30. 2011年5月13日 00:49:25: cgjAQESaNE
@体内放射能は無限に蓄積される?「改訂版放射能そこが知りたい(安斎育郎著)+原発事故緊急対策マニュアル(日本科学者会議福岡支部、核問題研究委員会 編より」摂取と排泄はやがてバランスする。 放射能で汚染された食品を、来る日も来る日も食べ続けたとしましょう。この場合、体の中の放射線は、どんどん蓄積され続けるのでしょうか。 たとえば、セシウム137の半減期は30年です。放射能が半分に減るのに30年もかかる。ちょっと考えると、こんなに寿命の長い放射性核種をつぎからつぎへと体内に取り込めば、どんどんたまっていきそうです。本当はどうなのでしょうか。 この問題を理解するには、生物学的半減期や有効半減期のことを知る必要があります。 セシウム137を例にとりましょう。たしかに、この核種の放射能が半分に減るのに要する時間は30年ですが、私たちの体の中に入ってきたセシウム137は、そこにいつまでもじっとしているわけではなく、尿や糞から排泄されることによって、体の外に追い出されていきます。日本人の場合、セシウムを100だけ摂取したとすると、そのうちの半分を排泄によって体外に追い出すのに約3カ月必要です。これを「生物学的半減期」というのですが、幸い、セシウム137の場合、物理的な半減期が30年と長くても、生物学的半減期が3か月程度と短いために、体内に取り込まれたセシウム137は、割合に速く追い出されてしまうのです。 体内に取り込まれた放射能が100あった場合、これが、物理的減衰と生物学的排泄の両方によって、とにかく半分の50に減るまでの時間のことを「有効半減期」と言います。物理的半減期と生物学的半減期と有効半減期の関係は、つぎのとおりです。 有効半減期=(物理的半減期×生物学的半減期)÷(物理的半減期+生物学的半減期)=(30年×0.25年(3か月))÷(30年+0.25年(3か月))=0.247933884年 *0.247933884年=約3カ月 セシウム137の場合には、物理的半減期が生物学的半減期よりも圧倒的に長いので、このような場合には、有効半減期はだいたい生物学的半減期と同じになります。 摂取と排泄のバランス セシウム137を毎日食べ続けると、体内量は無限に増えていきそうな気がしますが、実際には、ある時点までくると摂取量と排泄量がバランスして、それ以上は増えなくなります。逆の言い方をすれば、摂取量と排泄量がつりあう状態になるまでは、体内量が増え続けると表現してもかまいません。ちょっとした理論的考察によって、平衡状態での体内放射能(ベクレル)は、次式で求められることが知られています。 体内放射能の平衡値=1.44×(1日当たりの放射能摂取量、ベクレル/日)×(有効半減期、日) カリウム40の体内量 私たちは天然の放射性核種であるカリウム40を、1日50ベクレル程度食べています。この元素の生物学的半減期は約60日、物理的半減期12億6,000万年ですから、有効半減期は60日となります。したがって、下に計算されているように、私たちの体内には、カリウム40が4300ベクレル程度は、たまっている計算になります。実際には、1日当たりのカリウム摂取量や生物学的半減期にはかなりの個人差がありますので、誰でもピッタリ4300ベクレルというわけではありません。しかし、大人なら4,000〜5,000ベクレルの体内放射能をもっていることは、実際に測定した結果としてもよく確かめられた事実です。 当然、1日あたりの摂取量が多ければ多いほど、また、有効半減期が長ければ長いほど、平衡状態に達したときの体内放射能のレベルは高くなります。しかし、それでも、無限に増えるわけではありません。 平衡時の体内放射能(ベクレル)=1.44×(1日当たりの放射能摂取量、ベクレル/日)×(有効半減期、日) (例)カリウム40(天然放射性核種) 1日あたりの平均摂取量:約50ベクレル/日 有効半減期:約60日 ゆえに、私たちの体内のカリウム40の放射能は、 体内量(ベクレル)=1.44×50(ベクレル/日)×60(日)=4,300(ベクレル) 放射性核種の種類と特徴 放射性核種:プルトニウム239、物理的半減期:24,400年、生物学的半減期:200年(骨)・500日(肺)、有効半減期:198年(骨)・500日(肺) 放射性核種:ストロンチウム90、物理的半減期:29年、生物学的半減期:50年(骨)・49年(全身)、有効半減期:18年(骨)・18年(全身) 放射性核種:ヨウ素131、物理的半減期:8日、生物学的半減期:138日、有効半減期:7.6日(甲状腺) 放射性核種:コバルト60、物理的半減期:5.3年、生物学的半減期:9.5日、有効半減期:9.5日(全身) 放射性核種:イットリウム90、物理的半減期:64時間、生物学的半減期:38年(全身)・49年(骨)、有効半減期:64時間(全身)・64時間(骨) A何となく不気味な内部被曝「改訂版放射能そこが知りたい(安斎育郎著)より」 放射線の浴び方には、いろいろあります。時間的に言えば、一度にどっと浴びたのか、それとも、同じ線量をだらだらと少しずつ浴びたのか、という問題もあります。また、全身に浴びたのか局所に浴びたのか、というのも重要な点です。と同時に、体の外から浴びたのか、それとも体内汚染をおこした放射性物質によって、体の中から浴びたのか、という分け方も重要です。よく内部被曝の方が外部被曝より危険なのではないかという疑問を耳にします。体の内側から浴びる方が不気味なので、その気分はわかるような気がします。しかし、実際はどうなのでしょうか? たとえば、生殖腺が内部被曝で1シーベルト浴びた場合と、外部被曝で1シーベルト浴びた場合を考えてみましょう。両者の影響に違いがあるでしょうか、それとも同じでしょうか? 体の外から生殖腺が浴びる場合には、多分、ガンマ線のような透過性の放射線のことが多いでしょう。稀には、かなりエネルギーの高いベータ線の被曝によることもないとはいえません。その場合には、ベータ線は生殖腺に当たって主として表面近くで吸収される可能性が強いので、ガンマ線被曝の場合のように生殖腺全体がほぼ均等に浴びるということにはならないかもしれません。 一方、生殖腺自身に取り込まれた放射性核種による被曝の場合には、どういう放射性核種かに応じて、アルファ線の場合もあるだろうし、ベータ線の場合もあるだろうし、ガンマ線の場合もあるでしょう。あるいは、それらの組み合わせの場合もあるに相違ありません。とくにアルファ線の場合などは、それを放出する放射性核種が、生殖腺内でどういう分布をしているかによって、被曝線量の空間分布もずいぶん違ってくる可能性があります。 このように考えてくると、ひとくちに「生殖腺が1シーベルト浴びた」などと言っても、線量の分布などが微妙に異なる可能性があるので、そう簡単な話ではありません。しかし、今のところ、同じ臓器が同じシーベルト浴びたのなら、それが外部被曝によるものであれ内部被曝によるものであれ、生物学的な障害度に基本的な差はないと考えられています。とくに、浴びる放射線が両方ともガンマ線とかベータ線とか同じである場合には、そこにできた放射線の傷跡が外から来た放射線によるものか中から出た放射線によるものか、区別する根拠はまったくありませんので、同じものとして考えていっこうに差し支えありません。 もちろん、かたや、骨に入り込んだプルトニウム239によって骨髄に1シーベルト浴びた、というケースと、かたや、外部被曝のベータ線によって皮膚に1シーベルト浴びた、というケースを同等に扱うなどということはナンセンスです。同じ臓器がほぼ似たりよったりの浴び方で放射線を被曝した場合には、それが外部被曝によるものであれ内部被曝によるものであろうが、本質的な差はないのです。 全身線量の求め方 いろいろな臓器が不均等に被曝したような場合、全身線量を求めるにはどうすればよいでしょう。単純に各臓器の線量を加え合わせばよいでしょうか。そう簡単ではありません。なぜならば、臓器によって、遺伝的影響や癌の危険度が違うからです。発癌の危険性が少ない臓器が1シーベルト浴びるのと、その危険性が大きい臓器が1シーベルト浴びるのとでは当然意味が違ってくるので、各臓器の重要性に応じて重みづけの係数(荷重係数)をかけて合計しなければなりません。下の表は、国際放射線防護委員会がこうした目的のために設定した係数の値です。 実行線量当量とは? 外部被曝であれ、内部被曝であれ、いろいろな臓器が異なる割合で被曝した場合には、この表の係数を乗じて重みづけをしながら合計線量として同じ尺度で比較することができます。なかなか面倒なことですが、そのようにして計算された線量の値は共通に比較ができて便利なので、とくに「実行線量当量」と呼ばれています。言うまでもないことですが、下表の係数を全部加え合わせると、当然1.0になります。 *荷重係数 生殖腺:0.25、乳腺:0.15、赤色骨髄:0.12、肺:0.12、甲状腺:0.03、骨表面:0.03、残りの組織:0.30 http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/01/01080428/02.gif 上のURLの図の「人工放射性降下物の経年変化」にあるとおり、米ソなどの核実験により1960年代の東京でのセシウム137の最大値は約800,000mBq/uであり、1985年以降2003年までの最大値約10mBq/uの実に約80,000倍である。 チェルノブイリ原発事故の時でも東京でのセシウム137の最大値は約100,000mBq/u強であったが、1985年以降2003年までの最大値約10mBq/uの約10,000倍である。ただし、1年あまりで約100mBq/uまで減少している。 つまり、チェルノブイリ原発事故の時よりも、米ソなどの核実験による1960年代のほうが、東京でのセシウム137は約8倍多かったことになる。 そして、今回の福島原発事故は、公式には「チェルノブイリ原発事故の約10分の1」となっているが、西村肇(にしむらはじめ)東大名誉教授によると「チェルノブイリ原発事故で放出された放射能物質の総量の10万分の1の放射能物質が、福島原発事故では放出された。100日間の合計でも、千分の1の量である」としている。 http://onihutari.blog60.fc2.com/blog-entry-44.html のとおりにカリフォルニアで検出されたプルトニウム239が福島原発事故によるもので、太平洋を越えて遥か遠くのカリフォルニアにまで飛来したのであれば、その逆のことも起こった可能性があり、米ソなどの核実験により、1960年代の東京でのプルトニウム239は、今回の福島原発事故よりも多かったはずである。 しかし、1960年代の東京近郊で幼少時代を過ごして、現在も健康に過ごしている人は大勢いる。 それでも福島原発事故は、チェルノブイリ原発事故と同じ「レベル7」じゃないか、と主張する人もいるかもしれない。しかし、結論からいうとあれは「ヤラセ」である。 そもそも安全だ、安全だと言いながら日本政府(原子力安全・保安院)が自らレベル5(2011年3月18日)からレベル7(2011年4月12日)へ引き上げると発表した時、何か矛盾を感じた。そして、時系列で整理し考えた。 東京電力は2011年4月4日、福島第一原発から低濃度汚染水の海洋投棄することを発表・開始した。 西村肇(にしむらはじめ)東大名誉教授が、「福島原発事故の原因の究明」という論文を書き、2011年4月8日、記者会見した。 西村先生は、2011年4月8日に、はっきりと、「チェルノブイリ原発事故で放出された放射能物質の総量の10万分の1の放射能物質が、福島原発事故では放出された。100日間の合計でも、千分の1の量である」ということを、厳密な計算式を使って証明した。 日本政府(原子力安全・保安院もそれぞれ独自に数値を2011年4月12日に発表した)は、嘘八百の発表を、西村論文のあとに、慌てて行った。その内容は、「チェルノブイリ原発事故で放出された放射線量の10分の1が、福島原発事故で放出された。だから、事故レベルは7だ」というものだった。 2011年4月12日、原子力安全・保安院と原子力安全委員会は合同会見を開き、従来の暫定評価のレベル5(2011年3月18日)からレベル7へ引き上げると発表した。事故発生以降の放射性物質の総放出量は、原子力安全・保安院の推計で37万テラ(1兆倍)ベクレル、原子力安全委員会推計は63万テラベクレルで、レベル7(数万ベクレル以上)に相当するという。チェルノブイリ原発事故は520万テラベクレルとされる。 そして嘘の過大評価を行った理由は、「震災発生当初、被災者の規律正しさや忍耐強さを称賛した海外メディアは、2011年4月4日に低濃度放射性物質汚染水の海洋投棄が始まったことを境に、日本政府の危機管理批判を強めていた。レベル5で低濃度放射性物質汚染水の海洋投棄をやれば、日本は、太平洋周辺国から袋叩きにされる。海洋汚染に対する膨大な賠償請求を避けるために、役人も東電も、何が何でもレベル7にする必要があった」、とすると全ての辻褄が合うと思われる。 国際原子力事象評価尺度の「基準1事業所外への影響:放射性物質の重大な外部放出:ヨウ素131等価で数万テラベクレル以上の放射性物質の外部放出」という尺度を悪用したのである。 つまり現在の国際原子力事象評価尺度では「数万テラベクレル」でも「520万テラベクレル」でも同じ「レベル7」である。 現在「レベル8」以上の国際原子力事象評価尺度は存在しない。 海外向けには「レベル7という重大な事故のため止むを得ず低濃度放射性物質汚染水の海洋投棄を行った」と言い訳し、国内向けには「でも福島原発事故はチェルノブイリ原発事故で放出された放射線量の約10分の1だから、福島原発事故はチェルノブイリ原発事故ほどひどくない」というダブルスタンダードである。 仏アレバ社の高濃度放射性物質汚染水を処理できるシステムがもっと早く稼働できれば「低濃度放射性物質汚染水の海洋投棄」は、やる必要がなかった措置である。 さらにいうと、チェルノブイリ原発事故は臨界爆発が起こって、放射線の中の中性子線までもが飛び交った。福島原発事故はあくまでも中性子線以外の放射線(アルファ線、ベータ線、ガンマ線)が漏洩しているのをどう封じ込めるか、という問題である。 福島原発事故では、自衛隊員が22kgの鉛を装備して作業をしていた。鉛で防御できるのは、あくまで中性子線以外の放射線(アルファ線、ベータ線、ガンマ線)までであり、中性子線を防御することはできない。 中性子線を防御するには30cm以上のコンクリートや水などが必要である。 つまり、福島原発事故では、臨界爆発には至っておらず、作業できないほどの中性子線が飛散するまでの状況にはなっていない、ということである。 チェルノブイリ原発事故と福島原発事故は規模・内容とも違うのである。
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