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2011-05-16
中部電力「余力わずか」のウソ
Posted by pigeon1914 0 trackback ■原子力発電をやめたら日本の電力は足りないのか?
答えはどちらかなのだから話は簡単なはずだ。なのに原発推進派の側からはいっこうに具体的な数字が出てこない。本当に原子力をやめると日本の電力が足りないのなら、原発推進派こそが「これだけ足りなくなる」という数字を出すべきではないだろうか。
いっぽう、原発を全廃すべきだという論者、たとえば京大原子炉実験所の小出裕章氏などは、原子力がなくても電力は足りているということを具体的な数値を挙げて示している。このブログに載せる最初の記事ではそのことを検証する予定だった。
しかし5月6日の菅首相の要請を受けて、中部電力が5月13,14日、実際に浜岡の全機停止を行なった。そのため予定を変更して、取り急ぎ浜岡のことを書くことにした。というのも、浜岡停止はもちろん筆者も評価しているが、そのことを口実に使った「原発は必要だキャンペーン」が始まっているからだ。
具体的には、
「中部電力を応援するには関西電力の電力も不足している、だから現在停止している福井の原発5機の再稼働を」
あるいは、
「中部電力からの応援がないと玄海原発2、3号機運転再開を延期している九州電力エリアの電力が足りない」
といったものだ。そこで予定を前倒しにして、中部電力・浜岡原子力発電所を停止したら本当に電力がギリギリになるのか? ということに限ってデータを検討することにした。
■中部電力の発電能力は実際にはいくら?
中部電力エリアの電力設備容量と最大電力の関係を、「電力業界共同データベース検索システム」のデータを使って、グラフに示したのが下の図になる。
一見して分かるように、最大電力のグラフはここ10年以上火力+水力の合計を上回ったことがなく、原子力発電を停止したとしても何の問題もないはずだ。
ところが新聞社の報道を見てみると、たとえば朝日新聞はこう報じている。
毎日新聞もよく似た記事だ。
「中でも、夏場の電力供給問題は深刻で、合計出力が約360万キロワットの浜岡原発の3基を全面停止すると、想定される夏のピーク時の最大消費電力(2560万キロワット)に対する供給余力は3%程度まで落ち込む。」
毎日新聞
原発が3機とも動いていれば2999万キロワット…? 上のグラフを見ると2009年度の発電設備容量は3500万キロワット近く(3494万キロワット)あり、原発を止めてもまだ250万キロワット程度の余裕があるはずなのに、なぜ中部電力は大幅に少なめな発表しているのだろう?
この2999万キロワットという数字の出どころは、電力会社が毎年3月までに経産省に報告する「電力供給計画」というものらしい。中部電力のサイトのここの下の方に、「添付資料1:平成23年度「電力供給計画」概要」というPDFファイルがあって、その中にこの数字がある(下図の(A))。
この2999万kWという数字には、原子力、火力、水力といったうちわけが一切書かれていないことに注意。
発電方法ごとのうちわけは上図の(B)の「電源設備構成」というところにある通りだが、こちらは合計が3500万キロワットある! 筆者の上のグラフと同じだ。いったいどちらが正しいのだ?
平成23年度の供給計画があるのだから平成22年や21年のぶんもあるはずと思って中部電力のプレスリリースを調べてみたが、削除してしまったのか同社のサイトで見ることができるのは平成23年ぶんだけだった。経産省(資源エネルギー庁)には電力会社ごとの数値の載っている資料があった(平成16年からの分だけだが)。しかし、いかにもコソコソと、なるべく注目を集めないようにやりとりされている印象を受ける。
もっとおかしなことがある。筆者は3.11以来、多くの電力統計を調べていたが、この浜岡の件を調べるまで「電力供給計画」などというものがあることを知らなかった。そして供給力が3500万キロワットではなく2999万キロワットであるという、こうした数字は、同社の株主説明会の資料にもないし、中部電力の「2010年度版アニュアルレポート」にもない。載っているのは誇らしげな3500万kWの方ばかりだ。上でとりあげた「電力業界共同データベース検索システム」にもそんな項目はない。経産省[編]の『エネルギー白書2010』にも載っていない。資源エネルギー庁監修の電力統計、電気事業便覧にも載っていない(全国合計のデータだけは目立たない後ろの方にその年のぶんだけひっそりと掲載されている)。だから、議論しようにも、その統計がほとんど見られないようになっているのだ!
経産省に提出したこれらの数字がそれほど重要なら、どうして自社のWebサイトに、毎年のぶんを堂々と載せないのだろう? あるいは「電気事業便覧」のような電力統計に堂々と載せないのだろう。なぜこそこそと隠すんだろう。予測値・計画値にすぎないというのは言い訳にならない。前年ぶんについては実績値も発表しているからだ。
■「電力供給計画」は役人向けの作文だ
とはいえ、たしかに真夏のピーク時に発電設備を100%使えるという保証はないのだから、「これだけは絶対に使えます」という最低限がこの数字なのだろう、と好意的に解釈することもできないわけではない。
だが、筆者はこの「電力供給計画」というものは、電力会社が経産省に提出するためだけに作った、ただの作文なのではないかと疑っている。
中部電力は菅首相の要請を受けて浜岡を停止するにあたって、下図のような修正した電力供給計画を発表した。
上の方で見たように、はじめ中部電力は、原発3機ぶんを含めて2999万キロワットの供給力があるとしていた。それが原発停止ぶんと、東電や九電などへの応援のため、供給力は2535万キロワットにまで低下するとしている(上図の「表1」)。
おや? おかしいんじゃないか?
毎日新聞の記事にあるように、原発3機ぶんを引いても77万キロワットの余裕があるんじゃなかったっけ? ならば東電などへの融通を75万キロワットとすると、それを引いても、2万キロワット余るんじゃないか? なのにこの表では25万キロワットの不足(▲)としている。わずか2万キロワットとはいえ「足りている」のと、「不足する」のとでは印象が大違いだ。
浜岡3機ぶんの電力は361.7万キロワットだ。(今年2月から浜岡5号機の出力が変更になっている)。つまり応援供給はいくらかというと、2999万−2535万−361.7万=102.3万キロワットとなる。この数字を覚えておいてほしい。
次に上の表の下の段を見てみると、「応援融通の停止分(75万kW+他)+武豊3号分を上乗せした」結果、2535万キロワットが2649万キロワットになったという。この「+他」というのがいくらか分からないので計算してみよう。武豊3号の出力は37.5万キロワットだ。つまり2535+75+他+37.5=2649だから、他=1.5万キロワット、となる。ということは、停止する応援融通ぶんというのは、75万+1.5万=76.5万キロワットだけという計算になる。
やっぱりおかしいんじゃないか? 上の表によれば応援融通は102.3万キロワットのはずだった。だから、ホントは応援融通をすべて中止したのなら2999万−原発361.7万+武豊3号37.5万=2674.8万キロワットとなって、予想最大電力である2560万キロワットに対して114.8万キロワット、つまり原発1基ぶんほども余裕があるはずなのだ。簡単な計算だ。応援融通を最初からなかったことにして、原発ぶんを引いて武豊火力3号ぶんを足せばいいだけなんだから。
それが上の表の下段では89万キロワットしか余裕がないと言っているのは、取りやめた76.5万キロワット以外に、102.3万−76.5万=25.8万キロワットほどの応援融通は行なう、ということなんじゃないだろうか。最大限好意的に解釈しても、そう考えないと上の表はつじつまが合わない。
でも、やっぱりおかしいんじゃないか? 新聞社の報道によると、「全面停止に伴い、東京電力や九州電力などに対して行っている電力の供給支援は打ち切る。」(読売)とはっきり書いてあるのだから。どうなってるんだろう?
とても細かい話をしてしまったが、中部電力の二つめの「供給計画」は、原発がないと電力が足らなくなるという印象を与えるために、非常に姑息な数字の操作をしていると考えざるをえない。
上の表では、原発停止と応援融通75万キロワットだけで、すでに不足が出るような印象操作したうえで、下の表では、応援融通を「すべて」打ち切って、新たに火力発電所まで立ち上げて、それでもようやく89万キロワットしか余裕がないような印象操作をしている。
実際はそうじゃなくて、応援融通は102.3万キロワット。そのうちキャンセルするのは76.5万キロワットだけで、残り25.8万キロワットはやっぱり外部に応援融通する、だから89万キロワットしか余裕がない。応援融通をすべて打ち切れば114.8万キロワットも余裕があるというのが本当のはず。一般人は細かい数字の検証なんかしないとでも思っているのだろうか?
こういうのを見ると、好き放題数字をいじって作文をしてるという印象を受ける。
■原発はアテにならないと中部電力も思っている?
「電力供給計画」がいい加減な作文だと考える根拠はまだある。
「電力供給計画」は毎年、電力会社から経産省に提出する文書だということは上に書いた。なのに電力会社が公開してるのはその年のぶんだけで、以前のものは削除されてしまっていることも書いた。だけど資源エネルギー庁のサイトでは過去のぶんも公開されている。その資料を使って、中部電力が過去どういう数値を書いて提出していたのか、実績はどうだったのか、それを浜岡原発の稼働状況と一緒に示したのが下のチャートだ。
原子炉の稼働状況については中部電力のプレスリリースから、電力供給計画と実績については経産省・資源エネルギー庁の文書からpigeon11914が作図した。
この図の見方を説明しておこう。黄色い帯は毎年の8月をあらわす。灰色の部分は定期点検中のため、赤はなんらかの予定外のトラブルのために原子炉が営業運転をしていなかった期間をあらわしている。
経産省に提出する計画では、最大電力は8月に発生すると仮定されている。だから最大供給力とは、8月に供給できる電力のことだ。その予定値と実績値を下の欄に示した。その上の欄は3月に計画を提出する時点で予測された8月の原発稼働数、カッコ内は実際に最大電力が発生した時に稼働していた原子炉数(実績)だ。
1号機、2号機は2004年以降実質的に稼働不可能とみなされて計画には含まれていなかったとみていいだろう。
さて、「電力供給計画」が実質のない形式的な作文だと言える理由はこうだ。
2004年には8月に稼働可能な原子炉が2機と予測できていて、その時の(8月の)予測供給力は2898万kW、ところが翌2005年は5号機がデビューする予定になっていて、予測稼働機数は3機に増えたのに予測供給力はかえって減っていて2854万kW。さらにその翌年2006年は予測稼働数は2機に減っているのに供給力はなぜか2890万kWに増えている。
このように見てゆくと、最大電力を迎える夏に稼働可能な原子炉が2機だろうが3機だろうが、おかまいなしに2900万kWから3000万kWあたりの数値を、徐々に増やして提出していることがわかる。ちなみに、2004年以降、原発の数も出力も変わっていないし、水力発電も変わっていない。火力発電所は2008年に153万kW増えているから、2008年以降の供給力がやや増加しているのはそのためかもしれないが、その時期にも、稼働可能な原発の機数が3,2,2,3と推移しているのに、供給力はそれとは無関係に、というよりもむしろ逆行するように2993,3011,3040,2999と推移している。
ようするに、原発1機ぶん+α程度の出力低下は余裕で火力でカバーできるし、実際にしてきた、ということだろう。原発は電気事業法によって、前の定期点検がすんで13ヶ月を超えない時に次の定期点検をしなくてはならないというきまりがあった。そのため、最大電力が発生する8月にだって止めて定期点検するばあいもあるし、それを避けるつもりでスケジュールを組んであっても、定期点検が長びけば予定がずれてしまうこともある。それ以外にも、じっさいに調べてみると浜岡原発は想像以上にトラブルを起こしており、まったくアテにならない発電所であることが分かった。よく指摘されるように2009年の8.11駿河湾地震の時には全機停止している。これでは中部電力としても浜岡はアテにできなかったのではないだろうか。全機停止しても大丈夫なように、火力のバックアップ体制を取って来たとみるのが妥当だろう。
あらかじめ原発が一機停止することが分かっていればその時は火力の体制を増強し、そうでない時には火力を休止させたり点検の時期に当てたり、ということはしているに違いない。しかし火力発電所のばあいは原発ほど厳密な定期点検の縛りがなく、また数が多いことはトラブルのリスクを分散できるだけでなく、定期点検の時期を分散することも可能だろう。
「電力供給計画」が単なる作文である根拠はまだある。そもそも、これらの数値のうちで、客観的に実測可能で動かせない数字は、「各年の最大電力」だけなのだ。供給力の方は予測だけでなく実績も含めて、実はチェックのしようがない。最大電力に不足しないようにさえなっていれば、それ以上にどれだけの余力があったかは、技術的にだけでなく論理的にも測定不可能なのだ。だから、電力会社が経産省に供給計画を提出する時に留意しているのは(1)予測される最大電力以上であること。(2)許認可を受けている発電設備の容量内に納まること。この2つの下限と上限の間に入ってさえいればいいのである。誰もそれ以上、その値が正しいかどうか、事前にも事後にもチェックしようがないのだから。そして、そういう場合に出してくる数値は「絶対にボロが出ない手堅い数値」であろうから、その数値でギリギリ足りているということは、実際にはものすごく余裕があるということになる。
■実際の発電設備の余裕は
以上見てきたように、「電力供給計画」で足りていると言う以上、それは実際にはかなりの余裕を持って足りていると見ていい。
では、冒頭にあげたグラフどおり、火力+水力の約3200万キロワットはフルに使えるとみていいのだろうか? 実際問題として最大電力に近い設備が必要になるのは真夏の昼間の数時間、それも数日だけであることが分かっている。このことについては近く別に稿を設けて検証する予定だが、あらかじめ最大電力になりそうな時期にすべての火力発電所を待機させておくことはべつに難しいことではないだろうから、中部電力エリアの火力発電所12ヶ所ぶん、2391万キロワットは大丈夫だろう。むしろ懸念があるとすれば水力である。水力発電所は渇水の時期には定格出力を出すことはできないからだ。ただし、中部電力はうちわけを公表していないが、水力発電所には一般水力と揚水水力があり、全国平均で見ると揚水式が55%となっている。揚水発電所は原則として渇水の影響を受けない。放水した水を下流の川に流してしまう一般水力と違い、下の池に落とした水は何度でもリサイクルして上の池に汲み上げることができるので、最初に十分な量の水さえ確保できていれば100%の出力を出せるのが揚水発電所の利点なのだ。だから、中部電力の水力のうち半分が揚水式だとすればそのぶんは100%アテにできることになる。残り半分の一般水力にしても、ゼロということはないだろう。フルパワーの半分程度見込めるとすれば、水力の合計の75%程度はピーク時の供給力としてアテにできるという計算になる。中部電力エリアの水力発電の容量は753万キロワットだから、その75%、約500万キロワットを見込むことができて、火力と合わせて2891万キロワットとなる。これは中部電力が経産省に提出している、原発込みの2900〜3000万キロワットに近い値であり、それだけあれば十分なはずだ。
中部電力の電力は足りている。だからそのために関西電力の止まっている原発を起動する必要などないのだ。
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