http://diamond.jp/articles/-/12036

東京電力は、夏の電力供給力を5200万キロワット確保したと発表した。しかし、週刊ダイヤモンドの取材により、まだ少なくとも約500万キロワットの供給余地があることがわかった。そのカギは揚水式水力発電だ。企業が節電対策に追われるなか、なぜ東電は揚水発電の存在を公にしてこなかったのか。

「より揚水式水力発電の活用を図っていきたい」──。

　本誌の再三の質問に対し、勝俣恒久・東京電力会長は4月17日の会見で揚水発電の活用を認めた。

　そもそも、ある電力関係者は東電が試算する供給力不足の主張に、当初から首をかしげていた。「なぜ揚水発電をもっと盛り込まないのだろうか。堅く見積もり過ぎてはいないか」と。

　東電の最大認可出力は、他社の権利分まで含めると7810万キロワットある。それに対し、震災の影響で夏の供給力の見通しは、3月25日時点で4650万キロワットしかなかった。その差は約3000万キロワットまで開いた。

　だが本誌の取材では、東電のいう供給力には計15ヵ所1050万キロワットの揚水発電の供給力が盛り込まれていないことがわかった。

　揚水発電とは、夜間の電力でダムの下の貯水池から水を汲み上げ、昼間に上の貯水池から水を流して電力を起こすもの。夜間の余剰電力を昼間の発電に利用することができるため、夏場の最大需要対策として最も適した発電方式だ。「本当にどうしようもないときの切り札中の切り札」（宮内洋宜・日本総合研究所研究員）とはいえ、夏の電力不足で各企業が節電対策に奔走するなか、“隠し玉”ともいえる存在になっていた。

　4月15日になり、東電は「7月末時点で5200万キロワットの供給力を確保した」と発表したが、3月時点に比べ、新たに積み上がった550万キロワットのうち、400万キロワット分は揚水発電によるものである。

　では、なぜ東電はこれまで揚水発電を供給力に入れなかったのか。

　その問いに答える前にまず、東電の供給力について詳細を 明らかにしよう（上図参照）。

　東電関係者への取材により、今年3月末時点で東電の最大認可出力と7月末の供給見通しの詳細が判明した。

　最大認可出力は前述のように計7810万キロワット。うち原子力は、福島第1原子力発電所の事故や震災の影響などにより1330万キロワット分が使えない。

　火力も設備が古く再起動できなかったり、夏場は気温の影響で出力も伸びなかったりするため、710万キロワットが見込めない。

　一般水力も渇水で水量が足りなければ、出力を保てない。東電は100万キロワット減ると見る。ここまでで全体の3割の供給力を失った格好だ。これに他電力からの融通分などを加え、揚水発電を除いた供給力は4800万キロワットになる。

　ただし、本誌がつかんだ揚水発電の1050万キロワットがある。前述したように、すでに東電は400万キロワットを供給力として当て込んだ。震災の影響で160万キロワットは見込めないとするが、それでもまだ490万キロワットも残されている。そのうち300万キロワットを生かすだけで夏の最大需要5500万キロワットを賄うことができる。

　東電は「隠しているわけではない」とするが、なぜ揚水発電の存在を公にしてこなかったのか。

活用できる揚水発電を東電が認められない理由

　第1に、揚水発電を行う夜間電力の確保の問題だ。東電の藤本孝副社長は、「（火力など）固定供給力によって揚水発電の利用が決まるため当初、見通しは立たなかった」と話す。

　だが、「発電までの電力ロスは30％」（東電）なので仮に490万キロワットの電力を起こすならば、夜間に700万キロワットの電力が要る。前ページ下図に示すように「発電量は夜間の需給差と時間軸の面積で決まる」（東電幹部）。

　そして実際、昼間の5500万キロワットの最大需要に対して、夜間の最低需要は3000万キロワット程度である。運用次第で夜間の電力は十分に活用できるだろう。昨夏、揚水発電だけで850万キロワット分稼働した実績もある。火力等の復旧が進めばさらに余裕が生まれる。

　第2の理由は、家庭や企業に節電を促したいということだ。東電は国を巻き込み、需要を抑え込もうとしている最中である。特に4月末に向けて電力総量規制の導入も含めた節電対策を練っている今、発電時間の限られる揚水発電という解決策を自ら提示するより、利用者に節電してもらうほうがよいのだろう。加えて、原発に代わり火力を夜間も使い続けるのは、燃料費負担も増え、故障のリスクも高まる。老朽設備を動かしているならなおさらだ。

　しかし、揚水発電の設備は現実として存在する。

　勝俣会長自身、先の会見で「非常に古い発電所を再起動させ、24時間の運転が可能かチェックしてきたが、どうやら可能だ」と認めたのだ。

　もちろん節電は大事だが、揚水発電の最大限の活用こそが電力不足を乗り切るカギとなる。その議論なしに企業や家庭に汗を流してもらおうというのは虫がよ過ぎる。

（「週刊ダイヤモンド」編集部　小島健志）
　

コメント
01. 2011年4月29日 00:36:52: DY0KYhsEzE 免責wwwwwwねーよw 人生そんなにあまかない さすがに今回は帝国陸軍や海軍と同じ組織解体だ 首洗って待っとけ。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110428-00000090-jij-bus_all 原発賠償、免責あり得る＝報酬半減は「大変厳しい」―東電社長 時事通信 4月28日(木)16時41分配信 　東京電力の清水正孝社長は28日、福島第1原発事故の被害補償に関し、巨大災害の場合は電力会社の責任を免除する原子力損害賠償法の規定について「私どもとして、そういう理解があり得ると考えている」と述べ、東日本大震災による大津波が免責理由に該当する可能性があるとの認識を表明した。都内の本社で記者団に語った。 　また、役員報酬の50％カットを決めた東電の姿勢を海江田万里経済産業相が生ぬるいと批判したことに対し、「大変厳しい（リストラ策）と考えている」と反論。ただ、今後の対応は「未定」として、さらなる減額などに含みを持たせた。
02. 2011年4月29日 00:55:33: SE6UxeS89Q なぜ揚力発電を隠してごまかそうとしたか、その体質こそが問題だ。他にもいろいろ隠していることがあると考えるのは当然だ。いかに不誠実な人間の集まりか、東京電力は。何をたくらんでいるのか？
03. 2011年4月29日 01:00:33: 0GJJznkobY 計画停電で倒産した会社もあるってのに、 今頃揚水発電機の24時間の運転が可能かどうかチェックとか、 いい加減にしてもらいたいね。 週刊ポストが記事書かなかったら、ずっとチェックしなかったんだろうな。
04. 2011年4月29日 01:14:56: sFsFqa0FVI 　これで電力不足が回避または緩和されたとしても、それは何のおかげか。原発と火力発電のおかげでしょう。その火力発電は炭酸ガスを出し、地球温暖化の元凶。今、我々が使っている電機は、事故による放射能の危険と、事故がなくてさえも日々地球を温暖化していることの危険の上に成り立っている。それが嫌な人は、東電の電気を使わずに、太陽光発電パネルだけで生活してみたらどうでしょう。多摩散人。
05. 2011年4月29日 01:30:39: mcYJ4cyzyB まだ温暖化の原因が炭酸ガスとかいうやついるんだなw
06. 2011年4月29日 01:31:32: sFsFqa0FVI 　揚水発電は「隠し玉」というより、初めから「大丈夫です」と言って、よく調べたら「駄目でした」となるより、その反対のほうがよいという、ごく常識的な対応だったのではないか。 　電力不足が、実は回避または緩和するなら、喜ぶべきことではないか。東電が隠しているわけではない。現に今、夏が来る二か月も前に、ここにこうして公表されているではないか。何でも東電の悪口を言っていれば気は晴れるかもしれないが、当事者の努力をまったく無視して非難ばかりしていれば問題が解決するわけではない。多摩散人。
07. 2011年4月29日 03:10:05: iuBVUGRGaI 八つ場ダムも水力発電設備を設置、ということになるのか？
08. 2011年4月29日 03:10:06: xgQrEp1sYs 電力のムダは「熱いものを冷やす」が一番の本命。 耄碌・老衰-鶏−シンタロの提唱する、熱いときは冷蔵庫でビールを冷やし、冷房かけて家でキンタマ扇風機で涼むがいいが勝つか、自動販売機で冷えたビール買って、冷房の効いたパチンコ屋でパチンコ打ちながら涼むがいいか、どっちが勝つのかなぁー。
09. 2011年4月29日 06:56:19: i6WsgGsYmY sFsFqaFVIさんよ。もう20年前からＬＰＧ（天然ガス）によるガスタービンエンジンで発電しています。ＬＰＧは、Ｃｏ２も石油・石炭よりずーと少なく、資源事態豊富で、日本との友好関係良好なインドネシアなど多方面から輸入できます。東電も東北電力も 止めていた火力発電為に、ＬＰＧを輸入し始めていますよ。 さもＣｏ２削減の為に、火力発電が悪いようにマスゴミは発表しますが、ＬＰＧ燃料の事は書きません。又、発表も限定的です。もう少し勉強してください。 企業では、日本の電力料金が高い為、企業は率先してコージェネガスタービンの採用による自家発電を推進してきています。 ガス会社もやっと日の目を見ることが出来るようになって喜ばしいことです。 現在の寡占状態の電力業界を解体しないとこの悲劇は繰り返されるでしょう。
10. 2011年4月29日 08:23:49: 0GJJznkobY >>06 あれだけ改竄やら隠蔽やらでニュースになっているのに、 今更、常識的な反応をしてる、みたいな雰囲気作ろうとしても虚しくね？ データの改竄なんて今にはじまった話じゃないし。 みんな知ってるしね。 勝間和代でさえ、自分は原発推進じゃない、というようになったし。 計画停電はウソだった、というような記事も出てくるようになった。

11. 民兵 2011年4月29日 10:04:17: YUQ0jBMdwFDlc : EszHBBNJY2 東電は嘘と捏造ばかりだ。 データーも改竄、隠蔽の繰り返し、過去の事故も報告せずもみ消しも多い。 不誠実というより、姑息な手段をとることにしか頭が回らない。下種な種類の 人間しか上に上がれない組織なのだろう。社員の給与半額、解体が望ましい。 原子力部門は国営。それ以外の火力、水力などは民営で。 送電部分は、新規参入含め自由化。 それ以外は認めない。 >>揚水発電を隠した第2の理由は、家庭や企業に節電を促したいということだ >>東電は国を巻きみ、需要を抑え込もうとしている最中である。 これは社長自らが、電力が不足すると嘘のデーターを示し、国民や企業を脅していたことを認めたも同然。 原子力発電を稼動させている限りは、夜間に電力が余るのは当たり前。 普通に考えて（過去データーで）夏場の夜間は２０００万ｋｗは余るのだから その電量で夜間にダムに水をくみ上げ、 翌日昼間の１０００万ｋｗの揚水発電は可能。 「発電までの電力ロスは30％」を５０％と見込んでも、揚水発電能力を限界まで 利用できる。 もっともこれで原子力いらねーじゃんとはならないけどね。 原子力発電と揚水発電はセットだから。 しかし、火力発電がフル稼働したら原子力発電も揚水発電もいらなくなる。か、 もしくはあと少し数基、火力発電所を建設すれば賄えるだろうと思う。 原子力発電はコストが安いというのは大嘘だから、国民はよく考えたほうがいい。 原子力が国営部門になれば、補助金・廃棄も含めたトータルコストで見ることが出来るだろう。
12. ダイナモ 2011年4月29日 19:01:37: mY9T/8MdR98ug : oz3zVsEkfw 揚水発電を稼働させるには貯水池の水量がある程度以上なければならない。 夏の渇水期に貯水池の水量が充分有ると見込むことはできない。 東電が揚水発電の発電量を少なめに見積もっているのは水量に不確実性があるからだろう。
13. 戦争とはこういう物 2011年4月29日 20:08:30: N0qgFY7SzZrIQ : cc7bPh94OA 　揚水発電は之まで「原発余剰電力を有効活用」という原発計画の一部とされてきた。 計画停電のあとに「真夏停電を避ける救世主」として発表されたのは、結果的に原発を見なおす事に成るのではないか。 ■中部電力、揚水発電計画を中止へ　原発断念相次ぎ不要に http://www.asyura2.com/0311/genpatu1/msg/201.html 投稿者 シジミ 日時 2004 年 1 月 11 日 09:29:30:eWn45SEFYZ1R.
14. 2011年5月01日 01:56:42: SpsClfKbIU >>6 一般水力と違って同じ水を使い回してる揚水発電は渇水ほとんど関係ない。 渇水の影響をモロに受ける一般水力を計算に入れて揚水を除外するのは恣意的操作 と言われても仕方なかろう。
15. 2011年5月17日 09:14:42: lnH9sZHsws 揚水発電はもっとも効率のよい蓄電池。電源は原発である必要はなく、電力供給に余裕がある時間帯に、動かせばいいだけのこと。 揚水発電のために火力発電所を稼働しなければならない、みたいなことを東電は言ってるらしいが、本末転倒もいいところだ。もともと火力では足りないから原子力が必要、と言ってきたのは、東電だろう。火力＋揚水で足りるのなら、原子力などもう誰も望んでいない。
16. 2011年5月22日 15:31:51: nrywCEoc2o データー隠蔽や改竄なんかやってて今更何？だって。 笑っちゃいます。今まで原子力や福島のことなんか考えたこともない人間達が データーとか改竄とか言う言葉どこで覚えたのか。今回初めて目にした言葉でしょうね。数字なんか見たことも気にしたこともないでしょう。 揚水発電は反対住民がいるからその人たちに意見を聞いたらいいと思います。 そしてまた福島と同じようにすればいいと思いますよ。俺様たちの電気供給の為に、他に犠牲を強いるのは当然だろう！のスタンスでまた自分勝手な理論構築すればいいですね。
17. 2014年11月03日 03:07:30 : aiMZAOJQqY 揚水発電は、出力調整できない原発の電力が夜間に余って困ってしまうので、 仕方がないから揚水で消費して、需要の高い昼間に水を落として発電しましょう、 というもの。極めて効率は悪い。 原発に必須な施設であり、原発がなければ存在価値はない。 事故で原発が止まれば当然使えない。隠し玉になるわけがない。

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