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記者の目:原発事故で子供の屋外活動制限=河津啓介
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20110517k0000m070150000c.html
毎日新聞 2011年5月17日 0時00分
4月後半の約2週間、福島第1原発事故で揺れる福島県の教育現場を取材した。そこで見たのは、校舎や自宅が津波の被害を受けていないのに子供たちが自由に外を駆け回れず、古里や友だちと引き離される悲しい現実だ。政府が「心配はいらない」と繰り返しても、親たちの心には響かない。ことは次世代に禍根を残しかねない問題だ。国は言葉でなく、放射線量を下げるなど子供たちを守る目に見える行動が求められている。
文部科学省は4月19日、幼稚園や小中学校などの屋外活動の基準について、毎時0.0038ミリシーベルト以上の場合は1時間以内に制限すると決めて通知した。国際放射線防護委員会(ICRP)が原子力事故の収束段階で適用すべきだと勧告した年間許容量1〜20ミリシーベルトを基に、1日8時間を屋外で過ごしても年間20ミリシーベルトを超えないとして逆算した数値だ。
この発表の2日後、私は文科省などが福島市で開いた保護者向け説明会を取材した。同省担当者や被ばく医療の専門家が「基準を超えても現状では健康に影響はない」と繰り返したが、会場には冷ややかな空気が漂っていた。
◇後手後手に回り、住民の不信増幅
雰囲気が一変したのは、質疑応答に移った時だ。「国際的基準が1〜20ミリシーベルトなら、なぜ1ミリシーベルトにしないのか。将来、影響が生じた時に責任を取れるのか」。小学生の子供を持つ男性が強い口調で指摘すると、大きな拍手が起きた。壇上の文科省担当者たちはうつむくだけだった。
国の基準を巡っては、専門家の間でも意見が分かれる。小佐古敏荘(こさことしそう)・東京大教授(放射線安全学)が4月29日、「(20ミリシーベルトを容認すれば)私の学者生命は終わり。自分の子供をそういう目に遭わせたくない」と政府を批判し、内閣官房参与を辞任する事態まで起きた。保護者の不安は基準発表後にむしろ増している。
自然界で受ける分を除き、一般人が人工的に受ける放射線の限度は年間1ミリシーベルトとされる。福島だけが20倍の許容値を設定された形で「福島の子は多少の火の粉がかかっても仕方ないということか」と説明会で声を荒らげた保護者を「神経質」「感情的」で片づけてはならないと思う。40代の、中学生の母親は「『ない』はずの事故が起きた。『安全』と言われても今さら信用できない」。別の母親は「将来問題が起きた時に『想定外』と片づけられたら困る」と語ったが、当然の思いだろう。
こうした不信感といらだちに、後手後手に回る国の対応が拍車をかけている。
今回の事故で放射性物質が放出されたピークは、原発で水素爆発などが起きた3月中旬だった。だが当時、政府は放射線の拡散予測を公表することはなく、子供たちの屋外活動制限を呼びかけることもなかった。一番大変な時に何もしなかったのだ。そして今回、屋外活動の基準を発表したのは、大半の学校で新学期が始まった後だ。
◇汚染土入れ替え 判断は現場任せ
説明会では、保護者から校庭や砂場の土の入れ替えや継続的な健康調査などを求める声が相次いだ。文科省側は「私たちでは回答できない」などと言葉を濁すばかり。結局、福島県郡山市などが校庭の表土除去を独自に実施し、放射線量の低下も確認された。ただ、校庭から削った土は「放射性廃棄物」扱いとなり、勝手に処分できないという。政府が「安全」と強調する校庭の土が、重機で削った途端に放射性廃棄物となる不可解な事態。そこでわが子を遊ばせる親の気持ちは察するに余りある。
文科省は保護者への文書で「保護者の不安は子供の心の不安定さにつながる」「必要以上に心配しすぎないこと」と、冷静な対応を呼びかけている。それならば、少しでも親や教育現場の負担を減らす改善策を講じるのが先決だ。
「『土いじりはだめ』『花も摘んではいけないよ』と言って、子供を送り出す親の気持ちが分かりますか」。説明会で涙ながらに女性が訴えた声を私は今も忘れられない。
国は考えられるあらゆる手だてを実施しなければならない。校庭、砂場の汚染土については、表土と下層の土を入れ替える文科省の実験で効果が確認されたが、実施については学校の判断に任せる姿勢に終始している。ここは、国が費用や土の処分先を含め責任を持って対処すべきだ。屋外の体育や部活動を、県内でも放射線が低い地域に移動して実施するような取り組みも有効だろう。
福島の親子が求めるのは、他の地域と同じようなごく普通の暮らしだ。目にも見えず、音もなく日常生活を奪う放射能の非情さは、現地取材で実感できた。国は具体策を積み重ね、信頼を取り戻さなければならない。
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