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平静を装いながらも悪化の一途。オバマ政権VSアフガン政府|菅原出
http://www.asyura2.com/10/warb4/msg/417.html
投稿者 上葉 日時 2010 年 5 月 10 日 18:14:42: CclMy.VRtIjPk
 

平静を装いながらも悪化の一途。オバマ政権VSアフガン政府:日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20100506/214251/


平静を装いながらも悪化の一途。オバマ政権VSアフガン政府
静かに始まった「カンダハル作戦」

菅原 出 【プロフィール

カンダハル作戦は「天下分け目の決戦」

 オバマ政権とカルザイ大統領との関係悪化が止まらない。

 「西側がこれ以上圧力をかけるのであれば、タリバンに加わるしかない」

 正気とは思えない発言をカルザイ大統領が連発してホワイトハウスの不興を買ってから1カ月。米・アフガン両政府は、表面的には平静を装ってはいるものの、相互不信の溝はますます深くなっているようだ。

 オバマ政権は、発足当初からカルザイ大統領とは距離を置き、昨年夏の大統領選挙でも、カルザイ大統領の対立候補であるアブドラ元外相の当選を密かに望んでいたが、ここにきて決定的に関係を悪化させた背景には、この夏にも本格化すると見られているカンダハルへの軍事作戦がある。

 アフガン南部最大の都市カンダハル。

 タリバン運動発祥の地であり、いまだにタリバンの影響力がもっとも強いと言われるこの人口50万人の都市に、米軍は夏までに大攻勢をかける予定である。このカンダハルをめぐる戦闘は、8年半も続いているアフガン戦争の天下分け目の決戦になると見られている。

 「オバマの戦争」の行方を左右するこの重要な戦闘を前にして、米・アフガン政府間に亀裂が入っているのは、このカンダハルがタリバンにとっての拠点であるだけでなく、実はカルザイ大統領にとっても、その権力を維持するために不可欠な利権が集中している場所だからである。

 現在、オバマ政権内でもっとも大きな問題となっているのは、カンダハルの「カルザイ利権」の中心にいる同大統領の弟アフメド・ワリ・カルザイの存在である。


「キング・オブ・カンダハル」と呼ばれる男

 「マクリスタル駐アフガニスタン米軍司令官が計画しているカンダハル作戦は、カルザイ大統領の弟アフメド・ワリ・カルザイのせいで失敗に終わる」

 『ワシントン・ポスト』がこう報じたように、米軍によるカンダハル攻撃が近づくにつれて、ワリ・カルザイの存在に欧米メディアの注目が集まっている。ハミド・カルザイ現大統領の腹違いの弟であるワリ・カルザイは、現在カンダハル州の州議会議長を務めており、長年この州のパワーブローカーとして君臨し、一部では「キング・オブ・カンダハル」とまで呼ばれている。

 米『タイム』誌は、「ワリ・カルザイが土地をめぐる紛争を仲介し、誰が開発利権を獲得するかを決定し、誰が刑務所に入るべきか、どの部族が人道援助を受けることができるかを決めている」と書いており、カンダハルではワリ・カルザイの了承なしには何一つ物事が進まない様子を描いている。

 ワリ・カルザイとその取り巻きは、麻薬取引などで得た不法な資金を使ってカンダハル州政府をコントロールし、その腐敗の元凶になっていると考えられている。このため、政府に反旗を翻して武装闘争を展開しているタリバンの方が市民の人気を集めているという事情がある。単純化すると、「腐敗した政府」対「反乱するタリバン」という対立の構図があり、後者のタリバンの方がカンダハル市民には人気があるというわけである。そこでこの「腐敗した政府」に手をつけずにタリバンだけを「反乱勢力」として掃討しても、市民の支持のある安定した政権はできないというのが現実である。

 英『ファイナンシャル・タイムズ』紙は、この状況をとらえて「カルザイ大統領の弟は、もっとも緊急性を要する米外交政策のディレンマを体現する人物である」と表現し、『ワシントン・ポスト』紙は、「ワリ・カルザイは米軍にとって巨大な挑戦だ。このカンダハルへの攻勢作戦は、この都市をタリバンの支配から救う作戦なのか、それともワリ・カルザイの支配から救う作戦なのか、またその二つを同時に行わなければならないのか、という大きな問題をはらんでいる」と伝えていた。


カルザイ弟を支えたCIA

 もっともワリ・カルザイだけを悪者扱いするのはフェアではないだろう。2001年のアフガン戦争以降、彼がカンダハルで「王国」を築けた背景には、アメリカの暗黙の了解、いやそれ以上の後押しがあったからだと言われている。





 2009年10月28日付『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「アフガニスタンの違法な麻薬取引の主要人物の一人であるワリ・カルザイが、CIAから定期的に資金援助を受けていた」というスクープ記事を掲載して話題を呼んだ。それによるとワリ・カルザイは、CIAに対して様々な支援を提供し、その見返りに報酬を受けていたという。CIAはカンダハルで、武装反乱勢力やテロリストの容疑者に対する襲撃を実施する準軍事部隊「カンダハル突撃部隊」を運用しているが、ワリ・カルザイ氏はこの部隊のために必要な要員のリクルートを担当していたという。

 またタリバンの創設者であるオマル師がかつて住んでいた住居を、「カンダハル突撃部隊」の基地として使えるようにアレンジしたのもカルザイ氏だという。さらにCIAはタリバンに近い部族などに接近して交渉を行うときにもカルザイ氏に仲介を依頼していたとされている。カルザイ氏はタリバンとも持ちつ持たれつの関係を維持しており、必要に応じてCIAとタリバンの間の仲介も行ってきたというのだ。

 CIAはつまり、現地スタッフのリクルートから現地の複雑な部族間の情報、敵の動向に関するインテリジェンスまで、ワリ・カルザイに依存してきており、それゆえカルザイやその取り巻きの不法行為に目を瞑ってきたという背景がある。西側の麻薬対策の担当官たちからは、「ワシントンがワリ・カルザイに対して強く出たり、同氏に対する犯罪の申し立てについて真剣に調査を命じることがない」といった不満がこれまでも度々出されていたが、その裏にはこうしたCIAとカルザイの秘密の協力関係があったのである。実際、カルザイ氏以外の麻薬取引業者が次々に摘発される中で、カルザイ氏だけが逆に利益を拡大しているとさえ言われているのである。


カルザイ・ファミリーの巨大利権

 さらにカルザイ・ファミリーは、米軍の兵站支援業務でも巨利を得ており、カンダハルを拠点とする軍閥や犯罪組織と利益を分け合っている。

 米国防総省は、米軍の兵站業務をアフガニスタンの民間企業に委託する「ホスト・ネーション・トラッキング契約」を現地の6社の企業と締結している。これは「ホスト・ネーション」、すなわちアフガニスタンの現地の輸送会社に軍事支援物資の輸送を業務委託するという総額22億ドルに上る巨大な契約だ。2年契約のこの事業は、アフガニスタンのGDPの実に10%近くに相当する巨額の利権である。

 この契約をとった企業の一つにワタン・グループというアフガンのコングロマリットがある。このグループを支配しているのはハミド・カルザイ大統領の従弟で、元ムジャヒディーンのアフマド・ラテブ・ポパルという人物である。ワタン・グループは、カンダハルを中心に巨大なビジネス利権を牛耳るコンソーシアムで、傘下に通信、運輸などの会社を持つが、その中でも最も重要なのがワタン・リスク・マネージメントというセキュリティ会社である。ワタンはとりわけカブールからカンダハルへの主要幹線道路のセキュリティを牛耳っており、事実上、米軍向けの軍用物資の輸送・補給ラインを押さえている。

 カンダハルへ通じる戦略的な道路「ハイウェイ1」はワタン・グループが完全に押さえており、このハイウェイのトラック輸送の警護もワタンが独占している。アフガン南部の麻薬利権を押さえるワリ・カルザイと、カンダハルの物流を押さえるワタン・グループのポパルは、共にカルザイ大統領の親類であり、連携して利益を分け合っていると言われている。

 ちなみに、こうしたトラック輸送の際に、地域の武装勢力に対していわゆる「ショバ代」を支払うことでトラック輸送の安全を確保しており、この「武装勢力」にはタリバンも含まれているという。つまり、米軍の補給物資を運ぶトラックの安全を確保するためにタリバンに上納金を支払うという馬鹿げた仕組みになっているのだ。

 ワリ・カルザイがタリバンとも持ちつ持たれつの関係を維持しているのはこうした理由によるものであり、カンダハルを中心にカルザイ・ファミリーと地方の軍閥や武装勢力やタリバンまで巻き込んだ巨大な利権の構図が存在することが分かるであろう。

 ワタン・グループ以外にもこの米軍の兵站契約を結んでいる会社は、現国防相であるアブドル・ラヒム・ワルダク将軍の息子でアフガン系アメリカ人のハメッド・ワルダクが所有する「NCLホールディングズ」や、「アジア・セキュリティ・グループ」というカルザイ大統領の別の親族であるハシュマト・カルザイ氏が支配している会社など、カルザイ・ファミリーの身内ばかりである。





パートナー不在のカンダハル作戦

 しかし、米軍によるカンダハル攻撃を目前に控え、過去8年半の戦争によって出来上がってしまった利権と腐敗の構造の一部に、オバマ政権はメスを入れ始めている。米議会がこの米軍の兵站支援契約の正当性に疑問の声を上げ出し、「ホスト・ネーション・トラッキング契約」の実態に関する本格的な調査を開始したのである。

 またオバマ政権はカルザイ政権に対して、腐敗対策に着手するようにさらなる圧力をかけ始め、3月にオバマ大統領が自らアフガニスタンを訪問したのも、カルザイ大統領に直接そのメッセージを伝えて圧力をかけることが目的だったと言われている。もちろん、オバマ政権が「腐敗対策について行動をとれ」とカルザイ大統領に対して言う時の裏の意味は、「弟ワリ・カルザイを何とかしろ」、「弟とその取り巻きの犯罪集団をどうにかしろ」ということであり、南部にいる弟の腐敗について行動をとるようにという意味である。

 そんな中、渦中の人、ワリ・カルザイが沈黙を破って西側メディアに登場した。4月26日付の英『フィナンシャル・タイムズ』に同氏のインタビュー記事が掲載されたのである。

 この中でワリ・カルザイは、「カンダハルの権力を独占するネットワークを使って米軍のカンダハル作戦を妨害しようとしているのではないか」との批判に対して、そうした批判を全面的に否定し、「米・NATO軍による作戦を支持し、カンダハルの治安を回復する計画を全面的に支援する」と公言した。

 「私の父はこの州の長をつとめた人物だし、私の祖父も同じような役割を果たしていた。私は父からどのように部族と取引をするのか、どのようにして彼らの尊敬を集めることができるかを教わった。私はこの力を国際社会の努力を支援する目的のために使いたい」

 ワリ・カルザイはこのように、カンダハルの王として長きにわたってこの地のポリティクスに影響を与えてきたのだというオーラを見せつつ、「自分の支持なしにカンダハル攻撃ができるのか」と言わんばかりの余裕のコメントを発した。

 ワリ・カルザイはカンダハル州議会議長の立場を使い、自身の出身母体であるポパルザイ部族を優遇し、他のパシュトーン人の有力部族であるギルザイ族、アロコザイ族やアリザイ族を敵に回しているという。このため、「ワリ・カルザイが現在の地位に就いたまま、カンダハル攻撃を行えば、作戦は必ず失敗する」と警告を発するカンダハル出身の政治家も多いという。

 しかし、問題はCIAがワリ・カルザイに依存し過ぎてきたため、こうした現地の部族政治に関するインテリジェンスが不足しており、本来必要な政治的根回しをすることができないことだという。ワリ・カルザイがいてはカンダハル作戦は成功しないが、だからといって同氏なしでも作戦ができない。オバマ政権が陥っているこの矛盾が、ワリ・カルザイの余裕の一番の理由であろう。

 「弟の腐敗」について執拗に圧力をかけてくるオバマ政権に対し、カルザイ大統領は、「米国はアフガニスタンを支配しようとしている」、「タリバンの反乱は外国の侵略者に対する国民的な抵抗運動である」、「もし西側が圧力をかけ続けるのであれば、私自身タリバンに加わるしかない」とまで言い放った。しかし、それでもオバマ政権は表面上カルザイ政権との関係改善に努め、5月中旬にはカルザイ大統領をホワイトハウスに招く方針を貫いている。

 4月25日付『ニューヨーク・タイムズ』紙は、すでに小規模の米特殊作戦部隊がカンダハルに潜入し、工作活動を開始していることを伝えている。一方、カンダハル州の副知事が何者かに暗殺される事件も起きている。すでに米・タリバンの暗闘は始まっている。

 オバマ政権は、アフガン戦争の「天下分け目の決戦」カンダハル作戦を前にして、カルザイ大統領に猛烈に圧力をかけ、「キング・オブ・カンダハル」と呼ばれてカンダハル利権の中心にいるワリ・カルザイを処分するように迫っているが、カルザイ兄弟がアメリカの圧力に屈して「利権」を手放す気配はない。

 ワリ・カルザイに代わるパートナー不在という矛盾を抱えたまま、米軍によるカンダハル作戦が静かに開始された。


【主要参考文献】

U.S. Forces set sights on Taliban bastion of Kandahar, Washington Post, March 31, 2010

Reports Link Karzai’s Brother to Afghanistan Heroin Trade, The New York Times, October 5, 2008

Tony Karon, Afghanistan: Why Karzai Is Pushing Back Against the U.S., TIME, Apr. 05, 2010

“Brother of Afghan Leader Said to Be Paid by CIA”, The New York Times, October 28, 2009

“How the US Funds the Taliban”, The Nation, November 30, 2009

Aram Roston, “Afghan Lobby Scam”, The Nation, January 11, 2010

“Afghan corruption: how to follow the money”, Washington Post, March 29, 2010

“A U.S. Stumbling Block in Kandahar: Karzai’s Brother”, TIME, March 19, 2010

“In Afghanistan war, government corruption bigger threat than Taliban”, The Christian Science Monitor, April 12, 2010

“Karzai’s brother vows to back NATO”, The Financial Times, April 26, 2010

“Kandahar ‘king’ poses dilemma for US”, The Financial Times, April 26, 2010

“Elite U.S. Units Step Up Drive in Kandahar Before Attack”, The New York Times, April 25, 2010






著者プロフィール

菅原 出(すがわら・いずる)
1969年東京生まれ。中央大学法学部政治学科卒。平成6年よりオランダ留学。同9年アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。国際関係学修士。在蘭日系企業勤務、フリーのジャーナリスト、東京財団リサーチフェローを経て、現在は国際政治アナリスト。米国を中心とする外交、安全保障、インテリジェンス研究が専門で、著書に『外注される戦争―民間軍事会社の正体』(草思社)などがある。最新刊は『戦争詐欺師』(講談社)。

このコラムについて
オバマと戦争

2009年12月1日、オバマ大統領は3万人の増派を中心とする新しいアフガン戦略を発表した。アフガンは米国にとって「第二のベトナム」になってしまうのか? それともオバマ政権の新しい思考とアプローチは、アフガンの地に安定を取り戻すことが出来るのか? 一方、いまだ治安の安定しないイラクから、米国は無事に撤退をすることが出来るのか? また、大統領選挙の混乱以降、政治不安の続くお隣イランの核開発問題は、これからどのような方向に進んでいくのか? そして、こうした中東の混乱に乗じて北朝鮮はどのような動きを見せるのだろうか? バラク・オバマが政治生命を賭けて取り組むアフガン戦争と、米国の安全保障を左右するイラク、イラン、北朝鮮をテーマに、「オバマの戦争」を追いかけていく。

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コメント
 
01. 2010年5月11日 01:23:21: DxbSl8kU2o
カンダハルの人口は50万というとファルージャのほぼ倍。
オバマはここで成果を上げればブッシュのファルージャ成果の倍以上の評価が得られるというわけですか。


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