http://www.asyura2.com/11/genpatu12/msg/491.html
Tweet |
平成2年3月20日に仙台高裁で判決が出された「昭和59(行コ)9 福島第二原子力発電所原子炉設置許可処分取消請求控訴事件」を読むと日本という国家社会がどのように動いているか窺い知ることができる。
もちろん、判決は、原発設置許可の取り消しを求めた控訴人の負けである。
それはともかく、裁判所がどういう論理で控訴人の主張を退けたかを見てみたい。
この控訴審を裁いた3人の裁判官は、「結局のところ、原発をやめるわけにはいかないであろうから、研究を重ねて安全性を高めて原発を推進するほかないであろう」と行政官や評論家と変わらない理屈を開陳している。
そのような破廉恥な論理の前提になっているのが次のような“お話”である。
【引用】
「最近の資料によれば、我が国の全発電量の約三割が原子力発電であり、あと、水力発電が約一割、火力発電が約六割である。原発をやめるとしたら、代替発電は何にするのか。水力発電は増加を望めないから、火力発電をふやすというか。
火力発電は石油、石炭などを燃焼させて発電するものであるが、これら化石燃料を燃焼させることよって、第一に、二酸化炭素を発生して地球温暖化問題を生じ、第二に、硫黄酸化物・窒素酸化物を発生して酸性雨問題を生じている。かように、火力発電は地球環境を汚染するので、原発は危険だが、火力発電は安全だ、とはいえない。」
【コメント】
今から20年以上前の判決だからやむを得ないとも言えるが、政府が推進していたわけでもなく国民の多くも商用発電に使うという意識は小さかったので、風力や太陽光など再生可能エネルギーによる発電についてはまったく触れられていない。
原発が全発電量の30%というのは、なにか“自然に”そうなったわけではなく、政策的にそうしただけの話である。
代替としての火力発電についても、判決の時期なら意図的だと思うが、液化天然ガスを使うガスタービン発電に頬かぶりして、重油や軽油、そして石炭を燃やす火力発電に関する論評を行っている。
また、原発に対しては、設計や製造など幅広い技術の改良で安全性を高められるような説明をしているのに、「二酸化炭素除去技術」や「硫黄酸化物・窒素酸化物除去技術」さらに「石炭液化技術」などの進展については全く触れず、それらが火力発電が脱がれることのできない“宿痾”のように語っている。
そして、原発に関しては、「これに対し、原子力発電は核分裂によって生ずるエネルギーによって発電するもので、燃焼を伴わないから、二酸化炭素や硫黄酸化物・窒素酸化物を発生させず、火力発電のように地球環境を汚染することはない。ただし、原子力発電は放射性廃棄物の処理、使用済核燃料の再処理という困難な問題を生じている。」と述べている。
この判決を書いた3人の裁判官が御存命なら、現在も続いている放射性物質の漏洩・飛散・堆積を見てなお、「原発はその基本設計において安全性が確保されている」とか「火力発電のように地球環境を汚染することはない」と書いたことを恥じることはないのかお聞きしたい。
なお、地球温暖化という観点から言えば、原発で生み出す総熱量の70%近くは海水を温めているのだから、二酸化炭素が増えて云々という迂回的話ではなく直接温暖化を進める発電手段である。
放射性廃棄物の処理や使用済核燃料の再処理の問題は、政府や原発推進派も認めるところであり、それを最後に付加していることでは免罪にならない。
司法が、行政・電力会社と同じロジックでしか原発を見なかったということも、今回の未曾有の原発事故に間接的につながっていることを指摘しておく。
【判決引用】
五 この判決は、本件原発はその基本設計において安全性が確保されていると認められる、というものである。
原発は、その基本設計の後に詳細設計がなされ、その後に製造、建設がなされ、完成して運転がなされる。
判決は基本設計のみを対象として安全性があるというにすぎない。現実に建設され運転されている原発が安全性を有するかは別問題である。原発が安全であるというためには、安全性の認められる基本設計に厳密に従って、詳細設計がなされ、建設がなされ、運転がなされなければならない。したがって、各段階の関係者は最善の努力によって安全性を実現しなければならない。たとえば、破損してしまうような再循環ポンプを製造してはならず、又、チェルノブイル原発の運転員のような間違いを犯してはならない。
我が国は原子爆弾を落とされた唯一の国であるから、我が国民が、原子力と聞けば、猛烈な拒否反応を起こすのはもっともである。しかし、反対ばかりしていないで落ちついて考える必要がある。
最近の資料によれば、我が国の全発電量の約三割が原子力発電であり、あと、水力発電が約一割、火力発電が約六割である。原発をやめるとしたら、代替発電は何にするのか。水力発電は増加を望めないから、火力発電をふやすというか。
火力発電は石油、石炭などを燃焼させて発電するものであるが、これら化石燃料を燃焼させることよって、第一に、二酸化炭素を発生して地球温暖化問題を生じ、第二に、硫黄酸化物・窒素酸化物を発生して酸性雨問題を生じている。かように、火力発電は地球環境を汚染するので、原発は危険だが、火力発電は安全だ、とはいえない。
これに対し、原子力発電は核分裂によって生ずるエネルギーによって発電するもので、燃焼を伴わないから、二酸化炭素や硫黄酸化物・窒素酸化物を発生させず、火力発電のように地球環境を汚染することはない。ただし、原子力発電は放射性廃棄物の処理、使用済核燃料の再処理という困難な問題を生じている。
結局のところ、原発をやめるわけにはいかないであろうから、研究を重ねて安全性を高めて原発を推進するほかないであろう。
六 よって、控訴人らの本訴請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行訴法七条、民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 石川良雄 武田平次郎 木原幹郎)
【判決全文】
http://www.oft.co.jp/02-2/022/117h-2-320-599.html
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素12掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。