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株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu244.html
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好むと好まざるにかかわらず、中国の台頭とアメリカの衰退というのは、
日本にとっては大きな地政学的変化が到来しつつあることを意味する。
2011年7月29日 金曜日
The Peace of Illusions: American Grand Strategy from 1940 to the Present
http://www.amazon.co.jp/Peace-Illusions-American-Strategy-Security/dp/0801474116
◆『幻想の平和:1940年から現在までのアメリカの大戦略』by クリストファー・レイン 7月23日 地政学を英国で学んだ
http://geopoli.exblog.jp/
今回はひねらずに直球勝負の直訳の題名です。
気になるお値段ですが、毎度おなじみでちょっとお高め設定の、本体3800円(税込3990円)となる予定で、すでにAmazonでは予約ができるようです。発売は8月末頃の予定。
この本の内容を大胆に一言で言えば、
「私のリアリズムの理論から言えばアメリカ没落は決定だから、新しい大戦略である“オフショア・バランシング”を採用しなさい!」
というもので、東アジアから撤退し、日本には自立させて核武装させなさい、と大胆な提言も行っております。
日本やドイツが、アメリカから(不当に)「二重の封じ込め」を仕掛けられていることや、台湾を中国に渡せという提案、そして強烈なリベラル批判やアメリカ一極時代の終わりを論理的に述べている後半の章はなかなか読ませてくれます。
ということでゲーツ元国防長官も容認したとされるレインによる「オフショア・バランシング」論の本書は、そもそもミアシャイマーをしのぐ理論書と歴史書の性格が強いですが、その議論はなかなか圧倒的。
以下はすでに掲載した「日本語版へのまえがき」から
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私は本書が日本語に訳されたことを本当に嬉しく思っている。なぜなら、この本の議論はなるべく多くの人々に聞いてもらう必要のあるものだからだ。
外交的に失礼となるリスクを承知であえて言わせていただければ、対外政策や安全保障政策における現在の日本は、一人のアメリカ人の目には、どうも自分だけの世界の「幻想」の中でひたすら頑張っているだけのようにしか見えないことがある。日本は目を覚まし、自分たちの将来を真剣に考え始める必要があるだろう。
(中略)
もちろん日本の対外政策のエリートたちは中国の台頭による地政学的な意味を明確に理解していた。しかしそれと同じくらい明らかだったのは、日本は中国の台頭に対処するための大戦略の作成では迷走を繰り返している、という事実だった。
日本のデフォルト的な選択肢というのは、どうやら「アメリカが守ってくれるからわれわれは心配する必要はない」というものだ。そしてたしかに次の五年間くらいはおそらくこの想定も合理的なものであり続けるだろう。ところが時が二〇二〇年に近づき、アメリカが財政危機によって戦略的に縮小することを迫られていることを考えれば、アメリカが東アジアのコミットメントから大きく撤退せざるを得なくなることは目に見えているのだ。
それに加えて、アメリカの「拡大抑止」(extended deterrence)という戦略の抱えるリスクがさらに明らかになるにしたがって、アメリカは日本から「核の傘」を撤回することになるのだ。
本書が発している日本に対するメッセージは、かなり過酷なものである。二〇三〇年代に近づくにつれて、日本は「アメリカが中国から守ってくれる」という想定の上に大戦略を立てることはできなくなる。日本は「アメリカが去った後の東アジア」という状況に対して準備を進めなければならないし、このためには自分たちの力で立ち上がり、国防の責任を背負うことが必要になってくる。
好むと好まざるにかかわらず、中国の台頭とアメリカの衰退というのは、日本(やそれ以外の東アジア・東南アジアの国々)にとっては大きな地政学的変化が到来しつつあることを意味する。この点について「幻想」がないことだけははっきりしているのだ。
◆中国の台頭と日本の未来 2006年11月21日 田中 宇
▼日本もかつて覇権委譲を受けた
かつて、19世紀にイギリスの覇権が陰り出したとき、イギリスは極東における覇権を日本に委譲した。イギリスは長州藩をテコ入れし、ロンドンに留学していた伊藤博文らに支援を約束し、伊藤らは明治維新を起こして権力者になった。明治の日本は、イギリスの制度を真似て作られ、天皇を国家元首にすることでヨーロッパの王室を真似た立憲君主制が作られた。
その後、イギリスなど西欧の世界覇権は、第一次大戦の自滅的な破壊によって縮小したが、アジアにおいてその真空状態を埋めたのが、明治維新によって欧風・近代的に改造された日本だった。問題は、日本だけでなく、アメリカもイギリスから覇権を委譲されていたことで、アメリカは太平洋にも覇権を拡張していたため日本と衝突し、日本は第二次大戦に敗れ、アメリカに覇権を奪われた。
その後はアメリカが世界最大の覇権国となったが、1970年代から覇権の陰りが始まったため、アメリカは「三極委員会」や「G5」などを作り、欧州と日本にも覇権を分散しようとした。欧州は冷戦後のEU統合によって覇権への道を歩み始めたが、日本は対米従属がうまく機能していたので覇権の委譲を断り、今日に至っている。日本に断られたアメリカは、代わりに中国に覇権を委譲する戦略に転じ、1978年の米中国交正常化後、中国ではトウ小平が改革開放政策を開始し、経済発展への道を歩み始めた。
最近になって日本人は「中国に負けたくない」と思い始めているが、負けたくないのなら1970年代のアメリカからの覇権委譲を断るべきではなかった(当時の日本政府は、国民には何も知らせず、覇権拒否と対米従属の継続を決めたのだろうが)。
実は日本ばかりでなく、中国もアメリカからの覇権の委譲を断り続けてきた。北朝鮮の6カ国協議で、中国は最初「会場係」としてのみ機能しようとしたことが、それを象徴している。アメリカが北朝鮮を解決不能な方向にどんどん押しやってしまうので、仕方なく中国は韓半島の覇権をとることにした。
(私のコメント)
8月2日にアメリカはデフォルトして倒産国家になるという噂がありますが、アメリカは借金が返せなくなってドル札を大量に印刷してばら撒いています。最初はそれで金融危機は逃れることが出来るかもしれませんが、国家が大量に紙幣を印刷するようになれば人々は金を買ったり外貨に変えて持とうとする。そうしておけば来るべきインフレと通貨の暴落を回避することが出来る。
ドルやユーロの暴落の受け皿になっているのはスイスフランや日本の円ですが、スイスフランは規模が小さくて大量のドルやユーロの受け皿は事実上日本の円しかありません。日本も対抗して円を大量にばら撒けば銀行は現金で持っていても利子が稼げないから高金利の外貨建て債権を買わなければなりません。しかしそうなれば円も同時に安くなるのですが、それではドル安ユーロ安の意味が無くなる。
つまり構造的に見れば日本の円がドルやユーロの価値を支えていることになり、円が隠れた基軸通貨となっている。本来ならば日本を上回る経済大国になった中国が引き受けるべきなのですが、中国は人民元を自由化せずドルにリンクさせている。ドルが安くなれば人民元も安くさせている。本当に中国が経済大国なら人民元は高くならなければなりませんが、人民元は20%高くなっただけでも中国経済はダメージを負ってしまう。
それに対して日本の円は1ドル=360円から77円にまで高騰して400%以上も高騰しても日本経済は輸出競争力は衰えていない。1970年代の日本の自動車はポンコツ自動車でありアメリカの高速道路を走ればオーバーヒートするようなものだった。その後の改良によって日本は自動車大国になり、1万ドルでしか売れなかった国産車が4万ドル以上でも売れるようになったから円高でも平気なのだろう。
トヨタレクサスの最高級車は7万ドルで売られていますが、アメ車はガソリン価格の高騰で売れなくなりGMもクライスラーも倒産してしまった。故障知らずで低燃費な車なら高くても売れるわけであり、それは中古車市場を見ればもっとよく分かる。トヨタプリウスなどは品薄で注文しても半年待ちの状態だ。ならばアメリカ自動車メーカーも低燃費な車を作ればいいと思うのですが、アメリカの技術力ではそれが出来なかった。
中国が人民元の切り上げが出来ないのも、故障知らずで低燃費の車を作る事が出来ないからであり、中国でも日本車が高くても売れている。自動車は安くても故障ばかりしていては鉄屑であり売れなくなる。アメリカはガソリン自動車の普及と共に大帝国となり、ガソリン価格の高騰で帝国としてのアメリカは滅びようとしている。
だから8月2日にアメリカは倒産するのかもしれませんが、世界各地に展開しているアメリカ軍基地も閉鎖されるのは時間の問題だ。アメリカの国家経済を立て直すには軍事費を減らすしか道はない。いくら虚勢を張っても金がなければ軍事力は維持できないのであり、財政赤字と貿易赤字でアメリカは首が回らなくなっている。間に合わせにドル札を印刷して埋め合わせしていますが、アメリカの輪転機経済は8月2日に破綻する。
これらを前提とすれば、クリストファー・レインの「幻想の平和」で書かれているような、オフショワ・バランシング戦略を採用して、世界の勢力均衡で平和を維持しなければならなくなるだろう。アメリカは1991年のソ連崩壊以降、単独覇権主義と多極主義との戦略が競い合っていますが、単独覇権主義はアメリカの暴走で破綻しつつあります。
単独覇権主義の暴走は、イラク戦争やアフガン戦争の失敗でも明らかであり、毎月1兆円もの戦争経費はアメリカの経済破綻を早めるだけだろう。その結果、アメリカの戦略は大幅な縮小を迫られるだろう。東アジアに関しては日本ー韓国ー台湾ーフィリピンのラインから、アラスカーハワイーオーストラリアまで防衛ラインを後退させる。
日本の戦略的な価値も、ソ連が対象の時は重要だったが、中国を対象とするときは近すぎるし北に偏りすぎている。だから近い将来は日本の核の傘もなくなり在日米軍基地も有名無実な存在になる。日本のアメポチたちはアメリカの国力は変わらないとしてアメリカに頼りきっていますが、それは幻想に過ぎない。国防費が削られれば軍艦も軍用機も大幅に減らさなければならない。
中国の経済的な台頭も日本にとっては脅威になりますが、アメリカの伝統的なバランスオブパワー戦略から見れば当然のことであり、日本を押さえ込むには中国を改革開放で経済発展させて日本に対抗させなければならない。90年代から米中による日本封じ込め戦略が行われてきたのですが、日本の戦略家でこの事に気がつく人はいなかった。
岡崎久彦氏や森本敏氏などがアメポチの代表ですが、アメリカに従属していれば安全と言うおめでたい戦略だ。しかしバランスオブパワーの戦略から見れば日本の台頭を抑えるには中国を使い、中国の台頭を抑えるには日本を使うのは当然の戦略であり、時と場合によればアメリカは中国に味方する。
90年代からの米中による日本封じ込め戦略は、日本の長期的な停滞を招きましたが、日本はこれに対抗する戦略を持たなかった。日本にはキッシンジャーやブレジンスキーに対するカウンターパートがいなかった。そこに彗星のごとく現れたのが「株式日記」であり、アメリカ金融帝国主義は日中共同の敵であり、「日本は中国、アジア諸国と手を組んでアメリカ金融帝国主義と対決するべきと思います。いつまでも金融を使った略奪行為を止めさせなければなりません。」と1998年6月16日に書きました。
アメリカの戦略としては、中国は経済発展すれば韓国や台湾のように民主化して独裁体制が崩れると見ていたのでしょうが、経済発展と独裁制度は対立せず開発独裁国家となった。最近では20年後にはアメリカを上回る超大国になるという予想が出てきましたが、8月2日のアメリカ破産でそれはもっと早くなるだろう。
中国の台頭とアメリカの破産は、日本の真の独立を求められる時であり、アメリカは自発的にアジアから撤退して行くだろう。田中宇氏の記事にあるように、アメリカは1970年代に日米欧の三極構造を構想した。しかし日本は核武装もせずアメリカ従属の道を選んだ。日本国民にもその覚悟は無かったし、それだけの戦略思想を構築できる人材もいなかった。
アメリカがクリストファー・レインのオフショア・バランシング戦略をとった場合、アジアにおいては日中が対立した形となりバランスをとることになるだろう。その為には日本の核武装が不可欠となる。しかし国内においては核武装はいまだにタブーであり、核武装を主張した中川昭一は不可解な死を遂げた。しかしアメリカ国内においても日本の核武装を主張する人も出てきて、クリストファー・レインもその一人だ。
日本の核武装を認めなければ、日本は自動的に中国の属国となりアメリカと対抗するようになる。90年代からのアメリカによる日本たたきは、ブレジンスキーの戦略であり、オバマ大統領は米中によるG2体制を呼びかけた。その結果日本では民主党政権が出来て鳩山内閣では沖縄米軍基地の海外移転を模索するようになった。アメリカが日本たたきを続ければ結果的にそうなる。
『日本やドイツが、アメリカから(不当に)「二重の封じ込め」を仕掛けられていること』は「平和の幻想」でも書かれているということですが、本来の同盟国である日本よりも中国をG2同盟国として選ぶような間違いをリアリスト戦略家は間違いを起こす。オバマのG2発言はアメリカ国内からも批判を浴びましたが、日本のアメリカ離れを促す結果となり、オバマは中国対する姿勢を変えざるを得なくなった。
アメリカがアジアから撤退すれば台湾や韓国はどうなるのだろうか? 韓国や台湾は自発的に中国の勢力下に入るのだろうか? もし台湾が中国に併合されれば西太平洋の覇権は中国のものとなり、日本も自動的に中国の勢力下に入らざるを得ない。それはアメリカにとって利益なのだろうか? むしろ日本に核武装を認めて韓国と台湾を守らせる選択をするだろう。
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