02. 2010年6月13日 01:22:01: Cbk2AmMXDE http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100612/kor1006120815002-n1.htm 【緯度経度】ソウル・黒田勝弘 韓国、また泣き寝入り? (1/3ページ) 2010.6.12 08:13 事件がナゾで真相が分かりにくい時、よく出る話に「それで誰がいちばん得をしたか考えれば真相が分かる」というのがある。 左翼に愛用された理屈で、いわゆる“謀略史観”というのがそうだ。ソ連など共産圏が健在なころ、国際的な事件で「アメリカ帝国主義」を非難する際によく使われた。 したがって北朝鮮も謀略史観が大好きで、米国や日本、韓国などを非難する際、よく使ってきた。 ところで、韓国で先ごろ起きた哨戒艦撃沈事件は「なぜ北朝鮮が?」と、動機などに分かりにくいところがある。そこでこれに「誰がいちばん得をしたか?」論をあてはめてみると、面白い。結論は「いちばん得をしたのは北朝鮮」で「犯人はやはり北朝鮮」となって納得なのだ。 そう思わせられたのは先週、行われた韓国の統一地方選挙が、まさに北朝鮮の思い通りの結果になったからだ。 選挙結果は内外の予想を裏切り与党惨敗、野党大勝に終わった。ソウル市長も危うく野党に取られるところだった。 哨戒艦事件で北朝鮮に対する批判が高まっていたときだから、安保重視の保守派の政権・与党に有利と思われたのに、結果は逆だったのだ 北朝鮮は当初から哨戒艦事件は「韓国のデッチ上げ」といい「選挙を与党を有利にするための謀略」などといった政治宣伝に熱を上げていた。 ところが政権・与党が「北の脅威」を強調し、北朝鮮糾弾のトーンを高めたため、世論は「南北の緊張が高まるのはまずい」となり、逆に「戦争より平和」を訴えた野党支持に流れてしまったのだ。 これには「このままでは戦争だ!」「われわれは戦争準備ができている!」などといった北朝鮮の脅迫キャンペーンも効いた。「戦争か平和か」といわれれば、緊張が緩んで久しい、豊かな暮らしの韓国社会は「平和」に傾く。 北朝鮮に対しては「対立より支援・協力」を主張する野党の勝利は、北朝鮮の大いに望むところだ。 野党は哨戒艦事件についても「北を追いつめた韓国が悪い」と李明博政権を非難していた。韓国は元の対北支援・協力政策に戻るべきだというのだ。 その野党が勝ったのだから北朝鮮は大喜びである。選挙の勝利者は北朝鮮だった。事件のおかげである。だから北朝鮮は事件を起こした? 北朝鮮の“戦争脅迫キャンペーン”に興味深いものがあった。最高権力機関の「共和国国防委員会(金正日国防委員長)」のスポークスマン声明(5月20日)にはこうある。 「わが方が遂行する全面戦争は(略)全民族が強盛する統一大国を打ち立てる全民族的で全人民的、全国家的な戦争になるだろう」 報復や制裁には全面戦争で応えるが、それは南北統一戦争になるというのだ。ちょうど60年前に失敗した、武力による南北統一戦争をまたやるといっているのだ。 韓国も、実は有事に備えた米韓連合軍の「作戦計画5027」があり、そこでは北進および平壌占領を含む“統一戦争”が視野に入っている。ということは、南北とも口では平和統一をいっているものの、具体的な統一イメージではやはり“武力統一”なのだ。 脱北者の話に「北では人びとが生活苦からいっそ戦争になればいいといっている。南と一緒になれば暮らしがよくなりそうだから」というのがよくある。 しかし韓国人は「統一より平和」を望んでいるようにみえる。「しばし“平和”を犠牲にしてでも北の同胞を解放してあげたい」といった考えはない。 選挙結果もこれありで、韓国では哨戒艦事件の北朝鮮糾弾はしだいにトーンダウンしつつある。戦争の覚悟がなく、平和志向の韓国は北に何度やられても「泣き寝入り」するしかない。
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