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見えないテリトリー
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理学部で総スカンをくって放り出されたI助教授を教授として迎え入れ救済した中心人物は京大副学長にもなったお隣の研究室のF教授だった。僕が学位を貰えたのはこの人のお陰によるところが大きいので文句はあまり言いたくない。I教授と人物の明るさという点で対照的な人だった。僕が論文レフリーの厳しすぎる改訂要求に苦しんでいた時F教授に相談に行ったのだが、彼は「論文の最後にI教授の名前を入れて通しておけ」とアドバイスを下さった。僕はF教授は確執の深さを知らないから甘く見ているんだなと助言は参考にとどめ自分の論文にI教授の名前を入れることはしなかった。論文がついに通り別刷りが来たので僕はI教授にも一部手渡したが、I教授は「Fめぇ」とF教授を呼び捨てて憎悪の顔を剥き出しにした。さて話は変わるがF教授の研究室の学生達は自分達の影響力が及ぶ、つまり自由にできる地方大学のポストの事を「島」と呼んでいた。僕はいつもそれを聞いておかしなことを言うものだと思っていた。学者が公正に力を競い合わず縄張りを作りそこに派閥の者だけを置くという身贔屓なことをしたら、たちまち大学は無能の人間であふれ返ることになるだろう。そしてそれはもはや現実となっているが、只の派閥ではなく組織がイルミーとなると事は重大である。イルミーは一度手にしたポストを絶対にイルミー系列でない者に渡すことはない。もし素晴らしく優秀な人と無能な人があるポストを巡って争い、無能な人がイルミーだった場合悲劇が演出される。今政治家も俳優も二世や三世で埋め尽くされようとしているが、その中のかなりの割合の者達がイルミー傘下に入っていると僕は想定している。こうした傾向を黙って許していたら、いずれ自分たちの子供達がどれほど努力しまた優秀であっても社会から認められず、アホボン二世たちから虐げられ差別される未来を受け入れてしまうことになる。<0533>
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