうかそうかと納得してしまいそうだが、前半はともかく、最後の二つの段落は、設備の健全性や被害を説明する論理にはなっていない。
まず、「一方、津波到達後に全交流電源喪失が発生していることから、ディーゼル発電機(DG 3A、3B)、非常用高圧配電盤(M/C 3C、3D)及び非常用パワーセンター(P/C 3C,3D)が津波により被害を受けたものと考える」という説明である。
この説明のおかしさは、全部が被害を受けてダメにならなくとも、一か所でもダメになっていれば、外部電源をすでに喪失しているから全交流電源喪失に陥る。
全部が被害を受けた可能性もあれば、ディーゼル発電機だけがダメになった可能性もあるのだから、“全交流電源喪失が発生していること”を理由に電気設備すべてがダメになったとする論理は無茶苦茶だ。
少なくともディーゼル発電機は冠水したという報道がされているから、それだけで、たとえ非常用高圧配電盤や非常用パワーセンターが健全であっても全交流電源喪失に陥ることになる。
さらに、「津波により被害を受けたものと考える」の“考える”って実におかしな表現だ。
すでに事故から2ヶ月以上過ぎた時点でまとめられた資料なのに、“津波で○○が損傷を受け動作できなくなっていた”という具体的な分析も証拠(倒れた鉄塔や壊れた遮断器は写真が出ている)も出されていないのだ。
続いて、この論理が常用系電気設備にも“援用”されている最後の段落を見てみよう。
なんと、常用高圧配電盤は、「非常用高圧配電盤とほぼ同じエリアに設置されていることから、津波により被害を受けたものと推定する」と説明しているのだ。
ええっ、“推定”って、外部電源を復旧させるとき、電気設備をくまなく点検したのではなかったのかい、とりわけ外部電源用の常用高圧配電盤は、とツッコミを入れたくなる。
さらに、そのように推定した根拠が、「非常用高圧配電盤とほぼ同じエリアに設置されている」ときたら、もう許せない。
「非常用高圧配電盤とほぼ同じようにタービン建屋地下の床に設置されている」というのではあればまだしも、資料のような説明では少しは理解しようという気力さえ萎える。
しかも、配電盤やパワーセンターがどこに設置されているかさえ述べず、電気設備の点検も終わったあとなのに、ただ、津波のあと全交流電源喪失になったのだから、電気設備の何から何までが津波でオシャカになったんですという話で誰が納得できるだろう。
そして、このような戯けた説明を読まされると、昨年6月の「外部電源喪失」事故と同じように、電気設備のイイカゲンさが今回も外部電源喪失につながったということを隠蔽するために、あれこれイイカゲンな説明をしているのではとの疑いを抱かざるをえなくなる。
● 6号機ディーゼル発電機が空冷であることはともかく稼働を維持し続けた理由
皆さんはご存じだったかどうか知らないが、私は、昨日はじめて5、6号機が持ちこたえて今は冷温停止状態になっている大きな要因を知った。
それまで、5、6号機の非常用ディーゼル発電機も、1から4号機と同じように、海側のタービン建屋地下に設置されていると思っていたのに、それは間違いで、原子炉建屋内に一つと、さらに山側の外にある建物?に一つ設置されていることを知ったからである。
今まで、概略図を何度も見てきたが、どれも6号機も海側にあるタービン建屋に非常用ディーゼル発電機が設置されているかのように書かれていた。
そのような配置にした理由は語られていないが、おそらく、津波対策なのであろう。
5、6号機は、敷地も1〜4号機に比べ高くなっているが、非常用ディーゼル発電機も海から遠く高さもある場所に設置していたのである。
そして、ご存知のように、ディーゼル発電機の一つは、冷却用の海水が汲みあげられなくても運転が続けられるよう空冷になっている。
まあ、いちばん新しく建設した6号機にはそこまでの津波対策をしていながら、より低い敷地に建つ旧来の施設はカネを惜しんでそのまま海側タービン建屋地下に置いたままだったということをあまり知られなかったのだろう。
とにかく、事故原因さえきちんと説明しない政府・東電(電力会社)に、停止中の原発を再稼働させる許可を与えるわけにはいかない。
※ 参考資料
「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書 −東京電力福島原子力発電所の事故について−」のV.東北地方太平洋沖地震とそれによる津波の被害のP.37に1F全体の津波到達状況と配置図がある。
http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2011/pdf/03-jishin-tsunami.pdf
※ 昨年6月に起きた1F2号機の「外部電源喪失」事故に関するある技術者の分析やコメントが写真付きで大変役に立つので紹介します。(反原発のひとではありません)
Plein Conte:だから言ったじゃないの
http://sasayanpcy.cocolog-nifty.com/plein_conte/2010/07/post-0df9.html
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