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「防人の島」波高し−−沖縄・与那国 陸自誘致問題−−反対派台頭 風向き変化(東京新聞、2010年11月14日、朝刊)
「水はいかがですか」。13日、沖縄県の与那国(よなくに)島で「与那国島一周マラソン」が行われ、500キロ離れた那覇市から派遣された陸上自衛隊第15旅団の隊員たちがランナーに飲み物を配布した。
マラソン支援は6回目。14日の防災訓練では、ヘリコプターや車両の体験搭乗が行われる。広報渉外班長の下田博文一尉は「島民と自衛隊が触れ合うよい機会」と話した。
先島(さきしま)諸島の与那国島は日本最西端にある。120キロ離れた石垣島より、姉妹都市の台湾・花蓮市の方が110キロと近い。晴れた日には台湾が見える「国境の島」だ。
戦後まもなく、沖縄本島や本土へ闇物資を送る中継拠点として栄えた。人口は一時、1万2千人に達したが、密貿易の取り締まりが始まると減少し、現在は1千6百人にすぎない。
昨年6月、与那国町の外間守吉町長は東京の防衛庁に出向き、陸上自衛隊の誘致を訴えた。現在、先島諸島に陸自の部隊はなく、防衛省にとって願ってもない話。防衛省は、中国艦隊を監視したり、中国や台湾の軍通信を傍受する「沿岸監視隊」の配備を検討している。
今年3月には北沢俊美防衛相が、また8月には衆院安全保障委員会の議員団が与那国島を訪問した。外間町長は二度とも自衛隊誘致の請願書を手渡した。しかし、今月11日の参院外交防衛委員会の与野党議員との懇談では、自衛隊の話は一切出なかったという。
外間町長は「与党議員には与那国振興策の腹案があるとのことだった。自衛隊配備と相いれないので話題にしなかった」と率直に話す。
「私の支持者には自衛隊誘致を求める人たちがいる。それを誘致の理由にしたいが・・」と言いよどみながらも「島には高校がなく、若者がいない。総合病院もごみの焼却場もない。港に防波堤も造れない」。自衛隊誘致を国からカネを引き出す呼び水にしたいというのだ。
今年9月、町議選があった。定数6人のうち、自衛隊誘致の賛成派が4人、反対派が2人当選し、それまで賛成派と中間派だけだった議会構成が変化した。今年のマラソン大会では、沿道の「陸上自衛隊誘致反対」の横断幕が「誘致賛成」よりも目立った。
反対派の田里千代基町議は「戦後65年、基地がなくても何も起きなかった。島民が防人となり、島を守っている。台湾、中国と交流を深め、人間による安全保障を目指すべきだ」という。
与那国町は2005年と06年、台湾との航路開設を盛り込んだ「国境交流特区」を国に申請したが、規制の壁に阻まれ、門前払いされた。07年には花蓮市に連絡事務所を開設して職員を置いたが、今は派遣していない。
「政策がぶれている」と田里氏。「朝鮮半島に近く、陸海空の三自衛隊が配備されている対馬(長崎県)を見て欲しい。人口は減り続け、町の自立自治に役立っていない」
この批判の声に外間町長は「自衛隊誘致だけをやっているわけじゃない。有人の島々が国境を守っているのは事実だ。対馬市長、北方領土と向き合う根室市長とともに3人で、国境離島振興法をつくるように国に求めている」と反論する。
国が規制緩和や振興策を打ち出さない限り、島を二分した陸上自衛隊をめぐる誘致論争は終わりそうもない。
(編集委員・半田滋)
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