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演出される「北朝鮮の孤立」
内外展望 - 海外情勢
2010年 6月 07日(月曜日) 01:23
演出される「北朝鮮の孤立」〜北東アジアの緊張を高める
韓国の哨戒艦・天安の沈没は「北朝鮮の魚雷による攻撃」と公表された。その内容にはいくつかの疑問符がつけられるが、いずれにしても朝鮮半島の緊張は高まっている。中国などは「朝鮮半島の安定こそ最重要」として沈静化を求めているが、北朝鮮の孤立化は進むいっぽうだ。
そうしたなか、米軍制服組のトップであるマレン統合参謀本部議長は哨戒艦沈没に関して、「金正日総書記は単発的な動きはしない。次の行動があると懸念している」(5月31日)と半島が危険な状況にあるとの認識を示し、軍事力の使用こそ口にしなかったものの、「政治的、外交的努力を半島に集中する」と半島情勢に正対せざるを得ない状況に追い込まれた米軍の心情を語っている。
昨年のデノミの失敗による国内混乱。さらには食糧不足、エネルギー不足に喘ぐ北朝鮮。不安を抱える金正日総書記の健康問題と、未だ明確にされない後継者問題。重大問題山積の北朝鮮をますます孤立させようとする国際的な怪しい圧力。
朝鮮半島の異常は、激変期を迎えている北東アジアに、どんな影響を与えるのだろうか。
国際的合同調査団による調査結果発表
さる3月26日に起きた韓国の哨戒艦・天安の沈没事件に関して、韓国・米国・英国・オーストラリア・スウェーデンの5カ国から選ばれた 24人の科学者を含む、総計52人の軍民合同調査団は、「北朝鮮の魚雷爆発による衝撃波と気泡圧力により哨戒艦が切断され、沈没した」と結論づけた。
5月15日に沈没現場海域から、推進モーター、操縦装置、2枚の完全な形のスクリュー、5枚のプロペラなど、北朝鮮製の魚雷部品が回収されたことが、「北朝鮮による攻撃」と結論づけた最大の理由だった。この魚雷は長さ7.5m、爆薬装薬が250kgという大型魚雷。北朝鮮が輸出用に開発した音響受動追跡装置型の魚雷「CHT−02D魚雷」と呼ばれるもので、今回の攻撃はヨンオ級(130トン)潜水艇から発射されたとされる。
黄海にある北朝鮮の海軍基地から、事件の2、3日前に小型潜水艇、潜水艦、潜水母艦が各1隻ずつ出港し、事件の2、3日後に帰港していることもわかっている。
この調査結果を受けて韓国の李明博大統領は、「調査結果は、北朝鮮の魚雷が哨戒艦を沈没させたことを示しており、北朝鮮は沈没に対する代価を支払わなければならない」と明言。さらに北朝鮮に対して断固たる措置を取ると強調。北朝鮮が韓国の領海、領空、領土に対して侵犯を行った場合には、「即刻自衛権を発動する」と述べている(5月24日)。
李明博大統領が北朝鮮に対して強い決意を表明した24日には、北京訪問中のクリントン米国務長官が中国側に「北朝鮮に対する懲罰を支持してほしい」と求め、朝鮮半島情勢が緊迫の度合いを深めていった。
合同調査委発表に北朝鮮が反発
国際的な調査委が、韓国哨戒艦を攻撃したのは北朝鮮だと結論づけて発表したことに対し、北朝鮮の国防委員会は5月28日に異例の記者会見を行い、哨戒艦・天安の沈没事件は「傀儡当局(韓国)によるデッチあげ」だと強く否定。また同日、北朝鮮外務省も「米国と南朝鮮当局の自作劇」との談話を発表している。
北朝鮮国防委は哨戒艦攻撃を「デッチあげ」だとする理由として、まず、韓国内に以下のような状況が存在したと解説している。
•韓国の北朝鮮対策や外交政策の正当化。
•韓国保守勢力の結集。
•統一地方選を有利に運びたいという思惑など。
以上の理由から、韓国こそが哨戒艦沈没のような事件を必要としていたというのだ。
北朝鮮外務省は、主に米国を批判。米国では中間選挙を控え、強い姿勢を演出する必要があること。米軍を国外に出そうとする日本の民主党を屈服させ、中国を難しい立場に追い込む狙いがあったなどと指摘している。
恐らく日本人100人のうち99人までが、韓国哨戒艦の沈没は北朝鮮の攻撃によるものだと確信し、北朝鮮の反論を「馬鹿げている」「嘘に決まっている」と、言下に否定するだろう。
北朝鮮はこれまで、いわゆる“瀬戸際外交”を繰り返し、ギリギリのところで何とか凌いできた。今回もまた、この事件で半島に緊張を作り上げ、中国や韓国に存在を誇示してカネや食糧を巻き上げるネタにするのだろう。そして結局は国際的な圧力を撥ね返し、“北東アジアの乱暴者”として君臨するつもりなのではないか。
そんな思いの読者も多いかもしれない。だが調べれば調べるほど、この事件には奇々怪々の真実が浮かび上がってくるのだ。
北朝鮮の「主張」
5月28日、北朝鮮国防委員会の朴林寿局長は記者会見で、韓国が発表した調査結果は捏造だと強く非難。韓国が事件を捏造するなどの兆発を続けると、全面戦争を招くことになると警告している。
北朝鮮が“捏造”だと主張する根拠は、まず、合同調査委が発表した“130トン級潜水艇”に関するものだ。北朝鮮はこのタイプの小型潜水艇は「保有していない」と明言。さらに調査委が発表した“推定される攻撃経路”についても、「常識的に考えられないもの」と指摘している。
北朝鮮が130トン級の小型潜水艇を保有しているか否かは、正直なところ判断しにくい。問題はむしろ、130トン級の潜水艇から、爆薬装薬250kg、長さ7m超という大型重量魚雷を発射できるかどうかだ。これについて現役自衛官に問い質したところ、「不可能とは言い切れないが、常識的には極めて困難」との回答が返ってきている。
北朝鮮が捏造と主張する最強の主張は、調査委が “決定的証拠”として提示した製造番号の「1番」という文字だ。北朝鮮では「1号」という表現をしており、しかも製造番号はマジックで書かずに機械で刻印するというのだ。
他にも、哨戒艦・天安の沈没地点や爆発時刻が二転、三転したことにも言及し、この事件に関与したという韓国側の主張を全面的に否定している。
ハングルで書かれた製造番号「1番」については、韓国国内でも疑問視されている。たしかに北朝鮮の主張通り、北では「番」ではなく「号」と表記するのが普通らしい。だが本誌が接触した北朝鮮通は、「数年前までは“番”と記していたように思う」という。製造年が古いものであれば、番と書かれていても不思議ではないらしい。
合同調査委が「北朝鮮の魚雷攻撃」と発表してから1週間後の5月26日、合同調査委の調査員の一人だったシン・サンチョルが「1番という文字は韓国側が書いた」と発言したのだ。(シン・サンチョルは講演で以下のように発言。「番号の部分は滑らかではなく、凸凹していた。これは、すでに錆びていた状態の表面に韓国側が書いたようだ」)
この発言により、合同調査委の結論「北朝鮮の攻撃」は、いよいよ疑問視されるようになっていった。
だが、合同調査委の発表内容には、さらに致命的とも思える“不思議な話”や、“あり得ない状況”が存在していた。そして、それらは驚愕の真実を物語っているのだ。
北朝鮮潜水艇の「実力」
昨年(2009年)11月10日、黄海上の大青島(デチョンド)近辺の国境線、いわゆる北方限界線(NLL)近辺で、韓国警備艇と北朝鮮警備艇が銃撃戦を行った事件があった。このときはわずか数分の銃撃戦で、韓国側の4隻の警備艇は15発を被弾するも航行に問題なし。北朝鮮の警備艇は船体そのものが激しく破損。やっとの状態で現場から脱出したが、多数の負傷者が出た(死者1名の情報もある)とされる。
両国の海軍同士の戦闘であり、わずかな戦闘でも互いの戦力、実力は把握できる。
北朝鮮海軍の実力は、韓国側が想像していた通り、じつに“お粗末”なものだったのだ。
この10数年間、韓国海軍は仮想敵艦を日本あるいは中国として、日本に追いつけ、日本を倒せとばかりにレベルアップを図ってきた。北朝鮮海軍の実力が韓国よりはるかに劣っていることは、あらゆる情報が示しており、世界中がそれを当然のことと考えていた。
そんな北朝鮮海軍が、黄海の北方限界線付近で訓練中の韓国哨戒艦の下に、気づかれないように大型魚雷を潜り込ませ、艦の直下7〜8mのところで爆発させるなどという芸当ができるだろうか。しかも現場海域は水深が45〜50m。この水深での大型魚雷発射は「針の穴を通すほど困難」(韓国海軍の話)だという。
そうした理由から、専門家は「水中工作員による自爆テロ」または「人間魚雷」説を唱えていた。じつは本紙もまた、人間魚雷説に傾いていた。じっさい、それ以外には説明がつかないからだ。
哨戒艦・天安沈没の真因を探る
自爆テロや人間魚雷以外の、どんな方法で哨戒艦・天安は沈没させられたのか。5カ国の精鋭科学者を含む軍民合同調査委の報告を満たし、かつ、誰もが納得できる「天安沈没の真因」を探ることは可能か。その真相を求めることは、まさに「針の穴を通す」ような話だ。
哨戒艦・天安が沈没した現場は水深48m。その周囲は水深45m〜50mの、海底が迷路のように入り組んだ黄海の中。この海の中、大型重量魚雷を進ませ、天安の直下7〜8mの位置で爆発させる。しかも海底に散らばっていた破片などから、それは北朝鮮の輸出用、音響追尾型魚雷CHT−02Dでなければならない。
5月20日の合同調査委の発表以降、本誌は韓国哨戒艦・天安沈没の真相を求めて、ネット上の怪情報を集めるいっぽうで、情報通や現役、退役自衛官などに話を聞いて回った。その結果、とくに諜報関係のプロや元海自自衛官など数人が、共通の「推測」を持っていることがわかった。
数名の“その道のプロ”たちが共通して推測したのは、二つの方法だった。
その第1は、「北朝鮮が発射した魚雷を、某国最新鋭の機器が誘導し、現場で爆発させる」というもの。もう1つは、「数年前に何らかの方法で北朝鮮の大型魚雷を手にしていた某国が、最新鋭技術を使ってそれを天安の真下に侵入させ、爆破。その衝撃波と気泡圧力で艦を切断した」というものだ。
では「某国」とはどこなのか。そして某国が使った「最新鋭技術」とはどんなものなのか。その問いに答える前に、この事件で誰が得をしたか、考えてみたい。
「北風が吹くと儲かる者」
この事件に限らず、謎の“怪事件”が起きたとき、真相究明のために有効な方法は、誰が得をしたかを調べることだ。では、今回の哨戒艦・天安の沈没で誰が得をしただろうか。
天安沈没は捏造で、韓国による“自作自演劇”だと主張する北朝鮮国防委の言い分を再度見てみよう。北国防委は、「韓国の対北対策や外交政策の正当化。韓国保守勢力の結集。統一地方選を有利に運びたいという思惑」のために事件を捏造したと主張している――つまり1998年の金大中による大統領選勝利以前によく使われた「北風」ではないかというのだ。
金大中が大統領になる以前には、選挙前に「北風が吹く」ことが多々あった。北風が吹くとは、北朝鮮が韓国に対して強硬姿勢などを見せること。こうすると、韓国の選挙では保守派、対北強硬派が勝利する。韓国保守勢力は、選挙前に吹く「北風」によって、票を伸ばしてきた歴史がある。ところが金大中のときには、北風が逆風にならず、金大中を大統領に押し上げることになったのだ。
以来、金大中、盧武鉉と続いた“親北朝鮮”政権だったが、2008年2月に直接選挙でハンナラ党の李明博が大統領に就任。これまでの太陽政策が見直され、対北強硬路線が復活している。李明博の対北強硬路線を正当化するために、韓国が自作自演の哨戒艦沈没事件を演出したというのが、北朝鮮国防委の見方だ。だが韓国だけで、あの複雑怪奇な事件を演出することは不可能と考えてよい。
統一地方選は6月2日に実施されたが、北風が吹いて与党ハンナラ党に好影響を与えるどころか、鄭夢準(チョン・モンジュン)代表が引責辞任に追い込まれるほどの「敗北」を喫したのだ。この統一選挙のために哨戒艦沈没事件が引き起こされたと見ることはできない。韓国はこの事件で得をしていない。それでは他に「得をした」者がいるのだろうか。
黄海に米第七艦隊出動
韓国の哨戒艦沈没事件が北朝鮮の魚雷攻撃によるものと断定された直後の5月24日、米国防総省のホイットマン報道官は、「韓・米軍合同で非常に近い将来、対潜水艦訓練と海上封鎖の軍事演習を実施する計画がある」と述べた。この合同訓練は、北朝鮮を意識して、黄海で行われ、米国の太平洋艦隊である第七艦隊が参加するという。
哨戒艦が魚雷攻撃を受けたのだから、この措置は当然だろう。だが、黄海とは北朝鮮だけの海ではない。黄海とは日清戦争で日本と中国(清)の両海軍が戦い、日本の勝利が決定づけられた場所であり、日露戦争でも歴史的な海戦が行われた海である。そこはまさに中国の急所、北京の喉元ともいえる場所なのだ。そんな海域に米第七艦隊が出向いて、堂々と調査を行う口実を作ったのが、天安沈没事件だった。
かつて中国は、米国に対し「太平洋を二分割しよう」と提案したこともあった(2007年)。現実に中国海軍の成長発展は目覚ましく、「中国の海軍力増強は一貫して進み、太平洋海域での米海軍に重大な挑戦を挑んでいる。中国はやがてこの地域での制空権の確立から、制海権の確立を目指すだろう」(元米国防総省中国部長ダン・ブルーメンソール)。中国海軍に対峙するためにも、米海軍が黄海全域の調査を欲しているのは、当然のことだ。
さらに、北朝鮮外交部が指摘するように、日本の状況もあった。3月の初中旬といえば、普天間基地の移設問題で日本の民主党政権が右往左往していたときだった。鳩山首相(当時)が「最低でも県外」と口にしたため、これまで想像もしなかった県外移転を夢見られる状態にあった。しかも3月初旬には、宮崎県の東国原知事が、児湯郡にある新田原自衛隊基地を米海兵隊が使用することに前向きの発言をしたのだ。
児湯郡の新田原基地は航空自衛隊の基地で、面積は普天間の倍近くあり、2700mの滑走路が2本もある。辺野古よりはるかに使い勝手も良く、助成金目当てで県知事も前向き。じつは鳩山首相は初めから新田原基地への移転を描いていたフシがあった(「週刊ポスト」5月22日号に詳細掲載)。
ところが直後に、児湯郡都農町と児湯郡川南町で口蹄疫が発生。米軍基地移転などを口にする状況になく、宮崎県への移転は白紙になってしまった。
それはともかく、3月初中旬の時点では、たしかに普天間の移転先は、辺野古以外、沖縄以外が検討されていた。この時点で「朝鮮半島有事」といった状況が作られたら、県外移転など吹っ飛んでしまう。基地建設利権も含め、沖縄で甘い汁を吸っている米軍や米建設大手にとって、哨戒艦・天安が「北朝鮮に攻撃された」という話は、非常に都合がいいストーリーだったことは間違いない。
まだある。この10数年、韓国軍は北朝鮮など敵と見なしておらず、ひたすら対日本、対中国の武器、兵器を調達し続けてきた。今回の事件を受けて、韓国軍は対北朝鮮のための兵器体系を組み立て直す必要が生じたのだが、それらはすべて、米国産軍複合体の言うなりに調達するしかないのが現状なのだ。
さらに米軍は韓国に対し、日本と同じようにMD(ミサイル防衛)を採用するようにと働きかけ始めている。
米外交問題評議会(CFR)のホームページでは、「外交に熟練した李明博大統領は、韓国を米国の信頼すべきパートナーの筆頭に位置づけた」(4月22日)と、韓国と李明博大統領を最高に持ち上げ、返す刀で「鳩山首相は、李明博大統領から対米外交戦略を学ばなければならない」と記すほど、韓国と米国の関係は良好だ。李明博自身、「韓米関係は史上最高の状態」と述べているが、それはかつて「ロンヤス」と呼び合い、カネを収奪されていた日本の状況にそっくりではないか。
こうしたすべては、哨戒艦・天安沈没事件のお陰で、米国だけが「得をした」ことを示している。
黄海海底に米原潜が潜んでいる
話を前に戻そう。現役、退役自衛官や諜報関係者など、数名の“その道のプロ”たちは「哨戒艦・天安沈没の真相」として、二つの方法しか考えられないとしていた。
その第1は、「北朝鮮が発射した魚雷を、某国最新鋭の機器が誘導し、現場で爆発させる」というもの。もう1つは、「数年前に何らかの方法で北朝鮮の大型魚雷を手にしていた某国が、最新鋭技術を使ってそれを天安の真下に侵入させ、爆破。その衝撃波と気泡圧力で艦を切断した」というものだ。
当然ながら、ここで言う「某国」とは、アメリカのことだ。
こう言ってしまうと、安っぽい陰謀論のように思われるかもしれないが、その道のプロたちが、あらゆるすべてを考察したとき、これ以外には考えられないという結論に達する。元海自の自衛官はこう考えている。――黄海の海底近くに潜んでいた原潜が、北朝鮮製の魚雷を積んだ無人の潜水艇を発進させ、その無人潜水艇から発射された魚雷が天安の真下に来たとき、遠隔操作かその他の方法でこれを爆発させる。天安沈没は、この方法で行われたとしか考えられない。
すでに4月末時点で、韓国の左派メディアのなかには天安沈没の原因を、「米原潜による魚雷攻撃では」と報道し、これを「韓国版911事件」と位置づけているものもある。また、同様の情報のなかには「米原潜が一隻、位置不明になっているが、これは仕事を終えた原潜が黄海海底で時間が過ぎるのを待っているのだ」といった情報もある。
陰謀論などには乗ることのない、現場の人間たちが揃って、哨戒艦・天安は米国によって沈められたと考えていることは事実なのだ。
本紙は、国際政治は理解しているつもりだが、現実の軍事オペレーションに関してはズブの素人。そんな本紙ではあるが、この事件の真犯人が米国だけと確信しているわけではない。米国と北朝鮮が一体となって事を行った可能性も捨てきれないと考えている。あくまで可能性として、ではあるが。
揺れ動く世界の中で
昨秋政権交代が行われたギリシアで、前政権が隠蔽していた財政赤字が明らかにされ、ユーロ経済圏の危機が一気に表面化してしまった。ギリシア1国の経済はEU全体のわずか2%に過ぎないのだが、ギリシアに続いてスペイン、ポルトガルの財政赤字も浮上してきている。さらにはサブプライムローンの焦げ付きが未だ処理されておらず、イタリア、ドイツ、英国までもが“危険な水域”にあると噂されている。
米国でも大幅な金融規制が始まろうとしている。金融規制法案は米上院と下院で若干の差があり、FRBは下院案には反対しているが、上院案は受け入れる可能性を示唆している。今後は法案が一本化され、7月4日までにオバマ大統領の下に送られる予定だ。この規制は、まだまだ甘いものではあるが、オバマがウォール街金融勢力と全面的な対峙姿勢にあることは間違いない。
世界経済が「二番底」の不況に向かう可能性は、かなりの高さにある。だが正直なところ、混乱混迷に向かっているのは経済だけではない。政治的にも軍事的にも、世界のあちこちで火を吹いている状態なのだ。さらには地球そのものも揺れ動いている。アイスランドでは3月と4月にエイヤフィヤトラヨークトルが噴火し、この火山が噴火するたびに一緒に噴火してきたカトラ火山が間もなく噴火するとの噂も出でいる。南米グアテマラでは5月27日に首都グアテマラ市に近いバカヤ火山が噴火。31日には日本に近いマリアナ海溝で海底火山の噴火が発見され、鹿児島県の桜島では6月2日に2回の大噴火が観測されている。
この激変期に鳩山首相が突如として辞任。小沢一郎も幹事長を辞任し、後継総裁として菅直人が選出された。菅直人と言えば失言で有名であり、また過去には女性問題で週刊誌を賑わしたこともあった。その菅直人は、“小沢一郎と距離を置く”という点が評価され、下がり放しだった民主党支持率も一気に解消に向かっている。
だが、全世界を覆う激変の嵐が、これで収まるとは思えない。7月の参院選の前に、なお一波乱、二波乱があるかもしれない。そんな雰囲気が漂っているように思える。■
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