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フィナンシャル・タイムズ2010年5 月31日(月)08:00
(フィナンシャル・タイムズ 2010年5月29日初出 翻訳gooニュース)
東京=ジョナサン・ソーブル
http://news.goo.ne.jp/article/ft/world/ft-20100530-01.html
ぽってり太めで穏やかでめったに姿を現さない海の住人ジュゴンはその昔、人魚に間違えられたり、嵐の到来を警告する神々の使者と思われていた。
絶滅が危惧されるこの海獣たちが今、アメリカの国防総省に戦いを挑んでいる。少なくとも司法の観点からは。米軍基地を沖縄から移設しようというただでさえ難しい課題が、おかげでさらに錯綜してしまっている。
米サンフランシスコの地裁では2003年以来争われた「ジュゴンその他対ロバート・ゲーツ」訴訟は、普天間海兵隊飛行場の代替施設を辺野古湾に建設することを日本政府が28日に合意したのを受けて、改めて重要性を増すことになった。美しい辺野古湾はジュゴンの餌場なのだ。
訴訟を提起したのは、日米の環境団体だ。辺野古基地建設がジュゴンに与える影響を考慮しなかった国防総省は、米国家歴史保存法(NHPA)に違反しているというのが、訴えの内容だ。
日本の左寄りの鳩山由紀夫首相は当初、前政権が米と合意した移設計画に反対し、沖縄県外に別の移設先を見つけると公約していた。
しかし鳩山氏は姿勢を一変させた。怒る環境派は今、沖縄の文化で崇拝の対象でもあるジュゴンについて、世論の関心を改めて呼び覚まそうとしている。
圧力団体「ジュゴン保護キャンペーンセンター」は5月 28日、3万人が署名した基地反対の請願を、環境省と外務省に提出した。事務局長の蜷川義章氏は、この問題を環境保護運動から政治圧力にまで広げていきたいと話す。
相撲取りと同じくらいの体格をもつ灰色のジュゴンは、約50頭が辺野古湾を行き来していると見られている。皮肉なことに、基地移設先としての適性を調査する軍関係者が1990年代に数頭発見するまでは、沖縄のジュゴンは絶滅したと一部の生物学者に思われていた。
環境派にとって最大の懸念は、1800メートルの滑走路を2本建設する案だ。この滑走路を造れば、サンゴ礁やジュゴンが主食とする海草藻場が破壊されると、環境派は主張。埋め立てではなく「くい打ち」方式で滑走路を造れば被害は軽減されるという提案に、全く納得していない。
NHPAによると米政府機関は、米国内だけでなく海外で行う事業についても、登録文化財に対する保護の基準を適用しなくてはならない。マナティーの近い親類でもあるジュゴンは、日本では「天然記念物」に指定されている。
これまでのところ、訴訟ではジュゴンが優位だ。2008年1月には、サンフランシスコにある北カリフォルニア連邦地裁は、国防総省が、外国の文化資産を守るよう定めるNHPAの基準を満たしていないと判断を示し、基地計画の環境影響評価(アセスメント)に「積極に参加し、日本と調整する」よう命令している。
国防総省は、日本政府による3カ年の環境アセスメントに協力しており、初期段階での評価は基地建設にとって前向きなものだったと主張している。
しかしそれだけでNPHAの基準が満たされるのかどうかは、アメリカの裁判所が判断することだというのが、弁護士たちの見方だ。
訴訟によって辺野古の基地建設は中止されるのではなく、遅れることになるだろうと専門家たちは言う。ジュゴン訴訟を研究してきた米国の弁護士は「こういうケースのほとんどは、何らかの調整を経て継続されるものだ」と話す。
(翻訳・加藤祐子)
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