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原発事故賠償を確実におこないつつ、国民の負担は極小化し、電力の供給をストップさせない。この問題に関しては「東電」と「銀行」の思惑が先行し、それに翻弄されて、政府が揺れています。
東電からすれば、巨額の賠償を自分自身で背負わなくてはいけなくなるのか、それとも、国民の税金を投入してもらって、それを使えるようになるのかという瀬戸際。そして東電自身の存続もかかった大きな話です。東電からすれば当然、早めに税金を投入してもらえるならそれに越したことはないと考えています。
そうなるとこのままでは増税や電気料金の値上げということになってしまいますが、もちろんそれは筋が通らないおかしな話ですので、きちんと声を上げ、異議を唱える必要があります。ただ、声をあげるにしても、どのような考え方に沿ってこの問題に挑んでいいのか、問題がやや複雑なだけに、どうしたらいいのかわからない方も多いと思います。この議論は連休明けに活発化する見込みですが、先日、経産省の古賀茂明さんがいちはやく「古賀プラン」をテレビ番組で発表しておられました。
この「古賀プラン」、議論のたたき台としてすばらしいと思います。古賀さんは、カネボウやダイエーの経営再建を手がけてきた方ですが、昨年末公務員改革に及び腰の民主党と衝突し、さらに民主党の仙谷氏に恫喝された末に閑職に飛ばされてしまっております。このようなたいへんな経験をしながらも、物腰はやわらかく、正しいことはあくまで正しいと貫き通す方です。
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――以下、文字おこし部分の転載です
■『古賀プラン』解説
古賀茂明さん(経済産業省 大臣官房付)
ダイエー、カネボウなど事業再生のプロフェッショナル
■古賀ポイント
すべての前提は、以下の2ポイントです。
1 国民の負担を極小化すべき
2 守るべきは被害者と電力供給
これら前提となる2ポイントについてまず解説します。
1 国民の負担を極小化すべき
古賀さん:今、政府は、東電に一義的に責任がありますと言ってますが、その次にですね、それでも払えないんであれば、政府が責任を持ちますとこう言っているんですね。ところが、政府が責任を持つっていうのは、これは国民が税金や料金を負担して持つっていうことです。いきなり東電から国民にいっちゃうんですが、実はその間に、普通の企業であれば、株主とか債権者という、事業でお金儲けをしていた人たちがいるわけです。そういう人たちの責任が問われるのが普通なんですけれども、今の議論ではそこがなくなっちゃってるんですよね。ですからその分、国民の負担が大きくなります。数兆円単位で。で、そこの順番をはっきりさせておいた方がいいんじゃないかというのが、ひとつです。
2 守るべきは被害者と電力供給
今、大事なのは、ひとつは補償金をちゃんと支払うということ。もうひとつが、停電を起こさないということ。この2つを守ればいいんですけれども、なぜか「そのために、東電を守りましょう」という風に、話がすりかわってしまってるんですね。「東電をちょっとでもいじめると停電が起きるぞ」とか、あるいは「補償金が払えないぞ」などと脅しながら議論をすり替えて、今の構造をそのまま温存しようという形に進みつつあるということですが、ここで大事なのはやはり「被害者」と「電力供給」であって、「東電そのもの」でも「銀行」でも「株主」でもなく、その順番をはっきりさせておく必要があるということです。
■賠償責任に関する現状
政府 VS 東電+金融機関
古賀さん:東電は今まで非常にいいビジネスをやってきたわけですね。「独占」で「コストの上に自動的に利潤を上乗せ」するというやり方で、これはもう「絶対に儲かる」という仕組みです。原発なんかも甘い基準で作らせてもらって、その利益で役員とかはものすごい給料をもらっていると。非常にいいビジネスですから、これを温存したい。で、そのためには「補償金なんかはなるべく少なくしてくれ」と。今はもう、「免責だ」なんてことまで言いはじめています。
それから、金融機関はですね、数兆円単位で(東電に)お金を貸しています。(東電の)株も持っています。ですので、これに傷がつくと、自分たちが損するという問題があります。特に、3月末にですね、2兆円近く皆で貸したんですね。株が暴落する中で。というのは、東電というのは非常にいいお客さんなんで、将来の取引を断れないようにするために、という思惑で貸したんですけれども、これがもしカットされるようなことになれば、経営者の責任問題ということになりますし、株主代表訴訟で、巨額の賠償というものを(金融機関側の役員が)個人で請求される可能性があるということで、金融機関の経営陣は心配していると。従って、それをですね、今、そんな激しいことをやると、金融市場が大パニックになるぞ、という「脅し」をかけている。東電は「いじめると停電になるぞ」と。こういう風に言って、両方が「脅し」をかけているのに対して、政府は、ひとつは国民との関係ではですね、自分たちの責任を問われたくない、というのがありますから、当面は東電を悪者にしておいたほうが得だ、という気持ちはあるんですけれども、これ実は事業再生のプロがいないもんですから、「電力」と「金融機関」に脅されてですね、「やっぱり大変なのかな、わかりました、じゃぁ政府がなんとかします」ということを言い始めているんです。
キャスター:さきほど古賀さんがおっしゃっていた「まもるべきものは被害者」なんていいう話がまったく入ってないですね。
■古賀プラン:第一段階『止める』
【資金の流出を止める】
古賀さん:今、「停電が起きるぞ」と言って騒いでいるわけなんですね。それと「金融不安になって取り付けが起きる」とか、そういうことが言われているので、じゃぁ、それを止めればいいじゃないか、ということです。JALなんかの場合は、まさに会社更生法を適用してですね、資産の保全命令というのが出ました。それと同じような状況にして、とりあえず資金がどんどん流出するというのを防ぐ。銀行にどんどん借金を返しちゃって、フタを開けてみたら補償金の原資がないということがないように、一部の債権者だけに金を払うということがないように、まず止める、ってことが必要になります。
で、一方で、キャッシュはかなり潤沢に回るんですね。東電の場合、JALと違ってお客さんが逃げられないので、毎月すごいお金が入ってきます。ですからそんなに苦しくないんですけれども、まぁ、一時的に資金がショートするということもありえますので、電力供給のための資金であれば、政府がその資金調達を保証しますよ、という仕組みをつくればいいんです。JALの場合は、企業再生支援機構を使って、万一というときはそこが支援する、という体制をとりました。
【破綻処理と同じ考え方で】
東電は今、自分だけで払えない、ともう言い出しているんですね。賠償金というのは、借金と同じです。払わなくてはいけないものですね。企業が払わなくてはいけないものを払えないと。経営者が言っているわけですから、これはもう実質的には「破綻」とみなされても仕方ないということです。ですから、破綻処理と同じ考え方で、やっていくということです。
【止めてはいけないもの】
補償金の方はですね、今から東電と政府との間で、どっちの責任だ、どこまでだ、という話がこれから始まりますけれども、こんなことやっている場合じゃないと思うんです。被災者からみれば、どっちでもいいから早く払ってくれということになりますので、これはもう法律改正してですね、東電だけじゃなくて、東電でも政府でもどちらにでも請求できますと。つまり連帯債務にすると。そういうことにして、東電なのか政府なのかというのは「後で」調整する、というスキームに早く切り替えた方がいいと思います。
株主を守るか、銀行を守るか、という議論を今していますが、そういうのではなくて、まずはこっち(被害者への補償金)を払う。後で責任の順番をゆっくり決めればいいじゃないかということにした方がいいと思います。
■古賀プラン:第二段階『再生』
【原発は徐々に減らす方向へ】
古賀さん:原発は、これからどんどん作ることになっていたんですが、これはもう、見直しということになってますね。ですから、普通に考えると、時間をかけて、耐用年数がきたところから減らしていく。その分を他の再生可能エネルギーなどで埋めていく、ということがどこまでできるかということを、やりながら判断していくしかないと思いますけれども、少なくともこれまでの予定通りに原発を推進していきます、ということにはならないと思います。
キャスター:原発を民間の企業が持つことに関しては?
古賀さん:原発だけ切り離して国有化ということもあると思いますけれども、それも、全体のですね、スキームを考える中で、1年〜2年の時間をかけて決めていけばいいと思います。あんまりあわてて決めようとすると、結局「今のままでいきましょう」ということになってしまいますので。
【賠償原資について】
古賀さん:もちろん、東電自身のリストラというのがあります。そして「株主の責任」と「銀行の債権カット」をちゃんとやるとおそらく4兆円から5兆円は財源が出てきます。ですから、これをやるかやらないかでは、国民負担にかなりの違いが出てきます。
国民のみなさんは、「被災者のためだったら(電気料金などが値上げされても)自分たちも少しは協力するよ」という気持ちはあると思うんですけれども、今やってるのは株主や銀行を守るための分を国民が負担してくださいね、という話なので、これは変なんです。
リストラもですね、まずは経営者。おそらく全員辞めていただくということになるでしょうし、退職金を半額にします、とか言ってますけれども、いや、それはないんじゃないですか、と。全額でしょうと。あるいは年金も返上したらどうですかと。給料は下げますとか言ってますけれども、どうせ辞めるまでの間、そんなに長くはないですから、もう、タダで働いてもいいんじゃないかという議論は出てくるんじゃないかと思います。従業員の方は申し訳ないけれども、それでもやっぱりリストラというのは必要になってくると思います。福島の現場で従事している方は別ですけれども。株主はこれ、株券が紙切れになるっていうことです。JALの時と同じですね。「大変だ」と言いますけれども、JALの時は何の混乱も起きませんでした。別に飛行機も止まりませんでした。銀行に関しても、銀行の「経営者」にとっては大変なことで、(経営者自身は)パニックになると思いますけれども、金融市場がパニックになるということはありません。というのが、メインバンクで最大でも1兆円いってなくて、数千億単位の話ですから、今業務純益が一行あたり5000億円ぐらい出してますので、1年〜2年で捌ける話ですので、金融不安にはなりません。
キャスター:東京電力以外では電力供給は守れないんじゃないか、という話がありますけれども。
古賀さん:そんなことはないですね。海外でもですね、競争をどんどん自由化して、発電会社をいくつかに分けたり、発電と送電の会社を分けて、競争させる、というようなことをやっているところは沢山ありますので。
【発送電分離】
古賀さん:今、発電と送電を一つの会社が持っているので、地域で電源はあるんですけれども、それを使うときに、東電管内だったらどうしても東電の都合のいいようにしか使わせてもらえない。ですから、太陽エネルギーとか自然エネルギーをやっても、実はビジネスとしてなかなか成功しないと。そういうことになってしまっています。ですから、発電と送電は分離して、さらに発電も巨大になってしまっていますので、いくつかに分けて競争させるということにした方がいいです。東電は、競争がないのでこんな会社になっちゃった。ということなので、やっぱり競争を導入するというのは大事です。
キャスター:欧米は分離が進んでいるんですよね?
古賀さん:どんどん進んでいます。米国や英国でも進んでいます。他の国から消費者が電力を買っているなんてこともおこなわれているんですね。
キャスター:「発送電分離」っていうのは、経産省の中でもずっと戦いがあったわけですよね。
古賀さん:「発送電分離でいいよね」という話は出てくるんですけれども、必ず東電の政治力、資金力によって押さえこまれてきたんです。そして、それをやろうとした官僚は皆、外へ出されていく、という歴史が、過去ありました。
出演者:補償金の上限を決めて、あとは配慮してくださいよ、という話が出てくるのにしても、そういう話を言える土壌が既にあるということで、東電側にもそういう土壌をつくってきたという自信があるんでしょうね。
古賀さん:今でも東電は自信満々だと思います。押さえ込める、と。
キャスター:政府なんて押さえ込めるってことですか?
古賀さん:はい。
■第3段階【スマートグリッドへ】
キャスター:発送電分離ができると、なにができるか。それは新ビジネスであり、ポイントは「スマートグリッド」なんです。賢い送電網。
出演者:長距離電気を運ぶと、それだけロスも多いですし、効率を考えると工夫の余地はまだありますよね。
古賀さん:今までは、スマートグリッドというのは発送電分離といった「競争」に繋がるものであるということで、電力会社がものすごく抵抗していたんですね。ですので、日本はスマートグリッドの取り組みがものすごく遅れています。例えると「携帯でガラパゴス化しちゃった」というような状況に今なりつつありますので、ここはがんばって「電力市場の自由化」というのをやり遂げて、日本は技術はありますから、スマートグリッドを実現し、ニュービジネスを興していくということが大事だと思います。
キャスター:それこそが経済産業省(のやるべき事)ですよね!
女性キャスター:電力は守っても、組織(東電)は守る必要はないということですよね。
キャスター:と、古賀さんはおっしゃってる。
キャスター:日本の中で(そんな争いを)やっているうちに、世界にどんどん遅れていっちゃうということなんですね。えー、そもそも総研「たまペディア」でした。古賀さんどうもありがとうございました。
※モーニングバード!|テレビ朝日 | そもそも総研「たまペディア」より古賀さん発言部分を中心に文字おこしをおこなったブログより転載いたしました。古賀さんの発言はできるだけ忠実に。キャスターさんの発言は要約となっております。
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