http://www.asyura2.com/11/cult8/msg/203.html
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◆米国債政治デフォルトの危機
【2011年5月17日】 米政府の財政赤字が、法定上限の14兆2940億ドルに達した。米政府は、これ以上の国債発行ができなくなった。米政府は今後、為替安定のための基金などにあてる資金を、国債利払いや償還など必要不可欠な支出に回す。その緊急策によって、米国債は8月2日までデフォルトを免れる。しかし、それまでに赤字上限の引き上げが行われないと、史上初の米国債デフォルトが現実になる。実際のデフォルトにならなくても、米政府は綱渡りの状態になり、投資家が米国債への投資を控えると予測され、危機の可能性が増している。
再浮上した沖縄米軍グアム移転
【2011年5月14日】 3人の有力米議員による今回の提案は、東アジアにおける米軍の力を落とさずに費用削減をやろうとしている。提案は、中国の台頭に対峙する戦略であり、米国の覇権を守りつつ軍事費を削ろうとする正統的なものだ。反戦的、孤立主義的、隠れ多極主義的な感じはしない。しかし、日本政府は提案を喜んでいない。官僚機構(対米従属派)が誘導する今の日本政府は、日米同盟の象徴として、米軍が減員せず今後も末永く日本(沖縄のみ)に駐留してほしいと考えており、米軍のグアム移転計画をひそかに迷惑な話だと思っている。日本も韓国も立派な軍隊を持っており、防衛費も十分で、米軍なしに自国を防衛できるが、日韓ともに政府は「うちの軍隊は弱いので米軍が必要です」とウソを言って国民を軽信させている。
◆米中のはざまで揺れる韓国
【2011年5月12日】 韓国では「米中どちらと組むか」という議論が続いているが、李明博政権は天安艦の北犯人説を取り下げて態度を転換できそうもない。韓国は国家的に重要なときに内紛になり、過剰に議論してうまく国是の転換ができない性癖がある。これと対照的なのが、隣のわが日本である。韓国は過剰に議論して失敗するが、日本はまったく議論をしない状況を自ら作り出して失敗する。第二次大戦の敗北がそうだった。最近の日本で国是転換の議論が始まりそうだったのは、09年秋に鳩山政権が成立し、東アジア共同体や米中等距離外交を打ち出した時だ。だがその後、鳩山・小沢コンビは官僚機構からの攻撃にさらされて潰れ、米国覇権の崩壊が如実になっても対米従属以外の国是は全く議論されなくなった。
◆ギリシャからユーロが崩れる?
【2011年5月10日】 ドイツなどEUの諸大国はギリシャに不満をぶつけつつも、追加融資してギリシャをユーロ内にとどめて救済し続けることに同意した。ギリシャ国債をめぐる状況が悪いのは事実だが、5月6日の非公式会議では、ギリシャのユーロ離脱と逆方向のことが話し合われていた。ギリシャ政府は最近、いくつもの打開策を検討し、その中の一つにユーロ離脱があったと指摘されている。シュピーゲルは、ギリシャ政府が検討した複数の打開策の中から、ユーロ離脱案だけを取り出して報道し、あたかもギリシャが間もなくユーロ離脱を決定するかのような印象を読者に与えた。
◆イスラエルがイラン空爆の訓練をしている?
【2011年5月9日・速報分析】イランの国営テレビが、イラク発の情報として、イスラエル空軍機がイラクの米軍基地でイランを空爆するための訓練を繰り返していると報じた。その後イスラエルで5月7日、モサド(諜報機関)前長官が、昨年11月に辞任して以来はじめて公的な場に登場し「イランを空爆するのは愚の骨頂だ」と発言した・・・
◆ビンラディン殺害の意味
【2011年5月6日】 もし本物のビンラディンであるなら、丸腰の彼に向かって米軍部隊が顔面に銃弾を撃ち込んだのはおかしい。相手が丸腰なのだから米軍側に余裕があり、殺すにしても心臓などを狙うはずだ。顔面がきれいな方が、遺体の写真を世界に公開し、本当にビンラディンを殺したことを証明できる。顔を撃った(ことにして遺体の写真を公開しない)のは、人違いであると疑われることを強めてしまった。襲撃計画は何カ月もかけて練られ、海兵隊の特殊部隊は本物そっくりな隠れ家を作ってそこで襲撃の練習を繰り返したと報じられている。米当局は、ビンラディンのどこに銃弾を撃ち込むか十分検討したはずだ。
◆中東の中心に戻るエジプト(下)
【2011年5月3日】 エジプトで軍部とムスリム同胞団が和合しつつあるように見えることは、中東全域の政治構造が約30年ぶりに大転換していくことにつながっていくと予測される。エジプトは、中東を米欧イスラエルの支配下から離脱・自立させることを画策するだろう。エジプト暫定政権によるパレスチナ和解策で、すでにそれが始まっている。中東政治のダイナミズムは、スンニ対シーアという作られた対立構造から、中東を米欧イスラエルの支配下から自立させようとするエジプト、イラン、トルコを中心とする動きと、米欧イスラエルによる支配に便乗してきたサウジ、湾岸産油小諸国、ヨルダンなどによる生き残り策との間の相克へと転換する。
中東の中心に戻るエジプト(上)
【2011年5月3日】 エジプトの仲裁によって、パレスチナで敵対を続けていた西岸のファタハとガザのハマスが和解した。アラブの世論は、ファタハとハマスが和解することを、ずっと前から望んでいる。世論を受け、エジプトのムバラク前政権は09年に和解案をまとめ、和解の仲裁を開始したが、うまくいかなかった。ムバラクは、米国からの支援を受け続けるため、米イスラエルの傀儡になっており、パレスチナの和解を仲裁するふりをして、実際には和解を実現するつもりがなかった。エジプトだけでなく、ファタハも米イスラエルもパレスチナの再統合を望んでいなかったのだから、和解が進むはずがなかった。だが、こうした閉塞状況は、今年2月のエジプト革命によって終わった。エジプトの暫定新政権は、成立した直後から、09年にエジプト政府が立案した和解策に沿って仲裁の努力を再開し、わずか2カ月で和解を実現した。
◆タイのタクシンが復権する?
【2011年4月29日】 06年のクーデター以来、タイでずっと続いている政治紛争の本質は、王室にぶら下がる勢力(軍部、官僚)と、議会を中心とする勢力(諸政党)との権力の奪い合いである。この対立の構図は、1932年に軍部の若手将校たちがタイ史上初の政党(人民党)と組んでクーデターを起こし、政治体制を絶対君主制から立憲君主制に転換してからずっと続いている。王室にぶら下がる勢力は、政治体制を立憲君主制にすることに譲歩し、議会や内閣の権力を認めたものの、その後できるだけ議会を抑制しようと試み、権力増大をはかる内閣を、軍事クーデターや憲法裁判所の判決によって潰してきた(司法権と軍事力は事実上、王室側にある)。逆に議会は、立法の力によって王室系の権力を削ごうとしてきた。
◆米中協調で朝鮮半島和平の試み再び
【2011年4月25日】 米国と中国が協調し、韓国と北朝鮮を和解させようと動いている。この動きは、北朝鮮の核開発をめぐる6カ国協議を再開するために中国が発案したものといわれ、3段階の構想になっている。(1)韓国と北朝鮮との対話再開(2)米国と北朝鮮との対話再開(3)6カ国協議の再開、という3段階で、このうちの第1段階のための準備が今週、山場を迎える。
◆革命に近づくシリア
【2011年4月23日】 2000年に父親のハフェズが死んでバッシャールが権力を継承した時、バッシャールは「政治改革」を目標に掲げ、多くの国民が、戒厳令などの独裁的な体制が解除されると期待した。しかし、父親の代からいた治安当局者たちは、自分たちの権限を低下させる政治自由化に反対し、バッシャールの政治改革は口だけに終わった。「いまさら戒厳令を解除しても遅すぎる」というのが大方の意見だ。すでに反政府デモは、アサドの独裁を終わらせることを明確な目標にしており、エジプトのように独裁が倒されるか、バーレーンのように運動と弾圧が長期化するか、どちらかになる。バーレーンはサウジアラビアという後ろ盾に守られているため、対立が長期化している。シリアにはそのような強い後ろ盾がないので、アサドは倒される可能性が大きい。
◆米国債デフォルトの可能性
【2011年4月21日】 米議会多数派の共和党では財政緊縮を求める「茶会派」が台頭し、米議会で財政上限の引き上げる案に反対したが、共和党内は財政拡大(赤字増)で利権を拡大した軍産複合体の勢力も強かった。しかし、そんな中でS&Pが「赤字を減らさねば格下げだ」と宣言したものだから、茶会派は「赤字削減策として赤字上限を引き上げず頑張るのが良い」と強気になり、支持者を増やしている。5月中旬、米議会が赤字上限の引き上げを拒否したら「米国債のデフォルト」という、これまであり得なかったことが、現実の可能性になる。経済的な世界の景色が変わる。米国債に対する忌避が激しくなり、S&Pが避けたかった米国債の格下げが、むしろ前倒しされる。
◆タックスヘイブンを使った世界支配とその終焉
【2011年4月19日】 英国系のタックスヘイブンが強力な理由は、それが大英帝国が持っていた世界に対する影響力を維持するシステムを目指す、英国の隠れた国策として行われているからだ。英国は第2次大戦直後、国力復活のため、米国政府による厳しい金融規制に縛られていた米金融界の資金をロンドンに流入させて運用して儲けられるよう、1950年代にロンドンをオフショア金融市場として機能させた。この戦略は洗練され、1960年代末に英国は、世界に対する植民地支配を全廃していったのを機に、英仏海峡やカリブ海、アジア地域にある自国の領土や旧植民地を、オフショア金融の拠点(タックスヘイブン)として機能する衣替えを行った。これにより、ロンドン金融街の代わりに、世界各地に点在する旧英国領が、米国など各地から集めて運用し、英国の金融の儲けを維持拡大する機能を果たすようになった。
日本は原子力を捨てさせられた?
【2011年4月16日】 米原子力規制委員会のヤツコ委員長は、米大統領の代理人としての権威を得て、原発事故に対する日本政府の認識が甘すぎるという主張や情報発信を続けた。その流れから考えて、4月12日、日本政府が福島原発事故に関する国際評価尺度(INES)を唐突に5から7に引き上げたことに関しても、ヤツコがオバマの代理人として日本政府に圧力をかけた結果であると思われる。事故のひどさについて過剰な評価を行うことは、過剰な反応を誘発して悪影響が大きい。日本は「世界最悪」を早々と自認したことで、国内で原発を増設することも、海外に原発を売ることも非常に難しくなった。こんな自滅的なことを、日本政府が自己判断のみで決めるとは考えにくい。
◆福島原発事故はいつ終息するか
【2011年4月14日】 汚染水の封じ込め作業がうまくいけば、数カ月後をめどに原発が放出する放射線量を減らすことができ、避難している人々が帰宅できる。事故原発は非常に不安定なので、人的ミスや再度の大地震など不測の事故が起これば、再び放射線量が激増するかもしれないが、それが起きる可能性があるのでずっと帰宅禁止の政策を政府がとり続けると考えることは無理がある。今の時点で、事故原発の周辺に10年も20年も住めないと確定的に言うことはできない。
◆リビア戦争で窮地になる仏英
【2011年4月11日】 今後米国の覇権が衰退したら、カダフィのような軍備増強に熱心な産油国の独裁政権の力が増し、米国の軍事力の後ろ盾を失うフランスなど西欧諸国の言うことなど聞かなくなる。西欧諸国が米国の軍事力を使ってカダフィを倒し、リビアに傀儡政権を作るには、今回が最後のチャンスだ。だからフランスは、長年の反米姿勢を捨て、仏軍が率先してリビアを空爆しつつ、米国をカダフィ潰しの戦争に巻き込もうとした。しかし、米国はその手に乗らず、途中で後方支援に回る態度を強めた。フランスの策略は失敗した。
福島原発事故・長期化の深刻
【2011年4月6日】 日々の放射線量は減っても、原発事故が長引くほど、累積被曝量は増える。たとえば原発から51キロ離れている福島市では、4月5日の段階で1時間あたり2マイクロシーベルトを観測しているが、仮にこの状態が何日も持続すると、20日間で政府が定める公衆にとっての1年間の被曝量の上限である1ミリシーベルトに達する。何カ月もこの状態が続くと、上限をはるかに上回る。チェルノブイリ事故など過去の事例では、放射線被曝の人体への悪影響が住民の健康被害として顕在化したのが、実際に放射線を浴びてからかなり経ってからのことだ。被曝の被害への対策は、顕在化してからでは遅すぎる。
◆イランとサウジアラビアの対立激化
【2011年4月4日】 中東各地で、イランとサウジアラビアの対立が激しくなっている。バーレーン、イラク、レバノン、イエメン、クウェート、エジプトなどで、イランが支援する勢力が台頭し、サウジが支援する勢力が減退している。その要因の一つは、サウジの後ろ盾である米国の影響力が中東全域で低下するとともに、イラク侵攻以来の反米感情の高まりがイランにとって追い風になっていることだ。両国は直接の戦争になりにくいが、対立の行方は今後数十年間の中東の政治状況を左右する。
リビアで反米イスラム主義を支援する欧米
【2011年4月2日】 反政府勢力がカダフィを倒して新政権を樹立したら、リビアは民主的な「良い国」になるというのが欧米の考え方だ。しかし実際には、カダフィに代わって東部の勢力が政権を取ったら、リビアは欧米にとって従来よりさらに手強い敵になる。カダフィの軍隊と戦う東部の武装勢力の中には、アフガニスタンやイラクで米軍などと戦った経験を持つイスラム聖戦士が多くいる。彼らは、欧米勢力をイスラム世界から追い出すことを目標とする反米イスラム主義者で、米当局がいうところのアルカイダの一部である。
◆震災対策にかこつけた日銀のドル延命支援
【2011年4月1日】 大震災後、日本の企業などが海外に持っていたドル建て資産を取り崩して円に換え、復興資金として使うという予測から円が買われ、円高ドル安になった。日銀は、円高を止めるため市場に巨額の円資金を供給するとともに、円売りドル買いの為替市場介入を行い、G7諸国にも協調介入してもらった。その結果、今は円安に戻りつつあるが、この日銀の介入の目的は、円安だけでなく、これ以上金融緩和できない米連銀に代わって日銀が米国(日米)の株価をテコ入れする意図があったとの分析が、米国で出ている。
第2の正念場を迎えた福島原発事故
【2011年3月31日】 福島第1原発の1−3号機では、圧力容器からの水の漏洩状況が把握しにくく、炉内の燃料棒の溶融状況も確定できない二重の非常事態で、圧力容器にどの程度の冷却水を入れ続ければよいか、手探り状態の運転が続いている。通常電源の配線が復旧して通常のポンプを動かせるまで、かなり時間がかかりそうだし、通常の冷却水循環機能を回復する際には、切り替えの難しさがある。その後の手探り状態の運転が安定してから、さらに何年も冷却水の循環を続け、炉心を冷やしつつ廃炉の作業に入る。こうした「冷やす水」の対策とは別に、圧力容器からの汚染された「漏れる水」の対策も続けねばならない。これらの「第2の正念場」の工程の中で大きな失敗があると、炉内が再び高温になり、大気への放射能漏れという「第1の正念場」の危険に戻りかねない。しかし、そうした不測の事態がなければ、事態は沈静化していく傾向にある。
◆シリアも政権転覆か?
【2011年3月26日】 アサド政権の転覆されシリアが民主化することは、米イスラエルの望むところだとマスコミの多くが書いている。しかし私が見るところは、そうでない。シリアでは独立以来、イスラム主義の同胞団と、世俗主義(左翼)のバース党(アサドの党)が対立し、父アサドが1982年に同胞団の決起を大弾圧した後、同胞団は静かになったが、アサド政権が転覆されれば、ほぼ確実に同胞団が台頭する。近年のイスラエルは、シリアやエジプトといった周辺諸国との関係を改善することで国家の生き残りを模索してきた。アラブ諸国の全体を一つの国に統合し、イスラエルを潰すことを目標としている同胞団より、シリア一国の独裁者であり続けたいアサド家の方が、イスラエルにとってはるかにましな交渉相手だ。【短信】
◆欧米リビア戦争の内幕
【2011年3月20日】米国は、自国主導でリビアと戦争するつもりではない。オバマは、リビア上空の飛行禁止区域を維持するのは欧州とアラブ諸国の主導で行われ、米国はそれを助ける役割に徹すると表明している。米国防総省は「米軍のパイロットが米軍の戦闘機に乗ってリビアを空爆することを意味するものではない」と表明し、リビア上空に偵察機を飛ばして情報収集したり、後方支援などはするが、それ以上のものでないと言っている。米国は英仏に「戦闘は君たちでやってくれ。僕らは後ろで助けるから」と言ったわけだが、これがその通りにいくとは限らない。英仏は、米政界の右派(軍産複合体)を全力でたらし込み、米軍をリビアとの戦闘に引っ張り込もうとする。英仏軍が負けそうになったら、米軍がもっと出て行かざるを得ない。
福島原発事故をめぐる考察
【2011年3月16日】いずれかの原子炉の格納容器の外側でなく内側で水素爆発が起きた場合、格納容器に大きな裂け目ができたりして、今よりはるかに多くの放射性物質が外気に漏洩しかねない。再臨界も格納容器の大破裂も、いずれも現時点では起きていないが、すでに可能性として存在している。4号機の使用済み核燃料プールの水位が下がったまま使用済み燃料が冷却されない状態が続くと、この余熱で燃料被覆管が溶融し、プールの下部にたまり、そのたまり方の状態によっては、ここでも再臨界が起こる可能性がある。炉心溶融の時、どのような時に再臨界が起きるか、専門家もほとんどわかっていない。
◆日本の大地震と世界経済
【2011年3月14日】▼日本企業が復興費用や保険金支払いのため、海外投資金を取り崩して日本に戻す流れが起こり、円高ドル安が続くとの見方がある。
▼ドイツや米国で原発への反対意見が強まっている。
▼日本が米国から燃料を買い、米国内のガソリン価格の上昇に拍車がかかり、米経済の回復の足を引っ張る?
最近の速報分析から
【2011年3月9日】 主な分析:香港上海銀行を香港に行かせない英国。原油高騰とスタグフレーションの可能性。金銀を通貨にしたい米ユタ州。米地方債の売れ行き悪化。地上軍侵攻をやめる米国。ロシアの北方領土軍備増強は中国への対抗? 運動家より海外マスコミが多い中国ジャスミン革命。リビア反政府派に拒否された英軍派兵。和解を模索するパレスチナ二大勢力。
◆覇権とインターネット
【2011年3月7日】 インターネットの登場や発展が産業革命である以上、そこには資本と帝国の相克がある。ここ数年のインターネットの発展の産物であるソーシャルメディアの世界的普及によって、エジプトやサウジアラビアといった中東の重要な諸国の親米政権が倒されそうになっており、中東における米英覇権という「帝国」が自滅しようとしていることが、産業革命の伝播をめぐる資本と帝国の相克に関係しているように見える。
失われるドルへの信頼
【2011年3月4日】 地政学的な混乱の時、従来なら世界の投資家は、資金を米国債やドル建て債権に逃避させ、為替市場でドルが上がるのが常だった。だが今、中東危機による原油高騰を前にして、この「有事のドル」現象は起きず、代わりにスイスフランなどが史上最高値を更新した。原油が高騰すると、極度の金融緩和を続けている米国がデフレからインフレに転換し、むしろ米国債などドル建て債権が下落(長期金利が上昇)すると投資家は考えている。金利が上昇すると、米経済は不況に戻ってしまう。ドルへの信頼が崩壊し「有事のドル」の不文律が失われている。
◆中東革命とドル危機の悪循環
【2011年3月2日】 中東各地で起きている政権転覆革命の発端となったチュニジアやエジプトの反政府運動は、食糧高騰に対する庶民の不満が爆発して起きた。そして食糧価格の高騰は、米当局がドルを過剰発行して米国の金融経済を救済しようとしたため、投資家や新興市場諸国がドルから現物や先物の穀物など国際商品に乗り換える傾向を強めた結果として起きている。ドル危機によって中東革命が起こり、それが原油高騰からインフレを引き起こし、ドル危機をひどくする悪循環が始まっている。
◆内戦化するリビアに米軍が侵攻する?
【2011年3月1日】 米政府は財政難だ。米議会では防衛予算も削れという意見が出ている。オバマら政権中枢の人々は、米軍をリビアに介入させたくない。米軍はリビア沖に展開を開始したが、リビアから避難する人々を支援するのが主眼で、米軍のリビア侵攻を意味しないと報じられている。しかし、防衛予算の削減に抵抗している軍事産業など軍産複合体にとっては、米軍がリビアに侵攻せざるを得なくなり、その関係で予算削減が棚上げされ、防衛費の増加が続くのが望ましい。軍産複合体の系列の政治家である共和党のマケイン上院議員らは、オバマ政権に対し、米国がリビアの反政府勢力に武器を供給すべきだと言い出している。
◆イラク反政府運動の意味
【2011年2月28日】イラク各地で反政府運動が起きている。そこで発せられる要求は、政府の腐敗根絶から治安改善、米軍撤退、クルド人2大政党の権力独占への批判まで非常に多岐にわたっており、この運動が成就するとイラクの何がどうなるのか見えない。しかし、イラク政府の反応は明確だ。反政府運動に対する報道をすべて禁止し、代わりにイラクのマスコミはデモの抑制を試みるマリキ首相、サドル師、システニ師などシーア派指導者の演説を流している。このイラク政府の反応からは、反政府運動がイラクのシーア派主導政権を壊そうとする方向を持っていることが感じられる。そして米政府は、イラク政府の運動弾圧を黙認している。
◆「第2の911事件」が誘発される?
【2011年2月27日】パキスタン軍の諜報機関ISIが、CIAのデービスの所持品を捜索したところ、厳秘の機密文書が発見された。そこには、デービスが所属するTF373の任務として、アフガンやパキスタンのイスラム過激派を通じてアルカイダに核兵器の材料となる核分裂物質や生物化学兵器の材料をわたし、米国に対して大量破壊兵器によるテロを起こさせる計画が書いてあった。米欧の経済覇権は数カ月内にも崩壊しそうな危機的な状況にあるが、米当局は、アルカイダに「第2の911事件」的な対米大規模テロを起こさせ、それを機に米国は世界規模の戦争を起こし、テロ戦争の体制を再強化して危機を乗り越え、世界に対する米国の覇権を維持する目的だという。
最近の速報分析から
【2011年2月24日】主な分析:米国とカナダが軍事統合。米国でベトナム戦争以来の大規模な反政府運動。サイバー戦争は誇張だらけ。住宅ローン登録システムの合法性を米裁判所が否定。エジプトを試すイラン軍艦のスエズ運河航行。エジプト革命の主導組織は米当局に支援されていた。EU統合を崩壊させるドイツ与党。
◆リビア反乱のゆくえ
【2011年2月22日】リビアの状況は、いくつかの重要な点で、エジプトやチュニジアと大きく異なっている。その一つは、エジプトやチュニジアが統一国家として無理のない状況で、政権が転覆されても国家が分裂する恐れがなかったのに対し、リビアはいまだに、首都トリポリを中心とする西部地域(トリポリタニア)と、第2の都市ベンガジを中心とする東部地域(キレナイカ)の間に対立が強く、それを無理矢理に統合してきた独裁者カダフィが辞めたら、東西の対立が決定的になり、リビア国家が二分されて内戦になる可能性がある。
バーレーンの混乱、サウジアラビアの危機
【2011年2月21日】 バーレーンで王政が転覆され、革命がサウジアラビアに伝播して、サウジ東部州で真の民主化(分離独立)が実現すると、サウジの原油の9割は、サウド王家でなくシーア派のものになる。サウジのシーア派はアラブ人だが、イラクやバーレーンのシーア派と同様、親イランの傾向をとる。サウジ、イラク、イランという中東の3大油田地帯のすべてが、反米反イスラエルのイランの傘下に入る。OPECはイランの傀儡となり、イランを敵視する国は石油を止められ、原油価格は高騰する。イランは米欧に敵視されている分、中国やロシアと親しいから、米欧の覇権喪失が加速する。
ソーシャルメディア革命の裏側
【2011年2月18日】 エジプト革命を率いた4月6日運動は、早い段階から米当局筋に支援されてきたが、この運動体が米当局の傀儡やスパイであると「悪い」方向に考える必要はない。この運動体は、自分たちのまわりの社会を良くしようと純粋かつ真摯に考えるエジプトの若者らが参加・推進していると考えた方が自然だ。私にとって分析が必要だと思うのは、4月6日運動自体に関することでなく、4月6日運動を支援し、ムバラク政権を転覆するところまで容認してしまった米当局筋の意図に関することだ。
◆きたるべきドル崩壊とG20
【2011年2月16日】おそらくG20がドル単独制に代わる通貨体制を確立する前に、ドルや米国債の崩壊が起きる。早ければ今年か来年、米国債の急落が起こりうる。米当局がうまく延命策をつなげれば、もっと先まで持つ。しかし延命策を越えた根本的な問題解決は困難だ。ドルが崩壊したら世界経済が大混乱し、中東などで戦争が起きるかもしれないが、その混乱の中で、G20が新しい多極型の基軸通貨体制を具現化していくのではないか。
◆中国の米国債保有額のなぞ
【2011年2月14日】米連銀のバーナンキ議長は米議会での証言で、中国が保有している米国債の総額が、発表されている8960億ドルではなく、少なくともその2倍以上の2兆ドルであると述べた。中国は米国債の発行総額の4分の1を保有していることになる。だがバーナンキは、中国の米国債保有額をできるだけ多く見せようとする動機を持っている。本当のことを言っているとは限らない。
やがてイスラム主義の国になるエジプト
【2011年2月12日】 エジプトのムバラク辞任に関して、欧米や日本の多くの人々が「エジプトがリベラルな民主主義に転換して欧米化し、みんなハッピー」と思っているが、それは幻想だ。欧米人が嫌うイスラム主義が西アジアを席巻する可能性の方が高い。米国のマスコミや右派は、イスラム同胞団を大したことない勢力と分析している。だがそれは、03年のイラク侵攻の前後に、彼らが「米軍がフセイン政権を倒すだけで、イラクはリベラルな民主体制になっていく。イラクがイスラム主義化することはない」と言っていたのと同様の、少し考えればすぐにわかる大間違いである。米国のマスコミや右派には中東情勢に詳しい人が多いのに、なんでこんな基本的な大間違いを繰り返すのか。
最近の速報分析から
【2011年2月11日】主な分析:G20が食料高騰規制を機に世界政府機能の強化を提案。世界最大の米国債保有勢力が中国から米連銀に交代。お門違いになる国際石油価格WTI。米国の高齢者の6人に一人が貧困生活。アリゾナ州議会が米国から事実上の分離独立を画策。S&Pの日本格下げはドル防衛策の一環、喜んで自滅したがる日本当局。現実路線に転換するアウンサン・スーチー。エジプト革命を機にイスラエルを裏切るネオコン。マスコミがソーシャルメディアを喧伝するいかがわしさ。英国が欧州大陸にイスラム暴動の拡大を煽動?
◆ムバラクの粘り腰
【2011年2月7日】ムバラクの粘り腰の本質は、イスラエルの粘り腰だ。チュニジアの革命がエジプトに伝播してムバラクが辞任すると、政権転覆が他のアラブ諸国に拡大していく可能性が高まる。ヨルダンやパレスチナ自治政府といった、イスラエル近傍の諸政府が次々と瓦解し、代わりにイスラム同胞団の政権になるか、イスラム主義者と政府軍との内戦の混乱に陥る。ムバラクが早期に辞めたら、イスラエルが30年かけて構築した自国周辺の安定状況が瓦解する。だからイスラエルと、米中枢の親イスラエル勢力は、ムバラクを辞めさせるわけにいかない。
エジプト革命で始まる中東の真の独立
【2011年1月30日】チュニジアで始まった民衆による政権転覆の革命がエジプトに飛び火し、ヨルダンやイエメンなどにも伝播している。50年ぶりに、アラブ諸国が米国に分断された傀儡勢力である状態から自らを解放するかもしれない展開が始まっている。今後、独裁政権が次々と崩壊していくと、軍とイスラム主義勢力との対立状態になる。イスラム主義勢力は各国の貧困層の広範な支持を受けている。中東が完全に民主化されると、各国に支部を持つイスラム同胞団によるアラブの統一、つまりアラブのイスラム革命が起こる。
最近の拙速分析から
【2011年1月26日】主な分析:グリーンスパン米連銀議長が金本位制を支持。米連銀が不良債権の増加を隠す会計基準の変更を実施。食料価格が今後40年上昇し続けると予測する英政府が「世界政府強化」を提案。経済学界の権威者は連銀の傀儡ばかり。米議会が州財政の破産を認める法改定を検討。インフレが悪化する中国は人民元の切り上げが必要になる。中国がカーギルから史上最大の穀物買い付け。米国やロシアがパレスチナ国家の承認に向けて行動開始。
◆チュニジアから中東に広がる革命
【2011年1月21日】チュニジア革命は、他のアラブ諸国に伝播し、中東が英米から支配される構図を破壊していく流れになりそうだ。エジプトやヨルダンがイスラム同胞団主導の国に転換すると、パレスチナ問題が劇的にイスラエルにとって不利になる。最終的には、中東のほぼ全域がイスラム主義に席巻され、イスラエルは窮して自滅的な戦争を起こすか、連続的な譲歩を強いられた挙げ句に消滅するだろう。ドル崩壊という米国の経済覇権の失墜が、チュニジア革命の拡散を通じて、中東から米国が撤退せざるを得なくなり、イスラエルも潰れるという、米国の政治覇権の失墜につながる流れが起きている。中東は米英の拘束から自立し、豊富な石油ガスの資源を背景に、多極型に転換した世界の一つの極になるだろう。
ほぼ日刊の拙速分析を始めました
【2011年1月18日】私は、毎日ネット上で何十本かの英文情報を探して読み込み、簡単な分析をして短いメモを書き、解説記事を書く時に使います。その分析メモを「拙速分析」と名づけ、ほぼ日刊で「田中宇プラス」の会員向けに配信し始めました。
「イランの勝ち」で終わるイラク戦争
【2011年1月6日】 米国は何兆ドルもの軍事費と十何万人もの兵士をイラクに派兵して何年間も占領したが、イラクの政治を支配しきれなかった。ところがイランは一人も派兵せず、金はばらまいただろうが大したことない金額で、イラクの政治を支配するに至った。しかもイラクが仇敵米軍の占領下にあった数年間に、である。米国は高い代償を払って得たイラクの利権を、無償でイランに譲渡したことになる。米軍は、早ければ素直に今年末、遅くとも2012年ごろには、国際社会の圧力を受け、イラクから総撤退するだろう。その後のイラクはイランとの結束を強め、両国は2つの大産油国としてサウジアラビアより強い国際政治力を持つだろう。
◆危機深まる今年の世界経済
【2011年1月3日】 EUが財政統合に失敗した場合、欧州と米国の両方が崩壊感を強めていくことになる。欧米しか見ていない日本人的には「欧州も米国も破綻したら世界はおしまいだ」となるが、実際はそうでない。中国などBRICの新興市場諸国がかなり経済的に強くなっており、内需も拡大している。欧米が弱体化する分、IMFや国連などの国際社会でBRICの発言力が強まり、新興諸国の成長力が世界経済の牽引役になる事態が前倒しされる。欧米両方が破綻を強めると、世界の多極化が進む。日本は経済的に中国への依存を強めており、それが加速する。大嫌いな中国に依存する哀れが増す。
◆最近の国際情勢から(12月28日)
▼米英から中国に移る石油ガス利権
▼レバノン、エジプト、シリアで摘発されるイスラエルのスパイ網
▼影の銀行システムの光と影
◆朝鮮半島の緊張は山を越えた?
【2010年12月27日】 中国は、中朝露3カ国の国境地帯である北朝鮮の羅津地区の港湾や工業を開発すべく、中国・吉林省から羅津まで高速道路や鉄道を建設する協約を北朝鮮と締結したと12月27日に報じられている。北朝鮮のことを最も良く知っている国は中国だ。その中国が北朝鮮の経済開発に資金を出す契約をしたということは、朝鮮半島は戦争寸前の状態などではないということだ。北の政治体制が崩壊寸前だというのも多分、日米韓側の夢想的な思い込みにすぎない。現実主義の中国は、崩壊寸前の国のインフラ整備に金を出さない。
◆ロン・ポールが連銀をつぶす日
【2010年12月24日】 ドルや米国債に対する国際的な不信感は強まっている。米下院議員のポールは「連銀は、私が潰す前に自滅しそうだ」と述べている。ポールらが議会で、連銀に情報開示させることに少し成功するだけで、連銀にとって不都合な事情が世界に暴露され、ドルと米国債に対する不信が強まる。今は、不信感が米国債の金利高騰など破綻的な状況に結びつかず、潜在的な状態にとどまっているが、不信が一定以上に強まると、ある時点で一気に顕在化し、破綻的な状況が突然に起こりうる。ポールは、その引き金を引く可能性がある。そして、連銀不要論を主張してきたポールは、それを望んでいる。
朝鮮再戦争の瀬戸際
【2010年12月20日】 韓国・米国と、北朝鮮が、再び激しい戦争に入るかもしれない事態になっている。韓国軍は北朝鮮沖の南北の領海紛争地である延坪島周辺の海域で実弾軍事演習を行う計画だ。この海域は、韓国と北朝鮮の両方が領海と主張しているので、そこで韓国軍が実弾演習を行うことは、北朝鮮から見ると自国に対する実弾の撃ち込み、つまり戦闘行為になり、反撃が必要になる。韓国の演習は、北朝鮮による報復攻撃を誘発し、北朝鮮から見ると「演習」ではなく自国に対する「侵略」である。
◆イラン外相電撃解任を考える
【2010年12月18日】モッタキやラリジャニは、米英覇権と何らかの和解をしてイランを発展させようとした。半面アハマディネジャドは、欧米との敵対をことさら激化させることで、過激化するイスラム世界や、反米化する途上諸国、米国に愛想を尽かす新興諸国などとの関係を強化し、米英覇権崩壊と多極化の波に乗ってイランを発展させようとした。結果は、アハマディネジャドの方が優勢で、それがモッタキの解任につながったと考えられる。
ウィキリークス事件の裏表
【2010年12月13日】 ウィキリークスによる外交電文の暴露は、米国と同盟諸国の関係を悪化させている。ドイツ外務省の高官や、オーストラリア与党の重鎮政治家が、自国の機密情報を米国大使館に積極的に提供するエージェントだったことも暴露された。独豪でさえ上層部に米国のスパイがいるということは、ぬるぬるの対米従属で機密保持が弱い日本の官界や政界には、米国に喜んで国家機密を献上するスパイが多数いそうだ。ウィキリークスがこれから暴露する電文に、自分のことが書かれているのではないかとびくびくしている日本の官僚や政治家が多いかもしれない。
◆パレスチナ和平交渉の終わり
【2010年12月10日】 ブラジル政府は、パレスチナを国家として承認すると、パレスチナ自治政府に書簡を送って知らせた。パレスチナ自治政府のアッバス大統領がブラジルのルーラ大統領と会った際、パレスチナを国家承認してほしいと頼まれたことの返答だという。この一見小さな話は、歴史的な大転換の始まりになる可能性がある。ブラジルに続いてアルゼンチン、ウルグアイ、フランスが、いずれも目立たない形式で、相次いでパレスチナを国家として承認している。
◆見えてきた尖閣問題の意味
【2010年12月4日】 尖閣で衝突が起きたから、中国を仮想敵とする日米合同の軍事演習「キーンソード」が行われたのではない。中国を仮想敵とする軍事演習や新防衛体制を計画している最中に、中国との劇的な敵対状況を作り出す尖閣の衝突が起きた。先に、中国が尖閣諸島に侵攻してくるシナリオの日米軍事演習が企画され、その後、尖閣沖の衝突事件で日本が中国を怒らせて敵対状態が作られ、その後になって実際の軍事演習が行われ「疑いのない日本領である尖閣に中国が攻めてきそうなので、やむを得ず軍事演習が行われる」というイメージの報道が流れている。日本人は、米国と、その国内傀儡勢力に騙されている。
◆ぼやける欧米同盟
【2010年12月2日】 米国は、軍事費を削る欧州を「NATOにタダ乗りするな」と非難する。ゲーツ国防長官は「EUが防衛に金をかけないなら、米国はEUを守りたくなくなるぞ」「世界中が安全保障で米国に頼ろうとするのはよくない」と警告した。欧州の軍事産業は、EU各国が軍事費を削る中、儲けを捻出するため、ロシアや中国に兵器を売っている。これがまた米国を怒らせる。その一方で米国自身、財政難がひどく、いずれ軍事費を削減しなければならない。米国は、同盟国が軍事費を出し渋ると「世界に対する責任放棄だ」と怒るくせに、自国が軍事費を削減する時は、孤立主義と紙一重の単独覇権主義をふりかざし、勝手に削減するだろう。欧米関係は、すれ違いを増すばかりだ。
◆朝鮮戦争が再発する?
【2010年11月28日】 米韓が挑発したら、北朝鮮は反撃する。北朝鮮は政権の世襲期にあり、国内の結束を維持するため、強気の態度をとる。朝鮮戦争が再発するかどうかは、北朝鮮の出方ではなく、米国がどの程度、北朝鮮を挑発するかという、米国の意志にかかっている。韓国は、自国が破壊される戦争再発を望まないが、軍事的に完全に米国の傘下にあり、米国が北朝鮮を挑発して戦争を起こすなら、韓国が止めることはできない。オバマ大統領は、北朝鮮の問題を軍事的にではなく外交的に解決したいと表明したものの、事態を掌握できていない。米軍(軍産複合体)が、勝手に事態を悪化させ、朝鮮戦争を再発しうる。
意外と効果的な北朝鮮の過激策
【2010年11月24日】 北朝鮮が延坪島に異様に激しい砲撃をしたのは、北の「宗主国」中国が台頭し、韓国の「宗主国」米国が衰退する流れの中で、米韓がどのくらいの強さで北に報復・制裁してくるか確かめるのが目的だろう。米国は激怒するだけで何もせず、北の問題を中国に任せる傾向を強めている。北の戦略は、北方領土を訪問したロシアのメドベージェフ大統領の戦略とも似ている。メドベージェフは「中露」対「米日」という対立軸を作って中国をロシアの方に近づけようとして、日中の喧嘩に割り込むかたちで国後島を訪問した。同様に北朝鮮は、米中の力関係が逆転する中で「中朝」対「米韓」の対立軸を強化し、優位に立とうとしている。
◆ユーロを潰してドルを延命させる
【2010年11月23日】 11月10日、アイルランドで銀行倒産が起きたのを機に、ロンドンの債券市場であるLCHクリアネットが、アイルランド国債の先物取引をする投資家があらかじめ預託せねばならない証拠金の比率を15%引き上げた。投資家の多くは、証拠金を積み増せず投げ売りした。証拠金引き上げは、ユーロを潰せる絶妙のタイミングで、英国の勢力によって発せられた。これは金融戦争の「爆弾」だった観がある。今春のギリシャ危機の際、英米の債券格付け機関が絶妙のタイミングでギリシャ国債を格下げし、危機を劇的に悪化させたことを思い出す。
アウンサン・スーチー釈放の意味
【2010年11月17日】 スーチーは、国際的にミャンマーが置かれた状況が大きく転換していることに気づいたらしく、釈放直後の演説で、戦略の劇的な転換を示した。ミャンマー軍事政権を崩壊させようとする欧米主導の経済制裁を支持する姿勢を大きく弱め「国民が望むなら、欧米諸国に要請して経済制裁をやめてもらうよう努力したい」と述べた。スーチーは国民の意見を聞きつつ、軍事政権と折り合える部分で折り合い、中印やASEANと協調するとともに米国と静かに距離を置き、うわべの民主化より、ミャンマーの国民生活を向上させることに注力するようになっていくかもしれない。今回の動きはミャンマー国民にとって良い方向と感じられる。
◆実は大成果を挙げているG20
【2010年11月14日】 韓国G20サミットは失敗の烙印を押された。しかし、G20の周辺で起きていることを詳細に見ると、実はG20は、国際金融システムの構造を着々と多極型の方向に転換している。G20傘下の財務相会議である「金融安定委員会」(FSB)が、今回のサミットの前後に「債券格付け機関」や、米国の「影の銀行システム」といった、国際金融危機の元凶となっている米英金融覇権の真髄に位置する機構(金融兵器)を骨抜きにする政策で合意したからである。
◆世界を二分する通貨戦争
【2010年11月9日】 米連銀の量的緩和策第2弾(QE2)によって、世界が「ドルを支持する国々」と「ドルを支持したくない国々」に二分される傾向が一気に高まり「通貨戦争」の状態になった。表向きは戦争ではなくG20で話し合う態勢だから「通貨冷戦」とも言える。この戦いによって最終的にドルは基軸通貨の地位を喪失するだろうから、米国による「ドルの自爆テロ」と呼ぶべきかもしれない。英国紙は、QE2の意味を2種類のキーワードで示した。一つは「ソフトな米国の債務不履行」で、もう一つは「経済のスエズ動乱」である。
◆メドベージェフ北方領土訪問の意味 【中国の台頭に反応する周辺諸国(2)】
【2010年11月6日】 前原外相率いる日本は、尖閣紛争を誘発して中国と対立することで、日米が結束して中国と対決する構図を作り、中国と米国がG2として結束するのを防ぎ、日米同盟を防衛しようとした。しかし「日米が結束して中国と対決する構図」は、ロシアから見ると、渇望していた「中露が結束して米国と対決する構図」そのものだった。ロシアは、頼まれていないのに、日中対決の喧嘩に割り込んできて、この喧嘩を「中露と日米の対決」に転換させた。ロシア政府は、対決の構図を持続させるほど、中国との結束を深められるので、国後島だけでなく、歯舞・色丹も訪問すると息巻いている。
中国の台頭に反応する周辺諸国(1)
【2010年11月2日】 韓国は、台頭する中国が北朝鮮の利権を韓国から奪って傘下に入れてしまう前に、北との経済関係を再開する必要がある。財界出身の李明博は、そのあたりに敏感だ。それで、天安艦問題の「怒りのポーズ」をやめて「北は中国に学べ」という現状追認の発言を行い、北が経済開放策を進めて中国の傘下に入ることを容認した上で、北における韓国の利権の温存を図る戦略に転換したのだろう。韓国は、一触即発の分断された国家であるだけに、島国で天然の安定を持つ日本より、世界の動向に敏感だ。米国の傀儡国として作られただけに対米従属性も強いが、韓国政府は、覇権体制の劇的な転換を機敏に感じ取り、対米従属と自国の国益とのバランスを再調整し続けている。
◆破綻へと迷走するドル
【2010年10月31日】 米国のドルと経済・財政がかつての安定的な状態に戻ることは、おそらく二度とない。通貨当局と投資家の多くはそれを察知せず、その意味するところもわかってない。ドルは崩壊に向かうが、対米従属諸国からの支持とあいまって迷走状態にあるので、いつ何が起きるか予測が難しい。
◆米金融を壊すフォークロージャー危機
【2010年10月22日】 今の米経済は、消費や生産という実体経済が回復しないまま、債券金融(影の銀行システム)が債券発行によって作り続ける巨額資金が、株式などの金融市場をうるおし、株価などの経済指標を実態より良く見せることで、あたかも米経済が回復しているかのような幻想を人々に振りまいている。だが債券金融のシステムが壊れると、米経済は破綻した「地の部分」が見えてしまう。今起きているフォークロージャー危機は、まさにこの債券金融システムの崩壊を引き起こしそうだ。
劉暁波ノーベル授賞と中国政治改革のゆくえ
【2010年10月16日】 世界の多くの国が、社会主義とか立憲君主制など、国民を国家に統合するための独自の仕組みを持っている。中国の場合は、共産党独裁の社会主義市場経済である。日本は天皇制を持っている。それらの仕組みを破壊しようとする者は、直接的・間接的に攻撃される。日本で天皇制打倒を主張する言論家にノーベル平和賞が与えられたら、日本の世論やマスコミはどう反応するだろうか。マスコミはできるだけ報道せず、野党は「ノルウェーと国交を断絶しろ」と叫ぶかもしれない。こうした反応を中国流に変換したものが、劉暁波の授賞に対する中国の反応である。現実には、日本が米英に忠誠を誓う限り、天皇制打倒論者にノーベル平和賞が与えられることはない。
◆世界システムの転換と中国
【2010年10月10日】 米国は、さまざまな面で中国を怒らせ、中国が欧米に対抗するよう誘導し、欧米が作った世界システムとは別の国際システムを中国に構築させ、中国がBRICや途上諸国を率いて別の世界システムを拡充していくように仕向けている。米国は、英国が19世紀に作った今の世界システム(米英覇権)を解体し、多極型の新システム(新世界秩序)に転換し、政治経済の安定と発展を引き出そうとしている。中国は誘導されている。米英優位・発行者主導の債券格付けシステムを乗り越える、新興諸国優位・投資家主導の格付けシステムを中国が作ろうとしているのが、その一例だ。
◆EUを多極化にいざなう中国
【2010年10月7日】(1)近代ギリシャが英国(今の米英覇権)の傀儡国として誕生したこと、(2)冷戦後のギリシャが米英と別の地域覇権を目指すEU(ユーロ)の傘下に入ったが、リーマンショック後にドルとポンドが崩壊しかけると、米英はドルとポンドを守るためギリシャを財政崩壊させ、EU(ユーロ)をぶち壊そうとしたこと、(3)そこで中国がギリシャ買いに入り、EUとユーロの崩壊を防いだこと、などの点を考慮すると、ギリシャ救済という「トロイの木馬」の中に中国が潜ませた策略は、中国がEUを支配することではない。むしろ中国の意図は、米英同盟が一極支配する従来の覇権体制を崩し、中国やEU、ロシアなどが並び立つ多極型の覇権体制に転換することにある。一度はEU統合を許した米英が、今になってEUをぶち壊しにかかっているのを阻止する多極化戦略が、中国のギリシャ救済の本質だろう。
日中対立の再燃(2)
【2010年10月1日】 尖閣騒動は、外務省が日本の対中国外交から外されることにつながる。前原は、国交相として尖閣騒動を引き起こし、おそらく米国の推挙によって外相になった。外務省の人々は、前原を押し立てて中国敵対路線を走ることで対米従属を強化できると喜んだ。しかし、これは米国の罠だった。日本には、中国と本気で敵対する準備が全くなかった。財界や政界、官界の各所にいる親中派が結束して官邸に強い圧力をかけ、前原らのクーデターは、中国船長の起訴前に頓挫させられ、船長は帰国を許され、菅首相は、前原や外務省を迂回して、細野前幹事長代理を中国に送り込み、関係修復を開始した。尖閣騒動について国民に謝罪せざるを得なくなった菅は今後、少なくとも対中外交において、前原や外務省を使いたくないはずだ。
◆米株価は粉飾されている
【2010年9月29日】9月27日、英国の証券会社のストラテジストが、CNBCテレビで爆弾発言を放った。9月の米株高の理由は、米連銀が通貨調整や景気テコ入れ策にかこつけて、銀行界に資金を入れ、その金で銀行に株式をプログラム売買させ、株価をつり上げているという指摘だ。
「日中対立の再燃」が英語訳されました。
Rekindling China-Japan Conflict: The Senkaku/Diaoyutai Islands Clash
◆米金融危機再来の懸念
【2010年9月26日】 不動産市況が悪化してジャンク債の担保割れが広がり、それが一定以上の規模になったところで、投資家がジャンク債のリスクを急に心配し始めるパニックが起こり、一気にジャンク債が売れなくなって、経済を下支えしていた債券市場(影の銀行システム)の全体が凍結・崩壊し、実体経済まで悪化したのが、07年夏以降の米国発の世界経済危機の本質だ。同じパニックが繰り返される恐れがある。「サブプライム危機のバージョン2が起きる」という予測も出ている。
◆日中対立の再燃(続)
【2010年9月21日】・・・単独為替介入をした日本は、欧米から、米欧日が為替介入をしない建前を守っていた国際通貨体制の秩序を破ったとして批判されており、ドルが崩壊感を強める中で日本が円高を防ごうと単独行動を強めるほど、日本がG7の為替協調体制を壊したと批判される結果になる。もともとドル崩壊でG7は潰れる(G20に取って代わられる)運命にあるのだが、それが米欧の詭弁によって日本のせいにされる。しかも、米欧の日本非難は間接的に中国を利する。満州事変的だ。
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