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福島第一原子力発電所の事故処理には、10年間で5兆7000億円から20兆円を要する――。5月31日に開かれた内閣府の原子力委員会で、民間の研究機関「日本経済研究センター」の岩田一政理事長がこうした試算結果を示した。
内訳は、原発から半径20km内の土地の買い上げ費用が4兆3000億円、住民への10年間の所得補償額が6300億円、原発の廃炉費用が7400億円から15兆円となっている。
同センターは、警戒区域で立ち入り禁止となった半径20km内の土地を、政府が最終的に買い上げなければならない可能性が高いと分析。当該市町村の公示地価を基に買い上げ費用をはじいた。
所得補償は半径20km内からの避難者に限定。福島県の平均給与から推計した。汚染された水や土壌の処理費のほか、20km圏外や福島県以外の農林水産業への被害は考慮していない。
“原子力埋蔵金”を捻出
不確定要素の多い廃炉費用は、米スリーマイル島原発と旧ソ連のチェルノブイリ原発の事故を参考に試算した。
原子炉から燃料棒を取り出して処理したスリーマイル島原発と同じ方法だと、廃炉費用は10年間で6兆円弱。燃料棒を取り出せず、原子炉をコンクリート製の「石棺」で覆ったチェルノブイリ原発の処理方法を採用すると、20兆円を要することになる。チェルノブイリ原発の事故処理には10年以上かかった。「試算で示した廃炉費用は、最低金額とみるのが妥当だ」(同センター)
これらの財源として、岩田理事長はまず、東京電力の利益剰余金や使用済み核燃料の再処理引当金など計3兆7000億円を充てるべきだと主張。そのうえで、年間4300億円ある国の原子力予算のうち、高速増殖炉の開発費などを凍結して毎年2000億円、10年間で計2兆円を捻出する。さらに、電力業界が将来の再処理費用として積み立てる予定の12兆円のうち、半額に当たる6兆円を充てる。
こうすれば、10年間で約12兆円の“原子力埋蔵金”を財源として確保できる。その結果、事故処理のために増税したり、電気料金を引き上げたりする必要は当面ないという。
政府が東日本大震災の被害額を16兆〜25兆円と発表したのは3月23日のこと。試算の対象としたのは、北海道と青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の7道県にある民間企業の設備や道路などの直接的な被害だ。原発事故による被害は含まれていなかった。
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