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「1221」福島第一原発の汚染水処理の機械を準備したグローバル原子力企業「アレヴァ社」の思惑。中田安彦・記 2011年5月28日
アルルの男・ヒロシです。今日は2011年5月28日です。
今日は、福島第一原発の事故の汚染水の処理装置を東京電力に納入することになったアレヴァ社とはどういう企業か、ということについて報告します。
以下は雑誌「ZAITEN」に掲載された内容に大幅に加筆したものです。
以下のTBSのニュース動画を見た上でお読みください。日本の原子力産業はこういったグローバル企業の下請けなのです。原子力の面でも日本は属国に過ぎない。本社・宗主国の意向に振り回される存在だ。TBSの動画は期間が来たら自動的にTBSのユーチューブサイトからは消されるかもしれないので早めにご視聴ください。
グローバル企業名鑑 第14回
「原子力ルネッサンスに踊り狂うフランス原子力企業アレヴァとその競争相手たち」
副島国家戦略研究所 中田安彦(4月16日記、5月27日加筆)
アンヌ・ローベルジョンと海江田万里経済産業大臣(今年3月末)
3月11日に東北地方で起こった巨大地震と福島第一原発の大事故は、ここ数年の「原子力ルネッサンス狂騒曲」を終焉させるのか。英FT紙はコラムで「原子力の春がくると思っていたら冬がやってきた」と論じた。緊張が続く中の3月31日、フランスのニコラ・サルコジ大統領が来日。それと前後してフランスを代表する原子力総合企業のアレヴァの女性CEO、アンヌ・ローヴェルジョンも来日した。雑誌『フォーブス』では「アトミック・アンヌ」と呼ばれる彼女は、GE(ジェネラル・エレクトリック)のジェフリー・イメルト会長兼CEOと並んで、間違いなく世界の原子力業界のキーパーソンのひとりだ。同時に三極委員会やビルダーバーグ会議のメンバーであり、世界の財界の黒幕たちと気脈を通じる。
アンヌ・ローベルジョン(アレヴァCEO)
業界の関心は原子炉の"高齢化”だ。すでに世界の原発はその8割が運転開始から20年を迎える。福島第一原発1号機は今年の3月26日で設計寿命の40年をすでに迎えた。1950年代後半に始まった商業炉による発電だが、60年代から現在にいたるまで沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)という「軽水炉」が第三世代まで開発・建設されている。ていた。日本は高齢化した他の原子炉を”安楽死”させるのか、それとも新型炉を建設しさらに原発を推進するかこれから議論されるだろう。一足早くドイツでは2020年までに国内の17基の原発を全廃する方向を打ち出した。
ただ、それは残念ながら世界の主流ではない。最も多くの原発(104基)が稼動している米国では、オバマ大統領の有力な資金援助者がイリノイ州に本拠を置く電力会社のエクセロン社ということもあり、政府による360億ドルもの融資保証を2012年予算に計上した。また中国も一時的に新規原発の審査を停止しているが、2020年までに1084万キロワットから7000万キロワットの発電量を原発で賄う方針は崩していない。
エクセロンにはオバマの側近であるデイヴィッド・アクセルロッド前首席顧問や、首席補佐官だったラウム・エマニュエルも関係が深い。オバマの友人であった左翼活動家の父がエクセロンの前身だったイリノイ州の電力会社のトップだったとき以来の深い関係だ。
オバマのお膝元、イリノイ州に本居を構えるエクセロン
その中国の新設原発の建設に関わっているのがフランスのアレヴァ社だ。同社は鉱山から燃料棒の再処理(MOX燃料の成型)までを手がける総合原子力企業であり、75%以上の発電を国内の58基の原発で賄う。同時に世界に原発技術を輸出することを狙いとしたフランスのエネルギー政策の中核にある「ナショナル・チャンピオン」というべき企業だ。今回はアレヴァ社を中心に、それと競合する原子炉メーカーの思惑を探ることにしたい。
【歴史】アレヴァ社は2001年にフランスの国営原子炉メーカーの フラマトム と核燃料メーカーの コジェマ を主体に設立された株式の7割以上を今も 仏原子力庁(CEA) が握る国有企業である。株式の4%ほどはパリのユーロネクストに上場しているが議決権はない。現在のローヴェルジョンCEOはコジェマの出身で、現会長のスピネッタはフランス航空元会長である。国有企業ゆえに経営諮問委員会(取締役会)にはCEAや政府の代表が多い。
福島第一原発の原子炉は沸騰水型(BWR)だが、アレヴァの原子炉は、最新型のEPRも含めて加圧水型(PWR)だ。これはフラマトムの創業に、PWR系の米国のウェスティングハウス(WH)が関わっていたことが関係している。なおフランスで沸騰水型を模索していたのは米GEからライセンスを買っていたフランスの国営通信企業(現・アルカテル)系のCGEだった。
フラマトムは正式には「フランス・米国原子力建設会社」といい、WHの他、ベルギーの富豪アンパン男爵や、フランスの電力機器会社シュネイデルが出資していた。ただ、フラマトム設立前からフランスではイギリスと組んでGCR炉(ガス炉)を開発する動きがあり、「国策」としては軽水炉よりもそちらが優先された時期があった。だから、フランス最初の原子炉メーカーが最初に原発を建設したのは、ベルギー国内(仏国境)であり、そこから電力をフランス国内に送電していた。
1969年にはフラマトムはベルギーで別の原子炉建設契約を獲得、仏軍はウラン濃縮技術も確立。その実績により、当初はWHのライセンスどおりに建設していた原子炉に改良を加える余裕が出てきた。オイルショック後にフランスではますます原発に頼る傾向になり、74年だけでフラマトムは仏国内で16基のPWR建設を決めた。76年には海外案件を受注するに至り、70年代初期には200人だった社員が81年には5000人までに膨れ上がった。79年の米国でのスリーマイル島事故以降、世界の原発建設はやや停滞したが、フランスは国策を堅持。82年にはWHのライセンスが切れたことで、フラマトムはWHをモデルに独自炉の開発を開始する。ただし、フラマトムは、この時期に政府による国有企業の再編の影響で前出のCGEの傘下に入った。政府が主要企業の合併を産業政策として促すのが「フランス株式会社」の特徴である。
【近年の動き】株主である政府の意向が強く働くのは実は現在も変わらない。つい最近もフランス国内では原子力産業の強化を目指し、サルコジ大統領主導での再編への動きが起きている。
3月末に来日したサルコジ大統領と菅直人首相
この再編機運の先鞭をつけたのは「ルスリー報告書」の作成だった。これはサルコジの委嘱で元EDF(フランス電力)会長のフランソワ・ルスリーが作成したレポートで、今後のフランスの原発政策はアレヴァではなくEDFが主体となるとしたものである。
背景には、アレヴァを主体とするフランス企業連合が2009年末にUAE(アラブ首長国連邦)への原発の売り込みで、韓国のKEPCO(韓国電力)を主体とする企業連合に敗れたこと、フランス国内とフィンランドで建設中の新型炉EPRの完成が大幅に遅れた上に予算も大幅にオーバーしたことがある。
国策とする原発輸出でフランスが勝ち続けるためには、単に経営者責任を問うだけではなく、業界全体の再編が必要だとみなされたのだ。同報告書に基づき、原子力政策審議会で、すでに提携が進んでいる三菱重工との合弁会社「ATEMA」にもEDFやGDFスエズを参加させることを決めている。
すでにアレヴァは保有していた送電網部門(アレヴァT&D)の株式の大半を仏国内の大手電力関連企業のシュネイデルとアルストムに売却している。しかし、これはサルコジに逆らって、GEやWHと提携しようとしたことになる。サルコジと組んで「アトミック・アンヌ」を足下にねじ伏せようとしているのは、EDF会長のアンリ・プログリオだ。アルストムのCEOであるパトリック・クロン、その社外取締役であるマルタン・ブイグ(建設会社ブイグ社の会長)といった主要財界人の思惑も複雑に絡んでいる。
ローヴェルジョンはもともと社会党のフランソワ・ミッテラン政権の高官であったが、サルコジに政府入りを求められたときは即座に断っている。日本の原発対応がなければこの6月で退任しただろうと言われていたほどだ。おそらく、左翼であったアンヌは、もとから保守であるサルコジとは馬が合わないのかもしれない。福島原発への対応で訪日した際に二人が記者会見で一緒に並ばなかったのは、それなりの理由がありそうだ。
ドイツでは、アレヴァはシーメンスともEPRの開発で合弁を組んでいた。ところが、これも去年シーメンスが突然、保有する合弁会社の持株を売却し、アレヴァと新興国で競合するロシアのロスアトム社と提携すると発表したことで10年の関係に終止符が打たれることになった。
ただ、シーメンスは福島原発の事故のあと、アンゲラ・メルケル首相が打ち出した「脱原子力」の再徹底の流れをうけ、ロスアトムとの提携も見直し、原子力分野から撤退する方針に転換したようだ。ドイツ国内の電力会社RWEはメルケルの方針転換に反発しているものの、原発事故の直後の3月末の地方選挙で「緑の党」がメルケルの与党の地盤を大きく崩したこともあり、この方針は変わらないだろう。
なお、シーメンスと競合するスイスのエンジニアリング会社のABB(アセア・ブラウン・ボベリ)はすでに99年に原子力ビジネスを英国の核燃料会社BNFLに売却し、送電部門だけを残し、スマートグリッド事業に乗り出している。日本のプルサーマル発電用のMOX燃料用の燃料防災処理もこのBNFLが製造を担当していたことがあった。
当然のようにアレヴァにも数社のMOX燃料用の再処理子会社がある。この5月にも北海道電力がその子会社のひとつからMOX燃料製造に向けた検査申請を経済産業省に行った。この処理の委託先がアレバの子会社である、メロックス社なのだ。この原発事故のさなかにアレヴァはせっせとプルサーマルの顧客を確保していた、ということになる。アレヴァにとっては今回の原発事故は、自社の誇る技術を世界にPRするための舞台となる。事故を起こした原子炉はアメリカのGE製だから、今回はGEの出番は、ガスタービンの提供くらいだと踏んでの営業活動でもある。
さて、BNFLは同年に買収したウェスティングハウスとABBを含めて手に入れた原子力部門を06年には日本の東芝に売却している。翌年にはGEと日立もグローバル提携を開始した。
その東芝だが、原子力の推進を主張する一方で、この5月になって、スマートグリッドに不可欠のIT式の電力メータを開発するスイスの「ランディス・ギア」社を買収すると発表した。ABBが原子力部門を売却して、送電網に比重を占めたように、ひょっとすると東芝は「送電・配電」部門で利益を補い、新規建設がの望めない「原子力の冬の時代」を乗り切る考えかもしれない。
東芝の佐々木則夫社長
また、最新型の原子炉の「AP1000」に安全上の問題点があると今週になって米国内で報道されたことも関係しており、原子炉依存からカジを切りつつある。しかし、それを東芝が許されたのは、先進国の原発見直し機運がグローバル・エリートの中で広まったからであろう。属国の企業は常に上からの決定に従うのである。
【新興国関連の動き】そのような仏国内の政争に近い再編騒動をよそに、アレヴァは新興国への原発の売り込みを加速させている。07年11月にはローヴェルジョン自ら中国を訪問、中国広東核電集団(CGNPG)の幹部と会談、新型のEPRを広東省台山に建設する他、燃料の再処理も請け負うという。中国ではこの他に、WHの新型炉AP1000やアレヴァの第二世代炉を土台とする中国独自のCPR、ロスアトムのVVER(ロシア型加圧式原子炉)などが競争している。
また、ロスアトム(セルゲイ・キリエンコ総裁)は、ロシア連邦原子力省が前身であり、核燃料や濃縮ウラン輸出部門、核兵器部門までグループ会社で手がけるが、輸出戦略の鍵を握るのはアトムストロイエクスポルト社(1988年設立)である。この株式の49.8%は国営ガス会社のガスプロムが6割強を保有するガスプロムバンクの保有である。ロシアが輸出した原発の中には欧米諸国との関係で核開発の隠れみのとの疑いも晴れないイランのブシェール原発も含まれる。ロスアトムはトルコやベトナムとも商談が進行中だ。
また、韓国はすでに述べたようにUAEで、仏(EDF・アレヴァ)、日米(GE、日立。エクセロン)の二者を破って受注を獲得している。韓国連合はKEPCO、斗山重工業、現代建設、サムスンの企業連合(コンソーシアム)だったが、その受注の鍵は価格の安さにあったと言われる。
それでも韓国はまだUAEに原発を売り込むつもりだ
ただ、この案件をめぐっては、当初公表された以外の「未公開契約条項」があったと韓国内のマスコミで暴露された。それによれば、受注金額の186億ドルの内、100億ドル(12兆ウォン)を償還期間28年で韓国政府が輸出入銀行を通じ貸し出すことになっていた。今年2月にこの"破格"の契約条項が明らかになって韓国のメディアや市民団体から調査を求める声が沸き起こった。それでも李明博大統領は福島原発事故から間もない3月14日、アブダビでの原発起工式に参加している。
【今後の展望】原子炉の廃炉が増加するにつれて、アレヴァは既存炉の廃炉ビジネスも拡大していくと言われる。EPRやAP1000はいわゆる「第三世代炉」だが、さらに新しい第4世代炉の開発もすでに始まっている。中国華能集団は清華大学が設計したヘリウムガスを冷却材とし、燃料棒ではなく小型の球体を燃料として使用する「高温・ガス冷却式反応炉」を山東省石島で着工の運びだ。他にも、最近になってトリウム原発がプルトニウムを発生させない切り札になるとも言われているが、おそらくこれは核兵器の処理に利用されるのだろう。トリウムは中国・モンゴルなどで採掘されるレアアースを含む鉱石に含まれているという報道もあった。
参考:NHKの「クローズアップ現代」(http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=2962)
また、ビルダーバーグ会議メンバーで、米国の富豪であるビル・ゲイツが出資するテラ・パワー社が推進する「劣化ウラン」を使用する新型炉TWRの他、ハイペリオン・パワー社のモジュール型炉、ロスアトムの海に浮かぶ小型浮体型原子炉のような冗談としか思えないものが実際に研究され、建設されようとしている。
次の一手を考えるビル・ゲイツ
天界から盗んだ火を人間に渡した神プロメテウスはゼウスの怒りに触れて山にはりつけにされたという。人類が前世紀半ばに「発見」した原子力発電という"業火(ごうか)”はまだまだ消えそうにない。(了)
【アレヴァ(Areva)・企業データ】
本社:フランス、パリ
設立年:2001年(前身の「フラマトム」は1958年)
拠点数:100カ国以上
従業員数:47,851人
決算:12月末
上場:ユーロネクスト(CEI:PAR)
経営陣:ジャン=シリル・スピネッタ(会長)、アンヌ・ローヴェルジョン(CEO)
主要部門:鉱山・フロントエンド/原子炉/バックエンド/再生可能エネルギー
<主な競合他社>:
(仏国内):EDF(フランス電力公社)、アルストム、シュネイデル、GDFスエズ
(海外):(原子炉)東芝=ウェスティングハウス(日・米)、GE日立(日・米)、ロスアトム(ロシア)/(鉱業)カメコ(カナダ)、カザトムプロム(カザフスタン)、ARMZ(ロシア)、リオ・ティント(豪州)
URL: http://www.areva.com
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