http://www.asyura2.com/10/warb5/msg/769.html
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(写真は日経新聞2010年9月28日朝刊)
坂の上の雲にはまる民主党の「キゼン派」くんたちと米中冷戦シナリオの広まり: ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報
http://amesei.exblog.jp/11993183/
アルルの男・ヒロシです。今回も中国漁船問題。
この漁船問題に端を発する大きなインプリケーションはたった一つ。
中国の台頭に応じて米国は日本、韓国、周辺のフィリピンまで含んだ東南アジア諸国と連合して、地政学の言葉でいえば新しい力の均衡を見いだす「バランシング」という戦略に打ってでているということ。そのシグナルを日本の政治家はひょっとすると読み間違っているかもしれない。
米メディアを読んでいると、現在の中国を第一次世界大戦前のドイツになぞらえたり、あるいは現在の状況を米ソ冷戦の再来になぞらえたりする論調が増えている。(China's brash foreign policy in fact bolsters the United States' power: http://blogs.the-american-interest.com/wrm/2010/09/26/in-the-footsteps-of-the-kaiser-china-boosts-us-power-in-asia/
どうやらアメリカが東南アジアに自分を売り込んでいるというよりは、むしろ東南アジアの諸国が「中国ヘッジ」の意味合いでアメリカと提携する動きを見せておりこれが加速しているようだ。今のところ中国ヘッジなので、中国がどのようにアジアの海洋諸国とつきあうかのいかんによって、米国への関与の要望の度合いも変化していくという含みがまだ残されていると思う。
冷酷なパワーゲームの観点からいくと米中は数年後か数十年後かは分からないが必ず太平洋上でコンフリクトや激突を起こす。米ソ冷戦の集結によって歴史(大国の攻防の歴史)が終わったと思われたが、どうもここ数年で歴史は再び始まる。ネオコン論客だったロバート・ケーガンが自説を軌道修正して、ロシアや中国といった大国の動きに敏感になっている。彼は『リターン・オブ・ヒストリー』という小著を数年前に発行した。
同時に、浮上しているのがもう一人のロバートこと、ロバート・カプラン。最近になって露骨に現在の米政権のアフガニスタンへのコミットメントに批判的になってきている。アメリカがアフガニスタンに軍隊を派遣していることで最も利益を得ているのは中国だ、と最近もワシントンポストのコラムで言及している。(Robert D. Kaplan - While U.S. is distracted, China develops sea power http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/09/24/AR2010092404767.html
数年のあいだでテロとの戦いの論調がぐっと代わり、大国ゲームに関する論調が目に見えて増えている。私も国内情勢に目を向けすぎていて米国の論壇のこのような大きな論調の変化に少し鈍感になっていたことを反省している。
今の大きな数十年間のシナリオは「米中冷戦」である。中国は共産主義ではないが統制主義であり、その度合いは明らかに米国よりも高い。この統制主義の中国をいかに穏和な経済大国に変貌させるかという問題意識は当然必要だが、同時におびただしい人口が海外に進出することで現地との実益面でのコンフリクトは必然的に起きる。今、日本に訪れている中国の観光客は比較的収入の高い層だからある程度は礼儀は正しい。しかし、エコノミック・アニマルとよばれた日本人を上回るアジア人である中国人との文化的ギャップはどうしても存在するようになる。
日本はどのように振る舞うか。中国とまともに向き合うことではおそらく今回の外交的な敗北が示したように飲み込まれてしまう。しかし、同時に中国と戦争するわけにはいかない。これは戦前の轍を踏むだけだ。
そこで東南アジアと同様にアメリカのプレゼンスを利用するしかなくなるというところで日本の財界はその方向で動いているだろう。東南アジアを絡めることでアメリカに対する牽制にはなる。日米安保を解消するのは現在に置いてはしたがって、現実的ではない。米国論壇の論調を見ると、イランでの戦争が起きることよりもこの数週間は中国問題に大きな関心があるようだ。イランの核開発が原因でイスラエルの空爆やアメリカの参戦などの事態が起きた場合、これは日本はあまり深くコミットするべきではない。これはイラク・アフガン戦争と同様である。
ただ、同時に来たるべき米中冷戦では日本は主要なアクターではあり得ず、東南アジア諸国同様のバイプレイヤーになる。(主要なアクターは核保有国だけ)したがって、日本は中国の属国にならないならば、米国の属国でありつづける。したがって、日本は90年までの米ソ冷戦時のような立場に置かれる。旧共産圏とも日本はビジネスを行ったので何れにせよ日本は中国とも経済的には繋がりを持つだろう。そこは商社の腕の見せ所だ。同時に日本の商社は中国リスクを冷酷に読み取ってもいるはずだ。日本は米中冷戦という新しいゲーム盤の中でうまく経済活動で存在感を見せることになる。今、商社やプラント会社が東南アジアとの連携を深めているのは、賃金の安さという側面もあるだろうが、いわゆる「対中ヘッジ」の側面もある。
しかし、予期せぬ事態も想定しなければならない。それは今回の漁船問題のように日中のコンフリクトが精神的なものではなく物理的・経済的な物に発展する場合であり、米国の予算的制約により、あるいは米国の財政破綻などにより米国が東アジアから撤退する動きを見せた場合である。
だから、日本は米中の安定した冷戦シナリオと同時に、米国撤退シナリオを視野に入れていく必要がある。その意味で「バランシング」に加わるのは結構だが、中国との決定的な亀裂を進んで作るような冒険主義にでてはならない。中国と戦って勝てるわけがない。米国はソ連と正面対決はしなかった。対決の時代とデタントの時代がくり返され、結局はソ連は内部的な矛盾の重さに押しつぶれたのである。
だから、昨日、民主党の43人の議員(リーダー格はあの長島昭久前防衛政務官)が官邸に提出した「菅政権への建白書−国益の旗を堂々と掲げ、戦略的外交へ舵を切れ」と言う文書には、このシナリオと重なる部分もあれば、かなり外れた部分もあり、私はかなり心配している。
「今回の教訓を『臥薪嘗胆』として、以下、今後政府が優先的に取り組むべき課題を列挙し、提言としたい」とする建白書だが、内容よりも問題は使われている表現である。「臥薪嘗胆」とは言うまでもなく日清戦争のあとの三国干渉があったときに使われた表現であるし、建白書ということばも明治時代のにおいを感じさせる。
さまざまな「対中ヘッジ」の安保・経済政策を視野に入れることは良いにしても、「とくに日米同盟の深化と並行して、我が国の自主防衛態勢の強化を急ぐべき」という部分は気になる。日米安保の維持というシナリオと、それが上で述べたような理由で継続困難になった場合の自主防衛を検討するという意味なのか、それとも同時に二つを進行するという意味なのか。いずれかでその意味合いは大きく変わってくる。
この建白書を出した若手議員たちの中にはネオコン的発想(理想主義)を色濃く滲ませ、やはり安倍晋三一派のような神道系政治団体とのつきあいのある政治家も見られるようだ。「臥薪嘗胆」と「建白書」といった表現には当然ながら、明治時代の富国強兵の臭いを感じざるを得ないし、司馬遼太郎の「坂の上の雲」からの(悪)影響も感じられる。
ある種のこういった青年将校的なメンタリティは政治家だけではなく検察など官僚組織にも見られる。戦時派はもう少しこういった血気盛んな若手を叱る側に回るべきだが、戦争からはや七〇年。生き残りも少ないだろう。坂の上の雲の後には奈落があったというのが司馬小説のテーマだと思うが、きれいなところにしか目がいかないのだろうか。
筋としては米中冷戦なのであり、日中対決にしてはならない。アメリカと中国での安全保障に関する論議を私は慎重に見ていきたいと思う。 政治家達ももう少し頭を冷やすべきである。国会論戦を見ていると対中融和姿勢を見せる北澤俊美防衛大臣と、あくまで強硬姿勢を貫くキゼン派くんの前原誠司外相の違いが表面化してきた。
普天間問題では全然評価できなかった北澤防衛大臣だが、長島政務官がいなくなってようやく自分の言葉で語れるようになったのかもしれない。
<参考記事>
◎この文面は完全、長島昭久の文章だよなあと思いつつ・・・
【中国人船長釈放】「尖閣周辺で日米共同軍事演習を」 民主党の長島前防衛政務官ら43人が「建白書」
2010.9.27 22:29
民主党の長島昭久前防衛政務官らは27日、国会内で記者会見し、沖縄・尖閣諸島周辺での中国漁船衝突事件で中国人船長が釈放された問題を受け、尖閣諸島の私有地の国有化や警戒監視レーダーの設置、尖閣周辺での日米共同軍事演習などを政府に求める「建白書」を発表した。同党の中堅・若手の国会議員有志43人が賛同した。会見に先立ち、長島氏らは「建白書」を仙谷由人官房長官に提出した。
建白書の全文と、43人の顔ぶれは以下の通り。
◇ 平成22年9月27日
内閣総理大臣 菅直人殿
今般の沖縄県尖閣諸島沖で勃発した中国漁船衝突事案をめぐる政府の対応措置に対する見解および政府として今後取り組むべき緊急の課題につき、添付の「建白書」をもって提言させていただきます。
「菅政権への建白書-国益の旗を堂々と掲げ、戦略的外交へ舵を切れ」
民主党衆参国会議員有志 平成22年9月27日
1.はじめに
沖縄県尖閣諸島沖で起こった中国漁船衝突事案をめぐる今回の結末は、日清戦争後の三国干渉に匹敵する国難である。日本国の政治家、いや、日本国民として、まさに痛恨の極みである。しかし、同時に、すべての責めを現政権にのみ帰することもできないと考える。すなわち、台頭する中国への戦略的な対応を怠り、我が国領土への理不尽な挑戦を拒否する断固たる姿勢を欠いたこれまでの日本政治そのものが招いた危機であったといわざるを得ない。
したがって、私たちは単なる現政権批判には与しない。もちろん、国民の間に「弱腰」「屈従」という非難が巻き起こっていることも認識している。同時に、その苦渋の決断に至るまでには、政府でなければ知り得ない判断材料があったことも想像に難くない。にもかかわらず、今回政府が危機回避を企図して行った一連の措置は、少なくとも3つ意味で将来に禍根を残すものであったとの深刻な憂慮を禁じ得ない。
2.事案解決における3つの憂慮
第一に、あくまでも法と証拠に基づいて粛々と法執行を貫徹すべき検察が、「今後の日中関係」という高度な政治判断を行うなどということは、本来あってはならないことである。従って、政治的な意志決定なしに行政機関たる検察が独断で判断したと信じている国民は殆(ほとん)どおらず、総理はじめ閣僚が「検察の判断」と繰り返すことは却って責任転嫁との批判を免れない。このように中国からの圧力によって国内法秩序が歪められてしまったことは、今後、類似の事案における法執行に悪影響を与えるおそれがある。
第二に、今回のような事案の解決には、短期的な危機回避とともに、中長期的な東シナ海の海洋秩序づくりという視点が必要であったが、その点でも政府の意識は希薄であったといわざるを得ない。不透明な決着は、結果として、日本の尖閣領有という歴史的事実を真っ向から否定する中国政府の主張を明確に拒否できなかったと取られかねない。延いては、将来的な域内秩序の形成における我が国の役割に暗い影を落とすことになった。とくに、近年南シナ海で中国の圧迫を受けてきたASEAN諸国は、今回の日本の対応を注視していたであろうから、この結末に大いなる失望を抱いているに違いない。
第三に、この2週間余りの海外メディアによる報道ぶりを振り返ったとき、とくに国際世論に対し、我が国の領有権主張と国内法秩序をめぐる一連の措置の正当性を理解してもらうべきであったが、確かな支持を獲得するためのパブリック・ディプロマシーの努力が決定的に欠如していたことは甚だ遺憾である。
3.今後の課題
今回の結末は、我が国の国力の実態と対中戦略の欠如という現状を鋭く反映している。長年にわたり、尖閣諸島に対する不十分な実効支配を放置し、レアアース等戦略資源の供給や市場を中国に過度に依存し続け、「戦略的互恵関係」という抽象的なスローガンに胡座をかいて、増大する中国の経済力や影響力に対し長期的な視点で具体的な関与戦略を構築して来なかったツケを一気に支払わされたと解さざるを得ない。
そこで、今回の教訓を「臥薪嘗胆」として、以下、今後政府が優先的に取り組むべき課題を列挙し、提言としたい。
○総合的安全保障体制の確立 官邸を中心に、軍事安全保障、経済安全保障、資源エネルギー安全保障、食料安全保障、情報安全保障の5本柱を包括する総合安全保障戦略を策定、実施していく体制を早急に確立すべき。とくに日米同盟の深化と並行して、我が国の自主防衛態勢の強化を急ぐべき。
○ ロシア、ASEAN、中央アジアへの関与戦略の確立 中国との友好関係を堅持すべきことは当然であるが、過度な中国依存を避けると同時に対中牽制の意味(現代の「遠交近攻」策)から、ロシアとは、早期に平和条約を締結し、シベリア・サハリン(樺太)開発や対中央アジアへの共同支援などを通じ戦略的提携を急ぐべき。また、「世界の工場としての中国」の代替になり得るASEANへのインフラ整備と投資促進の支援を強化すべき。
○日中関係の根本的見直し 船長釈放以後もなお謝罪と賠償を求めるなど、理不尽かつ不誠実な姿勢を続ける中国政府に対し、拘束中の4人の民間人を即時釈放し、報復措置を全面解除するように求めるとともに、この機会に日中の「戦略的互恵関係」の具体的な意義と内容について再検討すべき。
○戦略資源の供給リスクの分散化 レアアース等の備蓄体制の強化とともに、資源エネルギー安全保障戦略の速やかな策定と実行を図るべき。また、中国の日本に対するレアアース等の禁輸措置が確認された場合には、WTOに早急に提訴すべき。
○南西方面の防衛体制の強化 『防衛計画の大綱』見直しプロセスおよび日米同盟深化の協議を通じて、沖縄本島を中心とした南西諸島方面への一層の防衛態勢の強化を図るべき。併せて、海上自衛隊(および米海軍)および海上保安庁による海洋警備体制の強化を図るべき。また、できるだけ早い段階で、尖閣諸島の周辺で日米共同の軍事演習を展開すべき。
○尖閣諸島における実効支配の確立 早急に、現状の民間人所有による私有地借り上げ方式を改め、国が買い取る形で国有地に転換し、灯台や警戒監視レーダーなど構造物の設置を進めるべき。
○西太平洋における海洋秩序の構築 域内諸国のシーレーンが通る東シナ海および南シナ海における航行の自由を確保するため、米国やASEAN、韓国、豪州などと協調し、海洋秩序に関する国際的な枠組み作りに着手すべき。
○日中間の危機管理メカニズムの構築 日中間の危機における対話のための管理メカニズムを構築し、海上における偶発的な事故防止、危険回避システムを確立すべき。
4.結語
本事案は、国家としての尊厳について我々に鋭く問いかけていると思う。いたづらに政府対応を批判するのではなく、臥薪嘗胆を旨として、将来にわたり凛として自立する国家を目指し、今こそ国民的議論と行動を興すべき時である。
有志43人
代表世話人 吉良州司▽長島昭久
賛同国会議員 近藤洋介▽古本伸一郎▽田村謙治▽石関貴史▽金子洋一▽北神圭朗▽鷲尾英一郎▽石井登志郎▽梅村聡▽大西健介▽緒方林太郎▽岡田康裕▽風間直樹▽勝又恒一郎▽神山洋介▽木村剛司▽熊田篤嗣▽坂口岳洋▽柴橋正直▽杉本和巳▽菅川洋▽高橋昭一▽高邑勉▽玉木雄一郎▽中後淳▽道休誠一郎▽ 長尾敬▽中野渡詔子▽中林美恵子▽橋本博明▽畑浩治▽初鹿明博▽花咲宏基▽福島伸享▽藤田大助▽三村和也▽向山好一▽村上史好▽森山浩行▽山本剛正▽渡辺義彦(敬称略)
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100927/stt1009272233006-c.htm
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前原外相、尖閣衝突事件「悪質な事案、逮捕は当然」
2010/9/28 11:06
前原誠司外相は28日午前の参院外交防衛委員会の閉会中審査で、尖閣諸島沖での中国漁船と海上保安庁巡視船との衝突事件について「漁船が巡視船に体当たりしてきた。悪質な事案で沈没したかもしれない。逮捕は当然だ」との考えを示した。尖閣諸島については「東シナ海に領土問題は存在しない。我が国固有の領土だ」と重ねて強調した。
外相は海上保安庁が衝突の経緯を撮影したビデオを、海保を所管する国土交通相在任中に見た結果、漁船が故意に衝突させたことは明白だと指摘した。松本剛明外務副大臣はビデオの公開について「関係する法律に照らし、検討してもらって結論が出るものだ」と述べ、公開の是非を検討していることを明らかにした。民主党の斎藤嘉隆氏への答弁。
これに関連して、北沢俊美防衛相は28日午前「2国間がエスカレートしないよう、話し合いの機運を早急に作るべきだ」と述べた。今後の対応に関しては「官房長官のもとに関連各省が協議をする場を設けるべきだ」との考えを示した。尖閣諸島への自衛隊配備に関しては慎重な考えを示した。首相官邸で記者団に語った。
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