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http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2011/05/post-0037.html
原発利権に群がる大人たち
3月11日に東日本大震災が発生し、翌12日に福島第一原発が冷却不能に陥って水素爆発を起こしたことを受けて、2日後の14日には、ドイツのメルケル首相が国内の原発の運転期間延長計画を凍結したし、スイスのロイトハルト環境相も進行中だった原発計画の中止を発表した。原発大国のアメリカでさえも、多くの議員から現行計画の見直しの声が出て、福島原発と同型の原子炉はすべて総点検することになった。ま、これがマトモな感覚だろう。
だけど、これほどの大事故を起こした張本人であるニポンでは、ずいぶん感覚が違う。事故から1ヶ月半が過ぎても、原子炉のひとつも止められないどころか、連日、空と海へ大量の放射性物質を垂れ流している状態で迎えた4月24日の「統一地方選挙」では、百害あって一利なしの「高速増殖炉原型炉もんじゅ」を始め、3基もの原発を林立させて「原発銀座」と呼ばれてる福井県敦賀市を筆頭に、ほぼすべての選挙区で、原発推進派や容認派が議会の過半数以上を占める結果となった。幸いにも、東京の世田谷区では、反原発の保坂展人さんが区長に当選したけど、原発に依存して生きてきた全国各地の「原発城下町」では、原発推進派の現職候補が次々と当選した。国際社会から見れば、これほど恥ずかしいことはないだろう。
こないだ、菅首相が、アメリカに言われて仕方なく静岡県の浜岡原発の停止を発表した時も、浜岡原発がある御前崎市の石原茂雄市長はブーブー文句を垂れてたし、東京電力の柏崎刈羽原発を抱える新潟県柏崎市の会田洋市長までもが、自分のとこまで飛び火されたら困るからって、ブーブー文句を垂れてた。そりゃあ、原発のオカゲで過疎化してた町が発展して、お金もタップリともらえるようになり、それ以来、ずっと原発に依存して生きてきたんだから、ここで原発を止められたら困るって理屈は分かるし、悪魔に魂を売った市長としては「毒を食らわば皿まで」の心境なんだろう。だけど、これほどの大事故が起こっても、まだ「命」よりも「お金」だなんて、完全に人としての感覚がおかしくなっちゃってると思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、ニポンイチの「原発銀座」である福井県敦賀市には、5900億円もかけて造った「世界一危険な粗大ゴミ」の異名を持つ「高速増殖炉原型炉もんじゅ」があるワケだけど、皆さん、ご存知のように、「もんじゅ」は壊れたままで、発電量はゼロ。だけど、安全な状態になるまでは最低でも50年掛かり、毎年500億円もの維持費が掛かってる。これまでに掛かった予算は2兆4000億円で、これから50年間で2兆5000億円も掛かる。発電量がゼロの粗大ゴミを安全な状態にするために、合計で5兆円も掛かるってワケだ。
で、福井県敦賀市が、どうしてこんなバカバカしいものを造ったのかって言うと、歴代の敦賀市長がどんな人物だったのかを見れば、よく分かる。たとえば、この「もんじゅ」の場合は、福井県選出の自民党議員、熊谷太三郎が経営する「熊谷組」が建設を担当して、1983年1月25日に準備工事に着工、1985年に本体工事が開始したんだけど、この着工日の翌日、1983年1月26日に、当時の敦賀市長だった高木孝一は、石川県羽咋郡志賀町で開催された「原発推進の講演会」で、こんな講演を行なってる。内橋克人著『原発への警鐘』(講談社文庫)から引用させていただく。
「原発と地域振興」
只今ご紹介頂きました敦賀市長、高木でございます。えー、今日は皆さん方、広域商工会主催によります、原子力といわゆる関係地域の問題等についての勉強会をおやりになろうということで、非常に意義あることではなかろうか、というふうに存じております。ご連絡を頂きまして、正しく原子力発電所というものを理解していただくということについては、とにもかくにも私は快くひとつ、馳せ参じさせて頂くことにいたしましょう、ということで、引き受けた訳でございます。
一昨年もちょうど4月でございましたが敦賀1号炉からコバルト60がその前の排出口のところのホンダワラに付着したというふうなことで、世界中が大騒ぎをいたした訳でございます。私は、その4月18日にそうしたことが報道されましてから、20日の日にフランスへ行った。いかにも、そんなことは新聞報道、マスコミは騒ぐけれど、コバルト60がホンダワラに付いたといって、私は何か(なぜ騒ぐのか)、さっぱりもうわからない。そのホンダワラを1年食ったって、規制量の量(放射線被曝のこと)にはならない。そういうふうなことでございまして、4月20日にフランスへ参りました。事故が起きたのを聞きながら、その確認をしながらフランスへ行ったわけです。ところがフランスまで送られてくる新聞には毎日、毎朝、今にも世の中ひっくり返りそうな勢いでこの一件が報じられる。止むなく帰国すると、“悪びれた様子もなく、敦賀市長帰る”こういうふうに明くる日の新聞でございまして、実はビックリ。ところが敦賀の人は何食わぬ顔をしておる。ここで何が起こったのかなという顔をしておりますけれど、まあ、しかしながら、魚はやっぱり依然として売れない。あるいは北海道で採れた昆布までが‥‥。
敦賀は日本全国の食用の昆布の7〜8割を作っておるんです。が、その昆布までですね、敦賀にある昆布なら、いうようなことで全く売れなくなってしまった。ちょうど4月でございますので、ワカメの最中であったのですが、ワカメも全く売れなかった。まあ、困ったことだ、嬉しいことだちゅう‥‥。そこで私は、まあ魚屋さんでも、あるいは民宿でも100円損したと思うものは150円貰いなさいというのが、いわゆる私の趣旨であったんです。100円損して200円貰うことはならんぞ、と。本当にワカメが売れなくて、100円損したんなら、精神的慰謝料50円を含んで150円貰いなさい、正々堂々と貰いなさいと言ったんでが、そうしたら出てくるわ出てくるわ、100円損して500円欲しいという連中がどんどん出てきたわけです(会場爆笑、そして大拍手?!)。
100円損して500円貰おうなんてのは、これはもう認めるもんじゃない。原電の方は、少々多くても、もう面倒臭いから出して解決しますわ、と言いますけれど、それはダメだと。正直者がバカをみるという世の中を作ってはいけないので、100円損した者には150円出してやってほしいけど、もう面倒臭いから500円あげるというんでは、到底これは慎んでもらいたい。まあ、こういうことだ、ピシャリとおさまった。
いまだに一昨年の事故で大きな損をしたとか、事故が起きて困ったとかいう人は全く一人もおりません。まあ言うなれば、率直に言うなれば、一年一回ぐらいは、あんなことがあればいいがなあ、そういうふうなのが敦賀の町の現状なんです。笑い話のようですが、もうそんなんでホクホクなんですよ。
(原発ができると電源三法交付金が貰えるが)その他に貰うお金はお互いに詮索せずにおこう。キミんとこはいくら貰ったんだ、ボクんとこはこれだけ貰ったよ、裏金ですね、裏金!まあ原子力発電所が来る、それなら三法のカネは、三法のカネとして貰うけれども、その他にやはり地域の振興に対しての裏金をよこせ、協力金をよこせ、というのが、それぞれの地域である訳でございます。それをどれだけ貰っているか、を言い出すと、これはもう、あそこはこれだけ貰った、ここはこれだけだ、ということでエキサイトする。そうなると原子力発電所にしろ、電力会社にしろ、対応しきれんだろうから、これはお互いにもう口外せず、自分は自分なりに、ひとつやっていこうじゃないか、というふうなことでございまして、例えば敦賀の場合、敦賀2号機のカネが7年間で42億入ってくる。三法のカネが7年間でそれだけ入ってくる。それに「もんじゅ」がございますと、出力は低いですが、その危険性‥‥、うん、いやまあ、建設費はかかりますので、建設費と比較検討しますと、入ってくるカネが60数億円になろうかと思っておるわけでございます(会場感嘆の声と溜息がもれる)。
で、実は敦賀に金ケ崎宮というお宮さんがございまして(建ってから)随分と年数が経ちまして、屋根がボトボトと落ちておった。この冬、雪が降ったら、これはもう社殿はもたんわい、と。今年ひとつやってやろうか、と。そう思いまして、まあたいしたカネじゃございませんが、6000万円でしたけれど、もうやっぱり原電、動燃へ、ポッポッと走って行った(会場ドッと笑い)。あっ、わかりました、ということで、すぐカネが出ましてね。それに調子づきまして、今度は北陸一の宮、これもひとつ6億で修復したいと、市長という立場ではなくて、高木孝一個人が奉賛会長になりまして、6億の修復をやろうと。今日はここまで(講演に)来ましたんで、新年会をひとつ、金沢でやって、明日はまた、富山の北電(北陸電力)へ行きましてね、火力発電所を作らせたる、1億円寄付してくれ(ドッと笑い)。これで皆さん、3億円既に出来た。こんなの作るの、わけないなあ、こういうふうに思っとる(再び笑い)。まあそんな訳で短大は建つわ、高校は出来るわ、50億円で運動公園は出来るわね。火葬場はボツボツ私も歳になってきたから、これも今、あのカネで計画しておる、といったようなことで、そりゃあもうまったくタナボタ式の街づくりが出来るんじゃなかろうか、と、そういうことで私は皆さんに(原発を)お薦めしたい。これは(私は)信念を持っとる、信念!
えー、その代わりに100年経って片輪が生まれてくるやら、50年後に生まれた子供が全部片輪になるやら、それはわかりませんよ。わかりませんけど、今の段階では(原発を)おやりになった方がよいのではなかろうか‥‥。こいうふうに思っております。どうもありがとうございました。(会場、大拍手)
※内橋克人著『原発への警鐘』(講談社文庫)より引用。
‥‥そんなワケで、当時の敦賀市長だった高木孝一が、「原発を造ればカネが儲かる」「電力会社はいくらでもカネを出してくれる」と得意満面に語るのは構わない。こんなこと、原発に限らず、道路だってダムだった基地だっておんなじ構図だからだ。だけど、あたしは、最後の部分だけは絶対にゆるせない!さんざん「原発を造ればカネが儲かる」と大宣伝しておいて、最後の最後に、「その代わりに100年経って片輪が生まれてくるやら、50年後に生まれた子供が全部片輪になるやら、それはわかりませんよ」とは、この守銭奴は人の命を何だと思ってるのか!未来を担う子供たちのことを何だと思ってるのか!
そして、さらに許せないのは、こんなにも酷い言葉に対しての「(会場、大拍手)」だ。ここに集まってるのは、地元の商工会の人たちだから、みんなお金儲けのことしか考えてないんだろうけど、「原発を造ればカネが儲かる」「でも、その代わりに、50年後、100年後にはカタワの子供だらけになる」と言われて、よくもまあ拍手なんかできたもんだ。自分たちにだって子供がいるだろうに、どうしたら、こんなにも心の醜い人間になれるんだろう?だけど、これこそが、「原発利権に群がる大人たち」の本心なのだ。
もちろん、当時の敦賀市長だった高木孝一のみならず、現在の市長の河瀬一治だって、原発利権にドップリと浸かった原発推進派で、「全国原子力発電所所在市町村協議会会長」までつとめてるほどだ。たとえば、これは、去年の3月の「世田谷通信」の記事だけど、こんなことが発覚しても、ちゃんと今年の市長選で再選しちゃうんだから、敦賀市の人たちは「50年後、100年後にはカタワの子供だらけになる」ことよりも「カネ儲け」が好きな人たちのほうが多いんだろう。
「敦賀市長がもんじゅの運転で根回し」(世田谷通信)
その危険性が多方面から指摘されているのにも関わらず、原発利権に絡んだ民主党と自民党の議員が強引に推し進めている高速増殖炉「もんじゅ」だが、その「もんじゅ」がある福井県敦賀市の河瀬一治市長(58)が、もんじゅを運営する「日本原子力研究開発機構」の下請けをしている地元の企業2社に、長年に渡って高額のパーティー券を買ってもらっていたことが分かった。河瀬市長のパーティー券を買っていた地元の企業は、福井県敦賀市の「高速炉技術サービス(FTEC)」と「TAS」の2社で、河瀬市長が代表をつとめる政治資金管理団体「グローバルビジョン」の政治資金収支報告書によると、市長は2004から2008年までの5年間に複数回の政治資金パーティーを開催し、そのすべてのパーティーで、「もんじゅ」の下請けを主な事業としている「高速炉技術サービス」と「TAS」の2社に、合計で222万円ものパーティー券を買ってもらっていた。さらには、この「TAS」の社長は、もともとは「もんじゅ」の所長代理をしていた人物であり、その後「高速炉技術サービス」の役員を歴任した上で「TAS」の社長になっていたことも判明した。「TAS」の社長は、河瀬市長のパーティー券を買い続けてきたことに関して「購入枚数分の人数がパーティーに出席しているわけではない。市長の市政運営全般をサポートしようと購入した」と、事実上の献金であったことを示唆する発言をし、危険を指摘されている「もんじゅ」の運転再開に支障をきたさないための政治的な根回しであったことを裏づけた。(2010年3月3日)
http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2010/03/post-e1bd.html
‥‥そんなワケで、話は、「原発に依存する地方自治体」から「原発を押し付けて利権をむさぼる電力会社」のほうに変わるけど、今回の福島第一原発の大事故から、わずか2週間後の3月28日、関西電力の社長、八木誠は、定例会見で、現在点検停止中の美浜原発1号機(福井県美浜町)、高浜原発1号機、大飯原発3号機(福井県おおい町)について「計画通りに運転再開する」と断言した上に、危険性が指摘されてる高浜原発4号機(福井県高浜町)での「プルサーマル」についても、「プルサーマル計画は粛々と推進していく」って言い放ったのだ。連日、もうもうと白煙を上げる福島第一原発の映像がニュースで流されてる最中に、よくもまあ、こんなセリフが言えたもんだ。
そして、福島第一原発の大事故を受けて、玄海原発(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開の延期を決めた九州電力にしても、福島第一原発の事故を「大したことはない」とするインチキパンフレットを作って、周辺住民を洗脳しようとしてた。詳しくは、こちらの記事を読んでもらうとして、メンドクサイヤ人のためにザクッと書いとくと、九州電力が作って無料配布してたパンフレットには、福島第一原発の事故についての「Q&A」があるんだけど、その中に、こんなことが書いてあるのだ。
Q3「福島第一原子力発電所事故の放射線の影響は?」
A3「念のため周辺住民に避難・屋内退避指示が出ていますが、ただちに健康に害を与えるレベルではありません」
チェルノブイリを超えた汚染度の地域なのに、「念のための避難指示」であって「ただちに健康に害を与えるレベルではありません」とは、開いた口が塞がらない。長年暮らした町や村を追い出された人たちがこれを読んだら、いったいどんな気持ちになるだろうか。そして、このパンフレットは、あまりにも事実を無視した内容なので、批判が相次ぎ、九州電力では残りを回収したそうだ。
‥‥そんなワケで、今日は、最後に、あたしが3年前の5月8日に書いた「世田谷通信」の記事を紹介して終わりにしようと思う。3年前には、ほとんどの人が気にもしてくれなかった記事だけど、今になって読むと、少しは考えるキッカケになると思う今日この頃なのだ。
「震度5弱の地震で福島原発が放射能漏れ」(世田谷通信)
8日午前1時45分ごろ、茨城県沖を震源とする震度5弱の地震が起こったことに合わせて、東京電力は、福島第一原発2号機のタービン建屋地下1階に3カ所の水漏れが見つかり、うち1カ所はタンクにつないだ排水管から278ベクレルの放射能を含む水25リットルが漏れていたと発表した。福島原発は、日立製作所が28年間にわたって配管の耐震強度計算を間違えていたことが発覚し、地震の影響を過小評価していたことが分かった全国17カ所の原発のうちのひとつ。経済産業省原子力安全・保安院は、4月10日付で早急な再計算を指示したばかりだった。「わずか震度5弱の地震で事故が起こるようでは、大地震が起こった時にはどうなるのか」と地元の住民たちは不安の表情を見せている。耐震強度の偽装を11年間も隠ぺいしていた青森県六ヶ所村の核燃料再処理施設をはじめ、女川、福島、柏崎刈羽、浜岡、志賀、島根、敦賀、東海、もんじゅなど、次々と耐震強度の計算ミスが発覚した各地の原発に、地域住民の不安は募るばかりだ。(2008年5月8日)
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