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https://www.monex.co.jp/static/jpmorgan/2011/06/10/JMISC29546.pdf
原子力損害賠償法の50年
• 自民党の河野太郎氏のブログによると、6月2日、内閣不信任案が否決
された直後に開催された自民党のシャドウキャビネットで、自民党が議員
立法で提案しようとしている「平成23 年原子力事故による被害に係わる緊
急措置に関する法律案」が承認されたそうだ。菅首相の退陣時期につい
て、「言った」「言わない」という内輪もめが繰り広げられている間の出来事
だ。
• この法案は、原発事故に関する損害賠償を国が東電に代わって仮払いす
ることと、地方自治体が設ける原子力被害応急対策基金に国が補助するこ
とを認める内容になっている。具体的には、原発の被害者に対し、事故によ
る損害の概算額の「十分の五を下らない政令で定める額」を国が仮払金とし
て支払うこととし、国はその分を東電に求償する。
• 河野氏によると、この仕組みの「もう一つの目的」は、「国がこの仕組みで仮
払いをして東電に対する求償権を持つことにより、賠償が電力債よりも優先
的に弁済されることになる」ことだという。ご案内の通り、電力債は、一般担
保付き社債として、電気事業法37条で優先弁済されることになっている。
従って、電力債の弁済が行われ、資産が残らなければ、賠償は国民負担に
なる。自民党案は、こうした枠組みを事後的に覆すことになるわけだ。
• それにしても河野氏は5月11日付けのブログで、国民負担で東電を救済
しようとしていると政府案に反対していたが、その中では、電力債は優先弁
済されるので、「東電を破綻させると社債市場が崩壊して金融危機になると
いう話がまことしやかに永田町、霞ヶ関を駆け巡ったが、そうはならない」と
指摘していた。その意味では、1ヶ月前と比べて電力債に対する考え方が
変わってきたのかもしれない。
• ところで、河野太郎氏と言えば、戦後、自民党の実力者であった河野一郎
氏の孫である。この河野一郎氏と、ちょうど50年前に成立した原子力損害
賠償法には因縁がある。約50 年前、原子力発電所を導入する際に、日本
ではその運営を民間主体で行くか、国主体で行くかを巡って、九電力会社
と電源開発株式会社の間で、対立が激化していた。
• 原子力に政治生命を賭けその導入に尽力していた正力松太郎氏が、民間
主導を主張したのに対し、偶々、経済企画庁長官に就任した河野一郎氏は
国策会社である電源開発株式会社の側についた。ちょうどこの頃、正力氏
はなかなか原子炉の提供に応じてくれないアメリカではなく、イギリスの原子
炉を導入することに決めた。ただ、イギリスが事故時の「免責条項」を協定に
入れるように求めてきたことから雲行きが怪しくなる。
この「免責条項」に対応すべく準備されたのが、原子力損害賠償法である。イギ
リスが免責条項を要求する以上、「誰かが賠償責任を負わねばならない。その
誰かとは民間の事業主体の筈だが、民間企業では、たとえ保険を掛けたとして
も原子力発電所の事故が引き起こす甚大な被害を賠償できない。それが出来
るのは国しかない」(「原発・正力・CIA」有馬哲夫、新潮新書)。
もともと河野一郎氏が主張するように国が事業主体なら、こうした矛盾は発生し
ない。正力氏が民間に拘ったことから、矛盾が生じ、それは原子力損害賠償法
の次の条文に残されている。「政府は、原子力損害が生じた場合において、原
子力事業者が第三条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償
措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるとき
は、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助
を行なうものとする」。
要するに、保険を超える賠償は実質的に国が補償するということだ。正力・河野
論争は、「民間主体でありながら、国も管理責任を負うという二重構造」として現
在に至っている。今回の自民党案は、皮肉にも、国ではなく、まず民間に徹底
して賠償責任を負わせることになるようだ。50 年前に、河野一郎氏側が論争に
勝利していたなら、今回の事故に伴う損害賠償は、はじめから国民負担になっ
ていたことであろう。曖昧な決着になったことから、孫の河野太郎氏が民間の責
任を追及する側になっている。
なお、今回、このレポートを作成したのは、こうした因果な巡り合わせについて
書きたいからではなく、我々の目が内閣不信任案に集中するなかにあって、社
債市場に大きな影響を及ぼしかねない自民党の「平成23 年原子力事故による
被害に係わる緊急措置に関する法律案」が、国会に提出されようとしていること
をご報告するためである。
電力債を巡る新たな動き(2)
幻となった自民党案
• 6月6日付けレポート「電力債を巡る新たな動き」で、自民党の河野太郎
衆議院議員の6月4日付けのブログを紹介した。自民党が提出しようとし
ている「平成23年原子力事故による被害に係わる緊急措置に関する法
律案」の目的の一つが、「国がこの仕組みで仮払いをして東電に対する求
償権を持つことにより、賠償が電力債よりも優先的に弁済されることにな
る」という驚きの内容であったからだ。
• しかし、この法案にはやはり無理があったようだ。6月7日付けの同議員の
ブログで、同法案の一部修正が報告されていた。結局、「一般担保よりもこ
の法案による国の求償権を優先する規定は盛り込まれなかった」のだという。
自民党のシャドウキャビネットの議論では、「国がこの法案に基づいて行っ
た仮払いによる東電に対する求償権は、電力債よりも優先的に弁済されるこ
とになるとのことだったが、そうするためには特例の条項が必要となる。その
条文が現段階では法案に盛り込まれていないので、このままのかたちで提
出されれば、国の求償権より電力債の方が優先される」と。
• 内閣法制局との確認作業のなかで法案の不備が分かったようだ。図表1は、
東京電力債の利回りの推移だ。事後的に電力債の社債権者の優先弁済権
を否定する同法案は、東京電力債の利回り上昇の一因になった可能性もあ
る。それにしても、河野議員は5月11日付けのブログで、電力会社の社債
は、電気事業法37条で、優先弁済される。従って、東電を破綻させても、
社債市場が崩壊して金融危機に陥ることはないと指摘していただけに、今
回の法案には違和感があった。
なお、上述の同議員の5月11日付けのブログのタイトルは「政府与党案をぶ
っつぶせ」。彼なりの東電処理策の概要を披露するものであった。この処理策
は、経済産業省の古賀茂明氏の「東京電力の処理策」に似ている。古賀氏は、
東電処理策への私案を纏めて週刊エコノミスト誌に寄稿しようとしたらしいが、
「そんな売名行為は認められない」と経済産業省の上層部から止められたそう
だ。
以上の顛末は、同氏の新著「日本中枢の崩壊」(講談社)に詳しい。この幻の処
理策は、同書の巻末に収録されている。因みに、公務員改革で霞ヶ関の異端
児となりつつあった古賀氏と経済産業省との確執について、河野議員は、以前
から彼のブログで取り上げていたようだ。古賀氏と河野議員の直接的な関係に
ついての言及はないが、同書のなかに河野議員の名は何度か登場する。
この古賀氏は、電力会社の発送電分離の仕掛け人でもある。古賀氏がOECD
出向中に、「OECD が日本に勧告するという作戦」で、電力の規制改革を促そ
うとしたそうだ。彼は旧知の読売新聞の記者と連絡をとって、「OECD 規制改革
方針 電力の発電と送電は分離」(1997年1月4日)という記事にしてもらった
という。
この記事を検索してみた。こんな内容だ。「OECD が97年5月の閣僚理事会
に提出する規制制度改革に関する報告書の原案が3日、明らかになった。
OECD 加盟国が規制の緩和や撤廃などの規制改革を進める際のガイドライン
となるもの…報告書は、先進各国が規制緩和を進めて共通な競争ルールを作
る際の基準となるもので、日本の一層の規制緩和を求める国際的な要求が強
まるのは必至だ。…電力では、競争の促進と効率化のため、発電と送電を切り
離すよう求めている」。
なるほど、OECDやIMFの勧告には、こういう背景もあるのかと改めて確認で
きた。本日の日本経済新聞にも、「消費増税をIMF 推奨」という記事があるが、
こうした推奨に至った経緯についても知りたいものである。
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