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ロシア軍のマカロフ参謀総長は政府系「ロシア新聞」の２３日掲載のインタビュー記事のなかで、露米の新たな軍縮条約に関して、「ミサイル防衛（ＭＤ）問題の盛り込みを米国が拒否しているため締結できない」と述べた。
露米（ソ米）間にはＭＤを制限する弾道弾迎撃ミサイル制限（ＡＢＭ）条約というものが存在していたが、米国は一方的に脱退してしまった。このことは、世界の戦略バランスに否定的な影響をもたらしている。米国がＭＤ網を制限無く発展させれば、ロシアの弾道ミサイルをどんどん迎撃可能になる。つまり、パワーバランスが米国寄りに傾いてしまう。
マカロフ総長はインタビューのなかで、ＭＤの新条約への盛り込みがロシアにとって原則的に重要な問題であり、断固主張を続けていく考えを示した。ロシアにとっては自国に損な形で条約を結ぶことはできない。オバマ米大統領もその点を理解しているのだろう、昨年７月にモスクワで結ばれた露米首脳による新条約の枠組み合意では、戦略攻撃兵器とＭＤの関連を盛り込むことを取り決めた。
締結前の詰めの交渉に入った現在、ロシア側は首脳間の合意を拠りどころとして最後の主張を展開している。国際関係大学・国際安全センターのウラジーミル・エフセーエフ氏に話を訊いた。
「ロシア側も新条約が７２年のＡＢＭ条約の代わりにはならない事を理解している。（戦略攻撃兵器に関する）新条約で（ＭＤの）数量制限を明記できないこともだ。しかし、攻撃・防衛両兵器の関連について記す事は合理的であり当然だ。だからロシアは断固求めている。」
一方、条約を批准する米上院ではそんな考えに反対する声が少なくない。共和党のジョン・マケイン議員ら３名は先月、連名でジョーンズ大統領補佐官（国家安全保障担当）に対し、ロシア側の求めるＭＤ能力の制限は受け入れられないとの書簡を送っている。また政府内には、多くのミサイルが退役しつつあるロシアと比べ、米国は新条約をそれほど必要としていないとの意見も存在する。エフセーエフ氏は続ける。
「ロシアの方が新条約締結への関心が大きい。（新条約が締結されて、保有できる上限数が少なくなれば）攻撃兵器を現行の水準で維持しなくていいからだ。米国はそんな問題を抱えていない。１１００基以上の戦略攻撃兵器を長期に渡り維持することが可能だ。
だからといってロシアが一方的に譲歩していいことにはならない。露米はひとつの舟に乗っている。舟がひっくり返れば、核不拡散体制も崩壊する。」
露米双方とも、新条約について９５％まで合意が出来ていると発表しており、ワシントンで核安保サミットが開かれる４月１２日までの締結を予想する声もある。遅くとも核拡散防止条約・再検討会議（ニューヨーク）が開催される５月までには締結されているはずだ。ただ、実際のところは相手の国益を考慮する用意が双方にどこまで出来ているかの一点に掛かってくる。
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