http://www.asyura2.com/11/genpatu11/msg/223.html
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福島第一1号機の圧力容器・格納容器がともに水がカラに近い状態だというニュースを聞いたのは酔って転寝していた12日朝の5時前だった。
前日夕刻から数年ぶりに会った友人たちと酒を呑みながら原発事故をはじめいろいろな話をしていたが、ちょっと眠くなり横になっていたら、若い女の「福島第一の1号機の原子炉圧力容器にも格納容器にもほとんど水がないことがわかりました」(趣旨)とい声が耳に飛び込んできたので、ピクピクとなり、「おいおい、水がないって!おまえんちの風呂の栓が抜けた話じゃないんだぜ」と叫びながら起きた。
声の主は友人が見ていたTVでニュース原稿を読んでいるまだ若い女性アナウンサーだった。
1号機の原子炉圧力容器に水がほとんどないことにはまるで驚かないが(だから冠水作戦)、格納容器までが“シビアな”損傷を被っていたとは...。これまで公表されていたデータはなんだったんだと唖然とした。
そのあとは、友人たちともこの1号機問題であれこれ話を交えた。
昼前に自宅に戻ってしばらく眠り、昼飯を食らいながらその時間帯で原発事故情報がありそうな日テレ系(読売TV)「ミヤネヤ」を見た。
それから、阿修羅にざっとアクセスしたり、寝不足でちょっと疲労感が漂うなか、過去のデータや情報を見ながら1号機の状況をあれこれ考えて過ごした。夜はNHKのニュースを見た。
(転寝からハネ起きた朝のTVニュースによると、1号機カラカラ情報は11日夜7時半頃からの東電の記者会見で発表されているはずなのに、多くのTVと新聞が、12日朝9時半頃からの東電の記者会見が最初の正式発表であるかのように報道をしている。いつもながらの“冷却調整期間”らしい)
■ 12日のTV情報はNHK水野解説委員が“決定打”
その日見たテレビ情報でいちばんの注目は、NHK夜7時のニュースに登場した水野解説委員の「1号機の燃料棒の温度は2700度を超えウランを含むすべてが溶融した」(趣旨)というものだ。
私と違い(笑)NHKの解説委員だから、迂闊な推断、とくに、“危険度をアップさせたり、事故レベルを過大にする”ような内容はたとえ事実であってもなかなかできない立場の水野氏がこのように語るということは、信頼できるスジから確かな情報を得たうえに暴露までが許容されていたことを意味する。
新聞や「ミヤネヤ」は、炉心(燃料棒)が全損壊していることは説明しても、どのレベルの溶融なのかほとんど語っていない。
被覆管が全面的に酸化して燃料ペレットが脱落してしまうレベルなのか、粉末の二酸化ウランを焼き固めたペレットが溶けてしまう(融点2300〜2800℃:ウランそのもの融点は1132℃)レベルなのかで状況はまったくといっていいほど異なる。
「ミヤネヤ」のコメンテータは近畿大学の伊藤さんで、「圧力容器に穴は開いているかもしれないが、ほとんどの燃料は圧力容器の底にたまっていて、水の温度も100℃だから問題ないだろう」(趣旨)と説明しつつ、「とにかく格納容器から漏れた水がどこへ行ったのかを最優先で調査しなければならない。そして、こうなったからには情報を包み隠さずすべて公表して欲しい」(趣旨)と語っていた。
(高い圧力の公表データと違い、穴が開いているのなら圧力容器の圧力は2、3号機と同じようにゲージ圧で0近傍のはず。水の温度は1気圧であれば沸騰しても100℃だから100℃というのはたんにあたり前の話になってしまう。それ以前に原子炉内の水の温度はどの炉でもわかっていないはず)
NHK9時のニュースのコメンテータは、東京大学の“口ひげ”岡本さんだった。保安院の西山さんに通じるところもある表情と雰囲気でひとを小ばかにしたようなちょっとキモイ感じなので、余計なお世話だが、あまりTV向きではないと思うのだが...
彼は、「今回わかった事態は我々のあいだでは3月下旬頃からわかっていたこと」と最初に切り出した。
おいおい、あんたたちがバカじゃないのはわかっているけど今までホントのことを言ってこなかったことを謝ってから、我々はけっして無能なわけじゃないという話をすれば、と思ったね。
岡本さんは、「格納容器の損傷部分を補修すれば安定的な冷却に向かえる」(趣旨)というもので、ほとんど聴く意味がないものだった。
(格納容器の損傷原因を明らかにしなければ、補修しても冠水作戦でまた同じように損壊するかもしれない話なのに、相変わらず、ただただ希望的観測のみを話す人)
ともかく、菅政権では、3月12日に炉心溶融(メルトダウン)という言葉を使った保安院の中村審議官を記者会見担当から外したり、メルトダウンという言葉を使った細野首相補佐官に対する与野党幹部の反応でもわかるが、「メルトダウン」(炉心溶融)と「再臨界」は禁句で御法度の言葉だった。
それが、いまのところ東電サイドからのみだが、公式に「1号機はメルトダウン」(2、3号機もだが)とアナウンスされることになった。
(今回の事故の最高責任組織である政府の原子力災害対策本部からはこの件について今なおまったく説明がない)
それはさておき、1号機について、「全炉心溶融はいつ頃起きたのか?」・「圧力容器や格納容器はいつ頃損壊したのか?」・「注入した大量の水はどこへ行ったのか?」について考えてみたいと思っている。
最後の問題である水の行方は、これまでずっと引っかかっていたある疑問について一つの答えにつながったので、とんでもないことだが、ある意味すっきりした。
メインテーマを考える前に、前提的な問題を説明させていただく。
次のような問題を先に取り上げるのは、1号機の「過去」について認識を共有化するという意味もある。
■ クリントン国務長官訪日と同じ日に公表された「工程表」の意味
1号機のメルトダウンが公式に発表されて以降、東電「工程表」の瓦解が指摘されているが、それはそれで一見もっともらしい指摘なのだが、実のところは大きな錯誤に基づく判断と言うことができる。
それを明らかにするためには、前回アップした投稿と同じように、「工程表」に対する米国政府の関わりを説明しなければならない。
※ 参照投稿
「『Occupied Japan』の現在:原発をめぐる希望と悪夢」
(http://www.asyura2.com/11/genpatu10/msg/815.html)
浜岡原発停止は「原発をめぐる希望」という側面も大いにあるが、今回の問題は「原発をめぐる悪夢」に通じるものである。
NHKサイトニュースは、3月30日付けで、「福島第一原子力発電所の事故について、政府は、事態を深刻視しているアメリカ側の協力を得て、対策に全力を挙げる方針で、各省庁の担当者に在日アメリカ軍なども加わった4つの作業チームを総理大臣官邸に設置して、事態収拾に向けた具体策の検討を本格化させています」(脚注参照)と、官邸内に“米国顧問団”が常駐する態勢になったことを報じている。
4月17日のクリントン国務長官訪日目的のトップは浜岡原発の停止だが、第二の目的が福島第一事故収束に向けたロードマップの入手であったことは、東電が「工程表」を公表した日が17日であったことと国民向け公表に先立ち松本外相が会談で「工程表」をクリントン国務長官に手渡したことからもわかる。
菅首相&原子力災害対策本部長は、ここでも、先行してだが浜岡と同様、米国政府の要請に応えて、高濃度放射能たまり水やそれに起因する意図的な海洋への投棄=放出を含む海洋汚染で深刻な状況にあった4月10日頃、東電にバタバタと1週間ほどで「工程表」を作成するよう命じた。建前は、避難している方々が先行きを見通せ希望が持てるようにというものだったが、本音は4月17日の米国国務長官訪日になんとか間に合わせるためだった。
「工程表」を作成するにしても軽々しくできる話ではなく、事故状況の基本分析から始まり、細かな問題点の摘出と対応策、実施に伴う危険性と効果などを、それこそ国家の持てる総力が喧々諤々を経ながらじっくり時間をかけてまとめ上げなければならない課題である。
「工程表」として公表したからには、しかもそこに第1ステップとして書かれている窒素封入と「水棺」は、“米国顧問団”の助言によるもので、米国国務長官にも約束したことだから、どうしても実行に移さなければならない。
窒素封入や「水棺」は多くのメディアが米国サイドからのアイデアであることが報じられているのでご記憶も鮮明だろう。
米国政府は自分たちの“対策”を政府・東電にきちんと実行させるために「工程表」というかたちで世界に公表させたと思っている。
(米国サイドがほんとうに窒素封入や冠水作戦を有効と考えていたかどうか他に何か意図があったかのは不明。浜岡原発と同様、在日米軍などとの関わりで新たな爆発や大量の放射性物質の飛散をできるだけ避けたいという意図はあったとは思っている)
しかし、「工程表」の最初に示されている窒素封入や「水棺」作戦について、東電やサポート技術者たちは、それらが時間をムダに浪費させることというだけではなく、危険性が高い措置であり、貴重な作業者の被爆量を増加させるだけの愚策だと考えていた。
それを窺い知ることができる格好の記事がある。
週刊文春4月21日号の『東京電力「福島第一原発」の反乱』という特集記事で、福島第一の免震棟にある現場指揮セクションと政府・東電本店の対策統合本部とのTV会議でのやり取りを中心に書かれたものである。
そのP.24に4月4日の会議の内容が書かれている。
『 さらに吉田所長は対策統合本部に語りかけた。
「窒素封入(注入)だけど、本当にやると?」
東電幹部が、その言葉を待っていたかのように即座に答えた。「いち早く1号機に実施しなくてはなりません。NRC(アメリカ原子力規制委員会)もそう強く主張しています。福島第一原発(イチエフ)としては、急ぎ、準備をしてください」
ところが、吉田所長は反論した。
「確かに、窒素封入の重要性は分かる。将来的にもすべきだと思う。しかし、それは今じゃない」
だが東電本社は引かなかった。「将来のリスクを減らすこと、それが重要です」
同経産省幹部によれば、吉田所長は突然激昂し始めたという。
「今、やっと均衡が保たれている。一定の安定状態にすることが可能となった!それは絶妙な均衡、安定だ。にもかかわらず、そこへ、予想もつかないことをやること、それこそ大きなリスクとなる!」
{中略}
やっと原子炉をコントロールできる見通しができた−その確信が吉田所長にはあるのだ。
それがアメリカの突然の横槍によって台無しにされることは許さない−それこそ吉田所長の強い思いのはずだ−経産省幹部はそう疑わなかった。』
続いてP.25には、1号機での窒素封入をめぐってこじれた両者が翌5日のTV会議で再びぶつかる様子が書かれている。
『会議が始まり、東電本社側から窒素封入の話が再び持ち出された。吉田所長は、依然、サングラスを外そうとはしなかった。マイクを握った吉田所長が声を張り上げた。
「もし、格納容器に損傷があったらどうする?窒素を高めに注入したら、蒸気が凝縮して水滴ができ、陰圧になると格納容器内に空気が入る仕組みが働き、爆発条件が満たされる------」さらに所長はまくし立てた。「つまり、それこそ水素爆発の危険性が発生する。そんなリスクは冒せない!」
吉田所長の姿は、昨日までのそれと明らかに違っている。
{中略}
「しかもだ」吉田所長の声が大きくなる。「窒素封入は、微妙で、かつ絶妙な技術的な作業が要求される。低めに注入しても、やはり空気が入ってくるからだ。しかも、その度に、スタッフを現場に行かせざるを得ない。爆発の危険性があるのにだ。それでなくとも、窒素封入という作業は、事実上、ベント(ガスの放出)するのも同じ。リスクがあまりに高すぎる!」
{中略}
「それでも窒素封入をやれと言うのなら、オレたちは、この免震棟から一歩も出ない!ここで見ている!」
経産省幹部の全身を恐怖心が襲った。間違いなく“反乱”だ!いったいどうなるんだ・・・。』
生々しいやりとりが露骨なまでに書かれているこの記事から確認できるのは、窒素封入の必要性は日本側の判断としてはあまりなく米国側の判断で指示されたこと、福島第一の現場責任者が1号機の格納容器に損傷がある可能性を抱いていたことである。
(圧力容器は何らかの損傷があることは3月11日から12日の時点で既知)
米国側が指示した窒素封入は、東電の会長や役員そして海江田経産大臣をはじめとした経産省の幹部がいる前で、“叛旗”を翻さざるをえないほど承伏しがたい対策と吉田所長が考えていたことがはっきりわかる。
福島第一の現場サイトが、原子炉圧力容器と格納容器の両方に“漏れ”を生じさせる傷ができていることをどのレベルであれ認識していたことは重要である。
それは、わざわざ5月11日を待たずとも、「水棺」作戦が失敗することがわかる話だからである。
そして、「水棺」作戦が、無用の長物どころか汚染水の増大させるとんでもないアクションであることもわかる。
結局、米国側の指示に逆らうことができない日本側は、4月6日から窒素封入を始めることになり、4月27日からは「水棺」作戦へと進んでいく。
3月11日の事故発生以来、“口先”枝野官房長官を使って事故がたいしたものではなく放射能の危険性もほとんどないかのように言いつくろい、翌12日から始まったベントに関しても広範な地域に放射性物質が拡散し降下物質から内部被曝の危険性も高いのに可能な対策を説明せず、食品汚染もおざなりの対応しかせずにできるだけ早く“復旧”させようとし、危険と思われる測定や分析や頬被りしてやらず、学校汚染問題は労とカネがかかるのがイヤなのか避けてきた一方で、米国政府からの指示や要望には唯々諾々と従う管政権は、何よりもどこよりも最初にメルトダウンしてしまった組織だと断じざるを得ない。
(別に自民党主導政権だったらそうじゃないという主張ではないので誤解されないように)
※ 参照ニュース
NHK「福島第一原発 米の協力得て対策へ」
(http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20110330/saishin16.html
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