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東日本大震災:福島第1原発と何が違った 女川、紙一重の「無事」
写真・図解http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110519ddm003040129000c.html
毎日新聞 2011年5月19日 東京朝刊
東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の事故は、原発の津波対策の手薄さを浮き彫りにした。一方、同じ太平洋側にある福島第2原発(同県楢葉町、富岡町)や東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)は想定に近いか上回る津波にさらされながら、致命的な惨事を免れた。明暗を分けた要因を探った。【根本毅、八田浩輔、須田桃子、西川拓】
◇津波史を独自調査
東電が福島第1原発で想定した津波の高さは5・7メートル。だが、平安時代の貞観(じょうがん)地震(869年)では、8メートル以上の津波が現在の敷地に押し寄せた可能性があることが産業技術総合研究所の昨年の分析で判明した。
研究チームは東北地方太平洋岸で貞観津波による堆積(たいせき)物を調べ、原発に近い福島県浪江町では現在の海岸線から1・5キロ内陸まで到達していたことを突き止めた。この規模の津波を起こすには、南北200キロの断層がずれたと考えられ、コンピューターによる試算で第1原発付近の津波高を見積もった。
産総研の岡村行信・活断層・地震研究センター長は「8メートルは最小限の数字だ。原発の津波対策に適用する場合には、さらに高い波の想定が必要になる」と話す。結果的に貞観津波を過小評価していたことになる東電は「過去の発生データを踏まえて最大限の設計をしてきたつもりだが、今回のことを真摯(しんし)に受け止め、原因について十分に評価・検討していきたい」としている。
貞観地震の研究はこの数年で急速に進んだ。古文書から仙台平野に巨大津波が押し寄せ、大きな被害を出したことは知られていたが、震源が宮城県沖から福島県沖で広範囲に及ぶ可能性があることが分かったのは昨年だ。こうした研究を受け、東電も貞観地震の再評価を前提に、約1年前に東北大の研究者に接触するなど調査に動き出した直後だった。
岬の西側(手前)は津波で破壊され、東側にある女川原発(中央)は津波の被害を免れた=宮城県女川町で2011年3月14日午後3時34分、本社機から貝塚太一撮影 一方、東北電は貞観地震の津波による仙台平野の地層内堆積物の分布を独自に調査。貞観津波とともに、明治三陸津波(1896年)、昭和三陸津波(1933年)などの文献と堆積物を調査した結果、慶長津波(1611年)が女川原発周辺の過去最大級の津波だったと判断。敷地での津波の高さを最大9・1メートルと想定していた。
しかし、東日本大震災の津波はこの想定さえも超え、高さ13メートルだったと推定される。敷地は海面から14・8メートルにあったが、2号機では、原子炉建屋1階に設置されていた非常用電源3系統のうち1系統が津波で機能を失った。残る2系統が維持できたことなどで辛くも事故を免れた。
東北電は「敷地の高さに余裕を持たせたため、上から津波をかぶることはなかった」と強調する。しかし、同原発がある牡鹿半島は、地震の影響で1メートル地盤沈下するなど大きな地殻変動が生じており、対策の根本的見直しは必至だ。
東海第2原発は最高5・7メートルの想定に対し、5・4メートルの津波が到達。非常用発電機を冷やすためのポンプ3台のうち1台が使用不能になり、100度未満の冷温停止状態に持ち込めたのは4日後の3月15日だった。
福島第2原発は第1原発と同規模の津波を受け敷地が浸水したが、非常用発電機が気密性の高い原子炉建屋に設置されているなどの新しい設計が幸いした。
◇耐震「揺れ」ばかり考慮
原発の津波対策が遅れた背景を、吉田正・東京都市大教授(原子炉工学)は「耐震安全性を考慮する際、地震の揺ればかりに目が向いていた」と指摘する。さらに、津波被害として、引き波により冷却用の海水が引き込めなくなることが想定されていたものの、今回のように建屋が浸水して全電源が失われる事態は考慮されていなかった。
06年の耐震安全設計指針の改定により、国が各電力会社に原発の耐震安全性の再チェックを求めたが、09年の中間報告段階では津波は「地震随伴事象」として先送りされた。
04年12月のスマトラ沖大地震では、インド洋沿岸のマドラス原発に津波が押し寄せた。原子炉は緊急停止し、津波も敷地の高さを上回らなかったが、冷却水の取水トンネルから海水が入り、ポンプ建屋が浸水する被害に見舞われた。このケースを機に世界の原子力関係者の間で、津波の影響に注目が高まったというが、国内で具体的な対策には結びついていなかった。
国内の原発では津波が大きな要因となった福島第1原発事故を受け、ようやく(1)電源車や発電機など大容量の非常用電源(2)冷却水をくみ上げる海水ポンプの予備品確保(3)大津波を防ぐ防潮堤の設置−−などの対策に取り組み始めた。しかし、経済産業省原子力安全・保安院によると、整備し終えるには半年から3年程度かかるとみられる。
入倉孝次郎・京都大名誉教授(強震動地震学)は「電力会社も国も(地震や津波に関する)最新の知見に基づき、敏感に問題を吸い上げる努力が足りなかったと言える。福島第1原発以外の全国の他の原発についても、従来の想定以上の地震・津波が起きた場合の影響、多重防護システムが働くかどうかの検証を進めるべきだ」と話す。
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■ことば
◇貞観地震
869年、三陸沖を震源に広範囲に津波被害をもたらした地震。マグニチュード(M)8・5前後と推定されている。多くの家屋が倒壊し、津波が現在の宮城県多賀城市一帯を襲い約1000人が水死したとの記述が古文書に残っている。宮城県石巻平野から福島県北部にかけて、当時の海岸線から数キロ内陸まで浸水した。
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