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http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110609-OYT1T01151.htm
東京電力福島第一原子力発電所の事故で深刻化した電力不足が、全国に拡大する事態は避けなければならない。
定期検査のために原子炉を一時停止した原発の運転再開が難しくなっている。
福島原発の事故をきっかけに、原発への「安全神話」が揺らぎ、運転再開を見送る動きが広がったためである。
さらに、菅首相が中部電力に対し、浜岡原発を全面停止するよう唐突に要請したことが、混乱に拍車をかけた。
原発を抱える14道県の知事は8日、浜岡原発だけが全面停止の対象になったことについて、安全基準などの判断根拠を、政府が責任を持って自治体に示し、国民にも説明するよう重ねて要請した。
実際に、関西電力の美浜原発1号機や九州電力の玄海原発2、3号機などは依然として、安全の確保を理由に運転再開を延期したままである。
懸念されるのは、稼働中の原発も次々に13か月ごとの定期検査に入るため、国内の原発54基すべてが、来夏までに停止に追い込まれかねないことだ。
全国の電力供給の3割を担う原発が止まれば、生産の減少や消費の冷え込みによって、震災で減速した景気が腰折れしかねない。
生産拠点の海外移転による産業空洞化も加速し、復興への足かせとなる。
政府は、電力不足を火力発電で補う場合、燃料費は年間3兆円も余計にかかると試算するが、短期間に代わりの発電施設を確保することへのハードルは高い。
震災を受けて、政府は新成長戦略の見直しに着手し、エネルギー戦略の柱に原子力の安全性向上を掲げた。その判断は妥当だ。
やはり、安全を確認したうえで、検査の終わった原発の運転を再開することが必要である。
政府は国際原子力機関(IAEA)に、原発の安全強化策を実施すると約束した。緊急に対処すべき措置と中長期的な課題を整理し、着実に対応すべきだ。
海江田経済産業相は、原発の地元の知事らに、運転再開への理解を求める考えを強調している。
当面、どのような安全策を講じれば原発の運転再開が可能となるか、きちんと説明責任を果たすことが再開への第一歩となる。
政府はエネルギー安定供給に向け、全力を挙げねばならない。
(2011年6月10日01時12分 読売新聞)
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