投稿者 上葉 日時 2010 年 5 月 18 日 01:55:44: CclMy.VRtIjPk
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/1(その1) - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/news/20100430ddm001030006000c.html
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/1(その1)
◇無人機爆撃、本土で操縦 民間人の被害拡大 オバマ米政権がアフガニスタンやイラクで、無人航空機を飛ばし武装勢力を掃討する「無人機戦争」を推し進めている。「米兵士が死なない」「低コスト」とされる軍事策だが、巻き添えとなる民間人の被害が深刻化、その手法を疑問視する声も噴出している。現実感が希薄となっている最新のテロとの戦いの問題点を報告する。【ワシントン大治朋子】
◇自宅から出勤「午前はアフガン、午後イラク」
米国本土の基地から衛星通信を使い、1万キロ以上離れた戦地で無人航空機を飛ばす。兵士は自宅で家族と朝を迎え、基地に出勤。モニター画面に映る「戦場」で戦い、再び家族の待つ家に帰る−−。
「午前中3時間はアフガンで飛ばし、1時間休憩する。午後の3時間はイラクで飛ばす。米国にいながら、毎日二つの戦場で戦争をしていた」。イラク戦争が始まった03年、米西部ネバダ州ネリス基地で無人機のパイロットをしていたジェフリー・エガース大佐(48)が振り返る。
「迫撃弾が発射された。やつらを仕留めてくれ」。04年、戦闘が激化したイラク中部のファルージャ。大佐は現地からの要請に応え、無人機「プレデター(捕食者)」の操縦席で、レーダーの示す発射地点を確認、操縦かんを倒し航行させた。
巨大なプラモデルのような機体(翼幅約17メートル、長さ約8メートル、重量約512キログラム)の時速は約130キロ。現場上空に到着し、モニターに浮かぶ男たちに照準を定めるまで、わずか9分。左手で安全ロックを解除し、右手の操縦かん頭頂部にある赤いミサイルボタンを押す。画面いっぱいに土煙は広がり、「武装勢力は、姿を消した」(エガース大佐)。
「瞬きしない目」。空軍は無人機をそう呼ぶ。24時間の連続飛行も可能。夜間は赤外線カメラが、武装勢力を探す。プレデターの機体価格は約450万ドル(約4億3000万円)でF22戦闘機の約85分の1だ。昨夏、空軍が作成した長期計画書によると、「2012年をめどに、一人で同時に4機の操縦を目指す。人件費56%の削減が可能」。最終的に目指すのは「無人機を操縦するロボット」の開発だ。
◇
「無人機はなぜ、罪のない人々を殺すのか」。昨年末、米南部ニューメキシコ州で開かれた講演会で、反戦市民団体が空軍幹部に食ってかかった。観客席にいた空軍中佐が振り返る。「立ち上がって叫びたかった。『無人機の攻撃は正確だ。照準の3メートル近くの人が無事なのを、この目で見てきた』と」
だが、米陸軍士官学校のゲーリー・ソリス元教授は「軍服を着ない武装勢力と市民を映像だけで区別するのは難しいはず」と指摘する。国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)によると、09年に戦闘に巻き込まれて死亡した市民は2412人。4人に1人は、米軍の無人機を含む空爆などの犠牲になっている。
毎日新聞が入手した空軍の集計値によると、オバマ政権が発足した09年、アフガンで無人機プレデターと新型の「リーパー(死に神)」が投下した爆弾は219個。08年(183個)の1・2倍で、07年(74個)の約3倍だった。今年1〜3月末は計52個で、昨年と同ペースとなっている。
オバマ大統領は、パキスタンでの米中央情報局(CIA)による無人機空爆も拡大。米シンクタンクによると、04年から今年4月16日までに最大1314人が死亡し、うち3割(378人)は民間人で、民間人の約半数がオバマ政権下で犠牲になった。国連人権理事会のフィリップ・アルストン特別報告者は、民間人被害を重視。「国際人道法に違反する疑いがある」と話し、6月の同理事会で改善を求める方針だ。
毎日新聞 2010年4月30日 東京朝刊
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/1 ピーター・シンガー氏の話 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/news/20100430ddm003030027000c.html
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/1 ピーター・シンガー氏の話
◇新たな脅威招く恐れ−−米ブルッキングス研究所上級研究員、ピーター・シンガー氏 米軍司令官は無人機を「最も価値ある兵器」と呼ぶ。兵士は自宅で目覚め、普通の市民と同じように通勤し、戦争をしている。
この「革命的状況」は、原爆の開発に例えられる。原爆は、冷戦という新たな戦いを生み出した。無人機は現在、世界43カ国が導入。イスラエルやシンガポールは少数で高品質、中国は量を重視するなど、それぞれ戦略を立てつつあり、新たな軍事競争を始めている。
米兵の戦死という犠牲があるからこそ、国民も政治家も、戦争に慎重になる。多数が死傷すれば、派遣に賛成した議員は選挙で負ける。だがパキスタンでの空爆は(米兵が死なないので)米議会で審議されず、戦争とも認識されていない。
戦争に関する調査で、「距離と対象の非人間化」が殺人を容易にするというデータがある。無人機による空爆は遠隔操作で、画面に浮かぶ対象は、人というより小さなモノに見える。
レバノン有力紙の編集者は無人機について「冷徹なアメリカが、直接戦うのを恐れ、機械を送り込んでいる」と話していた。米軍への支援を迷う現地市民は、空爆をどう見るだろうか。無人機はアルカイダ幹部らの殺害には有効でも、多くの新たな(反米の)敵を生み出していないか。無人機戦争を世界の人々がどう受け止めるのか、米国は知る必要がある。(談)
毎日新聞 2010年4月30日 東京朝刊
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/1(その2止) - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/news/20100430ddm003030018000c.html
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/1(その2止) <1面からつづく>
◇「標的殺害」根拠に疑問 CIA、人違いでも秘密に処理
01年9月の米同時多発テロをきっかけに、ブッシュ前政権は無人航空機でテロリストを暗殺する「ターゲテッド・キリング(標的殺害)」を開始した。オバマ大統領は、その対象や地域を拡大させている。だが、法的根拠や効果を疑問視する声は強く、武装勢力の報復など「新たな脅威」を招く危険性や、米国民の戦争への無関心化も指摘されている。
◇
米同時多発テロの数日後、ブッシュ大統領(当時)は一通の「覚書」に署名した。米中央情報局(CIA)に対し、国際テロ組織「アルカイダ」幹部らの暗殺を許可する文書だった。米メディアによると、CIAの無人機は02年2月、アフガニスタンでアルカイダ指導者のウサマ・ビンラディン容疑者とみられる「背の高い男」ら3人を殺害したが、別人だったという。
「(誰を殺すかという)判断は、本質的に、何者かに対する死刑宣告と同じだ」。ポール・ピラーCIA元テロ対策担当が指摘する。だが「人違いと判明しても、秘密情報として処理されるだけ」(元CIA職員)だ。
CIAは誰を、どのような根拠で殺害しているのか、民間人被害も含め一切説明しない。ブッシュ前政権は批判を受けると、同時多発テロの直後、議会が承認した「武力行使容認決議」が法的根拠だと訴えた。「米国に対する国際テロを防ぐため、大統領に必要な軍事力の使用を認める」との規定があるからだ。
しかし国際法の観点からは、その軍事力も無制限ではない。世界各地の非合法殺害(処刑)について国連人権理事会に報告するフィリップ・アルストン特別報告者は、昨年6月と10月、米のパキスタンでの無人機攻撃が、市民と戦闘員を区別し過剰な民間人被害を回避するよう定めた国際人道法に「違反する疑いがある」と報告した。オバマ政権は前政権と同じ説明をするだけで、アルストン氏は「オバマ大統領には変化を期待したが、失望している」と話す。
◇兵士は死なず、国内の関心低下 オバマ政権で拡大
「オバマ政権による無人機を使った標的殺害は、その地域も対象者の数も、ブッシュ政権時代を上回る規模だ」。元米海軍幹部(情報担当)のウェイン・マドスン氏が指摘する。
オバマ大統領は就任以来、アフガンに計5万人余りを増派した。だが09年の戦闘による米兵死者(263人)は、08年(132人)の2倍。今年3月末までにすでに76人が死亡し、過去最悪のペースを更新し続けている。
治安の悪化に歯止めがかからない状況の中、オバマ大統領は「米兵の死なない」無人機への依存をさらに強めている。
昨年末、「テロリストの本拠地がある」としてパキスタン南西部バルチスタン州にCIAの空爆を拡大したが、人口密集地のため、民間人被害が急増している。
最近は、アルカイダ幹部が「ソマリアやイエメンの武装勢力と連携している」として、無人機の本格的な派遣を検討している。
アルストン氏は「米国のやり方は、中国やロシアなど他国にも都合のよいものになる」と懸念する。国際人道法を無視し、過剰な民間人被害を伴う標的殺害をエスカレートさせる米国の姿勢が、他国に同様の攻撃を正当化させる根拠を与えることになると危惧(きぐ)する。
無人機戦争の拡大が、むしろテロリストを米本土に呼び寄せる危険性も指摘されている。インド人イスラム教徒で米ブルッキングス研究所の元研究員、ムバシル・アクバル氏は「米兵が怖がって戦場で戦わないなら、むしろこちらから米国に乗り込んで殺そう、と考えるテロリストが増えるのではないか」と予測する。
米兵被害の減少が、米国内における戦争についての関心や議論を低下させる可能性もある。メアリー・ダジアック南カリフォルニア大教授は「民主主義国家としてのチェック機能を低下させるだろう」と指摘している。【ワシントン大治朋子】
毎日新聞 2010年4月30日 東京朝刊
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/2 「情報」が招く誤爆 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/news/20100501ddm007030129000c.html
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/2 「情報」が招く誤爆 ◇収集役は民間会社
「最近、民間軍事会社の社員が100ドル札ばかりで計2万ドルを用意し、アフガニスタンに入るのを見た。情報料として、現地で配ると言っていた」。元米中央情報局(CIA)職員が打ち明ける。
元職員によると、CIAや米軍は、民間会社の社員に現金を渡し、アフガンやパキスタンに派遣。国際テロ組織アルカイダや反政府勢力タリバンの情報を収集させ、無人航空機で攻撃する際の参考にしている。CIAはパキスタン南部のシャムシ空港などに無人機を駐機。米南部バージニア州ラングレー空軍基地から操作しているという。
冷戦崩壊後の90年代、CIAは人員を約25%削減された。01年9月の米同時多発テロの直後、その不足を補うため民間軍事会社の社員を多数雇った。最近では、その一部が無人機攻撃のための情報収集役を担当しているとされる。民間人を使うのは「低コストのうえ、問題が起きた時も、政府の説明責任から切り離せるからだ」(元CIA職員)。
◇
昨年4月、パキスタンで19歳の少年が「米国のスパイ」としてタリバンに射殺された。直前に撮影されたビデオで、少年は語った。「小さな金属片をアルカイダやタリバンの家に置けば、2万ルピー(約238ドル)もらえると言われた。お金が欲しくて、関係のない人の家にも置いた」
武装勢力はその後、同様の金属片の写真を公開した。これを分析した米軍事ジャーナリスト、アダム・ローンズリー氏は「米軍で使われている赤外線装置に似ている。無人機に搭載された赤外線カメラなら、所在を確認できる」と、無人機攻撃との関連性を指摘する。
無人機攻撃の正確性は「95%以上」(空軍)。だが「市民をテロリストと思い込み、別人を殺している可能性もある」(ゲーリー・ソリス元陸軍士官学校教授)という。米ブルッキングス研究所のピーター・シンガー上級研究員は「無人機による誤爆の大半は、誤った情報が原因だ」と強調する。
米空軍は08年夏、戦場での人的情報(ヒューミント)活動を強化するためオハイオ州のライト・パターソン空軍基地に新たな情報部隊を設置した。だが、戦地の住民の協力を得て正確な情報を入手するのは、容易でない。
09年8月、米ギャラップ社がパキスタンで実施したアンケートによると、地元市民の多くは米国による空爆を主権侵害とみなし、空爆を支持する人は、わずか9%。民間人被害の拡大は反感を招き、正確な情報は取りづらく、新たな「誤爆」を生む悪循環の構図につながっている。
◇
「我々は、情報の共有化という大きな課題をも抱えている」。今年2月、ワシントンで開かれた無人機製造企業などの会合で、演説に立ったスティーブン・タナー空軍中佐が訴えた。
昨年末に起きた米デルタ機爆破テロ未遂事件では、各機関が容疑者の情報を断片的に入手しながら、横の連携に欠け、テロ寸前の事態に陥った。無人機に関し、CIAや米陸海空軍は、空撮した大量のビデオを各自個別に保管している。「情報担当者は、独自入手の情報が自分の昇進につながるとも考えるので、簡単には共有しない」。元米海軍幹部(情報担当)のウェイン・マドスン氏は、情報を取り扱う難しさを指摘している。【ワシントン大治朋子】=つづく
毎日新聞 2010年5月1日 東京朝刊
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/3 コソボ、イラクで操作した… - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/news/20100502ddm007030059000c.html
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/3 コソボ、イラクで操作した… ◆コソボ、イラクで操作した元兵士
◇現実感ない「死」の映像
07年秋。米軍用機製造企業から派遣された元米陸軍兵のアンドリュー・カバレロさん(32)は、イラクの米軍基地に勤務していた。無人航空機「プレデター(捕食者)」のカメラを操作し、映像を分析するセンサーオペレーター(SO)。ある夜、別の部隊の応援で無人機の赤外線カメラが映し出す住宅街を見ていた。「不審者がいる」という情報で、米軍による地上からの砲撃が始まった。
「家が破壊され、逃げ出す幼い子供の足元が見えた。思わず攻撃の中止を呼びかけた」
◇
カバレロさんは98年、米陸軍に入隊。日本のロボット戦争アニメ、マクロスシリーズの大好きなゲーム少年だった。コソボ紛争に伴い、00年、初従軍。戦場の基地で、無人偵察機を操縦した。空軍は米本土から遠隔操作するが、陸軍は「現場との連携を密にするため」現地で操作する。ある日、無人機の映像の中で「人が死ぬのを初めて見た」。戦場とはいえ基地の中で毎日無人機操作に明け暮れる兵士にとっては、人の死ですら、時に現実感を持って受け止めにくい。心の中で何度もつぶやいた。「これはゲームじゃない。本当に、人が死んだんだ」
03年、イラク戦争の開戦と同時に、無人偵察機のSOとして、現地に入った。移動が多く、初めて戦地を歩き回った。イラクの人々と話し、裸足の子供たちとサッカーをした。
「戦場を歩くことで、分かることがある。例えばイラクでは、人々が道の傍らに穴を掘り、かんがい用のポンプを埋める。だがそれを知らないSOなら、爆弾を仕掛けていると思い込み、攻撃を呼びかけるかもしれない」。カバレロさんは、戦場を知らない者の無人機操作には懐疑的だ。
06年に除隊。軍用機製造会社に就職すると、無人機のSOとして再びイラクに派遣された。昨年、希望がかない、戦争とは無関係の米国内勤務になった。
◇
米陸軍によると、無人機操縦者の7人に1人は民間人。無人機の急増に、兵士の訓練が追いつかない状況だ。米軍交戦規則で民間人の戦闘行為は禁じられているため、ミサイルボタンを押す瞬間は「兵士と交代する」(陸軍)。一方、民間人SOの大半は、20代の若者。戦場を歩いた経験もない。映像から不審な動きを報告するSOの役割は大きく、攻撃態勢を一気にエスカレートさせることもある。
「現場から遠ざかるほど、人は現実感を失う」。カバレロさんは、そう感じている。【ノースダコタ州で大治朋子】=つづく
毎日新聞 2010年5月2日 東京朝刊
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/4 偵察機のコントローラー - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/news/20100503ddm007030098000c.html
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/4 偵察機のコントローラー ◇「ゲーム世代」意識し開発
「着陸させるぞ」。指導官の声で空を見上げると、翼を広げた鳥のような物体が近づいてきた。ブーン。エンジン音が、聞こえ始める。兵士がテレビゲームのような操縦器をひざに置き、指先でつまみを調整しながら着陸させる。指導官は満足そうにうなずいた。
米北部ウィスコンシン州のマコイ基地。陸軍アイオワ州兵18人が、無人偵察機「レイバン(不吉の兆しとされるワタリガラスの意味)」の操縦訓練を受けていた。州兵たちは、来年にもアフガニスタンに派遣されるという。
レイバンに攻撃機能はなく、偵察専門。陸軍は5000機以上をイラクやアフガンに配備している。大型のプラモデルのような機体(全長約90センチ、翼幅約1・4メートル、重さ約2キロ)は分解可能。無線操縦(半径10キロ以内)だが、制御不能の事態に陥ってもGPS(全地球測位システム)機能で自動的に基地に戻る。06年、シンガポールで開催された航空展示会ではロシアや中国の軍人らが開発業者を「質問攻めにした」という。
◇
「こいつはゲーム・チェンジャーだ」。同州歩兵師団の調整官、チャド・ハミルトン1等軍曹(38)が断言する。04〜05年にかけて、アフガンに駐留。当時、無人機はまだ配備されていなかった。偵察で先発隊を送り出すたびに「無事を祈った。もうあんな思いはしなくてすむ。こいつが兵士を救ってくれる」。
アフガンでの戦闘で死傷した米兵は6200人余り。その7割を陸軍兵が占める。最大の脅威は、武装勢力の仕掛ける手製爆弾。敵の不審な行動に目を光らせるレイバンを、陸軍は「空の目」と呼ぶ。
◇
この日、訓練を受けていた兵士の大半は20代半ば。指導官はレイバンを開発した企業の社員だった。技術担当(50)によると、若い世代がなじみやすいようにコントローラーを数年前、テレビゲームに似たデザインに変更した。社員は「兵士の9割は戦争モノのゲーム経験者。手元を見なくても指先が動く。習得が早いよ」と笑った。
「ゲーム」は今や、新兵募集のキーワードでもある。陸軍は02年、テロリストとの戦闘ゲーム「アメリカの陸軍」を公費で開発。氏名や住所など個人情報を登録すれば無料でダウンロードできるシステムで、約1000万人が登録。「最も有効な勧誘手段」(米メディア)となっている。
最年少のアブラハム・サレフ上等兵(21)は「風の扱いが難しいけど、あとはゲームにそっくり。簡単だ」と笑顔で言った。【米ウィスコンシン州で大治朋子】=つづく
毎日新聞 2010年5月3日 東京朝刊
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/5止 ゆるやかなネットワーク拡大 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/news/20100504ddm007030118000c.html
テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/5止 ゆるやかなネットワーク拡大 ◇終わらぬ、いたちごっこ
「戦場からの無人機派遣の要請が急増して、施設の建設が間に合わないほどだった」。04年から07年にかけて、米西部ネバダ州クリーチ空軍基地で無人航空機の訓練教官を務めた元空軍パイロット、ボブ・コンキャノン氏(55)が振り返る。その時期、無人機を遠隔操作する米国内の基地や訓練生、指導官の数は、ほぼ倍増したという。
空軍内部で08年、無人機の事故について調査し論文をまとめた空軍中佐は「人員育成が需要に追いついていない」と指摘する。03〜06年に起きた事故のうち、約7割は人為ミス。未熟な技術や経験不足での誤った判断が原因とみられるという。
無人機の操縦士不足は07年ごろ、最も深刻化した。空軍は新兵の採用を拡大し、操縦士の勤務は連日12時間に及んだ。それでも需要に追いつかず、09年から試験的に一部の訓練生に無人機の教育だけを実施。有人機の訓練を省くことで、教育期間を1年から3カ月に短縮した。
今年、有人機の専門教育を受けずに「無人機パイロット」となるのは70人。コンキャノン氏は「有人機を操縦した経験のない者に、無人機の操作だけを教えるのは難しいはずだ」と懸念を示す。
◇
「必ずしも理論的につながりのないグループが、世界的な規模で戦術や技術を伝え合う。我々の直面している問題であり、これからの紛争の本質だ」。今年3月、ワシントンで開かれた欧米軍当局者らの会議で、英国防省のクリス・クレイドン大佐が、対テロ戦争をこう位置づけた。
操縦士を急ピッチで増員し、アフガニスタンやパキスタンでの空爆を強化する米国。その傍らで、武装勢力は世界に広がるネットワークを駆使し、無人機というハイテクの裏をかく。
昨年末、イラクの武装組織が米軍無人機の撮影した映像を入手していたことが発覚し、大きなニュースになった。米軍は「傍受の技術はない」と過信し、データを暗号化していなかった。だが武装勢力は「イランの技術的支援を受け」(米軍)音楽やビデオをダウンロードする市販の衛星通信用ソフト(26ドル)を使い傍受したという。
米軍と武装勢力の「いたちごっこ」は、ハイテクにとどまらない。パキスタンにある国際テロ組織アルカイダの指導部は最近、ソマリアやイエメンの仲間に指示を出し、両国での活動を活発化させた。「世界各地のグループから成る、ゆるやかな分権型組織となったアルカイダ」(識者)は、米軍の無人機で空爆され死亡した子供たちの姿をビデオに撮り、ネットワークを通じて世界各地に「憎悪」を拡散させている。
クレイドン大佐は「武装勢力はインターネットを介し、あちこちに思想や情報、武器を移動させていく。このゲームを終わらせるのは、難しい」と語った。【ノースダコタ州で大治朋子】=おわり
毎日新聞 2010年5月4日 東京朝刊
米軍:無人機爆撃の功罪 エリック・マシューソン大佐/ゲーリー・ソリス氏 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/news/20100430ddm007030030000c.html
米軍:無人機爆撃の功罪 エリック・マシューソン大佐/ゲーリー・ソリス氏 「テロとの戦いの流れを変えうる素晴らしい技術」と米空軍が自賛する無人航空機。だが、「人間を超える力」が称賛される半面、最先端技術への過信と依存が、戦場をより説明責任から遠ざけ、「現場」を独走させるとの危惧(きぐ)もある。軍人と元軍人に、その功罪を聞いた。【ワシントン大治朋子】
◇体の負荷、恐怖感じずに操作−−米空軍無人航空システム・タスクフォース代表、エリック・マシューソン大佐
−−無人航空機と有人機を操縦するうえでの違いは。
◆F15戦闘機のパイロットを務めた後の10年間、無人機を操縦した。有人機の操作では、加減速時の負荷が体にかかる。広い視界の中に、小さく目標が見える。雑音の中で(敵の攻撃などの)恐怖を感じながらの作業になる。無人機の操作にはそういう問題はない。カメラのカラー映像は、テレビのように鮮明だ。武器を持っているかどうかも見える。そのぶん注意深く、客観的になれる。
−−無人機を使うメリットは。
◆人間では限界があるところに使える。例えば24時間の偵察業務なら、有人機では交代用に複数のパイロットが必要になり(金のかかる)大型機が必要になる。無人機ならコストは安く、パイロットの疲労を心配する必要もない。我々は無人機を「瞬きしない目」と呼ぶ。地上軍が助けを求め、天候が悪く有人機だと出せない状況でも、無人機なら墜落の危険性を覚悟で出せる。対テロ戦略には完ぺきなシステムだ。
−−無人機は非人間的で、安易な攻撃につながるとの声がある。
◆その意見には同意しない。無人機はむしろ人間的だ。映像は鮮明で、ライフルで狙う時に近い。アフガン戦争で、私の操縦する無人機が対空砲火を浴び、自分が撃墜されたと感じた。
−−無人機による空爆で多くの市民が犠牲になっています。
◆5メートル以上目標を外した場合は誤爆とするが、その正確性は約95%。誤爆の原因の大半はミサイルやレーザーの故障、(悪天候などの)環境問題だ。個人の意見でいえば、市民の被害は最小限だ。非常に注意深い職務をしている誇りがある。
◇市民と戦闘員、画面で区別困難−−元米陸軍士官学校教授(戦時国際法プログラム代表)ゲーリー・ソリス氏
−−無人機の活用が進んでいます。
◆兵士の命を救う、低コストの無人機は、兵器としては素晴らしい。だが、問題はその使い方。ターゲテッド・キリング(標的殺害)で、多数の無実の人々が殺されているのは明らかだ。
−−国際人道法違反の指摘もありますが。
◆無人機による標的殺害は、ジュネーブ条約第1追加議定書の文民と戦闘員を区別して攻撃するよう定めた規定(48条区別原則)や、過剰な民間人被害を禁じた規定(51条均衡原則)に反する疑いがある。米国は議定書を批准していないが、それ以前に成立した慣習法などを条文化したもので、国際社会が従うべきものだ。
市民と戦闘員の「区別」を、無人機のモニター画面だけで判断するのは非常に難しい。過去の戦争では、敵は戦闘服を着ていたが、現在は武装勢力と市民が同じような服装をして、市民も(護身用に)銃を持つ。「均衡」の判断も難しい。仮に敵を区別できても、10人の市民に囲まれていたらどうか。全員を巻き添えにしてもよいのか。何人以上の被害なら「過剰」なのか。基準はない。司令官が現場で判断しているのが現状だ。
−−殺害の対象も根拠も不明です。
◆その説明義務は米軍にはない。無人機は便利で、攻撃を安易にしやすい。米国内なら行き過ぎがあれば警察官でも裁かれるが、司令官には、誰も口をはさまない。だが、国際世論という「裁判所」はある。昨年9月、アフガニスタンで駐留ドイツ軍の要請を受けて米軍が空爆したケースでは、多数の民間人が死傷し、独国防省の幹部らが辞任した。国際社会やメディアからのプレッシャーは、戦場に説明責任を持ち込むことを可能にする。
毎日新聞 2010年4月30日 東京朝刊
質問なるほドリ:米軍の無人機ってどんなもの?=回答・大治朋子 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/wadai/naruhodori/news/20100430ddm003070087000c.html
質問なるほドリ:米軍の無人機ってどんなもの?=回答・大治朋子 <NEWS NAVIGATOR>
◆米軍の無人機ってどんなもの?
◇24時間、遠隔操作で偵察 米同時テロを機に攻撃機能も
なるほドリ 米軍の無人機はどうして増えているの?
記者 米軍は第二次世界大戦のころから、偵察用の無人機を使っていました。01年9月の米同時多発テロ事件をきっかけに、テロリストの幹部を殺害するため、攻撃機能を持たせました。
03年3月のイラク戦争開戦当時はまだその数はごくわずかでしたが、武装勢力との戦闘が激しくなり幅広く使われるようになりました。米陸海空軍がそれぞれ独自に開発した無人機の数は現在、計7000機以上にのぼります。
Q 米国から操作するの?
A 空軍はアフガニスタンとイラクにある5カ所の前線基地に約160機(02年は28機)を配備しています。現在両国の上空で常に40機(同3機)を旋回させています。
離陸や着陸は現地の兵士が担当し、飛行中は衛星通信を使って米西部ネバダ州クリーチ空軍基地やカリフォルニア、アリゾナなど五つの州兵基地で遠隔操作しています。パイロットとカメラを操作するセンサーオペレーター、情報調整官の3人1組で、12時間で交代する24時間体制の勤務です。
Q 無人機の仕事は?
A 97%は偵察です。アルカイダや反政府勢力タリバンの幹部のアジトを探したり、爆弾を仕掛ける動きを警戒します。攻撃は戦場の司令官が、交戦規則に基づいて判断します。パイロットはその指示に従い、ミサイル発射ボタンを押します。
Q 無人機は映像も撮るの?
A そうです。「カラーテレビのような鮮明さ」(空軍)で、上空3キロの距離からでも車のナンバーを読み取れるといわれます。91年の湾岸戦争では、米テレビが戦場で生中継して「テレビ戦争」と呼ばれました。現在は、無人機の送るライブ映像を国防総省の幹部が米国内のオフィスで見ることができます。映像の一部はネットの動画サイトに不正流出(約7000件)し、世界中で視聴されているため「ユーチューブ戦争」ともいわれます。
Q ビデオに録画もするの?
A はい。空軍の無人機が昨年撮影したビデオの長さは膨大で、07年分の約3倍もあり、連続して見ると、24年もかかるそうです。来年配備される最新型の視界は約16平方キロメートル(東京ドームの約340倍)にも及びます。映像分析のため2500人を新規採用しましたが、とても足りません。そこで分析作業そのものを自動化する技術の開発を進めています。(北米総局)
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毎日新聞 2010年4月30日 東京朝刊
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戦争の「無人化」と「民営化」
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