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国・東電の責任で全面的被害補償・生活再建を
今こそ攻防の正念場だ
死者・行方不明者を合わせて二万五〇〇〇人、現在も一二万人にのぼる避難民をもたらす惨事となった東日本大震災と、収束の方向性が見えず、放射能を陸、海、大気中に放出し続けている福島第一原発災害は、確実に政治・社会・経済のあり方を根本的に問い直し、転換させるための転換点となっている。多くの人びとの間に、そうした意識が生み出されつつあることは確実である。
五月六日菅直人首相は、東海地震の震源域の真上に位置する静岡県御前崎市の中部電力浜岡原発について、定期検査中の3号機と現在運転中の4、5号機を含め、すべての原子炉を二〜三年後とされる防潮堤の完成まで稼動停止するよう中部電力に要請した。政府機関も「向こう三〇年以内にマグニチュード八クラスの巨大地震が八七%の確率で発生する」と警告していた浜岡原発は、最も危険な原発として「即時運転停止」をとりわけ強く求められていた。しかし中部電力は四月二八日に、津波によって制御不能に陥った福島第一原発の惨事を前にして、現在停止中の3号機の運転を七月までに再開することを前提にした「業績見通し」を決定していた。
菅首相の五月六日の要請は、対象が浜岡原発に限られ、しかも津波対策のために防潮堤が完成するまでという期限付きのものであり、決して稼働中の全原発の見直し・停止に踏み込もうとするものではない。その点では大きな限界を持っている。しかしたとえ浜岡に限られ、しかも時期を区切ったものであったとしても、中部電力の3号機稼働再開方針を否定したことは、反原発運動にとって重要な成果であると言わなければならない。
他方、反原発運動にとって現時点で批判の対象となっている主要テーマの一つは、四月一九日に文科省が設定した学校の校庭の利用基準「年間二〇ミリシーベルト以下」問題である。この点に関しては内閣官房参与の小佐古敏荘・東大大学院教授が四月二九日に記者会見を開いて批判し、辞表を提出したことでメディアでも大きく取り上げられることになった。
放射線安全学が専門の小佐古参与は辞任にあたって「校庭の線量基準は通常の放射線防護基準に近いもの(年間一ミリシーベルト、特殊な例でも年間五ミリシーベルト)で運用すべきで、緊急時(二〜三日、あるいはせいぜい一〜二週間)に運用すべき数値をこの時期に使用するのは全くの間違いだ。特別な措置をとれば数カ月間は最大、年間一〇ミリシーベルトの使用も不可能ではないが通常は避けるべき」とのコメントを出した。小佐古教授はさらに年間二〇ミリシーベルトについて「とんでもなく高い数値であり、それを容認したら私の学者生命は終わりだ、自分の子どもをそんな目に遭わせるのは絶対に嫌だ」と訴えたという。彼は政府の原発災害対応が「法律や指針を軽視し、その場限りだ」と強く批判している。
実際、米国の「社会的責任のための医師の会(PSR)」は、五月二日に声明を発表し「放射線に安全なレベルはなく、子どもや胎児はさらに影響を受けやすい。年間二〇ミリシーベルトは、子どもの発がんリスクを二〇〇人に一人増加させ、このレベルでの被曝が二年間続く場合、子どもへのリスクは一〇〇人に一人となる」と批判している。
批判にさらされている「二〇ミリシーベルト基準」は文科省に助言を求められた原子力安全委員会の承認を経たものであり、政府は「最終判断」として撤回しようとしていない。ここでも被害のレベルをできるだけ少なく見積もり、事態の深刻さを隠ぺいすることで「安心・安全」意識を植え付けようとする典型的な官僚主義が示されている。住民、とりわけ子どもたちの生命と健康を守るためにも、このような官僚的自己保身の壁を打ち破らなければならないのだ。
どのような「復興」なのか
東日本大震災をめぐる被災者住民を中心にした労働者民衆の闘いは、被害の全面補償、生活と雇用の再建、すなわち生存権をめぐる鋭い攻防として突きつけられている。それはいかなる「復興」なのかをめぐる闘い、すなわち人びとの暮らしと権利、地域の復興をめぐる二つの道の闘いなのである。
菅首相が発足させた復興構想会議(議長・五百旗頭真防衛大学校長)は四月一四日に初会合を開いた。復興構想会議は六月末に第一次提言をまとめ年内に最終提言を出すことになっており、この提言をもとに政府方針が決定され、立法化にも取り組むことになっている。初会合で五百旗頭(いおきべ)議長は、「創造的復興」「全国民的な支援と負担」「明日の日本の希望となる青写真づくり」などの柱を提起した。この中で五百旗頭は「復興に要する経費は阪神淡路大震災の比ではなく、国民全体で負担すべき」として震災復興税の導入を提起した。菅首相は、その財源を消費税増税を軸に検討するとしている。
さらに消費税増税と社会保障の「一体改革」を課題にした菅政権の「集中検討会議」が四月二七日に再開されたが、その中では一〇兆円以上に達する復興予算のために、社会保障費の全般的抑制が大きなテーマになっている。とりわけターゲットになっているのが医療費・介護費の抑制である。たとえば医療費については軽い症状なら医療保険の対象外として自己負担を増やす、うがい薬や湿布薬を保険の対象外とする。また介護については要介護度が低い人を介護保険の対象外とする案も出ている。厚労省幹部は「もう社会保障の充実ではなく、効率化、合理化をどう進めるかという話にしかならない」と語っている(四月二四日、朝日新聞)。
このようにして「復興」をめぐる論議は、消費税の大幅増税、社会保障費の大幅切り捨てによる生活破壊のいっそうの促進という方向に誘導されようとしているのだ。
被災地の「復興」それ自体においても、「東北の食料基地化」という名目で農地の集約と大規模化、規制緩和による新規参入の促進、漁港の集約と加工施設・市場の併設による一貫生産拠点化といった構想が打ち出されている(四月一七日、「朝日」)。それは小規模農漁業を解体し、地域を解体して大資本のための拠点を新たに作り出す徹底して新自由主義の論理に貫かれたものに他ならない。
こうした構想は、決して地域・被災民を主体とした「復興」ではない。「明日の日本の希望となる青写真」とは、地域をベースにした工業・農漁業・商業の再建、生活と雇用、医療・福祉・教育のためのプランを住民の総意で作り上げ、それを財政的な面でも国家が全面的に支援することでなければならない。住居・雇用を奪われた被災者の生活の全面的保障にむけた法改正がそのための前提になるだろう。こうした生活と地域の再建のための闘いは、大資本のための新自由主義的「復興・成長」戦略との闘いとならざるをえない。
根本的変革の道を探ろう
いま東日本大震災と福島原発災害をめぐる労働者・市民の運動は、被災者支援のためのボランティア活動や、国家や資本の原発推進政策を批判し東電の責任を追及する活動として新たな展開をみせている。
とりわけ「原発いらない」の運動は、四月一〇日の高円寺デモ、五月七日の渋谷デモへの一万五〇〇〇人の結集に表現されるダイナミズムを獲得しはじめている。それは一方では、不安定雇用と貧困、格差社会に対抗する運動を社会的基盤としながら、ツィッターなどを通じて広がった「デモ初参加」の新しい世代を結集している。こうした脱原発・反原発のデモは北海道から九州にいたる全国で、これまでにない結集を実現しつつある。
この運動は同時に一九八〇年代以来の反原発運動の活動家、あるいは環境NGOグループ、そしてさらに古い世代の反戦運動、労働運動、市民運動・社会運動の活動家などもそこに合流させる大きな可能性を作り出しつつある。
六月一一日、「高円寺デモ」の流れ、脱原発・反原発運動の活動家たち、「三・一一」以後、福島第一原発災害の衝撃によって新たに結成された労働運動・社会運動・市民運動の活動家たちを軸とした「福島原発事故緊急会議」の人びと、そしてNGOグループを中心とした脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会(eシフト)の人びとが中心になり、三・一一からまる三カ月にあたる六月一一日(土)に全国同時に各地で「6・11脱原発一〇〇万人アクション」(http://nonukes.jp)を呼びかけている。
政府、民主党、自民党、公明党、みんなの党など主要議会政党、そして財界から連合にいたる体制側勢力は動揺しながらも原発開発を不可欠のものとする「成長戦略」にあくまで固執している。資本主義システムの深刻な危機の下で、かれらは被災者や被曝労働者を切り捨てて、人びとの生の営みや地球環境の持続可能性とは両立し得ない原発推進戦略にしがみつかざるをえないのだ。
全世界の人びとも「ヒロシマ・フクシマを繰り返すな」を合言葉に、各国政府に原発開発政策の放棄あるいは見直しを強制する大きな圧力をかけている。世界の人びとがかたずを飲んで日本の運動に注目している。われわれは自らの責任においてこの攻防に勝ち抜き、原発推進勢力を追い詰めるダイナミックな運動のうねりを作り出そう。
この闘いは、同時に原発に象徴される抑圧と搾取、差別や破壊と戦争のシステムである資本主義の変革と新しい社会システム=「二一世紀の社会主義」への挑戦を民衆的な討論課題として提起する土台を据えるための闘いである。
六・一一脱原発一〇〇万人アクションの成功へ全力を上げよう。
(五月九日 河村恵)
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