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◆菅政権の迷走 経済コラムマガジン11/5/2(660号)
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放射線と生活習慣の発がん相対リスク
先週、「低線量の放射線はむしろ健康に良い」という中村仁信大阪大学名誉教授の話を紹介した。しかしこのような説を唱える学者は、中村教授だけでなく他に沢山いるのである。どうもこのような話は、口には出さないが原子力の専門家の間でほぼ常識になっているのではと筆者は感じる。
放射線によって人間の持つ免疫機能が高くなることは「放射線ホルミシス効果」と呼ばれている。特に筆者がこのような話を取上げたのは、放射線について科学的根拠が薄弱な話が横行し過ぎているからである。その典型が風評被害である。
福島からの避難民に対して馬鹿げた差別行為が続いている。これも風評被害の一つと言える。政府もこれはまずくなったと判断したのか、ついに放射線の発がんリスクというものを公表した。日経新聞は4月25日朝刊にこの内容を掲載している。
これは放射線影響研究所の論文と国立がん研究センターの研究を比較検討し、国立がん研究センターの研究者がまとめたものである。なお放射線影響研究所の論文のデータは、広島、長崎の原子爆弾の被爆者4万4,000人を追跡調査し得られたものである。この論文は研究者の間ではよく知られているが、これまで一般には示されたことがなかったと筆者は思っている。
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【放射線と生活習慣の発がん相対リスク 】
受動喫煙の女性 1.02〜1.03倍
野菜不足 1.06倍
100〜200ミリシーベルトの被曝 1.08倍
塩分の取りすぎ 1.11〜1.15倍
200〜500ミリシーベルトの被曝 1.16倍
運動不足 1.15〜1.19倍
肥満 1.22倍
1,000〜2,000ミリシーベルトの被曝 1.4倍
毎日2合以上の飲酒 1.4倍
2,000ミリシーベルト以上の被曝 1.6倍
喫煙 1.6倍
毎日3合以上の飲酒 1.6倍
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ちなみに福島原発の作業員に許可されている被曝線量は250ミリシーベルトであり、これは「塩分の取りすぎ」や「運動不足」と同等のリスクを負っていることを意味している。
この表の意味が周知されるなら、少なくとも風評被害が起るはずがないと筆者は考える。もっともこのような知識が一番必要なのは、一般人より菅総理を始め菅政権の面々である。これまでの言動を見ていると菅総理は、まさに「歩く放射能」であり「歩く風評被害」そのものである。
ただこの表を見て、筆者はおかしいところに気付く。100ミリシーベルト未満のケースが割愛されているのである。どうも100ミリシーベルト未満は分らないということになっているらしい(当然、データ自体は存在していると考えて良い)。しかし「低線量の放射線はむしろ健康に良い」と主張し「放射線ホルミシス効果」を重視している学者は、主にこの範囲の放射線量を念頭に置いている。
先週号で取上げた台北のコバルト60による鉄骨汚染(コバルト団地と呼ばれている)も年間50ミリシーベルト(平均総積算線量400ミリシーベルト)であった。ここのケースでは、一万人の調査でがん死亡率が一般の3%に減った(実に97%の減少)という衝撃的な報告が、2004年に台湾当局からなされた。あまりにも大きな減少率なので米国などが追跡調査をしている。
計画的避難区域の飯館村や福島の学校施設は、年間の積算線量が上限である20ミリシーベルトに達するということが問題になっている。しかしICRP(国際放射線防護委員会)が設定している国際基準は、このようなケースでは上限を20〜100ミリシーベルトと定めている。日本の安全基準はこれの一番厳しい数値を用いているのである。
ところが学校施設の安全基準を20ミリシーベルトに決めたことに抗議して、内閣官房参与の小佐古東大大学院教授が辞任した。4月28日の「朝まで生テレビ(テレ朝系)」に出ていたこの教授の弟子(北海道大学)によれば、教授本人はなんと10ミリシーベルト以下を主張していたらしい。しかし先週号で述べたように、今日、低レベル放射線の害をことさら重視するこのような学者はむしろだんだん少数派になっている。筆者は、菅政権がこのような極端な考えの学者を、わざわざ内閣官房参与に招いていたことが問題だったと考える。
来週号は、ゴールデンウィークにつきアップが少し遅れる予定。
政府は、いまだに飯館村などの計画避難地域からの避難にこだわっている。小佐古東大大学院教授などの変わり者の学者にひっかき回されてきたのであろう。今日、仮説住宅の建設が全く進まず、避難民の数がほとんど減っていない。避難民は精神的にほぼ限界まで来ている。ところが住宅が無事であった飯館村などから、さらに多くの避難民を出そうというのだから、政府は一体何を考えているのかさっぱり分らない。もし避難するのだったら放射性物質が大量放出された3月15日の直後であり、今頃避難しても全く意味がない。賠償金さえ出せば良いという態度である。
原発作業員の緊急事態における放射線被曝許容量を、250ミリシーベルトから500ミリシーベルトに増やす話が出ている。もっとも2007年にICRPから、緊急時の許容量を500ミリシーベルトか1,000ミリシーベルトにするよう勧告が出ていた。日本はこの勧告を受け、今年の1月に放射線審議会(経済産業省と文部科学省の諮問機関)が、安全サイドに立ち250ミリシーベルトと答申している。つまり今後上限を500ミリシーベルに上げても特に問題はない。しかしこのような動きも小佐古教授は気に入らなかったのであろう。ところで作業員は500ミリシーベルトまで上げておきながら、一般人は20ミリシーベルトのままというのは説明のつかないことである。
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