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2011/06/15 1965号 (転送紹介歓迎)
[JCJふらっしゅ]
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◎◎◎◎Y・記・者・の・「・ニ・ュ・ー・ス・の・検・証・」◎◎◎◎
□■イタリア国民投票の結果と、日本の原発依存、日本政治の貧困
イタリアで、原子力発電再開の是非を問う国民投票。投票率は54.79%。
13日に即日開票され、結果は「原発凍結」94.05%、「凍結反対」5.95
%だった。
ベルルスコーニ首相は原発再開を模索していた。しかしこの投票結果をうけて13
日夜、「政府と議会は結果を歓迎する義務がある。高い投票率は、自分たちの未来に
関する決断に参加したいというイタリア国民の意思の表れで、無視できない」(朝日
新聞)との声明を発表した。「国民投票は複雑な問題を扱うには適さないと信じては
いるが、それでも国民の意思は明らかになった」(同として、原発の新設や再稼働を
当面断念する意向を表明した。
佐賀県の古川康知事は「当然の結果」(時事通信)と受け止めた。九州電力玄海原
発の2、3号機再稼働問題を抱える同県。古川知事は「福島第1原発事故があったの
に、賛成という結果が出る方が驚く」(同)と語り、「一度廃止された原発を再開す
るというのはゼロのものを増やすということと同じだ。それはどこであれあり得な
い」と指摘している。
だが、玄海町の岸本秀雄町長は、月内にも九電側に再稼働了承を伝える意向だ。
「イタリアはフランスから電力をもらっている。切迫性は日本とは比べものになら
ない」とし「玄海原発は東日本の電力供給もしなくてはならない」(岸本町長、時事
通信)と語っている。
EU内のフランスを軸とした原子力発電と、フランスと電力を売買しつつ、脱原発
へと舵を切っていくドイツ、イタリア、スイス──。こうした国々がフランスの原発
に「依存」していると強調するかのような報道が、NHKを中心にときどき関連情報
として挟み込まれているようだが、NHKは、もう少し正確に、EU内部の電力の売
買の事態を調査・把握できるように報道すべきだ。
単純に、ドイツもイタリアもフランスの原発に依存していると受け取られるような
紋切り型の報道や解説、その証拠に日本の電力構成とEUの電力構成が似ているなど
とやってみせる姿勢は、EUの成り立ちをそのものを知らないか曲解させるものであ
り、そのまま原発の維持・推進イデオロギーに堕しかねないもので、地震・津波・火
山国である日本の今後の電力エネルギー政策についての健全な議論を妨げるトーンを
依然、含めていることを自戒すべきだ。
なおイタリアの国民投票の結果を受けて、経済同友会の長谷川閑史代表幹事は14
日、「日本はイタリアのように隣国から電力を購入できない。国の政策として取るべ
き選択肢は限られている」(毎日新聞)と述べている。消費電力の一定割合を原発に
依存している日本のエネルギー政策について、これを変更するのは困難との認識を示
した発言という。
また長谷川代表幹事は、定期検査で停止している全国の原発の現状と今後について、
「電力不足で(企業が)事業計画すら立てられない」(同)とし、「震災以降もベト
ナムやトルコが日本の原発を購入しようとしているのに、国内では運転を停止し再稼
働もしないというのは矛盾する。国が責任を持ち、再稼働させてほしい」(同)と注
文をつけている。
イタリアの国民投票の結果は、自民党の石原伸晃幹事長に「(基幹エネルギーは)
『こっちだ、あっちだ』と簡単に替えられるような問題ではない」(共同通信)との
言葉を吐かせ、さらには「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態に
なるのは心情的には分かる」と、「脱原発」の声の広がりがあたかも「集団ヒステリ
ー状態」であるかのような言い方さえさせるに至っている。
原子力発電装置の欠陥や未完成(核を人間の力で完全コントロールしようとする驕
りやそれが可能であるとする思い込みも含めて)のほか、そもそも原発の立地に適さ
ない日本の地理的・風土的諸条件を無視・軽視して「国策」として原発政策を進めて
きたのは自民党である。まして、小泉政権当時の弱肉強食・新自由主義・新国家主義
路線は、今回の福島第一原発事故の原発の事故対応能力の削減という「犯罪的」な行
為をしていた(→AERA3月27日)。
老朽原発の設備の耐震性の「実地テスト」を、日本で唯一行える施設であった財団
法人原子力試験工学センター(当時)の多度津工学試験所を05年、施設を引き継い
だ独立行政法人「原子力安全基盤機構(JNES)」が「効率化」と「維持費の削
減」のため試験所の<閉鎖を決定>、建物・敷地ごと、競争入札で今治造船に払い下
げた(=AERAによると<建設費310億円>に対し、<売却価格は2億7700
万円>。造船会社に振動台は使い道がないため、造船会社はすぐにスクラップ廃棄し
てしまった、という。
原子力発電についての自民党の責任を棚上げして、「原発問題はいつめどがつくの
か」「原発問題の民主党としての方針を出せない」とただ批判する石原伸晃・自民党
幹事長。今度は世界の「脱原発」のムーブメントを、集団ヒステリー呼ばわりする始
末だ。これでは、消費税の唐突な持ち出しで参院選大敗北、その後TPPをこれまた
唐突に持ち出して失速、大震災と原発事故をうけて後手後手の対応、情報は「安全安
心」を前面に打ち出して「ただちに影響はない」と繰り返す官房長官を輩出するなど
してきた菅首相と同レベルどころか、それ以下というほかないだろう。
情報によると石原伸晃の元秘書の杉並区議・大和田伸という人が、「反原発デモは
迷惑だから、今後はデモへの公園の貸し出しを規制すべき」(高円寺反原発デモ主催
メンバーの松本哉のブログより)と区議会でやったというのだから、自民党の相変わ
らずの体質にはほとほとあきれる。
そういえば、毎日新聞のコラム「発信箱:大政奉還のすすめ」は、次の会話から書
き始めている。
「日本はこの先どうなるんでしょう」
「どうにもならんでしょう。あと10年はこんな状態が続くと覚悟するしかない」
一昨年の政権交代について、<民主党は自民党の古い歴史をなぞるから、政権「後
退」になるだろう>と書いた筆者による記事だが、「ほらみろ」「だからいったじゃ
ないか」とは書かずに、<民主党には政治家がいないので、一からつくらなければな
らない道のりを思ったのだ>と振り返り、<政争はそのための貴重な修練の機会であ
る。それなのに、宇宙人が「ペテン師」とののしる茶番とは。彼らはやはり政治家に
なれなかった>と書いている。
そして、<新聞でこれからの首相候補たちの顔ぶれをながめる。断言するが、誰が
なっても2年と続く人は出ないに違いない>として、民主党の主たる面々の状況を記
し、<他は推して知るべし。自民党は言わずもがな。今の政界リーダーは、政治家に
不可欠な修練の機会をすでに逸した人たちでは、との疑いをぬぐえない。私たちはそ
ろそろ、もはや彼らが政治家になる日は来ないと思い定めるべきではないのか>と大
胆な提言をしている。
「もはや彼らが政治家になる日は来ない」──そうなのかもしれないな、と得心。
筆者は続けて、<それでは政治にならない? 震災後の国内を望見し、まつりごと
の要は民の鎮魂にあり、という先人の言を思う。「この際、大政奉還した方がい
い」。こう私がつぶやくと、なぜか皆、妙に得心する>と書いている。そして<これ
は反時代的な寓話だろうか>と結んでいるが、これは諦観のすすめだろうか、居直り
のすすめだろうか、それとも自覚の促しだろうか。
袋小路に陥ったいまの日本の政治家と政治状況を、そういう状態であると諦観(あ
きらめるのではなく、あきらかにみる)するところから、打開策を見出すほかない。
私は、この妙に説得力あるコラムをそう受け取ることにした。そして、「大政奉還」
については、かつて政権交代へと至っていくムーブメントの中で、現代の最高権力者
は国民であり、選挙民であるとして、現代の「大政奉還」とは総選挙を意味するとも
この「Y記者のニュースの検証」などで書いてきた。
だが、日本社会だけでなく世界のありように深刻な影響与えることになった「原発
事故」と大震災。エネルギー政策の見直しを明言した菅首相も、脱原発の姿勢を明確
に打ち出したわけではない。民主党も自民党も、「脱原発」とはいわず、「原発推進
容認」とも明言しないで、政争に明け暮れる。この大事なときに、脱力政治以外のな
にものでもないのである。
しかしながら私たちは、そうした政治家たちに引き込まれ、引きずられて、脱力し
ているわけにはいかない。そうした政治状況に私たちが「同調」してしまえば、日本
全体が脱力しかねない。そのときにその脱力のツケを背負うのは誰か。いま最もまと
もな政治を希求しているのはだれか。
ただ現状を明らかに見て、そこに留まれば日本社会は、大震災や原発事故や、それ
以前からかかえる幾多の深刻な危機は、何も変らないままずぶずぶと崩落していくだ
けだろう。脱力政治のツケをみんなが背負っている。そのことを忘れて前進はない。
民主党か自民党か、あいつかこいつかなどと目線を泳がせて、ふらふら事象や情報の
断片を追いかけまわすのではなく、「だめなものはだめ」とはっきり観つつ、ひと呼
吸入れて自らの立ち居地を踏みなおしたい。
私たちの社会の「これから」を着実に見出していくのも、見出していけるのも、私
たち一人ひとりであることだけは間違いないのだから。
イタリア国民投票、反原発が圧倒的多数(AFP)
http://www.afpbb.com/article/politics/2806268/7342307?utm_source=afpbb&utm_medium=topics&utm_campaign=txt_topics
原発凍結賛成は94% イタリア国民投票、開票終わる(朝日新聞15日)
http://www.asahi.com/international/update/0614/TKY201106140106.html
知事「当然の結果」=玄海原発再稼働で揺れる佐賀−イタリア国民投票(時事通信14日)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&rel=j7&k=2011061400371
長谷川・経済同友会代表幹事:日本の原発依存、変えるのは困難(毎日新聞15日)
http://mainichi.jp/select/biz/news/20110615ddm008020149000c.html
石原氏「反原発はヒステリー」 表現不適切と批判の可能性(共同通信14日)
http://www.47news.jp/CN/201106/CN2011061401000865.html
石原伸晃&大和田伸!!!!!!!!!!!(松本哉14日)
http://ameblo.jp/tsukiji14/entry-10923359139.html
売却され「スクラップ」に 世界最大級の原発の耐震テスト設備(AERA3・27)
http://www.aera-net.jp/summary/110327_002304.html
発信箱:大政奉還のすすめ=伊藤智永(毎日新聞14日)
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20110614k0000m070114000c.html
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