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「水と農作物」 県の対応 後手後手
県衛生研究所(さいたま市桜区)の機器が、異常な値を示していた。福島第一原子力発電所の爆発事故から3日後。3月15日未明から数値がみるみる上昇し、午前11時には1・222マイクロ・シーベルトに達した。平常時の約37倍。泊まり込みで監視を続ける研究員から報告を受けた副所長の矢武真行は、県保健医療部に連絡した。「どういう意味がある数値なんだ」「住民を避難させる必要があるのか」。質問されても答えようがなかった。県施設で唯一、放射線を検査できる研究所だが、人体への影響などに精通しているわけではないからだ。
県企業局水道管理課主幹の福島久は、福島市内の水道水から放射性物質が検出されたことを、17日朝のニュースで知った。計画停電の対応に忙殺されていた。「埼玉は原発から約200キロ離れているから大丈夫だろう」。その期待は間もなく裏切られた。
22日、県内各地で雨が降った。川口市がその日に市内で採取した水道水から、乳児用の暫定規制値(1キロ・グラムあたり100ベクレル)を超す120ベクレルの放射性ヨウ素が検出された。供給元は県の新三郷浄水場など。しかし、県が同浄水場の検査結果を発表したのは、25日だった。
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県は国の要請を受け、18日から県営浄水場の水道水検査を始めたが、対象は5か所のうち大久保浄水場。衛生研には測定器が2台しかなく、追加できたのは、庄和浄水場分だけだった。新三郷浄水場など3浄水場は民間に委託していた。
「県がもっと早く検査してくれていれば……」と川口市水道総務課長の鈴木浩幸はこぼす。再検査の結果、規制値を下回ったため、市は摂取制限を見送った。しかし、スーパーやコンビニ店の売り場からは水が消え、乳児を抱える母親から不安の声が上がった。
規制値を超えた場合、別の浄水場から給水車で水を配給するしかなかった。「同時に複数の浄水場で規制値を超えていたら対応できなかった」と福島は肝を冷やす。県も市も、ペットボトルの水の備蓄がほとんどなかったのだ。
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農作物の検査も遅れがちだった。12年前のJCO事故の経験がある茨城県は、国が野菜の暫定規制値(同2000ベクレル)を発表した翌日の18日、検査に着手。ホウレンソウの6検体が規制値を超えたと発表した。埼玉県が検体を採取したのは20日だ。露地物のホウレンソウ1検体から規制値ぎりぎりの1900ベクレルが検出された。遅れたのは、検査機関がパンク状態だったことが最大の理由だが、県農産物安全課は「農協や農家の理解を得るのに時間がかかった」とも話す。
県がこれまで検査した野菜9品目の128検体は、いずれも規制値を下回った。ただし、検体の選択は、農協側に「出荷量が多いもの」と実質的に一任していた。ある農協の担当者は「出荷量が多いハウスものを提供した。量も少なく、高い値が出そうな露地物をあえて出す気になれない」と明かす。規制値を超えた場合の補償が不明確なことも、農家の協力を難しくしている。それでも「食べている野菜の産地の検査結果を知りたい」との問い合わせは相次ぐ。県は農家と消費者のはざまで揺れ動いている。
水や農作物の数値が落ち着きつつあった4月下旬、熊谷市や東秩父村の牧草から規制値を超す放射性物質が検出された。今月12日には浄水場で出る汚泥からも高濃度の放射性物質が出た。いずれも半減期が30年と長い放射性セシウムだ。
震災後、不眠不休で放射線検査を続ける衛生研研究員の三宅定明は「長期戦になる」と覚悟している。土壌や街路樹などに付着した放射性物質は手つかず。今後の県民生活への影響はなお未知数が多い。(敬称略、肩書は当時)
(2011年5月20日 読売新聞)
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