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特集ワイド:外国人特派員の見た原発事故 冷静な国民、迷走の国会 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/weathernews/archive/news/2011/06/07/20110607dde012040007000c.html
◇ニッポンの不思議次々と
◇肝心なこと語らない保安院、東電 会見は「官僚主義の弊害」
東日本大震災直後から世界を駆け巡る東京電力福島第1原発事故のニュース。日本に駐在する外国人特派員たちは、この事態を海外にどう伝えているのか。経済産業省原子力安全・保安院が定期的に開いている海外メディア向けの会見をのぞいてみた。【井田純】
原子力安全・保安院は週に数回、首相官邸や各省庁、東電などと共同で外国人記者向けの会見を催す。1日、会場のフォーリンプレスセンター(東京都千代田区)に出かけると、開始間近なのに記者席は無人。この日は菅直人内閣への不信任決議案提出当日。特派員も政局取材優先か……と考えていると、1人、2人と記者が姿を見せ、定刻に会見が始まった。
壇上には7人。内閣副広報官を筆頭に、保安院からは西山英彦審議官、さらに原子力安全委、水産庁、厚生労働省、外務省それぞれの担当官と通訳が1人という内訳だ。一方、出席した海外メディアは発表の終わり近くに来た2人も含めてわずか4人だった。
水産庁、厚労省の担当者からそれぞれ水産物と食品の放射能検査について、外務省からは直前にフランスで開かれた主要8カ国(G8)サミット関連の発表があった。直接英語で話す人と、日本語を通訳させる人が半々。記者の質問に答える際は、正確を期するためだろう、通訳を介したやり取りがほとんどだ。
「放射能を帯びた食品の科学的なデータを出してくれ」。アラブ首長国連邦(UAE)の記者から質問が飛ぶ。「お手元の資料にすべて公表してあります」。壇上の担当官から返されると、記者はなおもこう言いつのった。「ならば、どうして多くの国が日本からの輸入を禁止しているんだ」。戸惑うような表情を浮かべつつも、担当官は日本の安全基準の厳格さを強調する。
記者の質問自体、日本ではなくそれぞれの国の政府に聞くべきだろうと思ったが、臆せず単刀直入な質問を繰り返す姿勢には、日本の役所の「想定問答」を超えた反応を引き出す意図もうかがえた。
こんなやり取りもあった。
記者「貯蔵してある高レベルの放射能を帯びたがれきはどう処理するのか」
西山審議官「コンテナに詰めて一定の場所に集めてある。処理については、他の作業が軌道に乗ってから考える」
確かに難題であり、政府の状況を誠実に説明したのだろう。が、時期的なめどへの言及もなく、内容を明示しない「他の作業」を引き合いに出され、質問者ははぐらかされたと感じていたようだ。
かみ合わない質疑応答の鬱憤ゆえか、記者から当てこすりのような発言が飛ぶこともある。中国、韓国両首脳の被災地訪問直後の会見では、シンガポールのメディアから、原発事故対応について中国の技術的支援を仰ぐ考えはあるか、との質問が上がり、壇上の担当官が苦笑いを浮かべる一幕もあった。
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一時は「誰もいない記者席に向かっての発表」と揶揄(やゆ)された保安院の外国人記者向け会見。その「不人気」のワケを、この日の会見に姿を見せなかった米国人記者に聞いた。「理由は大きく三つある」と言う。
まず、ここ数年、東京の取材拠点を閉鎖する海外メディアが相次ぎ、特派員が減ったこと。メディア業界の経費削減に加え、「ジャパン・パッシング(日本素通り)と、経済成長を続ける中国に東アジア報道の重点を移す傾向がある」と指摘する。
さらに、大手海外メディアには日本人記者を抱える社が多く、首相官邸や保安院が開く通常の会見に記者を出していることもある。そして最後の一つは「肝心なことは決して話さない保安院、東電の会見に出ても無意味だから」。彼は語気を強めて言った。「ミスター・ニシヤマ(西山審議官)は極めて有能で誠実な官僚。同時に、日本の官僚主義の弊害の象徴そのものだ」
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では、震災そのものを取材し、会見にも出た特派員の目にはどう映っているのか。
「欧米なら東電のような会社は『はい、退場』さ。これまでの数々のトラブル隠しの歴史に加えて、今回の不手際。国民はもちろん政府だって絶対に擁護しない」。こう語るのは、デンマーク最大の発行部数を誇る高級紙ユランズ・ポステンのトーマス・デイビッドソン特派員。日本在住6年、東南アジアなどでの取材経験も豊富な記者だ。
08年の中国・四川大地震の際も現地入りしたデイビッドソンさんは、両国の違いが印象深い。「中国は上意下達が徹底していて、上が決めれば下は従う。日本のように一つの決定に30の会議を要する国とは違って、緊急時の対応は非常に効率的だった。まあ独裁体制だから当たり前だが」
デイビッドソンさんが驚いたのは、「地震の多い技術先進国の日本で、災害対応プランが存在しなかったこと」だという。原発のないデンマークでさえ、隣国スウェーデンの原発事故を想定した対応が細かく定められている、と話す。「市民がパニックになっても、政府は『戒厳令布告』で対応する。非常時には指導者が権限を強化して必要な措置を素早くとる必要があるからね。逆に言うと、日本人はこんなときでも冷静だから、そうした事態が想定されていないのかなと感じた」
やはり「なぜ日本人はあれほど冷静なのか」と、母国のキャスターから何度も聞かれたと話すのは、ドイツ公共ラジオARDのペーター・クヤート特派員。「私からは二つの解釈を伝えた。日ごろの訓練で災害への備えができていること。もう一つ、実は取り乱しているが表に出ないように抑制している、という見方だ。発生から日がたつにつれて、冷静とばかりも言えない面が見えてきたからね」
クヤートさんが言うのは国会の迷走ぶりのことだ。「東京に住んで3年、日本の政治もある程度わかってきたと感じていたが、またわからなくなった。緊急の課題が山のようにある時の内閣不信任案なんて党利追求そのもの。何を考えているのか理解できない」
両特派員とも「情報開示は不十分」と政府を批判する一方で、震災対応には一定の理解を見せる。デイビッドソンさんはこう報じた。
<菅首相に批判の矛先が向いているが、すべてを彼のせいにするのは不公正だ。問われているのは日本の政治構造そのものであり、政と官と原子力産業の密接すぎる関係こそがこの惨事に至るシステムを準備した>(4月4日付ユランズ・ポステン紙)
クヤートさんも言う。「鳩山さんや小沢さん、あるいは谷垣さんならもっとうまく対処できたと言えるのかな? 菅さんに問題がないとは言わないが、むしろ日本のシステムの問題じゃないか」
指導力不足の首相を退場させれば状況は好転する−−特派員の目には、必ずしもそうは映っていないようだ。
毎日新聞 2011年6月7日 東京夕刊
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