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※転載者註:文中に「原発」の文字は出てきませんが、目下の重大な関連性故に敢えてこちらに投稿します。
法と常識の狭間で考えよう by ビートニクス
http://beatniks.cocolog-nifty.com/cruising/2011/05/post-7a51.html
2011.05.29
コンピュータ監視法案が審議入りし成立の可能性が高まっている
「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(いわゆるコンピュータ監視法案)が、2011年5月25日に衆議院法務委員会で審議入りし、与党議員による質疑が行われ、同月27日には野党議員による質疑が行われた。
同月31日には参考人質疑が行われるとともに、総括的な質疑が行われた後、採決が行われる予定である。その後、衆議院本会議で可決されて参議院に送付され、その後、参議院法務委員会での審議がなされ、会期末までにはこの法案が成立する見込みである。
この法案は、サイバー犯罪条約を批准するために提案されているものであり、国会においては既に2004年4月21日にこの条約の批准を承認する旨の決議をしており、今回の法案成立後には速やかに批准されることになっている。
しかしながら、サイバー犯罪条約は、プライバシーや通信の秘密に対する重大な制約となる危険性が大きい内容であり、コンピュータに関する犯罪について、コンピュータやインターネットを使ってできることは何でもできるようにするという強大な権限を捜査機関に与えることを意図したものである。
日弁連や東京弁護士会は、それぞれ、2011年5月23日に、この法案について慎重審議を求める会長声明を発表した。
しかし、国会での審議は、「慎重」とは言い難く、予定調和の中、スケジュール闘争的に進んでおり、このままでは今通常国会の会期末までには確実に成立しそうな勢いで進んでいる。
今回の法案審議において、政府側では、サイバー犯罪条約15条の規定を根拠に、日本の国内法との関係で、サイバー犯罪条約の内容の全てを国内法化する必要はないと説明し、サイバー犯罪条約の国内法化については今回の法案で全て対応済みであり、今後の法改正は必要ではないとの説明を行っている。しかしながら、サイバー犯罪条約を批准した後にその態度を変えないという保障はないし、関係国からの捜査共助(相互援助)を受けることとの関係で、サイバー犯罪条約の内容をできるだけ多く国内法化することを求められる可能性がないとも言えない。
衆議院法務委員会での法案審議の中では、フリーソフトウェアに重大なバグがある場合に、ユーザーからバグがあるとの指摘を受けながら公開を続けたら不正指令電磁的記録提供罪が成立するとの答弁が江田法務大臣からなされた。
これまで利用者の責任で使うことを条件に、自由なソフトウェア開発と自由な流通を促進することでフリーソフトウェアが発展してきたという歴史的経緯を無視し、それを阻害するようなこの法案の問題点が浮き彫りになったといえよう(これについては高木浩光さんの指摘が大変に参考になる)。
また、サイバー犯罪条約20条が、通信記録(今回の法案の通信履歴と同じ意味である)のリアルタイム収集を実施するための国内法整備を締約国に求めている点について、江田法務大臣は、刑事訴訟法上の検証で対応できると答弁した。
しかしながら、検証では事後的に通信履歴を取得することができるとしても、「リアルタイム」で取得できる訳ではないから、明らかに無理な答弁をしている。それ以外にも、江田法務大臣が技術的なことを十分理解しない答弁も散見された。
江田法務大臣は、与野党議員との質疑の中で、何度も捜査機関の濫用があってはならないと口にしていたが、これは、それだけこの法案がそのような危険を内包し、その歯止めがないことを自認しているからと考えられるのであり、改めて、この法案の危険性が示された考えられる。
なお、衆議院法務委員会の審議の中では、自民党の平沢勝栄議員と稲田朋美議員の質疑において、共謀罪を新設することの必要性が指摘された点には注意が必要である。
特に稲田議員は、民主党が共謀罪を新設しなくても国連国際組織犯罪防止条約を批准できるという立場をとっていることを批判し、執拗に何度も江田法務大臣の答弁を求め続けていた。これは、自民党政権に戻ったら、必ず共謀罪の新設が俎上に昇ることが明らかとされたという点で忘れてはならない。
今回の質疑の中では、与党議員からこの法案に対する強い懸念が示されたのに対し、与党議員からはどちらかというこの法案に賛成し指示する姿勢が示された。ここでも、与野党がねじれた状態にあることが示された。ただ、与党議員は党議拘束により賛成せざるをえないから、結局、この法案は衆議院でも参議院でも可決されて成立することは確実と思われる。
特にインターネットの中では、今回の法案については、コンピュータ監視法として強い懸念が示されて反対の声も多い中、国会においては、その感覚とはずれて、共謀罪を作れという強硬論も含めて、反対の意思が具体化しないまま審議が進んでいる。国会の外では、そのもどかしさを感じつつ、最後まであきられることなく、法案に反対し続けたい。
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