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発信箱:引き継がれた秘密作戦=小松健一
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20100927ddm004070008000c.html
ベトナム戦争中の68年に身をていして同僚を救い、戦死した米空軍の兵士の遺族が先日、オバマ大統領から軍人最高の栄誉とされる名誉勲章を伝達された。死亡場所は当時中立国だったラオス。米兵がいたことが分かると都合が悪いから、遺族はベトナムで戦死したと伝えられていたという。
テレビでこのニュースを見て、東南アジアに勤務していた10年ほど前に何度か訪れたメコン川流域のタイ、ラオス、ミャンマーの山間部を思い出した。かつて麻薬の生産地として悪名高かった「黄金の三角地帯」と呼ばれる地域だ。
ベトナムや中国からの共産主義拡大を警戒した米中央情報局(CIA)が村人にヘロインの原料となるケシ栽培を奨励し、麻薬利権をさまざまな少数民族の民兵組織に与え、反共の防波堤を築こうとした。米軍が公然と参加できないので、CIAは「エア・アメリカ」という航空会社を作り、麻薬や食糧、武器を空輸した。CIAが育てたとも言うべき「黄金の三角地帯」の麻薬はベトナムで戦う米兵にまで行き渡り、麻薬を介した代理戦争は中止された。
「黄金の三角地帯」は観光開発が進む。「みんなケシ栽培に励んだものさ。私は村一番の名人だった」と陽気なおばあさんや、麻薬の輸送を手伝ったおじいさんの昔話以外に陰謀渦巻いた往時の面影はない。
唯一の例外はミャンマーだ。軍事政権はCIAの手法を学び、軍政寄りの民兵組織に麻薬利権を黙認する引き換えに、民主化運動の弾圧や反軍政の少数民族組織掃討に加担させてきた。国連の統計によると、ミャンマーのケシ畑は増加傾向にある。11月に予定されている20年ぶりの総選挙を前にきな臭い事態が進んでいるのだろう。40年以上前の米国の秘密作戦が軍政を支えているのは皮肉なことだ。(北米総局)
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毎日新聞 2010年9月27日 東京朝刊
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