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「浜岡以外も見直しを」 元地震予知連会長が警鐘
2011年5月9日 07時06分
東海地震の想定震源域内にある中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)について、政府はついに運転停止を要請した。二〇〇一年まで十年間、地震予知連絡会の会長を務め、その後、浜岡原発廃止を訴え続けた地震学者の茂木清夫さん(81)=東大名誉教授=は、今回の決断を評価しつつ「浜岡以外も見直すべきだ」と、さらなる警鐘を鳴らす。 (宇佐見昭彦、写真・木口慎子)
−浜岡原発の停止要請をどう思ったか?
「良かった。本当はもっと早いほうが良かったが、とにかく止めろと行動で示した。(想定以上の地震や津波が)今までないから今後もないとはいえない、ということを今回の地震で教えられた」
−東日本大震災は、想定を超えるマグニチュード(M)9の超巨大地震だった。
「耐震上で想定するMとか活断層とかは、全く仮想の話であって、これ以上の地震は起きないと勝手に人間が決めて『ないと思っていた』では困る」
−人間のおごりか?
「おごりというより無知。地球全体ではチリ地震(一九六〇年、M9・5)、アラスカ地震(六四年、M9・2)、アリューシャン地震(五七年、M9・1)、カムチャツカ地震(五二年、M9・0)とM9以上が起きている。日本も環太平洋地震帯の立派な一部。起きて不思議はない。東京電力も国も『地震が来ても絶対安全』と言ってきた。根拠を与えた専門家も含め、変わってもらわないと」
「地震も物の破壊もまだよく分からないことが多い。原子炉本体は頑丈でも、複雑な配管や装置が取り巻く複合体だ。弱い所に力が集中したら何が起きるか分からない。絶対大丈夫なんてことは絶対言えない。福島の原発も特別に(危険と)思っていた人はいないのでは。原発全体がそういうものだから」
−浜岡原発の運転差し止め訴訟で、中部電力は「東海でM9はない」と主張した。
「それは通用しない。東海地震単独ではM9にならないが(東南海・南海などと連動し)広域に起こらない保証はない。歴史的にも一緒に起きている。ただ、そんなに大きくなくても危険性はあるわけで、M9だけの問題ではない。M7でも直下で起きれば怖い」
「東京電力の柏崎刈羽原発が被災(火災、放射能漏れ)し、想定を大幅に超す揺れを記録した二〇〇七年の新潟県中越沖地震はM6・8。M7・4〜7・5だったら福島のようなことが起きたかも。浜岡以外も徹底して見直す、あるいは止めるという検討が必要だ」
「日本は唯一の被爆国で、第一級の地震多発国。そういう所で『原発実験』をやってはならない。太陽エネルギーとか風力とか、ほかの手を一生懸命みんなで考えようよ、ということじゃないかね」
<もぎ・きよお> 1929年、山形県生まれ。東大理学部地球物理学科卒。東大地震研究所教授、同所長、地震予知連絡会会長、東海地震の前兆を監視する「地震防災対策強化地域判定会」の会長などを歴任。物の「破壊」を研究する実験岩石力学の専門家でもある。
<浜岡原発と東海地震> 1969年、東海地震の可能性を茂木氏が指摘。浜岡1号機は翌70年設置許可、76年稼働。東海地震に備え大規模地震対策特別措置法が施行された78年には2号機も稼働。以後、5号機まで増設した。現在1〜2号機は廃炉手続き中。6号機の新設計画もある。
東海地震は単独でM8、東南海・南海地震との連動でM8・7程度を想定。さらに日向灘などが連動すればM9があり得るとの指摘もある。中部電力の想定はM8・5まで。
(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011050990070611.html
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