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フクシマ後、国策の原子力を強力に押し進めるフランスの巨大原子力企業アレヴァからついに内部告発が出たようです。
内部告発者は、アレヴァ退職者、66歳のジスラン・ケテルさん。
燃料プールに原発100基分の燃料が保管されているラアーグ再処理工場の安全対策のずさんさを指摘しています。
ケテル氏は実は長年指摘をしてきましたが、アレヴァはこれを受け入れず、逆にケテル氏に圧力をかけ続けていました。彼の告発が公のメディアに流れたのは今回がはじめて。フランス国内の脱原発への動きに火をつけることになりそうです。
「フランスが語る『原子力の真実』」(前編)「フクシマ」後に再燃する「国策」原子力への恐怖」ル・ヌーベル・オブゼルヴァター(6月2日)
http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/62-dba6.html#more
雑誌「ル・ヌーベル・オブゼルヴァター」は6月1日〜8日号で、現EU議会(EUの国会に相等)の環境委員会・副委員長を務めるコリーン・ルパージュの新刊『原子力の真実』を紹介する特集記事を掲載しました。
ルパージュは環境分野を専門とする弁護士で、現在は環境保護を中心に活動するEU議員。1995年から1997年にはフランス・シラク政権の元で環境大臣を務めた。その間、1996年に国家原子力安全委員会から出されたCreys-Malvilleのスーパーフェニックス原子炉(当時は技術面その他の問題で停止中)を再稼働させる要求を却下。その後、同原子炉は廃炉の決定がなされている。
このブログでは、この記事でとりあげられているルパージュの論点を2回に分けて紹介します。
前編では福島での原発事故を踏まえた現時点での現状理解と、国策として守られて来たフランスの原子力セクターへの考察を取り上げます。
後編では、原子力発電による約4兆円もの負債を抱え、経営が危ぶまれるフランス電力公社(EDF)、今後膨大な核廃棄物の処理費用を負担することが見込まれる中、脱原発の流れの中で原子力発電所の建設にかかる発注を失いつつあるアレバ社、12兆円以上の廃炉費用が必要となることが見込まれているフランス原子力セクター、の財政破綻状況について読んで行きます。(以下は要約です。)
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1.原子力への恐怖、再び
福島で起きた悲惨な原発事故は、わが国フランスの立場を全面的に変えてしまった。なぜならこの悲惨な事故は、テクノロジーの発展した民主主義の国、リスクをとらず安全を重んじる文化が深く根付いた国、日本で起きた事故だからだ。
「フクシマ」がフランスにもたらしたのは、原子力への恐怖である。日本政府は福島原子力発電所から20キロ・30キロ圏に住む13万人の住民に対し、圏外への退去もしくは自宅退去を勧告した。30キロメートル?フランスにあるブジェイ原子力発電所とリヨン市(注:フランス第二の都市)の距離は、5 キロに満たない。
現実には、福島原発事故により放出された放射性セシウムは40キロを超える地域にまで汚染をもたらした。チェルノブイリ原発事故の際にベラルーシでセシウム137による汚染の被害を受けた子どもたちは皆、深刻な病に侵された。このことを鑑みると、日本政府は退避の対象地域を更に広げなければならないだろう。
しかしどこまで退避の範囲を広げれば良いのか?
そしてどう対処すればよいのか?
海も陸同様に汚染された。福島周辺で生産された農産物は通常の30から40倍もの放射能に汚染されているにもかかわらず、市場に並び売られている。食品に関する放射能汚染の許容量は、飲料水についての放射能汚染の許容量と同じく、福島原発事故の直後に、日本政府によって、すばやく見直しがなされたからだ。
2.「傲慢」という掟
2010年11月、東京電力は新潟工科大学に対し「わが国の原子力発電所における津波の影響評価に関する報告書」を発表、日本の原子力発電所は津波に対して完全な対策がなされていると報告した。この報告書では福島県における津波の高さが5.7メートルまでしか想定されておらず、これに従って福島原発への防御壁が設けられた。2006年、地震学者の石橋克彦は「日本の原子力発電所は地震の影響に対し脆弱すぎる」と日本政府および原子力分野の専門家に対して主張したが、政府や「専門家」に対して異論を述べる異端者として、その声はかき消された。
日本の原子力セクターでは、傲慢さが最後まで掟として貫かれた。これは、非常時の安全対策用発電機に問題があったにもかかわらず、2011年2月に福島第一原発第一号機の稼働を更に10年延長することを承認していた原子力安全・保安委員会の決定にも顕著に表れている。その後に何が起きたか、については私たち皆が知っていることだ。しかし、この悲劇を日本人や単なる一企業による失敗と結論づけるのは短絡的すぎる。これは原子力への国際的な制御、管理、規範に関するシステム全体に欠陥があった結果、起きた事故なのだ。
2.IAEAは我々を守ってくれるのか?
実は、国際原子力機関(IAEA)の唯一の本当の目的は、原子力の開発推進である。この目的は、他の国連機関、特に世界保健機構(WHO)が、 IAEAの承認なしには原子力による健康被害に関心を持ち、原子力が原因で起きる健康被害についての情報を自由に公表することができない、という重大な問題を引き起こしている(ところで、「国連環境プログラム」(注:環境問題に関する国連専門機関UNEP)は原子力の話をすることすらできない)。
これは、1959年5月28日にIAEAとWHOの間で締結された、想像を絶する内容の協定(WHA12-40)によっている。この協定は情報の自由を制限していることから多くのNGOから批判を浴びており、複数のNGOが「WHOをIAEAから解放するよう」請願書を提出している。
福島での事故で私たちが目撃したのは、WHOが原子力発電による大惨事に際してもこの協定によってその影響力を弱体化され、本来の責務を果たすことができないという事実である。WHOの存在理由は、少なくとも理論上は、一般の人々の健康について調査を行うことにあるにもかかわらず、である。
この協定の内容は、知っておく価値がある。WHA12-40協定の第3条にはこう書かれている。
「WHOとIAEAは互いが所有する特定の極秘文書について、相手機関がこれらを外部公開しないように措置を取ることを要求できる。」
沈黙を守らせるための方策である。しかし明らかにこれでも足りないらしく、第7条には更にこう書かれている。
「WHOとIAEAの両者は、それぞれが別々に統計データを収集しこれを発行する、といった無駄な二度手間作業を行わないこと。」(すなわち、WHOはIAEAから独立して独自の調査を行い、その結果の出版することを禁止されていることになる)
3. チェルノブイリの遺産
現実には、チェルノブイリの被害は終わっていない。そして、今後何世代にもわたって、私たちはその影響に悩まされ続けなければならない。現在200 万人の子どもたちが放射能による被害で起きた病気への治療を必要としている。しかし(被害者の数は今後も増え続けることが見込まれることから)、2016 年までは最終的な放射能による重病患者の数を確定することができない。
「(チェルノブイリ原発事故による放射能汚染で重病に罹った子どもたちの数は)決して減ることは無く、増えるばかりだ。」
と国連で人道問題局の局長を務めていたマーティン・グリフィスは、1995年に開かれたWHOの会合の席で既にこうした予言を行っていた。
これらの被曝による被害者達は、白血病、脊柱や肺への癌、膀胱癌、腎臓癌、甲状腺癌、乳癌といった放射線による病に苦しめられている。また、被曝によって通常より多くの人が亡くなっている。心臓や血管への疾患が発生するからだ。放射能に汚染されたある地域では、80%にものぼる子どもたちが心臓疾患、肝臓障害、腎臓病、甲状腺疾患、抗体への異常を抱えている。また、母親の子宮の中にいるうちに被曝を受けて生まれてきた子どもたちの中には、脳の発達停止、白内障、遺伝子の突然変異、先天性の奇形、神経系異常や水頭症などの疾患が発生している。
最も深刻な影響を被っているのは、今日、汚染地域に生活する子どもたちである。例えばチェルノブイリから30キロ以内に位置するイワコフ地区では、5600の子どもの中でチェルノブイリの放射能汚染による健康被害を受けていない子どもは40人しかいない。
4.フランスの「国策」としての原子力
フランスの原子力セクターが尋常な状態に無いことは、誰の目にも明らかだ。我が国では、「原子力」という選択が政府文書によって決定されたからである。1963年12月11日付けの原子力施設に関する政府決定63-1228番は、58の原子炉、ハーグにある放射性廃棄物の処理場、スーパーフェニックス原子炉、等々の建設を許可した。つまり国会は明らかな問題があったにもかかわらず、見て見ぬ振りをさせられていたのだ。その後10年のうちに、一般市民の権利によって原子力の特別な地位が脅かされないように全ての分野で確認が行われた。
政府文書の外部公開を求める法律の適用はどうか?
この法律は、2006年6月13日に国会で可決された別の法律により公文書の公開に関する特別の法令が定められたことから、意味をなさなくなった。秘密主義と防護主義の方針は原子力セクターについては特に広く適用された。2006年以前に見ることができた文書は、今日、もはや入手することができない。
(後編に続く)
Guillaume MALAURIE, « Après Fukushima...un Tchernobyl financier ? » Le Nouvel Observateur, 2 juin 2011 – N°2430
http://tempsreel.nouvelobs.com/actualite/planete/20110601.OBS4327 /nucleaire-francais-menace-d-un-tchernobyl-financier.html(仏語、要約のみ掲載)
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