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【インタビュー】反政府運動は新時代の前触れ=シリアのアサド大統領
2011年 1月 31日 20:07 JST
http://jp.wsj.com/World/Europe/node_177999
【ダマスカス】シリアのアサド大統領は、40年続いた前政権を含め50年余りにわたって同一体制による統治が続いている自国の政治について、改革を一段と推し進めると語った。これは、エジプトの反政府運動の激化を受けて、中東一帯の指導者が現行体制の見直しを迫られていることを示す証拠だ。
アサド大統領は、取材にめずらしく応じ、エジプトやチュニジア、イエメンでの反政府運動は中東の「新時代」の前触れだとし、アラブ諸国の指導者は、国民の政治・経済意識の高まりに一段と積極的に対処する必要があると語った。
エジプトの首都カイロでは、長期にわたり政権を掌握しているムバラク大統領の退陣を求めて、抗議する人々が通りに押し寄せている。こうした情勢を受けて、「エジプトやチュニジアのような事態に陥る前に改革の必要性を認識しなければ、手遅れになる」と大統領は述べた。
アサド大統領は、父親から政権を譲り受けて以来、常に厳格な統治体制を敷き、抗議活動を徹底的に取り締まっている。また、イランや、レバノンのヒズボラやパレスチナ自治区のハマスといった過激派グループとの親交も維持している。
中東地域の動乱の多くは、米国政府と協調関係にあった国々で発生している。だが、アサド大統領の発言はエジプトの政情不安が、親米・反米を問わず中東諸国に広く波及効果を及ぼす可能性を示唆している。
今回の騒動に対するシリアの反応はとりわけ重要な意味を持つ。アサド大統領と米国との関係は緊張状態にあるが、オバマ政権はアサド大統領のイラン政府に対する忠誠心をワシントンに向けさせようと必死に試みている。
だが、インタビューでのアサド大統領の発言は、エジプトの情勢を受けてそれが一層困難になっている可能性があることを示唆している。アサド大統領は、自らの反米的なスタンスやイスラエルとの対立姿勢が草の根運動のけん制に役立ってきたとし、自分にはムバラク大統領よりも改革に向けた猶予があると述べた。
「シリアは安定している。なぜなら、ここでは政治が国民の信条に密接に結びついているからだ。問題の核はそこにある。そこが分裂すれば空白が生じ、混乱を生み出すことになる」と、大統領は述べた。
また、地方議会選挙の開始や非政府組織への権限付与の拡大、新メディア法の制定を目指して、今年1年政治改革を推進する。
シリア政府は、チュニジアやアルジェリアでの反政府運動加速化の一因となった経済的なひっ迫については、既に対処に当たっている。例えば、シリア政府は今月、公務員向け暖房用石油手当ての支給額引き上げに踏み切った。暖房手当ては、国民の生活費引き下げを目的としたものであったが、国家財政を圧迫していたため、シリア政府は当初打ち切りを計画していた。
また、チュニジアやアルジェリア、ヨルダンでは、国民の不満を和らげようと食料品価格の引き下げも実施している。
アサド現大統領も父親のハーフィズ・アル=アサド前大統領も、反政府分子を起訴なしで拘留してきたことから、中東地域の最も弾圧的な指導者として批判を受けている。こうしたことから、西側政府の間ではシリアも政情不安に直面するのではとの憶測が高まっている。また、シリアの一党独裁制や報道の統制は、エジプトやチュニジアのそれよりも硬直的との見方も大勢だ。
アサド大統領は、1999年に父の死を受けて政権を引き継いで以降、国内の政治改革が思うようなペースで進んでいないことを認めた。だが、カイロやチュニジアの首都チュニスの抗議運動で叫ばれているような、急速かつ抜本的な改革を受け入れる可能性は低いことを示唆した。
アサド大統領は、シリアの政治制度を完全に開放するまでに、体制の構築や教育の向上が必要だと述べ、アラブ社会に政治改革に対する準備ができていなければ、急速な改革はむしろ逆効果になる可能性があるとした。
「重要なのは、新時代が一段と混とんとしたものになるのか、一段と制度化されたものになるのかということだ。その結論はまだ見えない」
外交関係者やアナリストの多くは、シリアが広範な中東地域の方向性を占う指標になり得るとみている。シリア政府は、イランや、イスラム過激派組織のハマスやヒズボラとの同盟関係をテコにレバノンやパレスチナ自治区、イラクにおける影響力を新たに高めており、その力は近年増している。
だが、その厳格な支配体制がかえって民主化への要求を高める結果にもなりかねない。
シリア政府は、レバノン国内での影響力をめぐって米国と8年近く対立を続けてきたが、今月その勝利がおおむね明らかになった。米国とのにらみ合いのきっかけとなったのが、05年のラフィク・ハリリ元レバノン首相の暗殺だ。西側当局の一部は暗殺はアサド政府の命令によるものとみている。ただし、アサド大統領は繰り返し関与を否定している。
「われわれが懸念していたレバノン政府の政権移行がスムーズに行われたことに満足している。何らかの紛争がいとも簡単に本格的な内乱へと発展する可能性は常にあるからだ」と、アサド大統領は述べた。
米国は今月、ハリリ元首相の暗殺後に召還していたロバート・フォード駐シリア大使を再びシリアの首都ダマスカスに着任させた。
アサド大統領は、米国政府との関係改善を模索するが、イランとの同盟関係を犠牲にすることはできないと述べた。アルカイダをはじめとする過激派組織への対応については米国とゴールを同じくしているが、イラン政府はシリアにとって依然不可欠な同盟国であるとし、「好きかどうかは別にして、イランを見過ごすことはできない」と述べた。
中東和平プロセスについては、ゴラン高原地域の領有権に関してイスラエルと対話をする意向は依然あることを強調した。イスラエルは1967年以降同地域を占拠し続けている。
だが、アサド大統領は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が前任のエフード・オルメルト氏と同じ姿勢で対話に臨むとは考えにくいとし、オルメルト氏とは08年に和平条約締結にまで近づいていたことを強調した。
「(和平プロセスは)死んではいない。なぜなら、ほかに選択肢はないからだ。和平プロセスが死んだとすれば、次は戦争しかない」
米国との関係については、主要な戦略的問題については引き続き対立する可能性があることを認めた。
歴代の米政権は、精密兵器システムをヒズボラに密輸しているとしてシリア政府を非難してきた。それには、イスラエル全域をほぼ射程圏内に収めることが可能な長距離ミサイルも含まれる。米国政府はその対抗措置として、シリアに経済制裁を発動した。
アサド大統領は、ヒズボラに対する直接的な武器供給の疑惑を否定した。また、国際原子力機関(IAEA)が、シリアがひそかに核技術を開発しているとして査察を要求していることに関して、それを認めない可能性を示唆した。
査察は「明らかに乱用される可能性がある」とし、シリアが核兵器を開発しているとの疑惑を否定した。
記者: Jay Solomon and Bill Spindle 翻訳: 原 尚子
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