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ニューズウィーク日本版7月27日(火) 19時24分配信 / 海外 - 海外総合
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100727-00000301-newsweek-int
9万点を超えるアフガン戦争の機密報告書は「すでに知られている事実」を裏付けたに過ぎないが──
ジョン・バリー(ワシントン支局)
故ロナルド・レーガン元米大統領は、馬糞の山を見つめる少年をネタにした冗談を言うのが好きだった。「糞の中のどこかにポニーが埋まっているに違いない」と、希望的観測で語ったものだ。
民間ウェブサイト「ウィキリークス」によって「山積み」されたアフガニスタンでの戦争に関する約9万2000に及ぶ機密文書と向き合う研究者たちは、同じように考えているかもしれない。米軍のアフガニスタンでの行動を6年間に渡って記録したこの文書は、本当に驚くべき事実を暴露しているのだろうか?
一見したところ、あまりなさそうだ。04年1月から09年12月まで、アフガニスタンからの現場報告を寄せ集めたこの文書は、すでに世間が承知している状況を、悲痛なディテールをもって改めて知らしめている。つまり、アフガニスタンでの戦争は長く厳しい戦いであること、タリバンが勝利する方向に進んでいること、そして駐留米軍と多国籍軍が資金不足に悩んでおり、自国で感謝されていないと感じていること──。
これらの文書で、驚愕するような新事実が浮き彫りになることはないだろう。最も物議をかもしている問題のひとつに、多国籍軍の攻撃による一般市民の犠牲者数がある。文書には、多国籍軍の作戦によって死傷した144件のケースの現地報告が含まれている。合計195人が死亡し、174人が負傷した。6年間に及ぶ報告書であることを考えると、少なく思える。
■「高性能ミサイル保有」の真実味
では、これらの数字は何を意味しているか。米軍の指揮官らは個別のケースについて異議を唱えてきたことはあるが、米軍とNATO軍がかなりの数の民間人を犠牲にしてきたことを否定したことはない。国連によると、08年だけで約2100人の市民が戦闘の犠牲になった。そのうち約700人は「政府側」の部隊に殺害されたという。09年には約2300人の市民が殺害され、そのうちの550人は「政府側」の部隊の手で殺された可能性がある。今回リークされた報告書と国連のデータを照らし合わせるまで、ウィキリークスの文書に含まれる144件のケースがすでに認識されている死傷者数に含まれているのか、それとも多国籍軍によって内密にされているケースかを判断するのは不可能だ。
リーク文書で最も衝撃的と思われる主張は、タリバンが熱線追尾式の対空ミサイルを入手し、NATOがそれを隠していたことだ。タリバンがこのミサイルを獲得するという指摘は、05年秋の報告書に初めて登場する。当時、アフガニスタン南部のザブル州とカンダハール州の反政府勢力の司令官らが同ミサイルの一群を手に入れたと報告されたのだ。70年代、アメリカがイスラム聖戦士に提供したスティンガーミサイルがソ連軍のヘリコプターに猛威を振るったことは、軍事の世界では伝説になっている。
だが報告書によると、多国籍軍の航空機が墜落したのは、07年5月にヘルマンド州で肩撃ち式ミサイルによってCH−47「チニーク」ヘリが撃墜された1件だけだったとみられる。撃墜されたチニークが低空でゆっくりと飛行していたことから、タリバンが使用する一般的な携行式ロケット弾の犠牲になった可能性も排除できない。文書によると、パイロットがミサイルとのいくつかのニアミスが報告されているが、さらなる被害は報告されていない。
つまり、証拠は乏しいといえる。仮にタリバンが熱線追尾式ミサイルを所有しているとすれば、タリバンの戦闘員などに甚大な被害を与えてきたプレデターやラプターといった無人戦闘機がなぜ撃墜されなかったか、説明がつかない(先週末には、24時間の間にパキスタン北西部で無人戦闘機による3度の攻撃が行われ、24人以上のタリバン戦闘員が死亡している)。
■看過できないISIとタリバンの関係
文書に衝撃的な報告がないとはいえ、アメリカで政治問題にならないわけではない。上院外交委員会の委員長であるジョン・ケリー上院議員はすぐさま、自身が所属する民主党がどう反応するかを把握するまで様子見をするという古典的な声明を発表した。ケリーは、この文書が「パキスタンとアフガニスタンに対するアメリカの政策の現実について深刻な疑問を提示している」とした上で、「(アメリカが)危険性を強調し、もっと早急に政策を軌道修正させるだろう」と語った。
ここでケリーが何を言わんとしているかは、はっきりしない。彼はパキスタンとアフガニスタンを何度も訪問し、数多くの要人と話をしてきた。では、これらの文書が明らかにする「現実」とは一体何を指し、ケリーはどんな「軌道修正」を考えているのか。ケリーの広報担当室は、すべて質問を上院外交委員会にするよう言い、広報担当者はこの件についてケリーには話すことが何もないと答えた。
この文書によって、ワシントンで改めて最も熱く議論される問題は、決して目新しいものではない──タリバンや関連組織と、パキスタンの関係はどんなものか。特に、パキスタンの情報機関である軍統合情報局(ISI)が過激派に指令を出したり支援したりしているのか、という点が注目されるだろう。
ウィキリークスの文書によると、過激派へのISIの関与を指摘する報告が毎週のように寄せられていた。この手の報告の多くはゴシップに毛が生えた程度のものに過ぎないが、現実と合致するものもあり、多数の情報源と連携した莫大な量のISI関与の報告は、無視することはできない。
報告は昨年12月が最後。バラク・オバマ大統領がアフガニスタンの新戦略を発表した時期だ。オバマの方針が上手くいくかどうかはまだ分からないが、今のところ明るいとは言えない。歴史家たちがアフガニスタンで「どこを間違ったのか」について書く時が来れば、この山のような書類は一次的な情報源になるだろう。
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