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てすと http://www.asyura2.com/10/test19/msg/332.html
今まで、ロバート・アルドリッチはリバタリアニズムに関連し、言及されたことさえない。しかし、彼の『合衆国最後の日』(1977年)はリバタリアニズムに関心のある者には必見の映画だ。 内容はベトナム戦争で上層部に幻滅したバート・ランカスター演じる元将軍が、元部下のランボー的落ちこぼれ帰還兵とともにICBMサイロを乗っ取って大統領を人質に要求するというものだ。ハリウッドも含め国家主義化した現在のアメリカでは考えられない内容の娯楽大作だ。 アルドリッチはアメリカ東部の裕福な家庭に生まれネルソン・ロックフェラーの従兄弟にあたる。しかし、ドロップアウトして、ハリウッドで成功を収めた彼はアメリカ支配階級の偽善性を内部から熟知していたと言える。 『合衆国最後の日』の主演のバート・ランカスターとは当時としては衝撃的でさえあるインディアンの視点に立つ西部劇『アパッチ』(1954)や『ヴェラクルス』(1954)以来の名コンビかつ親友であるが、郵便配達員の息子に生まれ、サーカス団の花形を経て、大戦中は海軍の一等兵として従軍した叩き上げのランカスターとは正に名コンビだ。 反戦主義者であるランカスターはアルドリッチの反戦映画『ワイルドアパッチ』(1972)やケネディー暗殺を描いた『ダラスの熱い日』(1973)等にも主演し政治的にもリベラルとして知られている。 アルドリッチ映画のランカスター以外の常連であるいわゆる男気俳優達のチャールズ・ブロンソン、アーネスト・ボーグナインはアルドリッチ初期の大傑作『ヴェラクルス』(1954)でも悪党連として顔を出している。彼らはスティーブ・マックウィーン、ジェームス・コバーン等とともに名アクション映画監督のジョン・スタージェスやサム・ペキンパーの常連俳優でもあるが、メキシコに活路を求める荒くれどもを描いたスタージェスの『荒野の七人』やペキンパーの『ワイルド・バンチ』、そして『明日に向かって撃て』もストーリー、精神性とも『ヴェラクルス』を始祖とする映画群である。 ランカスターとゲーリー・クーパーが流れ者のデスペラードと元南軍大佐として主演する『ヴェラクルス』はアメリカ国内に行き場を失った本来のアメリカ人たちの自由を求めて戦い生きる姿を描いているが、ベトナム戦争前のパックス・アメリカの1950年代において既に現在の非アメリカ化したアメリカ社会を予言するアルドリッチは社会学者や社会評論家も及び得ない映画的炯眼を持っていたといえる。 また、アルドリッチの『北国の帝王』(1973)でアーネスト・ボーグナインと死闘を演じるリー・マーヴィン演じるホーボーはまさにリバタリアンの典型である。日本の孤高の俳優高倉健もアルドリッチの『燃える戦場』(1970)で青年将校を熱演しているが、イーストウッド同様、リバタリアンテイストを持ったブルーノートな男気俳優だ。政治性は無いが、映画野郎達にはリバタリアン映画ナンバーワンに挙げたい。 『リバタリアニズム読本』の“リバタリアンな映画の章”はかなり“トホホ”な学者的記述であるが、ハリウッドの左翼リベラル映画や断片的に個人主義的なアクション映画ではなく、近年日本の映画批評の流れで言えば『映画秘宝』的な通俗商業映画に徹しつつも、反骨精神を持った資本主義を肯定した視点に立てば、無政府主義者である真のリバタリアン的資質を持った映画群が見えてくる。
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