12. 2011年5月29日 13:54:38: 7tEzOsp36c
ヨウ素131を10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.22ミリシーベルトになる。 http://cnic.jp/modules/radioactivity/index.php/11.htmlセシウム137を10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.13ミリシーベルトになる。 http://cnic.jp/modules/radioactivity/index.php/13.html いずれも「原子力資料情報室(CNIC)」より 日本の暫定基準値 飲み物 @ヨウ素131(乳児) : 100㏃/L Aヨウ素131(乳児以外) : 300㏃/L Bセシウム137(乳児) : 100㏃/L Cセシウム137(乳児以外): 200㏃/L 野菜 Dヨウ素131 :2,000㏃/L Eセシウム137 : 500㏃/L @〜Cを1L(リットル)を日本基準値上限まで1年間経口摂取した時の実効線量 @0.22ミリシーベルト×(100÷10,000)×365=0.803ミリシーベルト A0.22ミリシーベルト×(300÷10,000)×365=2.409ミリシーベルト B0.13ミリシーベルト×(100÷10,000)×365=0.4745ミリシーベルト C0.13ミリシーベルト×(200÷10,000)×365=0.949ミリシーベルト D〜Eを1日350gを日本基準値上限まで1年間経口摂取した時の実効線量 D0.22ミリシーベルト×(350÷1,000)×(2,000÷10,000)×365=5.621ミリシーベルト E0.22ミリシーベルト×(350÷1,000)×(500÷10,000)×365=1.40525ミリシーベルト この程度であれば、身体に与える影響はほとんどない。日本以外の基準が実態を反映しておらず、極端に抑えた数値を基準としているに過ぎない。 また、「事実、口にするものの暫定基準値以外にも年間に浴びてよい放射線の基準値20ミリシーベルトを、ノーベル賞を受賞した国際的な医師団体が高すぎる数値だと指摘、文部科学省に対し引き下げを要求している。」にも異論がある。 ⇒大量の放射線を一度に浴びたとき、どのようなことが起きるのだろうか。具体的な障害が発生する場合について、見ていくことにしたい。 ちなみに、ここで「具体的な障害が発生する」とか「大量の放射線を一度に浴びたとき」といったように、一見くどい書き方をしているのには理由がある。 普通の地球環境での自然放射線のような、ごく少ない線量では具体的な障害が現れない。つまり、放射線を浴びると必ず目に見える障害が現れる、というわけではない。一定量を超える放射線が当たらないと、ここでいう障害としては現れない。 具体的には、線量がごく少ない時には何の変化も見られない。変化が現れるのは「しきい値」(閾値)とされる量、すなわち、ある変化を生じうる最低限の量や強さを超えてからのことで、量の増加にしたがって障害が現れる頻度が高くなる。そしてある線量以上になると「障害が100%発生する」ようになる。 また、線量が「しきい値」を超えると、量の増加に比例して障害が重大になる、つまり障害の程度が重くなるという現象が見られるようになる。このような形で現れる障害を、ある程度以上の放射線量を浴びると必ず起きるという意味から「確定的影響」と呼んでいる。 実は、ひとくちに放射線による障害といっても、この確定的影響のように一定量を超えると必ず現れるものだけではない。放射線を浴びることで影響が現れる確率が高くなる、たとえばガンを発病する確率が上がるなどの「確率的影響」がある。 こうしたことから、目に見える(具体的に観察される)影響が出る場合に限るという意味で、ここでは「具体的な障害が発生する」と書いている。 また、「大量の放射線を一度に」と断った理由も、放射線の人体影響を考えるうえでポイントとなる特徴に関係してくる。 放射線は瞬間的なエネルギーの流れであるから、その性質からいって「体内に溜まる」ということ自体がありえない。そのため人体への影響度を決める第一の条件は、放射線の種類とその線がもつエネルギーの強さとなる。 第二の条件としては、放射線が当たった人体の組織や臓器が、どのくらい放射線に対して強い(弱い)かという「放射線感度」の問題となる。 そして第三の条件は、ダメージを修復する余裕があれば、継続的な放射線の曝露にも耐えられるということ。 曝露された臓器によって影響の内容は異なるものの、決定的なダメージを受けなければ細胞や組織はすぐに修復に向かう。このメカニズムによって、弱い放射線を継続的に浴びる状況では、ダメージそのものが残らないケースさえありうる。 仮に、ダメージを受ける場合でも、一度に大線量の放射線を浴びる時に比べれば、損傷の程度が小さくなる。こうした傾向を「線量率効果」と呼んでいるのだが、障害に対する回復力が人体に備わっているからこその現象といえる。 念のため、どのくらいの放射線量を一瞬のうちに浴びたら、具体的な影響として現れるのか、「しきい値」のメドを示しておきたい。例によってシーベルトという数字が出てくるが、「ふつうの生活では自然放射線を年間平均で2m㏜(ミリシーベルト)程度浴びる」ということが判断の手がかりだ。 造血機能の急性被曝によって機能低下が起きる「しきい値」は500m㏜ 精巣の急性被曝によって一時的赴任が起きる「しきい値」は150m㏜ 同じく永久不妊が起きる「しきい値」は3,500m㏜ 卵巣の急性被曝によって一時的赴任が起きる「しきい値」は650m㏜ 同じく永久不妊が起きる「しきい値」は2,500m㏜ ちなみに悪い冗談として、放射線を扱う技術者には不妊が多い、という話がある。しかし、言うまでもないが、このような「しきい値」よりずっと低い線量が「線量限度」として設けられている。そのため、放射線を扱う作業といえども、影響や障害が出ないのはもちろんである。 チェルノブイリ原発事故における事故時に被曝した(細胞分裂がさかんな)幼児や小児に甲状腺ガンが増えているとの報告はあった。しかし、それは日本の規制値の17〜450倍以上のヨウ素131を含む牛乳を摂取したことが原因と考えられ、福島第一原発事故では、乳製品に対して早期に規制が行われたため、子ども達の甲状腺ガンは増えないと予測する。 放射線の影響は「非特異的」であることを思い出してほしい。他の原因によってもガンは発生するし、個人の遺伝的な特性によって発ガンしやすかったり発病にいたらなかったりする。つまり、ある以上の放射線を浴びた場合、ガンが確率的に発生しやすくなる。しかし、この量を超えたらガンになるという「しきい値」は存在せず、放射線量が増えるほど「ガンの可能性は高くなる」としかいえない。 もちろん、多量の放射線を浴びたら必ずガンになるというものでもない。その点で脱毛などのような「確定的影響」とは異なる性質をもっている。そして、障害の発生確率の問題であるから「確率的影響」と呼ばれている。 繰り返しになるが、放射線を浴びるとガンになるという表現は正しくない。放射線を浴びるとガンになる確率が高くなるというのが、確率的影響を語る時の正しい表現なのである。 では、どのくらい放射線を浴びると身体に悪影響があるのだろうか? 原爆の被害を受けた広島、長崎のデータなどから、100ミリシーベルト以下では、人体への悪影響がないことは分かっている。このレベルの被ばく量は症状が出ないだけではなく、検査でも異常な数字は確認されていない。 100ミリシーベルト以上の被ばく量になると、発がんのリスクが上がり始める。といっても、100ミリシーベルトを被ばくしても、がんの危険性は0・5%高くなるだけある。そもそも、日本は世界一のがん大国である。2人に1人が、がんになる。つまり、もともとある50%の危険性が、100ミリシーベルトの被ばくによって、50・5%になるということである。たばこを吸う方が、よほど危険といる。 1年間に20ミリシーベルトという数字の線量を受ける程度、つまり自然放射線の年間平均の約10倍ほどならば、50年間にわたって浴びても、急性の影響としては何ら問題はない。 ところが、この50年間の総計となる1シーベルト(1,000ミリシーベルト)を1分間で全身に浴びた場合には、かなりの数の人に吐き気などの「急性放射線症」が現れる。 このような理由から、放射線による障害を考えるときには「長い間の足し算」ではなく、一度に浴びる放射線の種類と量が大問題となってくる。 *放射線の人体への影響(単位:ミリシーベルト) 100:全身被曝、これより低い線量では放射線影響は確認されていない 500:全身被曝、白血球の一時的減少 1,000:全身被曝、吐き気、倦怠感(10%の人) 3,000:局部被曝(皮膚)、脱毛 3,000〜5,000:全身被曝、50%の人が死亡 5,000:局部被曝(水晶体)白内障、(皮膚)紅斑 7,000〜10,000:全身被曝、死亡 日本の平均1人当たりの自然放射線(年間):1.5m㏜(ミリシーベルト)/年 世界の平均1人当たりの自然放射線(年間):2.4m㏜(ミリシーベルト)/年 胸部X線コンピュータ断層撮影検査(1回)「CTスキャン」:6.9m㏜(ミリシーベルト) ブラジル・ガラパリの自然放射線(年間):10m㏜(ミリシーベルト)/年 *X線の発見と同時に始まった防護の歴史 放射線による障害の歴史を見てくると、三つの時期に大きく分類することができる。 まず最初は、放射線の急性障害がおもに問題になった時期。レントゲンによってエックス線が発見された直後から、エックス線研究ブームともいうべき状況のなかで発生した障害である。特性をほとんど知らぬまま扱ったことによるもので、いまとなっては因果関係が最も明らかな障害でもある。 これに続くのが、被曝後、時間がたって現れる晩発障害がおもに問題になった時期。急性障害を防止する対策がとられたことで、障害は発生しなくなったように見えた。ところがそう見えたのは一時的なことで、その後時間をおいてからダメージが顕在化する障害もあることが判明した。放射線量や被曝のパターンによっては、急性の障害は見られなくても(あるいは急性障害だけで終わらずに)後から別種の障害が現れることを知ったのであった。 エックス線やラジウムの利用が始まった当初は、患者や医師あるいは技師のあいだに見られる種しゅの障害と放射線との因果関係は明らかではなかった。放射線は目に見えないこともあって、安全だといった思い込みもあったようだ。しかし、その後の多くの経験によって、1900年頃からエックス線自体に障害の原因があるということがわかりはじめ、必要以上に人体などに当てない工夫が始まった。 たとえば、エックス線発生装置と患者のあいだにフィルターを置いて、弱い放射線を遮蔽してしまう措置や装置の開発。あるいは患者との距離を遠くするなどの、放射線の性質を利用した対策がとられた。その結果、1900年代初期の頃になると、放射線障害の発生は目に見えて少なくなった。 この結果から医師たちは、こうした放射線対策が万能と考えて、エックス線による診断や治療をさらに進めた。ところが、こうした「放射線の量が多すぎることで発生する障害」に代わって皮膚ガンや白血病などのような「放射線の量にしたがって発生確率が増える症状」が確認されはじめた。 こうして最後にガンが注目されるようになった時期が始まった。急性障害だけでなく晩発障害への対応もはかられたにもかかわらず、さらに放射線影響と考えられるガンがいわれるようになったのである。 このような経過をたどって、現在の放射線防護の議論の中心は、「量に応じて特定の症状が現れる」ものから、「量に応じて発生確率が高まる」、いわゆる「放射線のリスク」にどう対処するかという点に移行することになる。 *積み重ねられた防護データ 放射線とさまざまな障害との因果関係が明確になるにしたがって、法的に放射線の使用を規制しようとする動きが始まった。この規制化への動きを加速する要因になったと思われるのが、戦時中のイギリスで起きた事件である。 大一次世界大戦のただなか、戦傷者を救護するためにエックス線診断が活躍した。しかし作業環境が悪かったことから、イギリス軍でエックス線診断に従事した人たちは、防護がほとんどない状態で長時間の診断をしていたのであった。イギリスの放射線学会はこの事態を憂慮して、軍部に対して労働条件の改善をおこなうよう勧告している。 1920年代に入ると、さらにエックス線の診断技師に障害が増える。見過ごせない状況となって、イギリスでは、民間の任意団体として「英国X線及びラジウム防護委員会」が発足、放射線作業の基準に関する勧告を発表した。 こうした動きに刺激されて、1925年にロンドンで開催された第一回国際放射線医学会議では、放射線防護のための国際組織をつくることが議論された。そして、3年後にストックホルムで開催された第二回の会議によって「国際X線及びラジウム防護委員会」が結成される。1950年には名称を「国際放射線防護委員会」と変えて、放射線防護に関する世界的なオーソリティとして現在にいたっている。
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