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原子力にノーを ノーベル平和賞受賞者による公開書簡
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この公開書簡は、「No to nuclear power: Nobel Peace Laureates to world
leaders」の全訳です。世界の指導者に宛てていますが、もちろん全世界の
人々への呼びかけです。特に原子力大国と自他共に認めてきた日本は、この呼
びかけに最も真摯に応えなければならない義務があります。チェルノブイリ原
発事故から25年、日本が今度は「地球被曝」の責任者となってしまいました。
これは「民主主義」の下にエネルギー政策の決定に寄与してきた日本人が引き
受けざるを得ない重責です。
世界で原子力をエネルギー源として使っている国は31カ国、基幹電源と言える
「3割以上」となると15カ国に過ぎず、さらに欧州では原発依存から再生可能
エネルギーへの転換が進み、年々原発のシェアは減りつつあります。原子力の
割合を今後大きく増加させる具体的な方針を有する国は、アジアとロシアにほ
ぼ限定されます。
ヒロシマ・ナガサキと核実験を除き、6度【注1】公衆の大きな被曝を経験し
た核災害の歴史を持つ私たち。
「原子力を続けていると核の災厄から逃れることは出来ない」と主張してきた
けれども、未然に防ぐことが出来ずに「クリーンエネルギーの原子力は絶対必
要」などとする政策を変えられないうちに、福島第一原子力発電所の「原発震
災」【注2】は、起こるべくして起きました。
依然として原子力を「エネルギー政策」として容認、又は推進することに賛成
している人にこそ、この書簡は読んでもらいたいと切に願います。
TUP/山崎久隆
【注1】
(1)1957年旧ソ連のキシュチム再処理工場爆発事故。ウラルの核惨事として冷
戦時代の大規模汚染事故が後日明らかになる。INESレベル5
(2)1957年英国ウィンズケール原子炉火災で大量のヨウ素放出。INESレベル5
(3)1979年米国スリーマイル島原発事故で放射能放出。INESレベル5
(4)1986年旧ソ連(現ウクライナ)チェルノブイリ原発で爆発により炉心破壊
地球被曝。INESレベル7
(5)1990年日本JCO核燃料会社でウラン臨界事故により周辺住民に中性子線
と希ガスとヨウ素による被曝をもたらした。INESレベル4
(6)フランスのラ・アーグ再処理工場と英国のウィンズケール再処理工場が海
と大気に放射能を放出し周辺住民などが被曝。しかしINESの評価はされていな
い。
【注2】
地震や津波による震災と同時に、原発や再処理工場などで重大事故が生じた場
合、通常の震災や原発事故に比べて相乗的に極めて重大な事故に発展すること
を特に「原発震災」として対策すべきと、石橋克彦神戸大学名誉教授が「科
学」(岩波書店)vol67,No10(1997年10月号)にて「原発震災−破
滅を避けるために」と題して発表し提唱した。
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原子力にノーを
世界の指導者へのノーベル平和賞受賞者による公開書簡
チェルノブイリの核災害から25回目の記念日前夜、そして日本における衝撃
的な核災害から6週間後に、9人のノーベル平和賞受賞者が世界の指導者に対
し、もっと安全な再生可能エネルギー開発に投資するように呼びかけています。
「ノーベル賞女性イニシアチブ」に参加する女性ノーベル平和賞受賞者6人、
さらにデズモンド・ツツ大主教、アドルフ・ペレス・エスキベル及びホセ・ラ
モス・ホルタは、現在原子力発電に大いに依存しているか、あるいは原子力発
電への投資を検討している国の指導者31人に公開書簡を送りました。
行動を起こし、この呼びかけに賛同をお願いします。
この下に記している公開書簡も、お読みください。
このグループは次のような声明を出しています。「いまこそ原子力発電はク
リーンでも安全でも手頃でも無いエネルギー源だということを認識する時です。
もし世界が現在使われている原子力利用から段階的に脱却するならば、次世代
を担うすべての人々、そしてすでに過剰な被害を受けてしまった日本人も、よ
り確実に、平和で安全な人生を送れるだろうと私たちは固く信じています」
この公開書簡はさらに、核廃棄物の安全で完全な貯蔵方法を見つけるための手
強い課題など、原子力発電がもたらす深刻で長期間にわたる影響についても焦
点を当てています。各国が、この高価で危険なエネルギー生成を続けている中、
ノーベル賞受賞者たちは他により安価でもっと持続可能な発電方式への変換が
直ちに可能であると指摘しています。
世界中に現在400基を超える原子力発電所があり、自然災害や政変に見舞わ
れるリスクの高いところが多くあります。これらの発電所は世界の全エネル
ギー供給の7%足らすしか供給していません。世界のリーダーである皆さんは
力を合わせて、この少量のエネルギー源を他の容易に利用可能な、非常に安全
な、そして持続可能な供給源に置き換え、低炭素と非核の未来へと私たちの社
会を移行させていくことができます。
ノーベル女性イニシアティブはノーベル平和賞受賞者のジョディー・ウィリア
ムス(米国1997年)、シリン・エバディ(イラン2003年)、ワンガ
リ・マータイ(ケニア2004年)、リゴベルタ・メンチュ(グアテマラ
1992年)、ベティー・ウィリアムス(北アイルランド1976年)とマイ
レード・マグワイア(北アイルランド1976年)によって2006年に設立
されました。
連絡先:(電話番号は省略)
レイチェル・ヴィンセント、ノーベル女性イニシアチブ
キンバリー・マッケンジー、ノーベル女性イニシアチブ
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公開書簡
2011年4月26日
宛先:世界のリーダーの皆様
差出人:ノーベル平和賞受賞者有志
原子力より再生可能エネルギーを選んでください:世界のリーダーに対する
ノーベル平和賞受賞者による呼びかけ
ウクライナのチェルノブイリ核災害から25回目の記念日に、そして日本に壊
滅的打撃を与えた巨大地震と津波から2カ月あまり後、記名した私たちノーベ
ル平和賞受賞者は再生可能エネルギー源を約束することで、より安全な、そし
てもっと平和な未来に投資するよう、皆様にお願いします。いまこそ原子力発
電はクリーンでも安全でも手頃でも無いエネルギー源だということを認識する
時です。
福島原子力発電所の損傷の結果、空気中に、水中に、そして食品に含まれる放
射能のため、日本の人々のいのちが危険にさらされているということに、私た
ちは深く動揺しています。もし世界が現在使われている原子力利用から段階的
に脱却するならば、次世代を担うすべての人々、そしてすでに過剰な被害を受
けてしまった日本人も、より確実に平和で安全な人生を送れるだろうと私たち
は固く信じています。
「チェルノブイリ事故から25年後、事態は改善されていると主張する人々が
何人かいます。私はそうは思いません」と言うのは、チェルノブイリ除去作業
者(清掃作業に従事した)の一人、ミコラ・イザイエフさんです。「私たちの
子どもたちは汚染された食べ物を食べて病気になり、我々の経済は破壊されて
います。」イザイエフさんは日本で働いている除去作業者のことを理解するこ
とができると話しています。イザイエフさんと同じように、日本の除去作業員
はおそらく原子力の安全についてあまり疑問を抱かなかったのでしょう。
北東海岸に沿って津波の全威力を被った町の一つ、気仙沼市の商店主の声に耳
を傾けてください。「放射能は極めて恐しいです。それは津波以上のものです。
津波は目で見えますが、放射能は目に見えません。」
悲しい現実は、日本で起きた核放射能の危機が、これからも他の国でまた起こ
りえると言うことです。それはすでに旧ソ連のウクライナのチェルノブイリ原
発(1986)、米国スリーマイル島原発(1979)、そして英国ウィンズ
ケール/セラフィールド(1957)で起きたことでもあります。核事故は地
震や津波のような自然災害に起因して発生しますし、人的ミスや不注意でも起
こります。全世界の人々は同様に原子力発電所に対するテロ攻撃の可能性をも
恐れています。
けれども放射能の懸念は核事故だけではありません。核燃料サイクルのそれぞ
れの工程で放射能は放出されます。まず、ウラン採掘のボーリングに始まり、
その後も数千年にわたり有害であり続けるプルトニウムを含む核廃棄物から何
世代もの間にわたって放射能の放出が続きます。何年も研究を続けてきたにも
かかわらず、米国のように核エネルギー計画を持つ国は「使用済」核燃料を安
全に、しかも安定した状態で保管する方法を見つけるという困難な課題を解決
できていません。一方、毎日止めども無く使用済燃料が生み出されています。
原子力発電の提唱者は原子力発電政策が核兵器用の原料を供給するという事実
に直面しなくてはなりません。事実これは、イランの核開発計画の裏に潜むも
のとして注目され心配されていることです。核エネルギーを追い求めることの
膨大な脅威を原子力産業がどんなに無視したとしても、ただ軽視したり無視し
たから消えてなくなるというような問題ではないのです。
さらに、核エネルギーの厳しい経済的な真実に直面しなくてはなりません。原
子力は自由市場で他のエネルギーとは競争をしません。なぜならそんなことは
出来ないからです。原子力は一般の納税者によって法外な費用がまかなわれる
エネルギー選択です。原子力産業は施設建設、賠償責任限度額、汚染除去、健
康管理に対する賠償保険費用を負担する広範囲にわたる政府交付金−納税者の
お金−を受け取ってきました。私たちはもっと責任を持ってこの公的資金を新
しいエネルギー源へ投資することができます。
世界中に現在400基を超える原子力発電所があり、自然災害や政変に見舞わ
れるリスクの高いところが多くあります。これらの発電所は世界の全エネル
ギー供給の7%足らすしか供給していません。世界のリーダーである皆さんは
力を合わせて、この少量のエネルギー源を他の容易に利用可能な、非常に安全
な、そして持続可能な供給源で置き換え、低炭素と非核の未来へと私たちの社
会を移行させていくことができます。
私たちはごく最近日本で発生したような自然災害による大惨事を止めることは
できませんが、より良いエネルギー源を選択するために一緒に力をあわせるこ
とができます。私たちは化石燃料と原子力から段階的に脱却し、クリーンエネ
ルギー革命に投資することができます。それはすでに進行中です。過去5年間
に、風力や太陽光発電からの新エネルギーが世界的規模で、原子力発電よりも
ずっと多くなりました。世界的に太陽光や風力、その他の再生可能エネルギー
源からの収益が2010年には35%も急上昇しました。これら再生可能エネ
ルギー源に投資することは雇用も創設するでしょう。
再生可能エネルギー源は平和な未来への強力な鍵の1つです。だからこそ、世
界中の人々の多く、特に若者たちが、政府の方向転換を待たず、すでに自分た
ちでその方向へと歩み始めているのです。
各国が低炭素で非核の未来を目指すことによって、核拡散を拒絶し再生可能エ
ネルギー資源を支持する世界的な市民運動と共同関係を結び、増大しながら影
響力を広げている勢力を広げていくことができます。皆さんもぜひこのような
人々に合流し、次世代だけではなく私たちの惑星そのものを守り支える強力な
遺産を生み出していくように呼びかけます。
敬具
ベティー・ウィリアムス アイルランド(1976)
マイレード・マグワイア アイルランド(1976)
リゴベルタ・メンチュ グアテマラ(1992)
ジョディー・ウィリアムス 米国(1997)
シリン・エバディ イラン(2003)
ワンガリ・マータイ ケニア(2004)
デズモンド・ツツ大主教 南アフリカ(1984)
アドルフ・ペレス・エスキベル アルゼンチン(1980)
ホセ・ラモス・ホルタ大統領 東ティモール(1996)
原文 http://www.nobelwomensinitiative.org/home/article/no-to-nuclear-power-nobel-laureates
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