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1.東電、国民の馴れのスキを突いて、今頃、おもむろに生データ公表
2011年5月16日、東電は福島原発事故機の計測データの詳細を自社HPにアップしました(注1)。
生データを修正したりしてそのまま載せているため、号機によって、フォーマットが異なったり、信頼できないデータなどが含まれたり、また、圧力表示は絶対圧なのかゲージ圧なのかよくわからなかったり、外部の人に極めて不親切です。
データを一覧するには「福島第一原子力発電所 プラント関連パラメータ(水位・圧力・温度などのデータ)」(注2)の更新版が良いです。
現在の事故機関係者の認識は、3.11大地震および大津波の直後、緊急停止した運転中の1〜3号機は、全電源喪失が起きて、最後の命綱のバッテリーも切れた後、何時間か、原子炉内冷却水の循環が完全ストップして完全空焚き状態になった、というものです。
その結果、いわゆる核燃料メルトダウンは、3月12日から13日にかけて、すでに起きていたと言われています。
2.事故機3基の圧力容器は空焚きですぐに壊れ、3月12日前後に圧が抜けた
東電HPに5月16日に公表された1〜3号機のデータ履歴によれば、3月12日前後の圧力容器(RPV)の圧力は運転最高圧の70気圧程度に上昇後、3月13、14日には、3基ともにRPV圧が現在の大気圧レベルに急降下して現在のレベルに至っています。
この現象は、RPVに冷却水が注入されてRPV圧が下がったのではなく、RPVに接続された配管、もしくは、RPVを貫通する各種部材の溶接部が破壊されて、圧が抜けたとみなせます。
言ってみれば、RPVおよびRPV用配管の脆弱部が、偶然にも安全弁の機能を果たして、RPVの圧が立たなくなったことを意味しています。
3.RPV脆弱部が壊れてくれたおかげで、冷却水の注水が開始できたに過ぎない
今、振り返ると、RPV内圧が高いとき、外部から冷却水を注入できないと東電が困っていたことが一時ありました。
ところが、その後、3月13〜14日ころから海水注入(仮設の外部配管経由)が開始されていますが、このときすでにRPVおよびその接続配管系は壊れていて、圧が抜けていたから注水できたにすぎなかったことがわかります。
したがって、海水注入が開始されたとき、すでに燃料棒は崩壊して、RPV底に溜まっていた可能性が高いわけです。
そのため幸運にもRPV内の水位が立つ必要はなく、RPV底に溜まった崩壊燃料に冷却水が注ぎこまれていたのです。そして、崩壊燃料を含む冷却水はスラリー(高濃度汚染水)となって、壊れたRPV底からPCVに漏れ出したということです。
その汚染冷却水は、格納容器(PCV)底に溜まり、いっしょに漏れた崩壊燃料はPCV底に沈殿してPCV底(3cm厚鋼板)に穴を開けたと思われます。その穴から漏れ出した高濃度汚染水は各事故機を収納する最外周のコンクリート構造体の底に溜まっているということです。そして、その一部が、海水や地下水に流入しているわけです。
4.RPV(圧力容器)がすぐに壊れたことが、奇跡の結果オーライだったのか
GEタイプのBWR(沸騰水型原子炉)の欠点として指摘されてきたのが、制御棒を底から上向きに挿入する構造でした。その代り、燃料棒の出し入れやメンテナンスが容易でした。
制御棒を重力に逆らって上向きに挿入するのは、地震遭遇などの非常時には不安がありますが、もっと問題なのは、RPV底に多数の貫通部(=脆弱化し易い)が生じることです。そのため、これまでも、中電浜岡BWRにて、RPV底の貫通部からの炉水漏れ事故はすでに起きています(注3)。
今回の東電福島BWR事故により、このBWRの欠点が表面化したのは確かです。
制御棒ハウジングとRPV底板の貫通部の溶接部に高温の崩壊燃料が接触したら、ひとたまりもありません。金属溶接部はその名の通り、溶接金属を高温で溶かして接続していますから、燃料の2800度Cの高温では持ちません。
したがって、RPV底は、3月14日までに、1〜3号機すべてにおいて、貫通欠陥が生じたのは間違いないでしょう。その結果、70気圧のRPV内蒸気圧はすぐに抜けたのです。そのために、仮設の外部配管からの海水注入が可能となったのですが、そのときRPVは底が抜けていたため、RPV水位は立たなかったのです。しかしながら幸運にもRPV底に溜まった崩壊燃料を冷やすことはできたのです、まさに奇跡の結果オーライでした。
そのため、タッチの差で、チャイナ・シンドローム(2800度Cの燃料溶融体の塊が、どさっとPCV底に落ち水蒸気爆発に至ること)が回避されたのです。
5.空焚きの場合、PWR(圧力水型原子炉)の方が危険か?
今回の事故で、BWRの欠点、すなわち、RPV底が抜けやすい構造であったことが幸いして、チャイナ・シンドロームに至る前に、RPVが“絶妙に壊れて”圧が抜け、外部冷却水注入が可能となったわけです。一方、PWRはBWRに比べてRPVが壊れにくいので、非常時に原子炉が空焚きになった場合、RPV圧が抜けず、外部冷却水の注入が困難だとわかります。
原子炉RPVの下部から注水する一次冷却水は、RPV上部から発生する高圧蒸気の圧力を利用して復水器経由で押し込んでいるので、地震や津波で復水器が壊れたらたちまちアウトであることがよくわかりました。
いずれにしても、チャイナ・シンドロームで、東日本が全滅するような原子炉自体の大爆発事故が起きなかったのは、皮肉にも、BWRのRPV底の脆弱性が幸いしたという偶然のなせる奇跡であり、東電の自力での大爆発回避ではなかったようです。
注1:東日本大震災後の福島第一・第二原子力発電所の状況
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/index-j.html
注2:福島第一原子力発電所 プラント関連パラメータ(水位・圧力・温度などのデータ)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/images/00_05161200.pdf
(2011年5月16日 12:00現在)
注3:浜岡原子力発電所1号機原子炉容器下部からの原子炉水の漏えい事故
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-07-02-20
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