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読売・日テレ王国のこれから
財務省トップ前次官を監査役に招き入れた
メディア界の「勝ち組」読売、日テレグループが変だ。退任まもない財務省の次官を監査役に招いたり、看板アナウンサーが次々流出したり、給与をめぐるストライキまで起きた。異変の真相に迫る。
■なぜ新聞社に?
紙面を見て、違和感を覚えた読者が多かったに違いない。
今年7月まで財務次官を務めていた丹呉泰健氏(59歳)が読売新聞グループ本社の社外監査役となることが、当の読売の1面に写真付きで載った。官僚のなかの官僚と言われる財務省のトップが、メディア企業の監査役となること自体異例である。
しかも、丹呉氏は7月に財務次官を退任してからわずか4ヵ月。いくつかの有名大学から教授として招聘されたのを断って、読売入りしたという。
ある読売幹部はこう話す。
「青天の霹靂? そうでもない。丹呉さんが退任するときから、話はあった。決めたのはもちろん渡辺(恒雄・グループ本社会長兼主筆)さんだよ」
民主党政権の「天下り実質的禁止」(マニフェスト)以降、財務次官OBといえども、大っぴらな天下りはしにくくなった。丹呉氏は、民主党政権ができて以来はじめて退任した次官で、行き先が注目されていた。
読売新聞の現場記者たちも、やや当惑気味だ。
「丹呉氏が監査役になるのは、全然知りませんでした。新聞に載る数日前に、ある有名な評論家から『丹呉さんがおたくに行くんだって?』と言われてビックリしたくらいですから。仕事がやりにくくなる? そうですねえ、気にならないと言ったらウソになるかもしれない」(読売新聞経済部記者)
消費税率のアップ、過剰な財政健全化路線はじめ、財務省の動向は常にメディアの監視と批判の対象になっている。
その事務方トップが、今度はメディア企業の経理をチェックするというのは、普通なら忌避したくなる話だ。会社の経理という、人体にたとえれば「はらわた」に当たる部分まで晒して、丹呉氏を迎え入れる理由はなんなのか。
「丹呉さんは、小泉政権で5年半にわたって首相秘書官を務め、民主党政権になってはじめての財務事務次官で、自民党、民主党の双方に顔が広い稀有な官僚。渡辺会長にしてみれば、持論の『民・自大連立』を実現するためのキーマンなんです。
もちろん国税対策という側面もある。財務省OBを身内に抱え込んでおけば、税務で問題が生じても収拾しやすいですから」(読売OB)
今日の読売新聞の実質的な創業者・正力松太郎氏は元警察官僚だし、その後、小林與三次氏も同様に自治次官から読売入りした。
一時は小林氏の娘婿・佐藤謙・元防衛庁次官の読売入りが取り沙汰されたこともある。読売新聞はもともと「官界」とは近い関係にある会社だということは言える。
一方の財務省と、丹呉氏にとっても今回の渡辺氏の誘いにはメリットがあった。
「財務官僚が天下り先に困っている、という事情がある。最近の財務次官経験者は、丹呉氏の前の杉本和行氏、その前の津田廣喜氏ともに大学教授。かつてのような、政府系の大規模な金融機関に天下っているのは、4代前の藤井秀人氏(現・日本政策投資銀行副社長)が最後なんです。
丹呉氏も大学教授になろうと思えばなれたが、それを避けた。そこに読売からの誘いがあって、渡りに船だったんじゃないかな」(財務省関係者)
財務省担当記者は、丹呉氏が大学教授の椅子を蹴った理由をこう推測する。
「今回の読売の監査役就任は非常勤で、任期は2年。丹呉氏と、財務省の悲願は日銀総裁ポストの奪還です。最近の次官OBで、与野党の政治家に対する人脈の広さ、深さからいってその最短距離にいるのが丹呉氏。白川方明日銀総裁の任期(5年)が切れるのは'13年春ですが、そのときまで2年限定で読売に籍を置くということでしょう。大学教授から日銀総裁というケースは、いままでにないですからね」
当の丹呉氏は、知人に、
「渡辺さんから頼まれたので、引き受けました。財務省の顧問や、経団連の仕事もやるつもりです。通貨ルール政策を研究したい」
と話しているという。
■お眼鏡にかなった女性たち
読売新聞は'08年3月、武藤敏郎・元財務次官の日銀総裁就任を強力にバックアップする社説を何度も書いているが、このとき、財務省内で政界への根回しに当たっていたのが丹呉氏だった。いわば読売と丹呉氏は「盟友」というわけだ。
この組み合わせで、再び日銀総裁の椅子に挑むということなのかもしれないが、メディア企業がここまで権力の中枢にコミットすることが許されるのか、読者の感じる違和感の根本はそこだろう。
一方、同じ読売グループの日本テレビでは、「お家騒動」がなかなか収まらない。
入社してすぐに人気アナウンサーとなった夏目三久(26歳)が退社・独立するのに加え、『ズームイン!! SUPER』などを担当している羽鳥慎一アナ(39歳)も独立を予定していることが報じられた。
さらにアナウンス部長を務めていた鷹西美佳アナ(48歳)が12月1日に異動となり、たった4ヵ月で部長交代するという。
「鷹西さんがアナウンス部長に抜擢されたこと自体、驚きでした。アナウンサーとしてのキャリアは長いけど、管理者としての能力は高くないというのが定評。氏家斉一郎会長と親しく、『トップ人事』だと評されていました。
今年6月には、かつて氏家さんの秘書役を務めていた城朋子さんが執行役員になったことが社内で話題になりましたが、鷹西さんの人事も『第二の城』と言われています。氏家さんは、自分のお眼鏡にかなった女性社員は必ずきちんと処遇する。鷹西さんも著名人との会食には自分から喜んで出て行くようなタイプの人ですから、氏家さんと親密なのもよくわかります」(日本テレビ社員)
鷹西氏はアナウンス部長になったあと、部下の女性アナウンサーらを厳しく管理しようとして、「パワハラだ」と反発されたという。制作現場からも評判が悪く、結局交代となった。
「鷹西さんとの関係はどうかわかりませんが、城さんと氏家さんは相変わらず親密ですね。先日も二人だけでゴルフをしている姿が目撃されているくらいですから」(別の日本テレビ社員)
「お気に入り」女性幹部を登用する人事を行う一方で、氏家会長は苛烈な給与削減にも取り組んでいる。
■「絶望」と組合報に
本誌が入手した組合資料には、「絶望」と大書され、
< 入社10年前後で7割以上の社員が実質昇給なし 会社は成長をあきらめてしまったのか 職務手当廃止による実質月例給ダウン >
などと会社提案の衝撃がつづられている。反発した組合側が、ストライキを行って注目された。
「これらの給与抑制策は、すべて氏家さんの発案によるものです。氏家さんはもともと非常にコスト意識が高く、'03年に東京・汐留の新社屋に移るときも『安普請でいい。社屋にカネをかけなくていい』と言っていたくらいです。様々なコスト削減によって、'11年3月期には186億円の純利益を見込んでいますが、業界の先行きは暗い、もっとコスト削減しなければ、というのが氏家さんの考えなんです」(氏家氏と親交のある財界関係者)
読売グループを長年にわたって支配しつづける渡辺、氏家両氏。
最近、その二人を正面から批判する論文を書いて話題になったのが、駒沢大学非常勤講師で元日本テレビ政治部長の菱山郁朗氏である。
菱山氏は駒沢大マス・コミュニケーション研究所年報に「メディア権力の研究」と題する論文を発表し、そのなかで「二人のトップのメディア支配」として、
< 巨大なメディア権力をバックに自民党の派閥の領袖たちに食い込み、権力の深層部に踏み込んでトップの座を射止めた二人からすれば、「何が悪いんだ、君らに出来るか」と開き直ることだろう >
と批判している。
「私が問題提起したかったのは、あのお二人が権力至上主義に陥り、ジャーナリストでありながら自らプレーヤーになってしまったということです。そろそろ、誰かが猫のクビに鈴をつけなければならない。丹呉さんの人事について言えば、霞が関の中心人物を身内に入れれば安心だということでしょう。
日テレも、元検事総長の前田宏氏を非常勤の取締役にしています。渡辺さんが主筆になって25年、氏家さんが社長になって18年が経っている。お二人がすごい方であることは論を俟ちませんが、果たしてこれからのこと、後継のことを考えているのか。私にはそうは見えません」(菱山氏)
先ごろ、ある業界誌が、渡辺氏の後継候補一番手と見られていた内山斉・読売新聞グループ本社社長が、「渡辺氏の不興を買い、人前で叱られた」と報じた。
内山氏は政治部のアルバイトからスタートした叩き上げで、渡辺氏の腹心中の腹心として知られ、日本テレビの監査役も務めている。その内山氏と渡辺氏の関係に変化が起こったのならグループ内では大事件だ。
渡辺、氏家両氏とも'26年生まれの84歳。好むと好まざるとにかかわらず、世代交代の時期は刻々と迫っている。
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