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原子力発電というエネルギーの進路(上)
2011-06-13 (月)
(中略)
3月11日に発生した東日本大震災。その被害は福島原子力発電所の事故にもつながった。事故は現在も続いており、この事故をきっかけに世界の原子力事業に大きな波紋が起こった。
原発事故といえば、チェルノブイリ原発事故やスリーマイル島原発事故が挙げられるが、今後は福島原発事故も加えられることになるだろう。そして、チェルノブイリ原発事故、スリーマイル島原発事故後に起こった、原発のリスク問題が、今、活発に議論されている。
今回の福島原発事故で、原発政策を止める方向になったのは、ドイツ、台湾、スイス、イタリア、オーストリア。
・ドイツは国内17基の原発を2022年までに廃止することを決め、今後は風力や太陽光発電など再生可能エネルギーを拡充
・台湾は稼働中の原発6基を18〜25年に順次廃炉
・スイスは稼働中の原発5基を19〜34年に廃炉
・イタリアは原発再開計画を無制限凍結
・オーストリアは新設計画の凍結
といった脱原発にカジを切った。
原発維持はフランス(既存原発数58基)、米国(同104基)、ロシア(同32基)、中国(同13基)、韓国(同21基)、英国(同19基)、ポーランド(同0基)、フィンランド(同4基)。インドネシアやマレーシア、フィリピン、ベトナム、タイ、シンガポールは再度、検討する方向。
原発政策の流れは各国で、それぞれ変わるとともに、今後の課題も出ている。
脱原発へとカジを切ったドイツ。現在、発電量の23%を原子力、17%を再生可能エネルギー、そして、残りの6割を石炭などの火力に頼っており、これまで必要な電力の2割強を原発で賄っていた。国内17基について、
1:福島の事故後に稼働を止めた旧式など8基は閉鎖するが、1基は13年まで再稼働を可能にする
2:6基を21年までに停止
3:新型3基は22年までに停止
の3段階で進める方針。そして、脱原発の具体策として、太陽光や風力などの自然エネルギーの大幅な増強やガス発電の強化などで対策を練っている。しかし、自然エネルギーの発電コストは火力や原子力などよりも高いことがネックとなっており、北部では海岸沿いに効率の高い風力発電所を多く設置しているが、南部では不十分で、北部と南部の送電網の確立もできていない。さらに、太陽光発電の問題としては、天候などの影響で発電量も不安定になるが、緯度の高い欧州は冬場に日照時間が減るため、太陽光発電の電力供給は特に不安定だ。
現実に自然エネルギーで対応できない場合はどうなるのか。その場合、隣国(フランスなど)から電力を受けるということになる。しかし、これにも問題がある。特に冬場は暖房などで電気使用量が増えるため、停電の恐れが高い。それは隣国も同じで、過剰な電力輸入は厳しくなるということだ。今後、電力料金の値上げも予想され、年間1世帯1万円ほど出費が増える試算がある。
ただ、自然エネルギーはデメリットばかりではない。洋上風力発電が注目されており、現在、北海で4カ所、バルト海で2カ所に発電所が稼働し、さらに計26カ所の建設が許可されている。許可済みの分が全て稼働すれば、発電量は原発の8〜10基分に相当するという。
スイスも脱原発にカジを切った。同国の原子力発電シェアは約4割で、脱原発に伴い、省エネ推進などで対応するとしている。
ただし、脱原発に立ったスイス。チェルノブイリ原発事故の後、1990年に国民投票で、原発新規建設の10年凍結を決めたが、同じ投票で「脱原発」提案は否決。そして、凍結期間が明けた2001年、政府は新エネルギー政策を発表し、03年に「新たな原発建設は国民投票にかける」という改正原子力法案を示して国民投票に臨み、「反原発」派の「凍結の10年再延長」や「原発5基の順次閉鎖」という両提案を否決。
そして、05年に改正法が発効し、原子力開発を再開。07年には「35年までのエネルギー需給見通し」を発表して、既存の原発を20年までに更新・拡充する計画に乗り出し、現在3基について手続きが進んでいた。
こんな背景もある。広島・長崎への原爆投下を見て、密かに核武装を決意。平和目的でウランを入手し、冷戦終結期まで43年間、秘密裏に開発を続け、核兵器保有寸前だった歴史も持つ。
原発反対、推進ともに「安全」がキーワードに
原発政策維持の方向の韓国ではどうだろうか。
国内に21基ある原発の安全対策措置を行うことを決定し、今後5年間で計1兆ウォン(約740億円)を投じ、移動型発電機を設置するなど非常用発電設備を強化する他、最新型の水素除去施設を備える。
さらに、14年までに各原発にある発電機に防水措置を施して排水ポンプを新設。津波を避けるため、車両に搭載する移動型発電機も原発ごとに1台ずつ設置するという。電気系統の故障で運転停止していた釜山市の古里原発1号機の再稼働は許可され、古里では防壁の高さを現在の1.7mから4.2mに改修する。ちなみに、3月下旬から緊急で実施していた全ての原発の安全点検は終了したという。
同じように原発政策維持の方針を取った国も、韓国のように原発の安全対策に力を入れることになっている。
東南アジアなどの原発政策はどうだろうか。こちらは揺れている。
インドネシアは電力不足に悩んでおり、100万キロワットの原発建設を計画していた。しかし、これまでも住民の反対運動で遅れており、そこに東日本大震災が発生したことから、地熱や水力、天然ガスなどの利用をまず優先するという方向に。再生可能エネルギーの中で特に力を入れているのが地熱発電で、計画は約40件にものぼるという。
マレーシアは21年の運転開始を目指し2基(200万キロワット)の整備を計画されており、フィリピンでも1984年建設の原発の早期商用運転開始を検討する動きがあったが、震災後に慎重論が台頭。
ベトナムは2020年に原発稼働を目指す計画だったが、事業化調査終了が遅れる見通しになった。風力発電所の建設促進へ、優遇金利での融資や土地使用料軽減、税制優遇など包括的な政策を検討する方針。
タイでは企業が再生可能エネルギーで発電した電気を通常より高値で買い取る仕組みを創設。投資減税など優遇措置も導入。
このように、東日本大震災は原発政策に大きな影響を与えたわけで、今後の原発政策がどう進むか、各国それぞれ大きな議論が沸き起こっている。脱原発にカジを切った国も、継続でも安全対策の強化という形で影響を与えた。
同じ事故を繰り返さないため、各国で対策が練られている。
つづく
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