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(回答先: Re: テスト 投稿者 SOBA 日時 2010 年 10 月 01 日 21:12:52)
再び「日本の外交力」について
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2010/10/post_234.html
尖閣諸島沖での衝突事件を巡り、日本政府の対応に「弱腰」、「腰抜け」の大合唱が起こっている。私も日本政府の対応に呆れた一人だが、しかし「弱腰外交」に呆れたのではない。日本政府の「戦略なき判断」に呆れたのである。それにしても「弱腰」と叫んでいる連中の「幼稚さ」にもほとほと嫌気がさす。つくづく外交音痴の多い国だと思う。
問題は日本の領海内で操業していた中国漁船に日本政府が「初めて」国内法を適用して逮捕した事にある。それまでの自民党政権は中国漁船を追い出すことはしても逮捕はしなかった。言い換えれば民主党政権は自民党政権の「弱腰」から「強腰」に転じようとしたのである。中国政府は初めての「強腰」に面食らったに違いない。拳を振り上げざるを得なかった。当初、私は逮捕の背景に何があるのかをいぶかった。
民主党政権は自民党政権より「反米親中」と見られているのを払拭しようとしたのか。それとも中国との間に我々が知らされていない重大事案が発生したのか。領土問題をアピールするための中国の挑発に乗せられたのか。或いは日中の対立はアメリカの利益だからアメリカに誘導されたのか。色々と想像を巡らした。
ところが公表されているのは、当時の岡田外務大臣と前原国土交通大臣が「領海内で起きた事だから粛々と国内法を適用すべきだ」と主張して逮捕に踏み切ったのだと言う。自民党政権より「毅然」としている所を見せたいという意識があったようだ。しかし民主党政権は「毅然」とする事で如何なる利益を得ようとしたのか、それが分からない。
「粛々と法を適用する」だけなら政治家は不要である。官僚に任せれば良い。政治家は「法を越えた判断」、「法を越えた知恵」を出す必要があるから存在する。そして外交には特にそれが必要だ。世界は自国の利益を得るために「法を越える」事など日常茶飯事である。嘘と謀略の世の中で「毅然として」不利益を被るのでは「バカ丸出し」と言われる。
これまで尖閣諸島は日本が実効支配してきたから日本にとって領土問題はなかった。中国が領有権を主張して漁船がやって来ても追い返せば良かった。逮捕して事を荒立てると中国の思惑通りになり、領土問題に発展する可能性があった。領土問題となれば最後は力の勝負になる。それは日本にとって現状より面倒である。
中国人船長の逮捕によって中国が反発を強めるとすかさずアメリカがやって来た。「尖閣諸島は日米安保の適用範囲である」と言って日本支持の姿勢を見せつつ、「日本の防衛費を増額して中国を牽制しろ」とか、「パラオ諸島で日米合同軍事演習をやって牽制するのも良い」とか色々提案してきた。日中が対立すればアメリカは喜ぶ。日本に協力する事で日本から金を吸い上げることが出来るからである。しかし金は吸い上げてもアメリカが日本の味方をする事は決してない。
日本では「日米安保条約で日本は守って貰える」とか「だから日米同盟が大事だ」と言う人達がいるが、それは錯覚である。「同盟」を結んだからと言って守られる事などないと考えた方が良い。日本を守ることがアメリカの国益に合致すれば守るが、不利益ならば「同盟」を破棄するか無視をする。因みに「日米安保の適用範囲」と言っても、日中が衝突したらアメリカが介入するという意味ではない。アメリカは領土問題にはあくまでも中立の立場だと主張している。
当たり前の話だが日中の対立は日中の双方にとって不利益で、第三者にとって都合が良い。そう思うから表の強硬姿勢とは裏腹に中国は当初から民主党政権に色々とサインを送ってきたようだ。ところが「毅然とした」ポーズをとり続ける民主党政権にはそれが通じなかった。普通どの国でも表で強硬な姿勢を見せる時は裏で妥協の道を探るものである。それがこの国には通じなかった。
以前書いた「日本の外交力」でも紹介したが、レーガン政権時代にイランと国交断絶したアメリカが裏でイランに食糧を輸出しているのを私は見た。さらに武器まで輸出していた事を後に知った。外交とはそういうものである。だからアメリカがイラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだ時も私は額面通りに受け取らなかった。対立してみせる事が国益であり、「悪の枢軸」がなくなれば困るのはアメリカである。裏で通じている可能性を排除する事は出来ない。
しかも外交には「本気度を試す」と言うことがある。わざと本音とは異なる事を言い張って、相手の本気度や政治的力量を試すのである。鳩山政権は普天間問題でアメリカから本気度を試され、今度は菅政権が中国から本気度を試された。その間に誰がどういう言動をしたかを相手はじっと見ている。そしてそれがその後の交渉材料として使われる。誰が甘いか、誰がタフか、誰がバカかの情報収集は既に終わった筈である。
日中の双方が不利益な事をいつまでも続ける訳には行かない。どこかで収拾を図る必要があった。その収拾のさせ方がまた異様だった。逮捕は「粛々と法を適用する」という政治以前の「幼稚な思考」だったが、こちらは大いに政治的な裏がありそうなのである。検察が中国人船長を突然「処分保留」で釈放したが、政治的な介入があったと思わせるタイミングと言い振りであった。
そこで「弱腰」、「腰抜け」の大合唱が起きた。時あたかも臨時国会が始まる直前である。「ねじれ国会」の最大テーマは「補正予算」と「尖閣問題」になった。私は政界再編に影響する郵政改革法案の帰趨に関心を持っていたがその影が薄くなった。補正予算は自民党の石原(テレビ用)幹事長の発言を聞くと、「成立に協力する」と聞こえるから、自民党にここで菅政権を追いつめる気はないのかもしれない。
そして尖閣問題は最後は大林検事総長の責任問題と絡む流れである。検察庁は今、前代未聞の不祥事に揺れているが、大林検事総長は民主党の小沢一郎氏に近いという見方があり、今月中と言われる検察審査会の議決と絡んで今後はこれらの問題が小沢対反小沢の戦いにつながっていく事が予想される。そしてこれらの連立方程式を解くためには今後の国会の行方を見定める必要がある。
そこで「弱腰外交」の大合唱に戻る。かつての自民党政権は「弱腰外交」をやりながらしっかり実益を確保してきた。日米経済摩擦を思い起こせば分かるように、それが日本バッシングを引き起こした。日本がバッシングを受けたのは相手の利益を奪ったからである。実を取ったから日本は名を捨てた。しかもそれで日本は世界一の金貸し国となった。当時の日本は「侍」ではなく「商人」である事を自認していた。
「商人国家」を目指すことが良かったかどうかは分からないが、そのうちアメリカが日本から金を吸い上げるようになってバッシングは止んだ。小泉政権以降はアメリカからパートナーとして誉められた。誉められた日本がどれほどの実を取ったかと言えば、「失われた時代が終わらない」と言っているのだから、ないという事だ。日本の富は守られていない。むしろ奪われている。それが政権交代が起きた一因でもある。
「弱腰」をやめて「侍」の国になると言えば、すぐにこの国は「核武装」の議論になる。国際社会の見ている前でそんな議論をするほどバカな事はない。どの国でも安全保障の議論はオープンな場ではやらないものだ。それも分からないような国に抑止力など持てる筈がない。所詮身に付かないことはやらない方が良い。「弱腰外交」を批判するのはその程度の連中なのである。
なぜその程度になったかと言えば、アメリカの核の傘に守られて自立することを忘れたからである。日本に必要なのは核の傘から脱して核武装するのではなく、核の傘から脱して自力で生き抜く決意をすることである。世界最強の軍事力を持つアメリカは第二次世界大戦後は戦争に勝っていない。朝鮮戦争は引き分け、ベトナム戦争に敗れ、イラクでもアフガンでも勝利したとは言い難い。問題は軍事力ではない。自力で生き抜く決意である。あらゆる知恵を外交に注ぎ込む事である。自立しなければ外交力も生まれない。
投稿者: 田中良紹 日時: 2010年10月 3日 02:38 | パーマリンク
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- Re: テスト SOBA 2010/10/04 12:03:08 (3)
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