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余録:ホットスポットの不安
http://mainichi.jp/select/opinion/yoroku/news/20110610k0000m070129000c.html
毎日新聞 2011年6月10日 2時32分(最終更新 6月10日 9時20分)
英語の俗語辞書を見ると「ホットスポット」は「窮地」や「やっかいごと」という意味で日常会話に使われるようだ。たとえば「ちょっと困ってるんだ」は<I am in a hotspot>という感じらしい▲「絶滅の恐れがある珍しい生物種が集中して生息している地域」という意味のホットスポットは、最近のNHKの野生生物のドキュメンタリー番組で知られるようになった。一方、国際政治では戦争や革命、流血の危機をはらむ紛争地域を指すホットスポットである▲「DNAの組み換えや突然変異の生じやすい部分」「海洋底のマグマの噴出口」「山火事の頻発する地帯」「ネットに無線接続できる所」などさまざまなホットスポットがあるが、ことやっかいという点で他に劣らないのは「異常に放射能汚染度の高い地域」だろう▲この言葉が耳目を集めるのは、原発事故では現場から遠くとも局所的に高い放射線量を示す場所があるのが知られるようになったからだ。チェルノブイリ原発事故で300キロも離れた場所の住民が強制移住となった例が引かれ、首都圏住民からも不安の声が聞こえる▲これに応え市町村や民間の団体で独自に放射線量計測に乗り出すところが増えている。また東京都は新宿区の都施設でのみ行っていた測定を都内全域100カ所で行い、結果を公表するという。ならば国がもっときめ細かなモニタリング体制を作れないものだろうか▲進行中の原発災害の下で暮らす住民ならば、当然知りたい身近なリスクである。そんな切実な関心や不安に応えようとしない政府への不信が、疑心暗鬼のホットスポットにならぬよう願う。
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