01. 2012年1月14日 19:21:01
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漢字は文字の化石日朝語の漢字と中国の漢字 (1) 「日韓語の漢字」は中国の漢字とは相当に変化している。漢字の発祥地は中国でありながらも朝鮮の漢字音と意味は変化し、飛鳥〜奈良時代、朝鮮からの渡来人(知識層)がそれらの漢字を日本へもち込んだ。日本の漢字は中国の漢字と同じであると思い、殊に、音読みすれば中国語の漢字音に近いだろうと、中国の人名・地名・・などを音読みにするのは変な話である。かっては、朝鮮半島の地名・人名(漢字)も音読みしていたが、韓国政府の要請により韓国の漢字音に改めている。 漢字文化に慣れ親しんできた日本人は「漢字を礼賛する傾向」があるので、漢字廃止論などを表にだすと猛烈な反対論に出くわす。しかし、「漢字はいかなる文字であるか」を色々な角度から分析していくと、漢字ぐらい「原始的な文字」はない(特殊社会では別)。西洋言語学では「文字は話し言葉の影であり記号である」とされている。漢字は「世界唯一の古代文字」で「文字の化石」とも言われている。ブリタニカの百科事典には「古い言葉、未分化のものほど非体系的・非統合的である。部分的・直感的でシスマティックでないのは、幼児・下等動物が統合性にかけた行動をするのに類似する」と書かれている。例えば、未開社会の人々が、「犬」と「魚」の数を表す「三」を異なって言うのに類似する現象だという。 日韓語の漢字と中国の漢字 (2) 漢字がいかに非合理的な文字であるかは、現在の中国における漢字の使い方を見ればわかる。中国は、終戦前後ごろ文盲が多く、女性の約40%が文盲であったという恐るべき話もある。現在の中国では漢字が簡略化され、「豊」は「丰」、「業」は「业」、「為」は「为」、「個」は「个」などとなっている。これらの簡略文字を日本人は奇異に感じ、簡略しすぎていると言う。しかし、中国の外来語表記を見れば、漢字の進むべき宿命を示唆しているような気がする。中国は、洪水のごとく流入する外来語(人名・地名・スポツ・医学・科学・・)の対応に混乱している。例えば、「熱狗 ホットドッグ」「一対男女 アベック」「空中小姐 スチュワデス」「投手土台 マウンド」「西紅柿 トマト」などと表記されている。このグローバル時代の言葉に歩調を合わせることが困難になった中国では、現在、ピンイン文字の教育に力を入れ、五十年後には漢字を廃止すると言われている。「黄鼠狼 イタチ」「蜂斗叶 フキ」など、星の数ほどある動植物名の漢字語は戦慄をおぼえさせる。 朝鮮では、「漢字は民衆の知識習得の妨げになる」ということで、王の指示によって文字の大衆化がはかられハングルが発明された。「覚えやすい文字は上流層の地位をおびやかす」ということで、両班を中心にした大きな抵抗があり、ハングル化への道は平坦でなかった。しかし、音標文字であるハングルは、母語の表記に便利であったため、皮肉にも両班の女子に好まれ、また、民話などの表記に陰のように使われていた。戦後、ハングルが表舞台で目立ちはじめたが、殊に、李承晩大統領がハングル化に拍車をかけてから、書籍をはじめ街頭の看板でさえハングル一色の傾向を見せ始めた。中学校で週1〜2時間の漢字教育が行われているが、旧漢字のままということもあって、自分の名前さえ書けない人が増えている。駅、空港などの漢字は案内表示のためのものである。 漢字の固辞派も時代の潮流にはさからえず、漢字は消滅化への道をたどりつつある。最近、韓国では、漢字教育を見なおそうとしているという話を耳にするが、韓国は旧漢字を使用しているので多難の道ではなかろうかと思われる。同音意義語の問題もあるが、ハングルのやさしさから比べれば、その効率・便利・学習時間の減少・・などの有利な条件を軽視して、ハングルを漢字化することは不可能であろうと思われる。漢字国中国が五十年後には、ピンイン文字化すると言われている今日、韓国がハングルを止めることは時代の逆行ではないだろうか。 日韓語の漢字と中国の漢字 (3) 日本にはカタカナがあるため外来語の表記に中国のような苦労はない。このことはハングルの場合も同じで、ハングルの方が日本語より正確に外来語を表記できる。しかし、カタカナがあると言えども、漢字を多用する日本は、不思議な文字使用が続けられている。 世界に、フリガナをつける国はなく、国家主席「胡錦涛(フチンタオ)」を「コキントウ」と言っている。日本の地図帳では、中国の地名は現地音(カタカナかフリガナ付)になっているのに、新聞(朝日新聞は別)・雑誌・テレビでは日本式の音読みが採用されている。「広州(コワンチョウ)」を「コウシュウ」と言っている。優勝選手の名前が電光掲示板・テレビ画面にローマ字で表記されているのに、アナウンサーは日本式の音読みで叫ぶ。国際会議などで、知名度の高い中国人の名前を、日本式の音読みで言えば出席者は唖然とするだろう。 日本語を学習する外国人は、音の重さを軽視して文字が自在におどっている漢字に辟易している。日本人は「蝉時雨」「氷雨」「的外れ」「鎧」「兜」のような文字を「万華鏡」のように楽しみ、その不思議な文字は世界遺産となるほどの史跡性を内包させているだろう。 日韓語の漢字と中国の漢字 (4) 日朝語の漢字は親である中国語に似ていると思いがちだが、中国語の漢字は相当にかけはなれている。日朝語の漢字の音とコンテンツは実によく対応している。同じ漢字語を中国語と比較するとき、中国語は別の漢字で表現する場合が多い。例えば、「愛着→留恋」「哀調→悲調」「愛嬌→可愛之処」などとなる。また、日朝語と中国語の漢字音を比較すると、「選挙=선거=選挙」「閣僚=각료=閣僚」「歌手=가수=歌手」などとなり、日朝語の漢字音はそっくりであることがわかる。 日本と朝鮮について「近くて遠い国」という話をよく耳にする。その理由として、類似した基礎単語が2百語あまりしかないからとよく言われる。しかし、一方で、「欧米の言語学のように類似した単語の数ばかりに頼らないで、多面的な観点から比較する必要がある」という説がある。例えば、漢字の視点から比較してみる。日本の漢字文化は朝鮮からの渡来人によって形成され、代表的な文献『記紀』『万葉』は渡来人によって書かれいる。日本語の漢字の音は朝鮮の漢字音に類似し、異なるように思える漢字音も規則的な音転訛によって変化している。「日中辞典(小学館)」と「朝鮮語辞典(小学館)」によって音と意味が対応する熟語をピックアップすると、中国語と異なる日韓語の対応語(熟語)は5000種を超える。 日韓語の漢字と中国の漢字 (5) 中国語と同音の漢字でも、漢字の意味が中国語とはかなり異なっている。朝鮮での漢字使用は紀元前後から盛んになったようであるが、7〜8世紀ごろ集中的に渡来した朝鮮王朝のエリートにより日本での漢字使用が盛んになるまで約800年ぐらいある。その間に、朝鮮での漢字文化は中国語を離れて独特なものに変化し日本語の漢字になっている。 例えば、「타류 他流」が中国語では「別流」になる。「단주 断酒」が「忌酒」、「구분 区分」が「分割」になる。また、音の比較をすると、「무욕 無欲」が「無欲」、「목조 木彫」が「木彫」、「야간 夜間」が「夜間」と発音される。 朝鮮語の漢字は旧漢字であるため、ハングル化と重なってますます漢字を好まない人が増えている。現在、日本語の漢字に「覺」「團」「爇」「寫」「變」・・のような漢字が多ければ、漢字を覚えることに膨大な時間を費やしている学童をさらに悩ますことになる。中国語ほど略字化しなくても、「褒」「淵」「躙」「瞰」「齢」「膚」「賓」「朧」「纏」「癲」・・などの漢字の画数を減らせないものだろうか。十五世紀、世宗大王は「だれもが読めて書ける文字」としてハングルの創造という偉業をなしとげた。ベトナムは漢字の弊害を解消するためにローマ字化し、中国も五十年後にはピンイン文字化すると言われている。 日本も、世界の学童と同じ時間で学習効果を高めようと思うなら、生活の根幹である文字の歴史を見なおす必要があるだろう。最高学府の教育を受け、20 〜30年も語学にかかわっていながら、「書けない文字」について慨嘆するのは漢字圏の人だけではないだろうか。五十年もすれば、世界で漢字を使っている国は日本と台湾だけになっているかもしれない。 |