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社説 浜岡原発―「危ないなら止める」へ
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5月7日付 朝日新聞
近い将来に発生が予想される東海地震の想定震源域の真上にある中部電力の浜岡原発について、菅直人首相は運転中の4、5号機を停止し、定期検査中の3号機の運転再開も見送るよう中部電に要請した。
東京電力の福島第一原発が想定外の惨事を引き起こした以上、危険性がより具体的に指摘され、「最も危ない」とされている浜岡を動かし続けるのは、国際的にも説明が難しい。日本周辺の地殻変動が活発化しているとの懸念もある。中部電は、発電量に占める原発の割合も低い。首相の停止要請の判断は妥当だ。中部電は速やかに要請を受け入れるべきだ。
ただ、中部電の需給見通しでは、浜岡をすべて止めた場合、夏の需要ピーク時に余裕を見込むと、数%の節電が必要になる。産業界や各家庭でも節電に協力したい。
中部電は大震災を受けた緊急対策として防潮堤の増設などを計画している。停止はこの工事が完成するなど中長期的な防災対策が整うまでの措置という。
ここで考えたいのは、前提が「安全神話」から、世界最悪の事故が起こりうることに様変わりしたことだ。専門家も予想しなかったM9.0の大地震が起きた以上、浜岡での地震の強さ、津波への想定、設備の頑丈さなどについて中部電は妥当性を証明する責任がある。
原発震災は想像を絶する巨大さ、複雑さ、速さで進行する。停電、放射能漏れ、計器の不調、余震の続発などで作業員の行動が極端に制約される中、いざという時は、速やかに廃炉も辞さない判断を下せるのか。中部電は疑問を氷解させる責任があるし、国も厳しく審査しなければならない。
福島第一原発事故は、国の安全基準や審査プロセス、規制機関のあり方など、原子力行政そのものに見直しを迫っている。国は浜岡の停止期間中に新たな体制を整えるべきだ。
夏場の需要期への対応や、収益見通しを立てるため、各電力会社は定期検査中の原発の運転再開を模索している。
濃淡に差はあれ、ハイリスクと懸念される原発は浜岡以外にもある。活断層の真上に立つ老朽原発、何度も激しい地震に見舞われた多重ストレス原発……。立地条件や過去の履歴などを見極め、危険性の高い原発を仕分けする必要がある。
すべての原発をいきなり止めるのは難しい。しかし、浜岡の停止を、「危ない原発」なら深慮をもって止めるという道への一歩にしたい。
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