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国の舵取り不在
敗戦と並ぶ国難に、国民の多くが、できることで立ち上がり、海外からも称賛されている。一方で政府・東電は、原発事故に、後手後手で対応した。決定的なのは、ベント(排気)の遅れが、水素爆発を招いたことである。
その原因は、事故対応の当事者・司令塔が、全電源喪失、炉心冷却注水不能の下で、事態を認識し把握できず、緊急なベントの必要に気が働かなかったからだ。東電のトップ不在、首相・原子力安全委員長のヘリ視察は、その象徴である。
4月12日に、3月12日のレベル4が7となった。だが、これまで放出した放射性物質は、原電内放射性物質総量の1%程度に過ぎない。1〜4号機の原子炉と使用済み核燃料プールは、未曾有の放射性物質を抱えているのだ。
政府、東電は、集中廃棄物処理施設などから低濃度汚染水を、人為的に海に放出した。また2号機の取水口付近から放出された放射性物質は、年間限度の約2万倍、低濃度汚染水放出総量の約2万8000倍、流出想定量は約520トンである。
東電は、水素爆発防止に窒素の注入、汚染水の移送、修復作業に備えた施設の除染・瓦礫処理、余震・津波対策など、冷温安定の事前処理に追われている。だが、それぞれが同時かつ複雑に損傷し、修復のモグラタタキが懸念されている。冷却機能を回復できず、放射性物質の空・陸・海への放出が続くのだ。
また東電は、政府の要請を受け、4月17日、今後6〜9か月に、冷温安定と放射性物質放出抑制の工程表を発表した。格納容器の水棺化、新たな熱交換機と汚染水の除染システムの設置、原子炉建屋をフィルターなどを備えたカバーで覆うなどが柱である。
だが、こうした対策は、その場凌ぎでリスクが多く、再度の水素爆発や、余震による四号機燃料プールの崩壊が懸念されている。工程表は世論向けで、事故の収束は手探りが続き、全体的な現況や先行きは不透明なままだ。
4 月1日、原子力専門家16人の緊急提言では、圧力容器内部で水素ガスが発生し続けていると指摘。「万が一にも水素爆発を起こさない手立てが必要」とし、「今は国を挙げて取り組む態勢ができていない」、研究者や産業界などの力を結集すべきだと訴えている。提言者の一人である田中俊一は、工程表の6〜9か月が、数ヶ月〜3年必要と言う。
また小熊英二は、「復興の前提は、原発事故の大局的対策だ。政府は、さらなる避難拡大や経済的・国際的影響など、あらゆる事態を想定した長期戦略を公表して国民を納得させてほしい。何も知らされずに非常事態になれば、かえってパニックがおきる。」という。東電も政府も、こうした工程表が必要なのだ。
さらに、この深刻な危機に、「直ちに健康に影響はない」などの気休めと、断片的な情報、避難基準のダブルスタンダードが、国民の不安を募らせている。
次に、住民の避難で、政府は20キロ圏を警戒区域とした。同心円や計画区域の避難地域設定は、4月21日文科省公表の放射線量調査結果とも符合していない。なお文科省は、福島圏内の幼稚園、学校に放射線の量3.8マイクロシーベルト/時間(20ミリシーベルト/年、一般の日本人は、1ミリシーベルト/年)とした。誰に、こんな引き上げの権限があるのか。
また子供の屋外活動を制限したが、子供は外で遊ぶべきで、放射線が高くて子供を外へ出せないのは異常で、子供を外へ出せないほど福島は危険なのだ。なお、3.8マイクロシーベルトは外部被曝が前提で、内部被曝は、口を洗う、窓を閉めるなど大変である。子供は、避難させるべきだ。
さらに、先行き不透明なまま、東電・政府の損害賠償、夏場の電力供給、政府の東電支援と、その財源が論じられている。
東電の事故対応に、巨額の緊急融資をした大手銀行は、融資の焦げ付きを恐れ、損害賠償のリスクから東電を切り離し、政府主導で新設する原子力保険機構が、賠償責任を負う独自案を作成した。
これに対し政府は、原発事故の損害賠償で東電の自己責任を優先し、それを賠償額が超える場合には、電力各社・銀行・政府などによる賠償支援機構が、交付国債・電力各社の負担金と銀行の政府保証融資で、東電に資金援助をする案を纏めた。
加えて、内外の風評被害を防止するのは、日本社会への信頼である。貨幣も、信頼がなければ、ただの紙切れに過ぎない。親子間、夫婦間も信頼がなければ、家族として成り立たない。企業も、同じである。国家も、指導者・政府と国民が信頼し合わなければ、社会の活力は生まれない。
ところが信頼される、国の舵取りが不在なのだ。原発を推進してきた政府・東電が、そのまま収束の当事者では、内外の信頼を得ることはできない。菅首相も、原発のベトナム輸出に関わっていたのである。
こうした体制は、そのまま今も続き、原発事故が収束していないのに、復興構想会議など20を超える組織が発足し、復興税が浮上した。事故の収束、核燃料の冷温安定と、放射性物質の漏出防止は、震災復興戦略の大前提である。土壌・海洋汚染が広がれば、農林漁業を始め、被災地域は再生できないのだ。
このまま推移すると、今後も後手後手の対応が続き、この事故を収束できないだろう。いずれ菅政権と東電は、内外から、戦争責任と似た、原発事故の処理責任を問われることとなる。
だが菅首相は、震災・原発事故の収束と財政再建の目処がつくまで、政権を担うという。安全神話の原発設置、後手後手の事故対応に、政府・東電を始め、誰も責任を明らかにせず、電気料金値上げ・国債発行・増税で国民に転嫁して、自分の立場や企業を守ることしか考えていない。
これが、被災者、そして日本に住み続ける全国民の目にどう映るのか。敗戦前後の日本を思い出す。今、事故の収束に必要なのは、国民の智恵と力を結集する司令塔の構築ではないだろうか。
そこで、有志議員の特別立法で、原発事故の収束に必要な一切の権限を付与する、国を挙げた対策本部の設置を提案する。それは、技術方策を含め、原発の推進・反対を問わず、国民の知恵と力を結集する新しい体制だ。
最悪に備え、もう一つの工程表を
次に、綱渡りの工程表が頓挫する場合を想定し、工程表と並んで、別の冷却と閉じ込めの方策を提示したい。そこでは、爆破した建屋の雨水を含め、外からの冷却注水と汚染漏出水の循環経路と、水量の収支に注目する必要がある。
まず、冷却注水による汚染漏水を、現在の外部キリン注水に再利用し、できる所から保管、除染、熱交換する。何よりも、だだ漏れ冷却水の循環経路と水量の均衡回復を、優先し開始するのだ。
一方で、高松城の水攻めに倣い、原発古墳のような水棺型冷却システムを構築する。具体的には、1〜4号機の原子炉・タービン建屋を、鋼鉄とコンクリートの障壁で囲み、その周囲を瓦礫利用の盛り土で固めて堰堤を築き、施設全体を冷却メガ・プール(水棺)にする。余震・津波対策の堤防も、その一環だ。
また既存・増設のタンクに加え、原発臨海防波堤の取水口、排水口を閉鎖して、その入り江を汚染地下水の受け入れ・保管タンクとする。これを原発の水棺とつないで、地下漏水を含めた、冷却と閉じ込めの別循環回路を構築するのだ。
環境・エネルギーと文明・地球経済
NHKテレビで、「揺れる女心」という報道を見た。原発事故と震災不況の中で、結婚指輪だけ売り上げが急伸し、婚活相談の窓口に訪れる女性が急増しているという。
仕事が減り、テレビなどの視聴時間も少なくなって、単身家族の不安を実感した事情が報じられていた。目に見えないが、こうした本能的な社会変動が、内外に起きている。
少子高齢化は、これまで先進国に共通のものとされ、社会保障が支えてきた。その土台には、過労・非正規労働と共働き、育児・教育・医療・介護の問題がある。原発震災や計画停電が、利便と効率の技術文明、利潤追求の企業経営と、仕事と暮らし、家族や地域社会を揺るがしたのだ。
原発震災は、安全神話を揺るがしただけではない。梅原猛は、天災や人災でなく、文災と捉えている。地球規模の技術文明と利潤追求が、こうした自然と人間が不在の経済・生活モデルを形成してきたのだ。
今度の事故で、原発の安全神話は大きく揺らいだ。だが脱原発・自然エネルギーへの転換は、環境と経済成長、生活スタイルの変革が関わり、国民的な論議が必要である。経済・社会・政治、それぞれに変革へのとまどいと、模索が広がっている。
メルケル独逸首相を始め、原発事故に対する海外の対応は、当事者の日本を超えて早かった。失われた二十年、閉塞した日本は、リーマンショックで政権交代に期待したが、経済・社会・政治の迷走が続き、原発震災に至ったのである。
ウサマ・ビンラディンが、米特殊部隊により殺害され、オバマはテロとの戦いに勝利を語った。だが、テロの不安は消えない。アフガン・イラク戦争で、アラブ諸国民は勿論、9.11.の犠牲者、米軍を始め多国籍軍も多くの命を失った。テロ戦争に、勝者は無いのである。
人命だけではない。テロとの戦いは、欧米先進国の経済財政破綻につながり、リーマンショックで世界金融危機を招いた。またチュニジアで始まった、アラブ民衆の独裁者追放は、「文明の衝突」とも関わっている。人類は、文明史の岐路に立っているのだ。日本も、アジアも、無縁ではない。
TPPによるグローバル化の促進、少子高齢化社会の社会保障と税制の一体改革、政治とカネ・見せしめ・ガス抜きの集権体制再編が、原発震災で先送り、延命した。火事場泥棒のように、世論向けの工程表、復興構想会議、東電・政府の損害賠償と財源、復興税が浮上している。
TPPの第三の開国・新重商主義には、日本・アジアモデルで、政府の役割を見直し関税と為替のボーダーを再構築する。集権体制再編・財政破綻辻褄合わせの消費増税には、地方一括交付金と地域主権で、自然と人間を活かし・つなぐ下支えの生活経済、自立と共生の社会改革が対抗軸にならないだろうか。
米国の歴史家、「敗北を抱きしめて」のジョン・ダワーは、この歴史的な危機
に、日本人が示した「いたるところに雨ニモマケズの心しなやかな強さ」が、
「ふつうの人々も「原発」議論重ね世界引っ張る力に」進展することを期待している。
<復興メモ>
・仮設住宅は仮設でなく、津波再来時の待避に備えた、菜園付きのセカンドハ ウスに。用地は、後背地高台の不耕作地、自治体・集落・地権者・入居希望 者が協議する。
・姉妹都市と共に、姉妹コミュニティーを。限界集落と町内会を、直売所で結 ぶ。
・灌漑・輪作・放牧の高度化、自然更新・択伐・林牧複合、魚釣り林など、農 林漁法、地場産業技術を変革する。
・流域圏域に、自治体・企業・団体・大学などによる地域再生プロジェクトを 設置し、起業・経営・金融・生活相談の窓口、情報システムを構築する。
(就職・健康・医療・介護.・法律・税務など)
・生産拠点の選択集中から、地域資源・現場技術を活かし・つなぐ、分散型に 転換する。
・エネルギーを、小水力・バイオ・地熱・太陽光など、自然力利用に転換する。 また分散・双方向の発電システムを、固定価格買い取り制度で構築する。
・財源は、復興国債(中国・産油国ファンド引受)、地方一括交付金方式、復興 長期無利子資金を充てる。
・後手後手の対応に、集権体制の不毛がある。救国の司令塔をつくれ。
住民主導社会、自立と共生の理念、地域政策・地域政党。
・利便と効率信仰、成長神話を克服する。活かし・つなぐ現場技術・生活スタ イルの変革で。(パチンコ・自販機・ドラッグ・サプリメント・ゲーム機、コ ンビニ24時間営業、テレビ深夜放送などの自粛)
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